やはり俺が仮面ライダー龍騎なのはまちがっている。 作:伊勢村誠三
僕が生まれた年のライダーだし、そりゃそうか。
これだけ長い間愛されてる作品ってだけで、
とても素敵なことですよね。
1
「起立!気を付け!礼!」
号令が終わるや否や、八幡は一回だけ伸びをしてすぐにカバンを手に取った。
面倒ごとに関わりたくないし、極力自分の部屋の中で過ごしたい彼は、後出しの用事とか申しつけられないうちにさっさと退散する事にしている。
「よ!比企谷君!この後暇?
だったらちょっと遊びいかない?」
だが、自分より出口側に居る栄喜を避けることはかなわなかった。
勘弁してほしい。誰かに誘われるなんて記憶してる限り、
初めてのそれに八幡はうまく対応できない。
まあ、そもそも誰かと話すこと自体まれだが。
「い…いや、俺にはこの後ジオン軍として戦う使命が…」
「ジオン?…あー、ガンダムのアーケード?
だったら対戦しようよ。
こう見えて一年のころは留年ギリギリのサボりストだったんだぜ?
ゲーセンも良く行ったもんさ。」
断れなさそうだな、と八幡は思った。
というか、栄喜も栄喜で問題児だったのが意外だった。
まあ、奉仕部なんぞに連れてこられてる時点で、
何かはあるだろうと思っていたが、想像していたベクトルとはだいぶ違った。
「ねー結衣。この後アイス屋寄ってかない?
あーし今日チョコとショコラのダブルの気分なんよ。」
「あの……あたし、今日ちょっと行くところあるから……」
(あっちも大変だな…)
ここ数日観察していてわかったが、
由比ヶ浜は所謂キョロ充である。
リア充の中でも太鼓持ちと言うか、風見鶏的な性質が強いタイプ。
腰巾着、とまでは言わんが、押しに弱く、
防御力が低く(当然八幡よりはあるが)はっきりものを言えないポジションだ。
「あんさー 結衣のために言うけどさ。
そういうはっきりしない態度、結構イラっとくるんだよね。」
ごめん…と力なく謝る結衣。
追及するギャル、クラスの女子カーストトップの
「こないだもそんなこと言って昼休みバックレなかった?
ちょっと最近付き合い悪くない?」
優美子の気迫に押される結衣はちらちらと廊下の方を見始めた。
それがますます彼女の機嫌を損ねる。
「ありゃ、コウモリは大変だね。」
「それどっちかって言うと…」
「おい由比ヶ浜!誘ってきたのはお前だろ?
いつまで待たせる?」
扉を開けて真澄は顔を出した。
こっちもこっちで待たされたせいか不機嫌そうだ。
「あいつだろ。」
「いや、彼女はコウモリはコウモリでも血を吸うタイプでしょ?」
「あ?何アンタ。」
彼女から見れば突然の闖入者の真澄を睨む優美子。
だが似たタイプ、いや、容赦なさの一点で言えば、数段上の真澄は一切臆さず
「何ってそこの茶髪ピンクに散々待たされてただけの者だが?」
「ちゃ、茶髪ピンク!?」
「いいから行くぞ。これ以上待たせるな。」
真澄は結衣のカバンを取って彼女に投げ渡すと、
教室を出ようとドアの方に歩き出す。
「ちょ、ちょっと! あーしらまだ話終わってないんだけどっ!」
「うるさい金ドリル。その似合ってねえ上に肌にも合ってねえ見栄だけの高いファンデーション落してから出直してこい。」
「な!?」
その瞬間、それほど人数も残っていなかったが、それでもわかりやすく無音になる程教室が静まり返った。
当然だろう。クラスカーストトップの三浦優美子に、
全く臆さないどころか、逆に挑発とも取れる言動をして見せた真澄を、全員が見てる。
「それともなんだ?お前のも選んでやろうか?」
「え、選ぶ?」
「あ、うん!ますみんお化粧とかすっごく詳しくて選んでもらうかなーって。」
「……」
「行くぞ。」
真澄は今度こそ教室を後にする。
結衣は優美子に振り向きざまに、そうゆう訳でまた今度!
と、言って真澄についていった。
それと同時に鳴る耳鳴りのような音が響く。
八幡と栄喜はすぐに教室を出ると、
廊下の真ん中で止まっていた結衣たちに、
デッキを見せながら通り過ぎた。
「俺らが。」
「まかせた。」
2人は男子トイレに入ると、
人の出入りを確認してデッキを構えてポーズを取る。
「「変身!」」
仮面ライダーに変身、ミラーワールドに突入していった。
2
出た先はコンテナ街だった。
反転したロゴを刻印されたコンテナの細い道を、
二人は警戒しながら進んでいく。
「なーんか、こんな感じの場所に出るのが多い気がするのは気のせいかね?」
「ミラーモンスターの習性なんじゃないか?しらんけど。」
なんて話していると、前方からモンスターの猛るような鳴き声がする、
猪型のモンスター、ワイルドボーダーだった。
そのパワフルな突進をライダー2人は、左右に飛んで避ける。
「ちっ!やってくれたな!」
ゾルダはバイザーを先に開き、デッキからカードを引き抜くが、
ワイルドボーダーの胸部に着いた砲に、手首を撃たれ落してしまった。
「しまった!龍騎!拾ってくれ!」
それを聞いた龍騎はバイザーの蓋を開けると、砲撃の合間に飛び出して行って、
カードを拾い、自分のバイザーに装填する。
『GUARD VENT』
そのまま右手を突き出し、盾で防がれてるうちにゾルダに援護を任せようとしたのだが…
「いてぇ!」
ギガシールドはゾルダの手元に現れ、
龍騎は攻撃をもろに受けてしまった。
「ッ!…なんで?どこ行った?」
「悪いこっちだ。お前のやり方がまずかったんじゃないか?」
「そ、そうなのぉ……?」
ゾルダはそのままギガシールドを構え、マグナバイザーをフルオートで連射。
数発貰ってワイルドボーダーは、銃撃ではゾルダに分があると悟ったのか、最初に見せた突進攻撃に切り替えた。
「!!!!!!!」
「おおおおおお!!!!」
ゾルダとワイルドボーダーが激突する。
両者、互いの衝撃を受けきれずに後ろによろける。
が、ライダーは二人いるのだ。
よろけたゾルダを踏み台に飛んだ龍騎は、
背後を取ると、素早く今度はちゃんと自分のカードをベントイン。
『STRIKE VENT』
「はぁああい!」
背中にゼロ距離火炎弾を放った。
意図を察したゾルダは、ワイルドボーダーの逃げ場を奪うべく、盾をしっかり構えて、その場に踏ん張る。
「ー----っ!」
火柱が立ち上がり、衝撃波は駆け抜けた。
煙が晴れると、そこに飛来したドラグレッダーが倒した敵の上半分を、マグナギガが下半分を持って行った。
「あー、疲れた。」
「お疲れさん。ゲーセンどうする?」
「そんな気分じゃねえ。それより腹減った。
サイゼでも行こうぜ。」
「だな。…ッ!」
そのあと軽口でも叩こうとしたゾルダだったが、気配を感じて銃口を向けた。
その先のコンテナの角からライアが現れる。
「マゼンタのヒラメ野郎…あいつがライアか。」
ゾルダに続いてファイティングスタイルを取る龍騎。
それを見てライアは慌てて両手を前に出しながら出てきた。
「待ってくれ!戦うつもりはないんだ!」
「じゃあなんでこっちをこそこそ覗き見てやがった?」
「俺は、俺はライダーの戦いを止めたい!
そのために戦ってるんだ!」
3
「……。」
「……。」
それじゃあ同じクラスだけど一応。
俺は
意外にも世間と言うのは狭いらしい。
この葉山と言う男、何を隠そう総武高校2年F組の生徒なのだ。
見ての通りの眉目秀麗。定期考査ではどの科目も必ず5本指にはいっており、サッカー部の主将も務めるなど文武両道。その上父は弁護士で、母は医者と、血筋も申し分ない絵に描いたような人物で、クラスカーストのトップに君臨する王子様だ。
「……。」
一言で言えば、八幡の嫌いなキラキライケメンリア充野郎である。
あまねく滅びろ。ミラーモンスターに食い散らかされて死ね。
嫉妬と、醜いマウント取りにも似た感情と、
ここ数日観察して分かったある部分の事もあって、八幡はこいつと一緒にいるこの時間が苦痛だった。
「…俺はゾルダの満坂栄喜。こっちが龍騎の比企谷君。
それで?なんでお前はそんな酔狂な真似してるんだ?」
ドリンクバーのコーラを飲みながら栄喜が切り出した。
見ると、彼も葉山を見る目は冷めている。
「酔狂かな?俺は人として当たり前のことをしてるつもりだけど…」
「ライダーってのは所詮ミラーワールドの住人だ。
蹴落とし、足掻き、そして自分の願いの為にまい進する。
違うか?」
「その理屈だと全人類仮面ライダーじゃねえか。」
「なんだって?」
「…だってそうだろ?てか、
クラスカーストのトップにいるお前が何意外そうな顔してんだよ?」
「…俺は、別にそんなつもりはない。
ただみんなが仲良くできるような環境を作りたいとは思ってる。」
ここが八幡が最も嫌悪する部分だった。
強引にマジョリティーに組み込まれたマイノリティーが、
本来どれだけマジョリティーより優れていようと、
そこでマイノリティーがどれだけみじめになるか分かっていないんだろうか?
「だったら悪い事は言わない。デッキを寄越せ。
お前のモンスターは俺と比企谷できっちり始末してやる。
そんないつものクラスのノリでライダーバトルを引っ掻き回してくれるな。
ちゃちい例えだが、内輪ネタを大人数の場でやるようなもんだ。」
「! そうだ!そうすればいいんだ!
全員が全員のミラーモンスターを倒せばいいんだ!
そうすれば誰も死ぬ必要なんて…」
「お前…」
(話して無駄ってやつがこんなに厄介とは…)
片頭痛置おぼえた様に顔をしかめる栄喜の代わりに、本当は会話するのも嫌だが、八幡は言ってやることにした。
「おい葉山、お前さっき戦い止めるのが人として当たり前とかぬかしてくれやがったよな?」
「…何が言いたい?」
急に攻撃的な口調になった八幡に驚いた様子の葉山だったが、
直ぐにいつもの爽やかイケメンフェイスをかぶり直す。
「お前それ故障が原因で飛べなくなったフィギュアスケーターのライダーとか、娘がレイプされた過去を無かった事にしたい父親ライダーとかにも同じこと言えんのか?」
「!」
「そんな奴らにもお前はあきらめろっていうのか?
自分の半分以上を構成してた壊れ物を、
直せるかもしれない希望の芽を、正しいからって摘み取るのか?」
「それは…」
言葉に詰まる隼人の返事を待たず、八幡はカバンをもって席を立った。
栄喜も千円札をテーブルに置くと八幡の後を追う。
「やるじゃん。あのクラスの王子様を言い負かすなんて。」
「目には目、歯には歯。正しさには正しさだ。
ああゆう分かりやすい正義をかざす強い連中には、
弱い正義ってのは案外効く。
それが強い悪なら勇者も気取れるだろうが、
かわいそうな被害者は同情以外しようがないからな。」
「あの様子だと自分の正義を信じ切ってるって程でもないようだけどね。」
「そうだったら俺らのデッキ強引に奪い取ってただろ。お前も。」
「……。」
そう言われて栄喜は意味ありげに、
不敵な笑みを浮かべるだけだった。
八幡は構わず問いかける。
「俺はドラグレッダーに食われたくないからライダーやってる。
お前はなんでなんだ?
仲田は…本当に手の内見ておきたいのと、
学校での生活があるからだろうけど、お前はF組だ。
それに主武装は銃火器。
事を起こす場合、間違いなくナイトは噛んでこない。
暗殺決めようと思えば、どんだけでも方法あると思うんだが?」
「はぁ…ふつうそれ思っててもそんなペラペラ言う?
もしかして比企谷君、会話らしい会話一日一回もしない日とかあるんじゃない?」
「にゃ、にゃんの話でしょう…」
図星を付かれた八幡は、さっきの葉山への態度なんて嘘の様に、
動揺と変なテンションを露呈した。
「噛むな気持ち悪りい。はぁー!ま、そうだな。
自分で言うのもなんだけど、誰からも同情されるような可哀そうな境遇とだけ言っとくかな。
あ、ちなみに俺は仮面の男から直接デッキを受け取ってる。
お前みたいに何の説明もなくなったのとは違うからな?」
「そうかい…。」
「ゲーセンはまた今度ってことで。」
そう言って八幡の肩を叩くと栄喜は帰路に就く。
八幡も自転車に乗り込み反対方向に走った。
久しぶりの小説編、いかがだったでしょうか?
内面描写とかはやっぱり地の文ある方が断然やりやすいですね。