やはり俺が仮面ライダー龍騎なのはまちがっている。 作:伊勢村誠三
バイトに即日採用ってあるんですね。
面接官さんと楽しく話せるのって、合格のサインと考えていいんでしょうか?
1
総武高校からそれほど遠くもない一般道。
その路肩に駐車された車の窓がまるで水面のようにゆらぎ、
一瞬の白い光と共に栄喜と結衣。
そして仮面ライダーガイの正体、川崎大志が現実に帰還した。
「……」
「……」
しばらく栄喜を睨んでいた大志だったが、
やがて視線を逸らすと踵を返して去って行こうとする。
「ちょ!ちょっと待って!」
慌てて止めようとした結衣だったが、
大志は腕を大降りに振って
「うるさい!アンタには関係ないだろ……」
「そんなこと言ったって……」
「死にたいんなら邪魔しない!
けど戦いの邪魔しないでください……。
アンタみたいなのが居るとしらけるんすよ」
そう言うと大志は今度こそ振り返らず走り去って行ってしまった。
「あ……」
栄喜「……由比ヶ浜さん、アンタがいい人なのは分かった。
けど死にたくないならさっきみたいなのもうやめてくれよ?
流石に関係ない奴に死なれんのは気分悪い」
そう言われた結衣はうつむいて黙りこんでしまった。
観なくともその表情は曇り切っているんだろうと分かる。
(ま、それ以上に、あの声や、あのライダーの事も有るし)
間違いなく、煙の向こうに居た光る赤眼のライダー(?)を思い出す。
なぜ奴が結衣を守ったのかは不明だが、
『次はない』
とのことだ。遠距離武器主体の栄喜としては、
引き金を引いてしまっていたらもうリカバーが効かないので、
これ以上心臓に悪いのは御免被る。
「あ、居た!」
なんて思っていると、栄喜たちがミラーワールドに入った地点の方から川崎沙希が息を切らしながら走って来た。
「はぁー、はぁー、大志は、弟は?」
「もう行ったよ。帰ったんじゃない?」
栄喜がそう言うと、沙希は『……そう』と返してから、
「ねえアンタ。アンタがあの緑の奴なんでしょ?」
と、問うてきた。
「……まあね。それで?」
「頼む!大志を、弟を止めて!
大志にこれ以上罪を重ねさせないで!」
随分と久しぶりに女子の土下座を見ることになった栄喜だった。
「I don`t know his Idea」
2
その夜 栄喜の私室にて。
彼は椅子に腰かけ、目を閉じ天井を向いていた。
が、考え事をしていただけで、
寝ていたわけではなかったらしい。
机に置いたストレートタイプの携帯電話を取り、
電話をかけ始めた。
『はい。仲田です』
「満坂だ。今ちょっといいか?」
余所行きのいつもよりちょっと高く感じる声をレアだな、
なんて思っていると
『五分くらいなら……』
警戒心満載のいつもの低い声が返って来る。
お互いの為にさっさと本題に入る事にした。
「仮面ライダーガイの正体が分かった」
「! どこのどいつだ?」
「そっちの依頼の川崎ってやつの弟。名前は大志」
「それで?」
「少々トリッキーなカード持ってて厄介なんだ。
お前の手を借りたい」
「比企谷はどうする?」
一応三人で共闘を守れとは言われている。
けど一人をハブってはいけないなどと言われた覚えは一度もない。
結衣の口に戸は立てられないだろうが、
この計画に関しては真澄が黙っていれば済む話である。
「言わなくていいだろ。
邪魔してくるなら仲田さんが抑えてくれればいい」
「いいだろう。こっちの依頼の件ともダブルから、
情報収集の機会はどんだけでもある」
じゃ、そういうことで。と、栄喜は電話を切って机を向いた。
「さぁ、お前が二人目だぜ。角頭君」
手にしたゾルダのデッキに向けて、栄喜は獰猛にほほ笑んだ。
3
翌日、総武高校奉仕部部室にて。
放課後になった一同は、
一度は集まったがまたすぐそれぞれの依頼解決の為に分かれることになる。
「由比ヶ浜さん、満坂君。
戸塚君のところに行く前にちょっといいかしら」
「サキサキの弟君の事?」
「その件なら昨日電話で仲田さんに伝えてありますけど……」
流石に真澄も依頼にダイレクトにかかわりそうなことは黙っていなかったようだ。
まあ、暗殺計画さえバレなければ栄喜としては構わない。
「ええ。それは聞いてる。私が知りたいのは、
あなた達から見て、川崎大志がどんな人間だったかという事」
「驚いた。部長殿にも人間の心があったんですね」
「満坂君いいすぎだし。ゆきのん人と話すの苦手なだけだし」
「あなた達が私をどう思ってるかは聞いてないわ。
それでどうなの?」
冷えた猫目を細めて睨む雪乃に一瞬背筋に嫌な汗が流れる二人だったが、
すぐに気を取り直し
「比企谷よりもライダーに向いてない感じっすかね。
態々先制攻撃ではたき落とした俺のデッキ返してくるぐらいですし」
「うん……きっと後戻りできなくなっちゃっただけだと思う!」
と、思ったままを伝えた。
「そう、ありがとう。なら交渉の余地ありと判断するわ」
「がんばってね!」
「一応競争相手なのだけど……」
ちょっと困ったように言いつつも、雪乃は少し嬉しそうだった。
そして二人が去ってからしばらくした後、
誰かが部室のドアをノックする。
「どうぞ」
「じゃまするぞ」
「うーす……」
「来たのね。仲田さんと…誰?」
「お前も飽きないな。雪ノ下。
仮面ライダー龍騎こと比企谷八幡君ですよ」
「ああ。いたわねそんな人も」
何か言いたそうな八幡だったが、真澄はそれを手で遮り、
「下らんことに時間使うな。ほら、さっさと始めるぞ」
と言ってさっさと席に着いた。
八幡もやや不満そうながらも従う。
雪乃はさっそく栄喜たちから得た情報を二人に説明した。
「そうか。なら私は川崎沙希を追おう。
今朝からダークウイングを尾けさせてるし、
お前らよりかは対人能力有るつもりだ」
「まあ、そうだな。それで俺は……」
「あなたも行くのよ。
妹さんに連絡すれば川崎大志君の学校ぐらいわかるでしょう?」
「別に俺じゃなくても……」
「ファイナルベントを相殺できるカードが二枚あるあなたが適任だからよ」
ガイのコンファインベントは凶悪だ。
普通のライダーなら、必殺技や使い慣れた武器や能力に頼ったところを、
無効化されれば窮地に陥るだろう。
だが武装も豊富でストライクベントの威力も必殺級の龍騎は適任だろう。
「じゃあお前はどうするんだ?」
「仲田さんと行くわ。もしこっちに川崎大志君が来た場合、
川崎沙希さんを捕まえておけないもの」
「決まりだな。しくじんなよ?」
「こっちの台詞だ」
三人はほとんど同時に立ち上がると、部室を後にした。
そして十数分後、学校の最寄り駅の改札口前にて。
目につく青いポニーテールが揺れてるのを見つけた真澄は、
早速後ろから声をかけた。
「川崎」
「……なに?」
ふり返った彼女に真澄は口笛を吹きながらデッキを見せる。
「!?」
即座に逃げようとする沙希だったが、
あらかじめ待機してくれていた雪乃が道を塞ぐ。
青ざめた顔で逃げ場を探しだした彼女に雪乃は、
極力穏やかな声でなだめた。
「落ち着いて川崎さん。
別に何かしようって訳じゃないわ。鏡の件とは別件よ。
まあ、関係がないとも言えないのかもしれないけれど」
「別件?」
「お前、最近生活態度酷いんだってな。
生活指導のヤニ女居るだろ?あいつに頼まれてな」
「……」
警戒は解かない。
が、デッキを見せたとよりかは、マシな顔色になる。
こちらの方が彼女の中では軽い問題らしい。
「ちょっと話そうぜ。いい店知ってるんだ」
4
(うーわぁ、視線が、視線が刺さる……。
そりゃそうか。
この目のせいで通報されたことも一度や二度じゃ……)
同じころ、小町から聞き出した川崎大志の通う中学校にて。
八幡は周囲からの視線に嫌悪感を感じながらも大志を探していた。
主に人の少ない方から探していると、
もうすっかり慣れた耳鳴りのような音が聞こえだす。
振り向くと、カーブミラーの奥に仮面ライダーガイが映っていた。
「……はぁ、仕方ない」
八幡は一度学校を出ると、
近くの公衆トイレに駆け込み、デッキを構えてポーズを取る。
「変身!」
龍騎に変身した八幡はミラーワールドに突入。
ガイと対峙する。
「アンタ、総武の制服だったな。ゾルダから聞いたのか?」
ガイは警戒心どころか敵対心を隠そうともせず、
仮面の奥から龍騎を睨みつける。
「まあ、そんなとこだよ。今日は話があって来た」
「そんなものいらない!」
『STRIKE VENT』
ガイはメタルホーンを装備し、龍騎に殴り掛かって行く。
大ぶりの打撃を避けながら龍騎はカードデッキからカードを引き抜く。
「……これ、自衛だからな!」
龍騎はバイザーを開き、カードをベントイン。
『SWORD VENT』
ドラグセイバーを装備し、メタルホーンの角と鎬を削る。
「おい川崎!大志でいいんだよな?
お前はなんで戦ってるんだ!」
「お前には関係ない!」
アーマーが、武器がオレンジ色の火花を散らし、
打撃と蹴りの応酬が続く。
「かもな。けど生憎仕事なんでな!」
接戦に焦れたのか、それともこれ以上龍騎と話したくなかったのか、
ガイは新たにカードをベントインする。
『ADVENT』
契約モンスターのメタルゲラスが出現。
龍騎に右側からタックルを仕掛けてきた。
強襲を避けた龍騎はガイにドラグセイバーを投げつけて怯ませると、
自分もカードを装填。
『GUARD VENT』
ドラグシールドを両肩に装備。
数で攻める敵に、防御力を挙げて対応する。
それを見たガイはまたカードを切った。
『CONFINE VENT』
(読んでたよ!)
ガイとメタルゲラスの挟撃を後ろに転がりながら避けると、
またカードをベントインする。
『STRIKE VENT』
ドラグクローが装備され、龍の口から火炎攻撃を放つ。
『CONFINE VENT』
しかしガイが新たに使ったカードの能力で、
その炎がかき消され、武器が砕けるように消えてしまった。
(二枚あったのかよ!)
「はぁああああ!」
一瞬固まってしまった龍騎に、ガイは渾身のタックルをしかけ吹き飛ばされる。
そしてすかさずファイナルベントのカードを取り出すガイ。
「……くっ!うぅ!」
「?」
しかしガイはカードをセットしたにもかかわらず、
中々バイザーの蓋を閉じようとしない。
「うわぁああああああ!」
「「!?」」
そうこうしている間に、
左の方から黄緑色の仮面ライダーが吹っ飛ばされてきた。
「ああ?なんだぁ?
他にも遊んでる奴らがいやがったか……」
ゆらり、と黄緑色のライダーが来た方からもう一人、
紫色の毒蛇をもした鎧のライダーが現れた。
「ッ!王蛇!」
王蛇と呼ばれた紫色のライダーはゴキゴキと音を立てて首を回すと、
「俺とも、遊んでくれよぉおお!」
と、叫びながら手にした突撃剣型の武器、
ベノサーベルを振り回しながら突っ込んでくる。
戦いは混迷を極めていった。
いかがだったでしょうか?
追いつくまであと二話。完全新規のエピソードもぼちぼち進めているので、ぜひこのままお付き合いください。
それでは、また。