至高の御方々が一人、"大喰らい"たるあのお方の単身転移です。

…が、情報が無さすぎて名前だけ借りたオリキャラみたいになっています。

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 第一話にして最終話シリーズ、今回は至高の41人から大食らいことベルリバー様です。
 口調など適当なのでご容赦ください。あと、かなり独自解釈を含み、ほぼ原作キャラの皮を被ったオリキャラみたいになってますので、予めご了承ください。


第一話にして最終話 オーバーイート

 現実世界であの巨大複業企業の不正記録情報をなんとか入手できた時は堪らない達成感を得たものだった。これに似た達成感を他に得た機会というのがゲームの世界でギルメン達と共に、後にギルド拠点「ナザリック地下大墳墓」となる「ナザリック地下墳墓」の初見攻略を果たした時くらいというのだから、いかに現実がクソなのかが窺い知れる。

 その情報を入手し、仲間に渡すことが今回の俺の役目であり、その大役を見事達成したのだ。あとは実行役の彼らに任せておけば歴史の変わり目を見ることができるだろう。心地良い達成感と開放感から部屋のベットに横になると、ふとカレンダーが目に入る。

「そういや今日だったか。ユグドラシルのサービス最終日は。」

 忙殺を言い訳に引退したゲームのことを思い出す。仲の良かったフレンド…と言うか、ギルマスから最終日にもう一度会いたいという旨のメールが来ていたと実行犯の一人である彼からも聞いていた。今更どんな顔をして会えば良いのか分からなかったが、ゲーム以外で繋がりのない彼にゲーム以外で会う方法もない。優しい彼のことなら謝れば許してくれるだろうし、快く迎へ入れてくれるはずだ。引退して暫く経つが、体は覚えているらしく、流れるような手つきでログインまでの手順を踏む。

 

 そしてログインと同時に発砲音が聞こえたような気がしたし、感じたのは口の中いっぱいに広がる鉄の味だった。

 

 

 目を覚ますと目の前に広がるのは青々と生い茂る木々と温かな木漏れ日、聞こえてくるのは鳥達の鳴き声と大変和やかな物であった。が、不思議とそれら全てに不快感を感じる。かつて…どこでみてそう思ったかは思い出せないものの、あんなに憧れていた眩い太陽はその眩しさのせいなのか、それとも他の理由からか、実に忌々しく感じてしまう。青々と生い茂る木々だって同じことだ。いつそう思ったのかは定かではないが、今まさに目の前に溢れる豊かな自然という物に、澄んだ空気に、温かな光に、いずれ確かに憧れを抱いていたはずなのに、今は全てが醜く見えてしまう。小鳥の囀りすらも耳障りだった。

「五月蝿イ!」

 慣れた手つきで腰の剣を抜き、出鱈目に周りの木々を切り倒す。鳥はこの場を危険と感じたのか、飛び立っていくが、不思議とその姿を見ると届くはずもないのに手を伸ばしてしまう。するとその伸ばした腕の無数の口から長い舌が触手のように伸び、鳥達を絡め取る。そのままそれを口に含み、ゆっくりと咀嚼する。溢れる新鮮な血肉と臓物は実に心地良く、美味いと感じる。少々羽毛が邪魔だが、弱酸の唾液で溶かせると思い出し羽毛を処理してからは更に美味く感じた。不思議な事に腹と言うのは一旦極限まで空くと気にならなくなる物だが、一度何かを口にすると猛烈に腹が空腹感を感じるものだ。軽く鳥を数羽つまんだところでこの腹は満たされない。相変わらず鬱陶しい木々を薙ぎ倒しながら進むと、甲冑を着た人間と、それに襲われる人間の子供達と出くわす。既に背中を切られた後だろうか、服は切り裂かれ血が滴っている。それを見ていると喉の渇きを感じる。不思議な感覚だった、何故だろうか、人間は不思議と特別な生き物だと感じてしまうのだ。理由まではわからないが、何となく子供達の方を、この鎧を着た人間から奪わねばならないと感じさせられる。

「な、何だこの化け物は!?」

「鎧を着た…口だらけの化け物!?こんな化け物見たことも聞いたこともないぞ!」

 何やら鎧の男達が騒がしく、それが実に耳障りだった。五月蝿いのだ。見れば剣を構えて此方に近づいて来る。鎧の奏でる金属音すら不愉快だった。

「黙レ人間。」

 無意識に身体にある無数の口から唾を飛ばす。勿論ただの唾ではない、ただの唾液が弱酸なのだから唾も同様に決まっている。そして今回はその唾液に胃酸を混ぜ合わせた物だ。鎧程度なら貫通する程の強酸を唾として飛ばしたのだ。動かず黙る人間達に満足する。そういえば腹も空いているのだ、丁度いい。

「頂キまス。」

 大きく口を開け、やけに柔らかい鎧ごと噛み千切る。何の金属かは知らないが、鉄分くらい入って居るだろう。昔、友人の半魔人が「ボク最近貧血気味でさ…意識して鉄分取るようにしてるんだ。」と言っていたことを思い出す。そうだそうだ、鉄分は大事な栄養素だ。食べなければもったいない。鎧の人間はその引き締まった筋肉が実に噛み応えが良く、柔らかい内臓と相まって食感のバリエーションに富みとても味わい深い。ガリボリと小気味良い音を奏でる骨も、そこから滲み出る髄液も大変美味である。しかしながら、まだまだ足りない。ふと、近くにまだ人間がいた事を思い出す。大きい方が小さい方を強く抱きしめ、大きい方はその大きく見開いた目からいくつも涙を流して居る。

「お願い…許して、ネムだけは、ネムだけは見逃して…」

 そんな姿を眺めるのは非常に心地が良い。人間の奏でる骨が砕ける音と同じくらい必死な命乞いの後は心地良いのだ。なるほど、さっき感じた人間の特別さとはこう言う事だろう。確かに鳥や獣が何を言ってもその言葉が理解出来ず、その気持ちは察する他ない、しかし人間は言葉を喋ってくれる。だが、ここで問題があるのだ。空腹具合からして、目の前の人間を食ったところで満たされないのは分かりきっている。この小さい方を踊り食いし、それを見て泣き叫ぶ大きい方の奏でる音というのも聞いてみたい気はするが、それではお腹は満たされまい。食ってみたところ、やはり人間の方が鳥よりも美味いのだから出来れば人間が良い、どこかに人間はいないだろうか。ニンゲンで腹を満たしたい。しかし、ニンゲンの事などわかるはずもないので、ニンゲンのことはニンゲンに聞くのが早いだろう。無闇に探し回り腹が余計減っては損だからだ。

「食イ物。」

「え…?」

「食イ物、欲しイ。」

 

 目の前の大きい方が言うには、近くに食い物が沢山ある村があるらしい。案内させると、大きい方の言っていた通り、そこにはさっき食べたご馳走が沢山並んでいた。一部鮮度が落ちていそうなものもあるが、色々と調理すれば美味しく食べられるかもしれない。新鮮な食材は新鮮な内に食さないければ味が落ちてしまうと言うものだ。

「嫌だぁ!死にたくない!」

 伸ばした舌で四肢を捕らえ、大きく開けた口で頭から丸呑みにする。腹の中にストンと落ちるボリュームは満腹感を感じさせてくれる。…が、それも一瞬のことでまた腹が減ってくる。

「ぎゃぁぁぁ!痛い!痛い!俺の、俺の手がぁぁ!!」

 次は身体の各部位を順番に楽しむ事にした。腕、脚、頭、胴体、不思議な事に左腕より右腕の方が引き締まっていて美味い。昔何かで見た蟹という生き物も種類によっては片方の鋏だけ大きかったりする、この食材もそういう種類なのだろうか。

「お金、お金あげますから!お金ぇ!」

 食ってばかりで喉が渇いた事を思い出す。近くにいた食材の頭と脚を鷲掴み、頭上に掲げ、血を絞り出す。溢れる血を大きく口を開け飲み干す。絞りカスは不味そうだったのでその辺に投げ捨てる。すると食材達はヒィヒィという鳴き声を上げるのだ。腹は空いたままだが、不思議と何かが満たされる心地だ。そういえば、昔行ったどこかで…誰か達とヤキトリなる物を食べた気がする。あの時の焼かれた何かの味は微妙で弾力も変だったが、焼くという調理方法に興味が湧いた。目の前の食材も焼いてみたらどうだろう。こういう時魔法が使えるのは便利だなと思い魔法を放つとあっという間に燃え尽きてしまう。強火にし過ぎたようだ。その後も色々と試し、漸く丁度いい焼き加減を覚える。肉の焼ける匂いが香ばしく漂い、食欲を唆る。またお腹が減ってしまったが、空腹は最大の調味料という言葉があるようにその丸焼きは非常に美味かっタ。

 その後も焼いてみたり、そのまま食べてみたりを繰り返していると、新鮮な食材は無くなってしまった。次に目をつけたのは鮮度が落ちている方。血が抜けたり鮮度が落ちているせいか、様々な調理方法を試してみてもどこか物足りない。

「お、お父さん…お母さん…いや、嫌だよ…」

「お姉ちゃん、怖いよ…」

 ふとそんな音が耳に入りそちらを振り向く。連れてきた大小が地べたにへたり込んでいた。すると不思議な事に食材の味が先程よりも良い事に気がつく。なるほど、鮮度が落ちているからというよりもこう言ったスパイスが欠けていたのだ。この大小を連れておけば多少鮮度が落ちた食材もうまく食べられると分かると、空腹に我慢し食べないでおいた自分を褒めたくなる。まだまだ腹は満たされないが、まだまだ食べられると考えれば嬉しい事だ。

 

 しばらくすると、嬉しいことが起こる。なんと、馬に乗せられた食材が沢山届いたのだ。探さなくても態々向こうから食べ物やって来たのだから運が良い。それに、1番前に置いてある食べ物は今まで食べた物や、他に置いてある食べ物と異なる肉質をしていた。あれは良い食材に違いない。ふと、昔、誰か達と好きな物を先に食べるか後に食べるかと言う話をした記憶が蘇る。自分は先に食べる派だったが、後に食べる派が言うには楽しみは最後まで取っておきたいとの事だった。偶には彼らの言に倣い、楽しみを最後まで取っておいてみようと思った。間違いなく一番美味い肉を想像しながら他の肉を味わうのは思っていた以上に多幸感を齎し、もっと食べたいと言う気持ちを加速させる。

 

…仮に、ベルリバーが先に良い食材、つまりはガゼフ・ストロノーフを殺していた場合、他の隊員は大小…要はエモット姉妹を救出しつつ散開して逃げようとし、食べるのに一苦労する事になっていたのだが、そうはならなかった。そしてそれが更なる不幸を生むのだが、最早誰にも彼を止めることは叶わなかった。

 

「後ハ、お前ダ…!」

 運良く手に入った食材を平らげ、まだまだ腹が満たされていない事を確認すると、楽しみに取っておいた最後の一つを食さんと食材を見やる。思わず涎が止まらないが、ここまでお預けしたのだからそろそろ良い頃合いだろう。ふと思い出し、舌で縛ってある調味料を見ると、まだ残っているようだ。舌で強く締め上げると飛び出るスパイスは非常に食材の味を引き立てるが、いかんせん強く締めすぎると壊れてしまうであろうことは火加減などから想像に容易い。しかしながら、最初の「助けて」というのは余り味に変化を齎さなかったが、不思議な事に食材の活きが良くなったところを見るに下拵えに似た何かなのだろう。便利な調味料を得られた事に満足すると、何故か食材が増えている事に気がつく。

「私はニグンと言う。ガゼフ・ストロノーフ…我々の素性は明かさないが緊急事態だ。何も事情を聞かず協力してほしい。」

「…良いだろう。ニグン殿、御助力感謝する。」

 何にせよ、おかわりが来たのだから嬉しくないはずがない。思わず笑みが溢れてしまう。

「人類の守り手として流石にこの化け物は見過ごせん…!各員油断せず天使と魔法による波状攻撃を開始せよ!」

「おい待て!人質がいるんだぞ!?」

 そう鳴いた後に魔法が飛んで来たが、規模からして当たっても何ともないだろう。しかしながら調味料の方は別だ。簡単に壊れてしまうし、こんなところで壊れても困る。仕方なく舌の量を増やし、舌で完全に包む。調味料の出が悪くなるが、壊れるよりはマシだろう。

「人質を守った!?」

「いや、もしやあれは人間を誘き出すための擬似餌なのでは!?」

 飛んでくる魔法に意を介さず、じっくりと距離を詰める。ふと飛んでくる魔法の中に雷の物を見つける。瞬間、調理方法に革命が起こる。腕の口の舌を伸ばし、手頃な食材を捕まえると極限まで威力を弱くした電撃を浴びせ、そのまま口の中に放り込む。雷のビリビリとした感覚が舌を刺激し、今までと異なる感覚が口の中に伝わる。

「帯電させた人間を食ってるだと…!?この化け物め…!人類への冒涜、最早許されん!最高位天使を召喚する!お前たち!時間を稼げ!」

 そんな鳴き声が聞こえる中、良い食材が剣を構え駆けて来る。

「武技!六光連斬!」

 実に活きが良いことが伝わる見事な動きだった。さぞかし歯応えのある肉をしているだろうと思いながら、放たれる斬撃を剣で払い除ける。

「馬鹿な!?」

 剣の柄で死なない程度に腹を突き、意識を刈り取る。暴れられて傷がつけばせっかくの肉の質が悪くなりかねないからだ。

「まだだ!全天使で攻撃せよ!」

 飛んでくる白い塊は食っても不味く、その見た目も非常に不愉快であるし、なによりも天使という響きが耳障りな物であった。胃酸入りの強酸唾でその身を溶かして対応する。あとは食材を順次捕まえてはその時の気分に合わせた調理を施し食すのだった。

 

「あり…得ない!あり得るか!?こんな!?こんなこと…ガッ!?や、やめろ…!身体が!身体がぁ!!」

 体の半分を脚から飲み込み、腹と背中に歯を立てる。徐々に噛む力を強めて行けばジワジワと血が滲み出て肉がプツプツと切れていく。何より発されるスパイスが味を引き立てるのだ。最高位天使なる塊を剣の一振りで屠った後はこのそこそこ良い食材を堪能しているところである。

「ニ…ニグン殿…!」

「う、うわぁぁ!嫌だぁぁ!!」

 ブチン!と噛み切り、溢れ出る血と溢れでる内臓を堪能しつつ、残りの部位も口に放り込み咀嚼する。友人に脳喰いがいたと思い出し、彼らは心底勿体無い種族だと思わざるを得なかった。彼らは脳しか食わないのだ、こんなに他にも美味い部位があるのに勿体ない。散々堪能し終えた後、メインディッシュに手を伸ばす。

これだけ良い食材なのだから、各部位を順番に楽しむと決めていた。溢れ出るスパイスと共に、食材を堪能し終える。

「嗚呼、美味カッタ…」

 ところでこの食材はどこから来たのか暫し考える。食べ物が勝手に運ばれるわけがない。どこかに送り主がいるはずなのだ。そして送り主のところに行けばもっと食材があるかもしれない。そのことを調味料に尋ねると、どうやらしばらく行ったところに街があるらしい。まだまだ腹には空きがある。街へ行き、食事をしなければならないだろう。

 そして度々運ばれる食材を平らげながら街とやらに進む。辿り着いたそこは食糧庫であった。沢山の食材がひしめいており、まるで食べ放題かのような感覚に陥る。半時ほど食べ歩くがまだマダ腹は満たさレず、更に半日ほど食べ歩くが、まダマダ腹ハ満たさレず、そして3日ほど食べ歩き、食糧庫にあった食材を食い尽くしてもまダマダハらは満たサレナイ。食糧庫に向かう際、途中から道を歩いていたことを思い出し、食糧庫から伸びる別の道を歩いていた。この先に別の食糧庫があるだろうと信じて。

 

…だがしかし、彼にとっても、人類にとっても不幸と言える事実がそこにはあった。彼は新たな食糧庫…つまりは王都に辿り着き、その食料を…要は人間を食い尽くしても、腹が満たされることはなかったのだ。

 

 あまりの空腹に耐えられず、あらゆる物を喰らい始めてからどれくらいの時が経ったのだろう。最早喰らう木々も草葉も無い不毛の大地の見た目は美しいが、食うものがないことを意味している。荒れ果てた大地と、薄汚れた空気は心地良く、薄汚れた空気によって忌々しい太陽もその輝きを鈍くしている。

 

あらゆる物を喰らい尽くしたが、

 

マダマダ腹ハ満タサレナイ。

 

 

-オーバーイート 完-

 




勿論続きません。続きませんとも。誰も得しないよ。

〜言い訳〜
ユグドラシルにログインした瞬間に殺害され、中の人が死んだ状態で大食らいの異業種ベルリバーのみが異世界に飛ばされたと言う状態。なので心の異業種化が急速に進み、凄まじい速度で完全な異業種となってしまいました。

エンリがあっさりと村や街を教えてしまったのは、村の時は食べ物がある場所というのをその言葉の意味で捉えてしまったからで、街については全てを諦めてしまったからです。自分と妹だけでも助かりたい精神ですね。

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