やはり俺が仮面ライダー龍騎なのはまちがっている。 作:伊勢村誠三
今日(12月18日)のうちに書いて予約投稿です。
執筆のお供はCO-OPの果汁入りソーダのグレープ。
サンガリアのラムネの次に好き。
さっ、さっ、と何かが擦るような音がする。
そこは畳の小さなアパートだ。
昼間だというのに真っ暗な室内には一切の光が無い。
カーテンは閉め切られているし、テレビには新聞紙がかぶせられ、外から見れば分かるが、窓は黒のペンキで塗ったくっている程の徹底ぶりである。
鏡や水道も破壊されており、その部屋には水を含めあらゆる世界を映すものがなかった。
男の光をなくした目を除いては。
その目から、白い光と共に男が降り立つ。
首まで生地の有る長袖に長ズボン、黒いブーツ、手には手袋。
裾の長いフード付きのカートを羽織り、顔は固め部分だけひび割れのような穴が開いた鏡の仮面に隠されている。
「辰巳や竜生に続き榊原もか。龍騎のデッキは呪われてるな」
仮面の男は感動なくつぶやくと、首をつってる榊原のポケットからブランクになった龍騎のカードデッキを抜き取り再び榊原の目からミラーワールドに戻った。
「BLUE BAT-MAN」
1
2002年1月。俺、比企谷八幡はあのデッキを拾ってしまった。
あの日は午前の曇りから一転して晴れてくれはしたが、それでもまだ寒かった。
冷える手をダッフルコートのポケットに突っ込み鼻をすする。
帰り道、何だったかは忘れてしまったがこれ以上外にいる用事もなかったからだったと記憶している。
「ん?」
こつん、と、左足が何かを蹴った。
滑って道の淵にぶつかって止まったそれを拾い上げてみる。
それは黒いカードケースだった。
四隅の上二つには白い角ばったYの字のような、下の方にはMの字のようなレリーフがついていて、固いし重い。
中には紙ではない材質でできたカードが入っている。
誰かの落とし物だろうか?
そう思ったなら普通はその場に置いて立ち去るか、交番に届けるかするだろう。
だが、出不精の俺がそれを交番に持っていく機会なんてそん時ぐらいしかなかったのに俺はそのまま家に帰ってしまった。
寒さに耐えかねたのか、それとも買ったばっかの本でもあったのか、そこは思い出せないけど、とにかく俺はそれがド級の厄ネタなんて知らずに持ち帰ってしまった。
確信を持って言える。俺が仮面ライダーなのは間違いだ。
2
「はぁー。」
ベッドに寝っ転がった俺は手にした龍騎のデッキを眺めていた。
だが何時までもそうしてる訳にもいかず、デッキをポケットにしまうと机に向かう。
俺の通う総武高校は県内屈指の進学校。
民度の低さはお墨付きだし、しっかりとしたスクールカーストが形成されてるような糞学校だが、勉強面は大体ちゃんとしている。
だから得意科目も苦手科目もそれなりにちゃんとやっとかないといけないのだが…また今日も俺にだけ聞こえる耳鳴りのような音が響く。
鏡を見ると、想像通り俺の契約モンスターであるドラグレッダーが唸りながらこっちを見ていた。
「あー!もう!あの大食らいが…昨日やったばっかだろ…っ!」
人が勉強しようとしたりゲームしようとしたりするとすぐこれだ。
腹減ってるのは分かるが契約は3日に1回で良いはずなのにこうもたかられるとストレスだ。
「変身!」
俺は乱暴にポーズを取って龍騎に変身すると鏡に飛び込んだ。
何時も通り謎のトンネル空間に用意されたライドシューターに乗って鏡の世界に移動する。
しばらく音の強くなる方に向かって進んでいくと倉庫街のような場所に出た。
周囲を探りながら歩いていると、背後から何かが急降下してくる。
「!!!!!」
気持ち悪い鳴き声と共に突っ込んできたそいつを避けるて、振り返る。
「っと!
やはり鏡の世界に住むモンスターだった。
モンスターには様々なタイプがある。
こいつのような虫型、動物型、ロボット型、そしてドラグレッダーのような空想上の生き物の姿をした者たち。
それらはそこから更にモチーフをそのまま巨大化させたようなタイプと、人型、所謂怪人のような恰好になってるのの2タイプに分けれる。
今回の蛾のモンスターは後者だ。
俺はベルトにハマったデッキからカードを引き抜き、立ち上がりながら左手のバイザーにセットする。
『GUARD VENT』
ドラグレッダーの腹部装甲を模した片手盾、ドラグシールドが二つ両腕に装備された。
俺はそれを前に出し、まっすぐモンスターに突っ込んでいく。
モンスターは俺に鱗粉を吹き付けるが、爆発性を持ったそれは全てドラグシールドの表面に当たって火花が散らすばかりで届かない。
「おらぁああ!」
そのまま突進を仕掛け、バランスを崩したところにヤクザ蹴りと肘撃ちの連続攻撃を浴びせる。
「!!!!!」
怯んだ奴はモンスターのくせに俺の攻撃をうまく受け身を取って距離を作ると背中の翅を広げて飛び去ろうとした。
(させるか!)
『アドベント』
ドラグレッダーを奴の行く手に呼び出し、尾で俺の方にはたき落とさせる。
(位置、速さ…完璧だ!)
『SWORD VENT』
ドラグセイバーを装備し、俺は落下して来るモンスターに向かって走り出す。
「はぁあああああ!はっ!」
そしてドラグセイバーを大上段に構え、飛び上がる!
「はぁあああああああああっ!」
渾身の一撃で地面に叩きつけてやる。
そして着地してすぐまたモンスターにとびかかってマウントを取ると逆手に持ったドラグセイバーをさっき付けた傷に突き刺す。
「ーーーーーッ!……ッ!…ッッッ!……」
可細い声もついに途切れ、モンスター力なく動きを止めた。
そんな奴をドラグレッダーは咥えて持ち去る。
徐々に遠ざかっていくバリバリと何かが砕ける音。
その昔、家で飼ってるアメショーが野良のネズミを捕まえて来た時のことを思い出した。
あの日は図太い俺の妹も食欲が失せていた物である。
かく言う俺も。その時も今も気分はよくない。
「ああはなりたくねえな。おっと……」
龍騎のスーツから粒子が上がり始める。
スーツの限界なのか、俺はこの世界に10分ほどしかいられないのだ。
「いっけねぇ。さっさと戻んねえと」
俺は近くの鏡から部屋に戻り、変身を解除した。
「はぁ、、こんなこといつまで続ければいいんだよ」
言っても無駄だが言わずにはいられない。
俺は本来、やらなくていい事はやらない主義なのだ。
あと自分から激動の中に飛び込んでいくのも。
「お兄ちゃんごはんだよー!」
下の階から愛しの妹が俺を呼ぶ声がする。
俺は手にしたままのデッキをどうするか一瞬迷ったが、結局テーブルには置かずポケットにしまって部屋を出た。
3
総武高校最寄駅から徒歩で15分ほどの場所に、小さな喫茶店がある。
紅茶を専門に扱い、店主がやや気まぐれで定休日が多い事を除けば味も接客もおおむね好評。
そんな喫茶
「いらっしゃいませ…て、お前…。」
「嘘でしょ?」
雪ノ下雪乃である。対応しようとした店員、仲田真澄は一瞬渋い顔をしたが、すぐさま仕事モードの営業スマイルに切り替え、
「ごゆっくり」
と、カウンターに戻った。だが本心は押し殺し切れず背を向けると同時にまた眉間にしわを寄せる。
それを見たカウンターの店主、真澄の叔母である
「真澄、その子総武の子だろう?休憩がてら話てきな」
「知らない仲じゃないけど別に話す仲でもない。
それに休憩なら10分前にとった」
「良いから行っときな!
なんだかあの子とアンタは仲良くなりそうな気がするしね」
「驚いた。叔母さんの勘も外れるんだな」
「何言うんだい。わたしの勘は当たるよ!」
真澄はため息を吐きつつも雪乃の注文を取りに向かった。
こういった叔母の行動は止められない。
約11年一つ屋根の下で生活してればいやでもわかる事だった。
「お決まりでしょうか?」
「ダージリンをストレートで」
それを聞いた真澄は営業スマイルではなく素の笑みを見せると、
「そりゃいい。本物を飲ませてやる」
と、いつもの調子で話し始めた。
「まさかあなたが淹れるの?」
いきなり接客を捨てたことにも、紅茶をいれれることにも雪乃は驚いた。
口調や立ち振る舞いから彼女からあまり女性を感じる事が無かったからだ。
「沙奈子叔母上にみっちり仕込まれててね」
そう言った真澄は言うだけあって手際よく紅茶をいれて持って来た。
そして雪乃の反対側に座る。
「……。」
「さ、召し上がれ。チップは結構だ」
と、自信満々に両腕を組んだ。
怪訝に思いながらも雪乃は受け皿語と持ち上げ、取っ手をつまんで湯気の立つ紅茶を口に運ぶ。
「!!?……」
「いかがかな?」
「……あなたを侮っていたわ」
真澄の入れる紅茶は美味かった。
水は茶葉の適温。香りもいい。
食器もこの紅茶の色に最も合うイメージの物を選んでおり、もしかしたら自分よりうまいかもしれない。
そう思って雪乃が悔しそうに顔をゆがめたのに気付いた真澄は勝ち誇ったように笑みを深める。
「店主さんの事を叔母上と呼んでいたけど、その縁でバイトしてるの?」
紅茶を味わうだけかと思ったが、雪乃は話を振って来た。
まあ、当然の疑問だろう。
聞かれることにも慣れてるので素直に答える。
「いや、家の手伝いみたいなもんだ。
小遣いに色は付けてもらってるが、別にバイトしてるわけじゃない。
特に欲しいものも無いしな」
「そう……」
それっきり会話は途切れた。
雪乃も真澄も続けるつもりなど無いし、特に真澄はカウンターの方から沙奈子が何やらジェスチャーで言っているが全て黙殺する。
このまま話し続ければ口車に乗せられるようで嫌だし、何よりこの女とは深いかかわりを持つべきではないと直感が告げていた。
雪乃が紅茶を飲み切るのを待って立ちあがると、同時に耳鳴りのような音が響く。
周囲を見ると、その音はやはり真澄にしか聞こえていない。
「叔母さん、お会計!」
真澄は手早く食器を片付けると控室に入り内側から鍵をかける。
そしてロッカーの内側に張ったミラーシールにエプロンのポケットから取り出したナイトのカードデッキを掲げた。
鏡の中から飛び出した銀色の光が腰に巻きつき、Vバックルに変形。
拳を作った右腕を振るポーズを取り、
「変身!」
Vバックルにセット。
無数の灰色の残像が重なり、真澄は仮面ライダーナイトに変身。
右手に装備されたダークバイザーを納刀し、ミラーワールドに突入していった。
4
ライドシューターである程度すすむと、耳を澄まして音で探す。
金属音が聞こえてくる方に向かうと、その先でオレンジ色の仮面ライダー、シザースとマゼンタ色の仮面ライダー、ライアが戦っていた。
(あのカニ野郎はこの前不意打ちして来た奴だな……)
シザースとは今まで何回か戦ったことがあったが、いずれも背後から不意打ちを仕掛けて来た狡い奴だ。
変身前の面を拝んだことはないが、きっとあの蟹の仮面の下は下衆な顔に違いないとナイトは勝手に思っていた。
(もう一人は…初めて見る顔だな。新参者か?)
ライアの方はアラビア風の見ようによっては悪党のような仮面のライダーだった。
肩や頭部の飾り、そして何より左手に装備した盾形のバイザーから察するに契約したモンスターはエイかヒラメだろう。
「よせ!こんな戦いなんの意味があるんだ!?
人と人とが戦うなんて間違ってるだろ!やめるんだ!こんな戦い!」
ライアは何を血迷ったのかシザースを説得しようとしているようだった。
馬鹿な奴だ。あんなことを言えば好戦的な連中に憎まれ、面白がられ、このんで戦いを挑まれることなど目に見えてるだろうに。
「黙って戦え!」
シザースは左手に着いた蟹の鋏を模したバイザー、シザースバイザーを開いてカードをセット。
『STRIKE VENT』
契約モンスターの腕を模したシザースピンチを装備し、ライアに殴り掛かる。
そうなってもライアは左手のエビルバイザーで受けながら説得を続けている。
「おいおい、随分ケツの青いガキがライダーになったもんだな!」
ライアが自分から攻めようとしないのを確信するとナイトはバイザーを開きながら二人の間めがけて走り出す。
『SWORD VENT』
馬上槍型の武器、ウイングランサーを呼び出してライアを蹴り、その勢いのままシザースに斬りかかる。
シザースピンチで受けるシザースだが、切り結ぶうちに武器が腕からすっぽ抜ける。
武器の質ではナイトが勝るようだ。
「そこ!」
『GUARD VENT』
頭を貫こうとウイングランサーを突き出すが、シザースはバイザーにかぶせるように装備した甲羅型の盾、シェルディフェンスでウイングランサー防いだ。
そしてそのまま槍先を地面の方に逸らすと、ウイングランサーをバイザーの刃で挟み壊した。
武器を失ったナイトは素早く飛びのきながらバイザーを抜刀する。
「やめろ!」
『SWING VENT』
「はあっ!」
こんどはライアがナイトとシザースの間に飛び込んで来た。
装備したエビルウィップでナイトの腰を掴んで後方に放るとシザースの方を向き、また説得を始める。
「やめるんだ!こんな無意味な戦いは!
傷付け合ってどうする!?」
そんなライアにやはりシザースは猛然と襲い掛かった。
ライアの方が防戦一方だが、それでも拮抗しているのを確認するとナイトはバイザーを逆手に持ち直し、新たなカードを装填した。
『NASTY VENT』
ナイトを中心に契約モンスターの闇の翼ダークウイングが発するのと同じ快音波が発生する。
シザースとライアは頭を押さえて悶え始めた。
「精々蟹味噌ぶち晒せ!」
ライアみたいな甘ちゃんはいつでも殺せる。
なら狙うのは不意打ちをこのみ生きてる限り延々コッチの気を散らして来るシザースだ。
『FINAL VENT』
実質の処刑宣言と共に飛来したダークウイングがナイトの背中に合体する。
そしてナイトが走り出すと同時にその翼をマント状に変質させる。
「はっ!」
そのマントはナイトの体を包み、回転する黒い繭となってシザースの胸板を貫いた。
着地と同時にマントが解け、翼を基の形に戻したダークウイングが飛び去る。
ナイト自慢の必殺技、
胸より上を失ったシザースは二、三歩よろけて膝をつき、粒子を上げ始める。
「な、なんてことを!」
「助かったよ。あわよくばお前事始末したかったが、それはこれからやればいい。」
ゆっくりとライアの方に向かうナイト。
ライアは怒りで震える手でエビルウィップを握り締め、ナイトを糾弾した。
「ふざけるな!人を、殺しておいてなんだそれは!
カニの彼にだって愛する家族や友人がいたはずだ!
それを踏みにじっておいて何のつもりなんだ!」
「それがどうした?」
奇麗事ばかり叫ぶライアを鼻で笑うナイト。
バイザーを順手に持ち直しながら挑発するように続けた。
「残された連中が可愛そうだと思うなら全員まとめて連れてこい。
あのカニと同じところに送ってやる」
「ふざけるな!」
エビルウィップとダークバイザーは火花を散らした。
小説版第二話、いかがだったでしょうか?
お察しの通り仲田真澄は小説仮面ライダー龍騎の秋山蓮をベースに龍騎系作品における(メンタル)最強の女性仮面ライダーをコンセプトに造っております。
名前は蓮の没案からそのまま採用。
ちなみに真司は元々北島亮って名前になる予定だったそうです。
こちらが真澄の御尊顔になります。
【挿絵表示】
ななめーかーというメーカーで作らせていただきました
元々主人公の妹がモンスターに支配されて変化したもの、という設定だったそうなのでアホ毛あり。
アルビノなので肌は白く、髪はものすごく薄い金髪。目は紫に近い色です。
オリキャラ解説はこの辺にして、今回はそろそろ終わりたいと思います。
次回もお楽しみに。