やはり俺が仮面ライダー龍騎なのはまちがっている。   作:伊勢村誠三

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こんにちは。伊勢村です。
12時現在神奈川は雪が降ってます。
つい一昨日まで長野に居たのに変わらず寒いです。
このSSで八幡たちが冬を迎えるころにはコロナとかどうにかなってて欲しいものですね。


DOUBT OF DUEL

 

総武高校二年F組の教室にて。

授業もホームルームも終わり、もう部活や予備校に向かった者たち以外、つまりこの後特に予定のない者たちが、この青春の時をどう過ごそうか、それともこのままダべっていようか?なんて話している中、比企谷八幡は一人思案していた。

 

「ヒッキー!部活行こう!」

 

「……」

 

 

(多分、ゾルダはあの時満坂が介抱してたあいつだ…。

俺は、俺は危うく殺しちまうところだった…。)

 

「ヒッキー?聞いてる?」

 

結衣の声も聞こえない程八幡は考え込んでいた。

自然と拳に力がこもり、結衣からは長い髪で見えないが、苦しげに表情を歪ませる。

 

(もし、もしあのまま殺してたら俺は…

でも反撃しなかったら死んでた!あんな、あんなの…)

 

「返事ぐらいしろし!」

 

が、流石に怒鳴られれば我にも代える。

周囲を見渡すと、何事かと他の生徒が八幡と結衣を見ていた。

 

「……え?もしかして俺に話しかけてた?」

 

「逆にヒッキー以外誰が居るの?」

 

「悪いな、こうゆう環境で俺に話しかけてくれる人間なんて今までいなかったんでな」

 

実際そうなのだ。中学で大分勘違いやらかした挙句、

寒い迷走しまくった八幡は所謂腫物扱いで、クラス中の嘲笑と憐みの的だったのだ。

 

「ヒッキー…」

 

「その生暖かい目をやめろ。普通に傷つく」

 

クラス中からの視線に嫌な物を思い出しながら、八幡は結衣と共に部室に向かった。

 

 

 

 

「DOUBT OF DUEL」

 

 

 

 

1

誰かがドアをノックする。

雪乃の「どうぞ。」の声を待って扉があけられる。

入って来たのは比企谷八幡に由比ヶ浜結衣だ。

昨日と同じ位置に座っていた栄喜は顔には出さなかったが、意外に思った。

もしかしたら意外とメンタル強いのかもしれない。

 

「いらっしゃい由比ヶ浜さんに…誰?」

 

「泣くぞ」

 

「やめなさい絶対気持ち悪い。それでどちらさま?

そろそろ名乗らないと名無しの権兵衛と呼ぶことになるのだけど?」

 

「昨日ヒキガエルとか呼ばれてた比企谷八幡君ですよ」

 

雪乃の毒舌に皮肉で返す八幡。

口撃されると分かっていたのでこれまた口に出さなかったが、

意外と言いバランスの2人なのかも、と思う栄喜。

 

「ああ、引籠谷君ね」

 

「だから谷しかあってないっての」

 

それ以上は無駄と判断した八幡は荷物を降ろして昨日と同じ席に座った。

 

「そんなことより由比ヶ浜さん、今日こそ大丈夫なんでしょうね?」

 

「大丈夫!ちゃんと今朝ますみんにレシピ貰ってきたから!」

 

自分が直接やってないのにその豊満な胸を張る結衣。

雪乃の顔を見ると、怪訝そうな、不安そうなそんな表情だ。

 

「ますみん?もしかして仲田さんのこと?」

 

「うん、真澄ちゃんだからますみん」

 

(流石リア充。

あいつともうそんなに仲良くなってんのか?)

 

そう思いながら八幡は読書を始めた。

流石ぼっち。会話は聴いても、

関わる気は一切なさそうだった。

 

「そのあだ名、本当に通すの?

彼女昨日そう呼ばれた時すごい顔してなかったかしら?

そこの引籠谷君にも不評だし」

 

どうやら引籠谷君の予想に反して真澄本人からは不評のようだ。

 

「えー?そお?ヒッキーもますみんもいいと思うけどなー。

んー…例えば雪ノ下さんはゆきのんで、満坂くんは…んー?」

 

「ゆ、ゆきのん…」

 

「俺は出てこねえのかよ…」

 

地味にダメージを受ける栄喜だった。

まあ、サカサカとか、キー君とか付けられるよりマシだが、

ハブられたらハブられたでいい気分はしない。

 

「ん!話がそれたわ。そろそろカギを取りに行った仲田さんが戻る頃よ。

昨日は達成できなかったあなたのクッキー作りを完遂させましょう」

 

「クッキー作り?」

 

「お礼の品で作って渡したいそうよ?」

 

そう言って立ち上がると先に真澄が言って待って居る家庭科室に向かった。

 

 

 

 

2

「出来た!」

 

調理開始から数十分。

漸く冷めたそれをペーパーを敷いたさらに盛り付け、

お手本と大体同じものが出来上がった。

途中何回か残る女性二人のフォローが入ったが、

イイ感じなのではないだろうか?

 

「ええ、出来たわね。ようやくクッキーの形をした物が」

 

「昨日はクッキー作んなかったの?」

 

栄喜の素朴な疑問に、

本当に苦虫を噛み潰したような表情で答えた。

 

「クッキーどころか食い物すら作ってない。

あれはクッキーと素材を同じくする灰クズだ。灰クズ」

 

「な、何が灰クズだし!ちょっと失敗しただけだし!」

 

「ちょっとですって!?」

 

結衣の抗議に珍しく雪乃が声を荒げた。

 

「あんな分量も時間も滅茶苦茶な上に桃缶やらなんやら詰め込んどいてちょっとだと!?」

 

「おいマジかよ…」

 

「それ焼きあがる前に止めらんなかったの?」

 

「止めたよ。けどもう手遅れだった。

ずっと付きっ切りで見てたはずのこの部長様がなんも言わなかったせいでな!」

 

「ずっと我関せずだったあなたに言われたくないけど、そうね。

確かに失敗したことないから歪な物の正し方を知らなかった私にも落ち度があるわね。」

 

「うわウザ」

 

「部長殿…それ他の奴らに言わない方がいいっすよ?」

 

「あきらめろ。こいつは出来ない奴の気持ちが、

いや出来ない奴がいることが分かってないんだ」

 

ぐん、と雪乃に対する好感度の低下を感じる三人だった。

そして同時に奉仕部なんて造らされた理由を垣間見た気がした。

 

「ちょ、ちょっとみんな…」

 

「ん?ああ。悪いな、相談中に。

とにかくレシピに忠実にこなせば問題なかっただろ?」

 

そう言って真澄は焼きあがったクッキーを一つまみ。

シンプルなバター味のキック―は出来立て故にちょっと熱く、

サクサクでしょっぱさなの中にやさしい甘さがあった。

 

「ん、昨日の毒見から100億歩進歩したな。

流石に雪ノ下のには及ばないが」

 

「毒見って…昨日どんだけ酷かったんだよ。うま」

 

「おー、去年妹が作ったのよりいい出来じゃん」

 

男子二人からも好評だったのだが、

結衣はなぜかどこか浮かない顔だ。

不思議そうにする三人をよそに雪乃が言った。

 

「材料は有るしもう少しなら作れるわ。引き続きやるわよ」

 

「え?これでよくないっすか?」

 

「何を言っているの?人に贈るモノなのよ?

完璧を目指して当然でしょう?」

 

「正しい意見だな」

 

「比企谷?」

 

ほとんどしゃべってなかった八幡が口を開く。

ついでとばかりにもう一枚クッキーを食べながら雪乃の前に立つ。

 

「あら、良かった。正常な判断ができるという事は脳までは腐ってないのね」

 

「けど場合に寄っちゃ良くはねえだろ。

極端な例だけど、殺人はしちゃいけませんって正しいことだが、相手が殺しにかかってきてたりしたら……ッ!」

 

「?」

 

「どうした?なんでそこで言いよどんだ?」

 

「い、いや!とにかくだ。

お礼で渡す相手がどんな奴かにもよるが、

由比ヶ浜みたいなのに奇麗なラッピングの手作り菓子とか渡されたら大抵の男子は思わずクラッと来ちまうだろよ」

 

「!…た、例えばヒッキーでも?」

 

「ああ。思わず一目ぼれしてソッコー告って振られて黒歴史を増やすまであるぞ」

 

「随分と実感のこもった言い方だな」

 

「ほっとけ。誰に迷惑かけてないし問題ないだろ」

 

「気づくと不幸自慢して空気ぶっ壊すの、

部長殿の遠慮が行方不明の毒舌と同じだと思うけど?」

 

「一緒にしないでくれるかしら?

その勘違い、ひどく不快だわ」

 

「ヘイヘイ」

 

「返事は一回」

 

「はーい」

 

(そっか…昨日みたいなのはアレだけど、気持ち、か。)

 

そんなやり取りを見ながら、奉仕部の理念的には少々問題だが、答えを得た結衣は胸に手を当て小さくはにかんだ。

 

それと同時に、突如八幡たち三人に耳鳴りのような音が聞こえた。

同時に鏡から飛び出した白い糸が栄喜の首に巻きつく。

 

「な!こ、これは!」

 

そのまま鏡に引きずられていく栄喜は、

命の危機につい反射でカードデッキを取り出した。

 

「お前それ!」

 

「! あーもう!変身!」

 

作戦の失敗を悟り、栄喜はゾルダに変身すると抵抗をやめて自ら鏡に引き込まれた。

 

「え、えええええ!?

満坂くんがなんかジバンみたいなのに変身した!?」

 

「全く、世間ってやつは狭いな」

 

「仲田さんあなた何言って…」

 

真澄も窓の前に立ち、ポケットから取り出したナイトのデッキを構える。

 

「変身!」

 

「はー…良かった」

 

そしてゾルダと、ゾルダを襲ったモンスターを追ってミラーワールドに突入していった。

それを見送りながら放心していた八幡は騙された怒りより先に、誰も傷つけてなかった安ど感が先に来たことに少し驚きながらもデッキを取り出す。

 

「!? え…もしかしてヒッキーも…」

 

「変身!」

 

そして龍騎に変身して二人を追った。

 

「なにが、起こっているの?」

 

「分かんない…」

 

取り残された二人はただただ鏡越しに繰り広げられる戦いに困惑するしかなかった。

 

 

 

 

3

首に糸を付けられたゾルダは、引きずられながら左手でベルトに下げたマグナバイザーを引き抜き、敵の顔面を狙って撃った。

が、敵、ソロスパイダーは糸でゾルダをからめとって動きを封じる。

そしてそのまま噛みつこうと近付く。

 

「はぁ!」

 

しかし乱入して来たナイトのダークバイザーで糸を切られ姿勢を崩した。

その隙を続いてやって来た龍騎にドロップキックを叩きこまれ倒れる。

 

「ナイト!?まさか…仲田さん?」

 

「ご明察だ。さ。やろうか?」

 

ゾルダに向かってファイティングスタイルを取るナイトの背中を龍騎が叩く。

 

「やってる場合か、あいつ逃げるぞ!」

 

そう言って単身ソロスパイダーに格闘戦を仕掛けていった。

 

「どうする?」

 

「……ま、手の内を見ておくのもありか」

 

ナイトは遅れて駆けだすと龍騎の攻撃の合間をカバーするように斬撃を繰り出す。

ゾルダはそのままの位置でマグナバイザーで的確にソロスパイダー攻めの機会を邪魔していく。

 

「このまま続けるか?」

 

「いや、外に出す!ここじゃ狭すぎて無理だ」

 

「よし、合わせろ!」

 

ナイトのその声を合図に二人は同時にカードを切った。

 

『『SWORD VENT』』

 

柳葉刀型のドラグセイバーと騎乗槍型のウイングランサーが同時に繰り出される。

窓を突き破り落下するソロスパイダー。

その後を追って割れた窓から飛び降りる三人。

 

「しゃぁあああ!」

 

ソロスパイダーはすぐに体制立て直すと、

ジャンプからの蜘蛛糸を使った滑空で離脱しようとした。

が、銃を握れば百発百中のゾルダに撃ち落とされ失敗に終わった。

その隙に龍騎が次のカードを切る。

 

『FINAL VENT』

 

「はぁあああああ!」

 

飛来したドラグレッダーがナイトとゾルダを避けながら旋回し、龍騎と共に飛び上がる。

灼熱の弾丸と化した龍騎はソロスパイダーを蹴り砕くと宙返りを撃って着地した。

吹っ飛んだ先で火柱を上げて爆散するソロスパイダー。

その残骸を咥えたドラグレッダーは元来た方に飛び去って行った。

 

「おうおう。やるじゃないか」

 

「龍騎、か。早めに潰しておくか」

 

それを待って二人のライダーを龍騎の方に近寄って来た。

仮面の下のその目には好戦的な炎が宿っている。

 

「はぁ!」

 

龍騎はそんなナイトにためらいなく斬りかかった。

分かっていたナイトもウイングランサーで受け止める。

 

「なんのつもりだ?」

 

白々しく言って見せるナイト。

龍騎は内心ポーズだけでもそういうナイトに苦笑する。

 

「降りかかる火の粉を払うだけだが?」

 

「違いないな!八ッ!」

 

そんな2人に銃撃を放つゾルダ。

事前に察知した二人はそれそれ反対方向に飛びのく。

丁度3人が三角形になるように均等に距離を取って対峙する形だ。

 

「満坂、よくも騙してくれたな?」

 

「騙されるお前が悪い!が、割り切ったのは意外だな」

 

「そーゆうもんだろ?ライダーバトルって」

 

それ以上言葉は無かった。

剣が、槍が、銃が火花を散らし、怒声と破壊音がこだまする。

その音は冷徹なまでに現実に響かなかった。




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