やはり俺が仮面ライダー龍騎なのはまちがっている。   作:伊勢村誠三

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約3日ぶりです。
年末休みなのにレポートに忙殺されそう!
多分これが今年最後になります。


CRAZY CARDBATTLE

 

比企谷家の朝は早い。

自転車で行って帰ってこれる距離とは言え、学校とはそれなりに距離がある。

しかも八幡は妹の小町を後ろに乗せて、中学まで送ってから総武高校に向かう為、必然的に2割り増しぐらいの巨r地と時間がかかるのだ。

 

「いってきまーす!」

 

「おう。気を付けてな。」

 

カバン片手に飛び降りた妹を見送って自転車をこぎ出そうとする八幡。

しかしいつもの様に耳鳴りのような音が響いた。

カーブミラーの方まで行ってみると、白いヤゴ型の怪人、シアゴーストがミラーワールドの同じ道を埋め尽くさん数歩いている。

 

(流石にあの数は御免だな。)

 

そう思って無視して自転車をこぎ出す八幡。

 

「なーんだ。来ないのか。まとめて消してやろうと思ったのに。」

 

ミラーワールドにて、八幡からは死角の別の反射物からその様子を眺める者がいた。

グリーンのアンダースーツの上には戦車のような装甲。

顔を隠す仮面は龍騎のよりも近代的な横格子戸状の中から赤いモノアイが輝いている。

 

『FINAL VENT』

 

「バン!」

 

 

 

 

〇「CRAZY CARDBATTLE」

 

 

 

 

1

青春とは嘘であり悪である。

この桜舞う4月の空の下繰り広げられる今しかない高校生活の大義のもとの仲良しごっこはこの世の何より醜悪だ。

そう思っていた。ライダーバトルの真実を知るまでは。

 

「変身!」

 

ライダーになって数日、俺はミラーモンスターと戦っていた。

はじめは無視しようと思った餌の催促も、自分が食われかければ理解する。

俺はあの時いやいや戦ってた。今もだけど。』

 

「ここか…」

 

出た先は、多分どこかの公園の一角。

引き込まれたらしい女性を羽交い絞めにして蟹のモンスターが連れ去ろうとしていた。

 

「たくっ…どいつもこいつも大食いだな!」

 

『SWORD VENT』

 

俺はドラグセイバーを装備して斬りかかった。

女性を落した蟹モンスターは当然ながら反撃して来た。

甲殻類モチーフゆえの固い部分が多く、

両腕の鋏もドラグセイバーと同等の切れ味を誇るのだろう。

避けた後ろにあったオブジェを真っ二つに挟み切っていた。

 

(なら耐久して隙を見つけて関節を壊す!

そこにファイナルベントを叩きこんでやる!)

 

そう考えしばらく戦っていると、その間に一台のライドシューターが飛び込んでくきた。

乗っていたのはちょうど今まで戦っているモンスターと同じメタリックオレンジのライダーだった。

 

「……。」

 

「! 俺以外にも居るのか?」

 

「はっ!」

 

とびかかって来たオレンジのライダーは左手に着いたバイザーの刃で斬りかかって来た。

 

「ぐわぁ!何を…」

 

「黙ってやられろ!100億円!」

 

再び殴り掛かるライダー。それをセイバーで弾く。

距離を取ろうと一歩下がると、視界の端で女性を連れて逃げる蟹モンスターがいた。

そっちに気を取られた隙に背後を足られ後ろから首を絞められる。

 

「ひゃ、100億だって?」

 

「俺以外のライダー全員殺して百億円!それが俺の願いだ!」

 

そう叫ぶとオレンジのライダーは俺の首を絞め折ろうと力を籠め始めた。

狭まる視界に流石にやばいと感じた俺はどうにかバイザーを開いて適当に取ったカードをセットする

 

『ADVENT』

 

呼び出されたドラグレッダーは俺の思った通りに敵ライダーを攻撃してくれた。

脱出した俺はセイバーで斬りかかりながら叫んだ。

 

「願い?ただの欲望だろうが!」

 

「そうだ!それの何が悪い!仮面ライダーは全部で12人!

どいつもこいつも願いの為に殺人を許容する屑どもだろ!

そのゴミ掃除をしてやってんだ感謝されても文句言われる筋合いはねえな!」

 

「ッ!…ああああああ!」

 

俺はつば競り合う敵を強引に押し切ってキックで全歩に飛ばして隙を作る。

そして今度は狙ってカードを引き、バイザーにセットする。

 

『STRIKE VENY』

 

「!」

 

敵もそれを見てもそれを見てバイザーを開いてカードを装填する。

 

『GUARD VENT』

 

バイザーの上にかぶせるように甲羅型の盾が装備される。

俺はそこに全力全開のドラグクローファイヤーを叩きこんでやった。

 

「うぉおおおおお!?」

 

衝撃こそ殺せなかったが、持ち前の固さのお陰で敵ライダーは吹っ飛ばされただけで変身解除に至らない。が、体から粒子が上がり始めている。

 

「ちっ!時間切れか…」

 

撤退する敵を俺は肩で息をしながらそれを見送った。

 

「なんだったんだ…ん?」

 

見ると自分の体からも粒子が上がっているのに気付いた。

及川らず子の世界には10分ぐらいしかいられない。

 

「スーツが…戻んないと…。」

 

俺は適当な近くの車のミラーから現実に帰還して変身を解除した。

 

「なんだったんだ一体…」

 

そして改めて呟いた。

ライダーが全部で12人いるのは分ったが、なぜ戦わないといけない?

それに願いが叶うってなんだ?

 

「お前、新参者か?」

 

全く聞き覚えのない声にふり返る。

その先にベージュのコートの男が立っていた。

 

「なんだアンタ?まさかさっきの蟹男か!?」

 

もしそうならただじゃ置かない。

争いごとを好むつもりはないが、向こうから来るなら別だ。

 

「いや、奴はシザースと呼ばれるライダーだ。

素顔は知らんが、ライダーの中でも特別嫌な奴だよ。」

 

「…そう言うアンタは?」

 

「ベルデだ。お前は、新しい龍騎か。」

 

「龍騎…。」

 

俺がデッキをとりだすと、男も黄緑色のデッキを取り出す。

龍騎のデッキには中心に金色の龍のレリーフが有るように、ベルデのデッキにはカメレオンの物がついていた。

 

「精々先代…榊原みたいに戦いを止めようとか無駄なことはするなよ。

結局俺たちは一度結んだ契約から逃れられない。

勝って願いの力を使うしかない。」

 

「願いって、そんなドラゴンボールみたいな…。」

 

「ああ、きっと神か悪魔かなんかがかなえてくれんのさ。

信ずるものは救われる。ってな。ま、頑張れよ。」

 

ベルデの男はそう言って俺の肩を叩いて去って行った。

その後帰って色々考えたけど、俺は火中の栗を拾うつもりも、降りかかってくる火の粉を黙って受け続ける気にもならなかった。

けど死ぬのは、絶対に嫌だった。だから戦う。

それはきっと、俺にしては珍しくまちがってないと思えたから

 

 

 

2

「どうぞ。」

 

短いノックの音に返って来た声に従いドアを開ける。

総武高校奉仕部はもう既にそろっていた。

雪乃と栄喜は昨日と同じ位置に、真澄は栄喜の左斜め前に座っている。

 

それぞれ奥で本を読んでいたり、勉強をしていたり、持って来たラジカセで音楽を聴いていたりと、思い思いに過ごしていた。

 

「誰?」

 

本から顔を上げた雪乃は開口一番、八幡を口撃してきた。

見た目だけの糞女め。

きっとこいつはライダーになったらシザースみたいに戦うに違いないと滅茶苦茶失礼なことを想いながら八幡も買い言葉を返すことにした。

 

「不本意ながら部員をやってる比企谷ですよ。」

 

「ああ、ヒキガエル君。」

 

「なんで俺の小学校の時のあだ名知ってんだよ…。」

 

「にしても凝りもせぬに三日も連続で来るとは、相変わらずマゾヒスト疑惑とストーカー疑惑は消えないわね。」

 

「誰が好き好んでこんなとこ来るか。

強制されてなきゃ来ねえよ。」

 

「お前ら口喧嘩ならもっとむこうでやってくれないか?

集中できないんだが?」

 

真澄が冷たく言った。

見ると顔を上げて無ければ、動かすペンすら止めていない。

全く興味ありませんと体で言っているように見えた。

 

「ほら、勉強の邪魔になってるわよ、騒音谷君。」

 

「谷しかあってねえよ。」

 

そう返して八幡も機能と同じ位置に座った。

何をしようかと悩んでる間にドアがノックされる。

どうやら平塚ではないようだ。

 

「どうぞ。」

 

「し、失礼しま~す。」

 

入って来たのは一応進学校かつ偏差値高めの総武高校では目立つ少女だった。

スカートは短く、片方にだけお団子を作った髪は元の茶髪が分かる程度にピンクに染められている。

どことなくアホっぽい奴が来たな、と八幡は思った。

 

「ふぇえ!?どうしてヒッキーに満坂くんまでいるの!?」

 

その派手な女は手前に座る男子二人を見るなり素っ頓狂な声を上げて大げさなぐらいに驚いて見せる。

八幡は彼女が誰か本気でわからなかった。

 

「ヒッキーってなんだヒッキーって。

俺はこの通り登校してるだろ失礼な。

おい満坂、こいつお前の知り合いか?」

 

「いや、クラスメイト。名前ぐらい覚えろ。

由比ヶ浜さんだよ。

ほら、いつも三浦さんとか葉山あたりとつるんでる。」

 

そう言われて八幡もようやく合点がいった。

 

「……ああ、あのリア充連中共か。そう言えばこんなん居たな。」

 

「こ、こんなん!ヒッキーサイテー!それ人を呼ぶ言い方!?」

 

「初対面でひきこもり呼ばわりするお前が言うな。」

 

「女子と喋れるのがうれしいからって入口で話し込まないでくれるかしら引籠谷君。」

 

「だからちゃんと登校してるし部活に出てるまであるってんの。」

 

口げんかが終わらずいつまでも本題に入らない。

見かねた真澄はようやく顔を上げると結衣のそばまで行く。

 

「それで?お前はなんでこんな監獄のような場所に来た?」

 

「か、監獄!?ここって生徒のお願いを叶えてくれるとこなんだよね?」

 

「いいや。対価もないのに誰がするかそんな面倒なこと。」

 

「!?」

 

「手助けするだけって話だ。」

 

「そう、なんだ?」

 

思い切り首を傾げながら言う由比ヶ浜に一同思いっきりため息を吐いた。

 

(分かってねえな…)

 

(分かってなさそう…)

 

「で、あなたは何を手伝ってほしくてこの奉仕部に?」

 

「あ、うんえっとね…」

 

由比ヶ浜は、八幡の方を見て何故か言いよどんだ。

ついさっきまで顔も知らなかった相手に何を隠すことがあるというのだろうか?

 

「俺いると話しにくいか?」

 

「い、いやその、えっと…」

 

なお言いよどむ由比ヶ浜。

問いただそうとしたその時、

相変わらず見計らったように耳鳴りのような音が響いた。

 

「…俺、ちょっと飲み物買ってくるわ。」

 

「俺はトイレに。」

 

部室を出て、栄喜が先に行ったのを確認すると、

八幡は踊り場の窓にカードデッキを構える。

 

「変身!」

 

そして龍騎に変身。ミラーワールドに突入した。

そのすぐ後、階段下から栄喜が戻ってくる。

 

「へ~、榊原の奴死んでたんだ。

じゃ、龍騎には奇麗サッパリ消えてもらいますか。」

 

栄喜はポケットから牛のレリーフの付いた緑のカードデッキを取り出して掲げる。

鏡の中から飛び出した銀色の光が腰に巻きつき、Vバックルに変形。

拳を作った右腕を左腕と交差させながら振り上げるポーズを取り、

 

栄喜「変身!」

 

バックルにデッキをセット。

仮面ライダーゾルダに変身した栄喜は龍騎と同じようにミラーワールドに突入した。

 

 

 

3

走る龍騎を追うように銃弾が地面に着弾する。

今回遭遇した敵は猿型のデッドリマーだった。

立体物の多い屋上を飛び回りながら的確に龍騎を撃ってくる。

 

「あんの眼鏡猿!何とかして近付かねえと!」

 

しゃえひ物に隠れながら出方を窺う龍騎。

こちらを見失ったのか、デッドリマーはきょろきょろと辺りを探っている。

 

『SHOOT VENT』

 

丁度デッドリマーがこちらを向いたその時、奴の背中に砲弾が直撃。

そのままビルの下に落ちていく。

 

「な!まさか…」

 

「……。」

 

発射場所と目される場所に向かうとそこにはゾルダがいた。

手にしたランチャー砲型武器、ギガランチャーを捨ててベルトに引っかけていたビームガン型バイザー、マグナバイザーを左手でも構える。

 

「ふっ!」

 

なんとか遮蔽物の間に飛び込んだ龍騎はその中を縫うように走る。

目で見ずとも銃声と足音でゾルダが追いかけてくるのが分かった。

 

『SHOOT VENT』

 

足を止めゾルダは両肩にビーム砲、ギガキャノンを装備。

左右二発の同時に放たれるビームが龍騎を襲う。

狭い空間だったおかげで龍騎ではなく機材に当たり炎と煙が立つ。

当たればただでは済まないだろうが、

この煙だらけの中下手に打ってこないはず。

 

「だったら…」

 

龍騎はバイザーを開いてカードをセットするがベントインはしない。

強襲にはタイミングが重要だ。

バイザーの音声で位置を気付かれるわけにはいかない。

 

「……。」

 

ゴン!と重いものが落ちる音に続いて足跡が聞こえてくる。

どうやら再び武器をマグナバイザーに持ち替えて近づいてきたようだ。

 

(今だ!)

 

『STRIKE VENT』

 

煙から飛び出しながら装備したドラグクローで渾身の右ストレートを浴びせる。

 

「ぐぁあああああああ!」

 

胸部にもろにそのライダーパンチを受けたゾルダは吹っ飛ばされるが、胸を押さえながら立ち上がり逃げだす。

 

「はぁ!はぁ!」

 

乱れる息を何とか整えながらゾルダは階段を駆け下りた。

 

(あ、危ない…ゾルダの防御力でなければやられていた…)

 

どうにか誤魔化さなければ。

背後から誰かがミラーワールドから戻る音を聞きながらゾルダは思案した。

すると丁度そこに校舎から出ていこうとする生徒を見つける。

 

「ん?なぁ!?」

 

ゾルダはその生徒の側頭部を叩いて昏倒させた。

そして変身を解除して満坂栄喜にもどると、デッキを男子生徒に握らせる。

 

「おい!おいしっかりしろ!比企谷!いいとこに来た!

保健室に行って連絡して来てくれ!」

 

我ながら迫真の演技だったようで、八幡は呆然としてよた、よたと保健室の方に走って行った。

栄喜は男子生徒を担ぎながらその背中に邪悪な笑みを向けた。




それでは皆さん良いお年を!
来年もやはり俺が仮面ライダー龍騎なのはまちがっている。をどうぞよろしくお願いします!

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