己の個性、【直死】の応用力の無さに戦慄しても何も変わらない。担任の相澤はそのようなことを考慮するような人物ではないだろう。
考えろ! 他は個性を使って記録を伸ばしてくるはず。それに身体能力だけで勝てるはずがない。何を殺す。何を無力化する!?
「それじゃあ1つ目は50m走だ。青山から出席番号順に並べ」
一挙一動に自信が張り付いた男子━━青山はビームを活用して記録を伸ばした。
見るからに委員長気質の男子━━飯田もまた足のエンジンで驚異的な記録を叩き出した。
「次、爆豪と緑谷。位置について。用意……」
ビィイ! という電子音で2人は走り出した。
……そうか! イズクは無個性だから俺と同じ条件だ。
そう考えて直ぐに、俺は自己嫌悪に苛まれた。
(今、安心したのか? イズクの身体能力は俺よりも下だから、俺は除籍にならないと? 無個性で入試に受かったんだ。か弱いままな訳がないだろう。それとも、個性が役に立たなくても、無個性には負けないとでも思ってるのか? ……ふざけるな俺。そんなの、イズクを侮辱してる)
気持ちが沈んだまま、俺はラインについた。
「位置について。用意……」
暗い気持ちは体にも影響するものだ。音には遅れ、全力で走り抜けることなんて出来なかった。
背を丸くして集団に戻ろうとする俺に、相澤先生が声を掛けた。
「源。やる気無いんなら最下位じゃ無くても除籍にするぞ?」
「……っ! すいません」
気持ちを切り替えよう。イズクを気にする程余裕なんて無いんだと。顔を叩いて、その痛みで以て暗い気持ちに対抗する。
「よし。……次は握力だな」
握力計が複数置かれ、順に計っていく。
障子という男子がその複腕の力を使って540kgwという記録を出して騒がれているが気にしない。
そうだ。握力計を殺せば記録は測定不能ではないだろうか。
メガネを外し、線を捉える。線をなぞり断てば……抗うことなど出来はしない
「先生。握力計壊れました」
「……なるほど」
そうして見せられた結果は「測定不能」。
達成感に満たされた。これで最下位はない。
けれど、イズクは?
「気にするな。心配して何になる」
それにイズクは、あの入試を個性無しで潜り抜けたんだ。相当鍛えたに違いない。実際筋肉はかなりついている。むしろ足元を掬われると思う位でちょうど良い。
第3種目の立ち幅跳び、第4種目の反復横跳びを経て、かっちゃんが例として見せたソフトボール投げに至る。
握力以降、大記録は1つとして出せていない。握力の様に計測器に触れる種目でなければ、あの技は使えないのだ。
「緑谷君はこのままでは不味いぞ」
「たりめーだろ! 無個性の雑魚だぞ!」
「無個性!? 彼が入試で何を為したか知らないのか?」
飯田とかっちゃんが話している。その中で、飯田の言葉が耳に留まった。
イズクが何かを成し遂げたらしい。俺にはあの試験でイズクがそのような派手なことをするイメージが沸かなかった。かっちゃんも同様だろう。あり得るはずがないと聞く耳を持っていない。
「な……今確かに使おうって」
イズクが投げたボールは放物線を描き、着地した。先生から告げられた記録は、46m。
しかし、使おうだって? それはまるで、個性が目覚めた様な言い方じゃないか。
俺は疑問に支配される。相澤先生が何かをイズクに伝えているようだが、遠くて声も張っていないのでよく聞こえない。
「飯田、イズクが入試で何かを成し遂げたって……何やったんだ?」
「君は確か……」
「源施希だよ。イズクとこの
「そうか! 緑谷君は、なんと……」
続きはイズクの掛け声に掻き消され聞こえなかった。しかし、俺が再度聞くことはなかった。
風圧が生まれるほどの力でボールは放たれ、1投目の何倍も遠くに落ちた光景は、俺の思考を驚愕のみで染め上げた。
「705.3m!? かっちゃん、これって!?」
「俺が知るかクソメガネ! ……どういうことだよ。無個性じゃなかったのか?」
「彼は、入試でもあの超パワーで0ポイントを行動不能にしたんだ。同じ中学校の君達がどうして彼の個性を知らないんだ?」
飯田の問いには、俺もかっちゃんも答えることが叶わない。かっちゃんは驚きが収まれば、嘘を吐いていたのかと怒りに顔を染めて駆け出した。
「どーいうことだこら訳を言えデクテメェ!! ━━ングェ!?」
しかしその歩みは相澤先生の捕縛布によって阻まれた。怒りを如実に示していた両手の爆発も収まっている。
「何度も個性消させんなよ。俺はドライアイなんだ」
個性を消すという先生の個性に驚きはしたが、俺はかっちゃんに続くかの様に走り出していた。
「なっ!? 源お前もか!?」
相澤先生は俺が第2のかっちゃんになるのかと驚いていたが違う。
「イズクっ!」
「えっ、ちょゴフッ」
驚いた顔のイズクに、飛び付いた。
「よかったっ……!個性、目覚めたんだな。よかった。……本当によかったっ!」
俺は知っている。誰よりもヒーローに憧れ、個性を待ち望み……絶望したイズクを。無理だと分かっていても諦められずに、ヒーローノートなんて物を書いていたイズクを。
イズクの両親と全然違う個性ということはどうでも良い。突然変異だろうがなんだろうが、目覚めたことを祝福したい。
「━━おめでとう。これでヒーロー、目指せるねっ……!」
「シキ……。ありがとう」
「そういうのは後でたっぷりやってやれ。まだ3種目あるんだぞ」
「……はい。すみません」
俺はイズクと一緒に集団に戻った。
正直まだ足りないけれど、仕方がない。今度イズクよ両親も混ぜてパーティーをしよう。なんなら雄英のクラスメート達も事情を話せば参加してくれる人も多いだろう。
あぁ……本当におめでとう。イズク。
それから3つの種目を終え、遂に成績発表の時が来た。イズクはあのボール投げ以外パッとしないけれど、俺だって握力計壊したこと以外普通の結果だった。
「それじゃあ、結果を発表する」
空中にランキングの形式で投影された結果を見る。
俺は、20位。下から2つ目だった。イズクが、最下位だ。
「ちなみに除籍ってのは嘘な。君らの最大限を引き出す合理的虚偽」
「は?」
良い顔で告げる相澤先生に、皆は驚くことしか出来ていなかった。当然俺もそうだった。
「あんなの嘘に決まっていますわ。少し考えればわかりますわ」
違った。1人驚いてない人いた。八百万とかいったっけ。
まあ、誰も除籍にならないんならよかった。
ボール投げ
初日終了。下校時刻━━……
「緑谷君! 源君!」
「わっ! 飯田君か」
「お疲れ」
校門前でイズクと話していた。かなり遅くに個性が目覚めることはあるのか、体にもよくないことがあったりしないのかと質問攻めにしてしまっていた所に、飯田が話しかけてきた。
「緑谷君、指はもう大丈夫なのか?」
「うん。リカバリーガールのお陰で」
「そうか。しかし相澤先生にはやられたよ。俺は「これが最高峰か!」と思ってしまった」
「本当だよ。個性が合わないことだってあるのに、理不尽過ぎると思った」
「源君は握力計を壊していたが、どんな個性なんだ?」
お互いに今日の感想や個性の説明をし合っていると、更に1人、輪に入って来た。麗日という女子なのだが、イズクの反応が妙だ。
これは、惚れたな?
どうして今日はこんなに喜ばしいことが多いんだか! これはイズクを弄らないと気が済まないな!
幼馴染みを弄り、面白い程に真っ赤になる光景を想像すると晴れやかな気分になった。青春らしくて良いじゃん。
アルクェイドとの過去編、書いた方がいいですか?
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今すぐ書け
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本編一段落してからでOK
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ちくわ大明神
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いらない
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好きにすれば?
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誰だ今の