ボーダー唯一の男性オペレーターは今日も忙しい   作:マサフ

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本日2本目の投稿になります


昴と香取隊

B級ランク戦から数週間後、ランク戦のブースで昴は個人ランク戦の見学をしていた。もちろん勉強のためだ。ランク戦の見学をしていれば個々の隊員の戦い方もある程度わかる上、理解が深まるほど昴のサイドエフェクトは発動しやすくなるため、ボーダーで暇なときにランク戦を見学するのは昴の日課の一つであった。

 後強者同士の戦いはシンプルに見てて楽しい。

 

「お、やってるやってる。ってあれ犬飼か。相手は…若村?」

 

 モニターに映っていたのはチームメイトの犬飼だ。相手は香取隊の若村。どうやら10本勝負をやっているらしい

 

「にしてもボコボコだなぁ」

 

 今のところ9:0で犬飼が優勢だ。最後の10本目も犬飼が若村を追い詰めている

 

「あ、終わった」

 

 そして10本目も犬飼が勝利。10:0で犬飼の完全勝利となった

 試合を終えた犬飼がブースへと出てきた

 

「ようお疲れさん」

「あ、キリくんじゃんお疲れ。さっきの試合見てたの?」

「ああ、完勝だったね」

 

 そんな話をしてると先ほどまで試合をしていた若村もブースに戻ってくる

 

「お疲れ様です犬飼先輩」

「うんおつかれろっくん」

 

 犬飼があだ名呼びしてる。いつの間に仲良くなったんだろ

 昴は素直に尋ねた

 

「いつの間に仲良くなったんだ?」

「ああ、ろっくん俺の弟子になったんだ」

「弟子?」

 

 そうだよと犬飼が返す

 

「この前のB級ランク戦が終わったら俺にガンナーのことを教えてほしいって頼まれたからさ。面倒を見てるんだ」

「へえ弟子ね」

 

 まだそこまで時間は立ってないものの昴は東と月見に師事させてもらってた頃を思い出して懐かしくなっていた

 

「あの犬飼先輩この人は?」

「桐山昴くん。うちのチームのオペレーターだよ。ろっくんもボーダー唯一の男性オペレーターの話は聞いたことあるんじゃない?」

 

 男性オペレーター、話には聞いたことがある。女性ばかりのオペレーターの中で唯一の男性オペレーターだったか

 

(この人がそうなのか…)

 

 オペレーターのことをあまりよく知らない若村は少し驚く

 

「一応初めましてかな。よろしく」

「…!ああはい、こちらこそよろしくお願いします」

 

 昴の挨拶に考え事をしていた若村は慌てて返した

 

「ねえキリくん。さっきの試合見てどう思った?」

「どう思ったって何が?」

「普通に感想だよ。何か感じたことはあるかなとかさ」

 

 う~んそうだな

 

「まあ単純に実力差が出たんじゃないか?練度が違うのはみててわかるし」

「…っ!」

 

 昴の言葉に若村は何も言えなくなってしまう。

 そんなことは自分でもわかってる。犬飼先輩の弟子になってから何度か試合はしてるが戦うたびに自分との実力差を思い知らされるだけだ。入隊時期はそこまで変わらないのにどうしてこんなに…

若村は自己嫌悪に陥ってしまう

 

「ただ何もできないままやられるほどの実力差でもないし策を練ればある程度は勝てると思うけどな」

「…え?」

 

 若村は思わず呆けてしまった

 

「まあそこは犬飼の動かし方がうまいよな。前半は堅実に勝利して後半は熱くなってきた若村の隙をついて終わり。10本もすれば後半になると大体相手の動きもつかめるのに焦って思考放棄してただがむしゃらにやるだけじゃそりゃ勝てないわな」

「厳しく言うねえ」

 

 犬飼は軽く流したものの若村にとっては驚きであった

 

「あの桐山先輩、それホントですか?」

「うん。パッと見だけど若村は熱くなりやすいんだと思うよ。別にそれは悪いことじゃないけど若村の場合熱くなると途端に焦った行動が多いからとりあえず頭を冷やして相手の動きを見ること覚えたほうがいいと思う。ただでさえ犬飼の戦い方って相手の嫌がることをやって戦いの場をコントロールするもんなんだから焦ったらこいつの思うつぼだ」

「キリくん俺の戦い方そんな風に思ってたんだ~なんかショックだな~」

「落ち込むふりすんな」

 

 しょげたふりをする犬飼に突っ込む昴を見ながらも若村は少し考え込む

 

(確かによく考えたらいつも後半になるほどあっさり倒されてた。あれも単なる実力差だと思ってたけど俺でもひっくり返せるのか?)

 

「犬飼先輩、もう10本お願いしていいですか?」

「…うんいいよ」

 

 考え抜いた末に若村は犬飼にもう一勝負お願いした

 

 

 

「で、結果は9勝1引き分けで犬飼の勝ちか」

「…ありがとうございました」

「そんなに落ち込まないでよろっくん。最後の一本は俺も少し焦ったよ。今までで一番いい動きできてたしね」

「本当ですか?」

「もちろん、ね、キリ君?」

「ああそうだな。あそこは単純に実力差が出ただけだ。今後鍛えていけばいいよ」

「ガンナーは鍛えれば鍛えるほど強くなれるからね。」

「…わかりました。これからもよろしくお願いします!」

「もちろん。師匠なんだから当然だよ」

 

 そんな会話をしていると突如3人に声がかけられた

 

「ちょっと麓郎!あんたいつまで待たせる…の?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、香取葉子は機嫌が悪かった。正確にはここ数週間ずっとだ。

 記念すべきデビュー戦、新人王にもなれた自分の実力ならすぐに上位に上がれると思っていた。幼馴染の華が戦闘員になれなかったのは非常に悔しかったが、それでも華が自分をサポートしてくれる。それだけで負ける気はしなかった。

 だが結果はどうだ。最初に辻を倒せたところまではよかった。しかしその後は二宮相手に何もできずに落とされてしまった。あの時は余りの衝撃にしばし呆然としてしまった。

 

 それからのランク戦も似たようなものだった。上位相手には何もできずに負けてしまう。結果B級中位。デビュー戦としては悪くないはずだが、上を目指していた香取にとってこの結果には苛立ちを隠せなかった。

 あれ以来やる気が出ずポジション転向も考えるほどだ。

 そんな中今日は防衛任務なのだが時間になってもチームメイトの若村が帰ってこなかった。三浦に探しに行かせようかと思ったが、三浦は華の手伝いをしていた。幼馴染の手伝いをしてる男の邪魔をするわけにもいかず仕方なく香取は若村を探しに行くことにした

 

(ああもう!なにやってんのよあいつ!私と華を待たせるなんていい度胸じゃない!!)

 

 ナチュラルに三浦を省きながらも見つけたら思いっきり文句を言ってやろうと意気込みながらブースまでやってきた香取であった

 

「あ、いた!」

 

 若村は犬飼ともう一人の男と話していた。スーツ姿だから二宮か辻のどちらかだろうと思いながら香取は若村に声をかけた

 

「ちょっと麓郎!あんたいつまで待たせる…の?」

 

 香取の声を聞いて昴は振り返った。

 

「あ、香取ちゃんだ。お疲れ~」

「よ、葉子!」

 

 犬飼が軽く挨拶し若村は慌てて声を出したが香取は軽く呆けていた

 

「おい…葉子?どうした?」

「…へ?あ!麓郎!あんたね…!」

 

 若村の声を聞いて我に返った香取は文句を言おうとしたが、

 

「…大丈夫ですか?」

「…!」

 

「ちょっと!麓郎!あの人誰なの!?」

「あ、あの人?」

 

 香取は小声で若村に尋ねた

 

「犬飼先輩の隣にいる人よ!めちゃくちゃかっこいいじゃない!!」

 

 香取は面食いであった。そのため他のボーダー女子に負けず劣らずのとりまるファンなのだが、目の前の男性はそのとりまるに勝るとも劣らないように感じた

 

(やばい!烏丸くんと同じくらいかっこいいじゃない!あんな人初めて見たんだけど!!)

 

 急にテンションが上がった香取に疑問を抱きながらも若村は答えた

 

「二宮隊のオペレーターだよ。葉子も聞いたことあるだろ?ボーダー唯一の男性オペレーター」

「何それ!初めて聞いたんだけど!」

「知らなかったのかよ!」

 

 若村自身も昴のことはわからなかったが男性オペレーターに関する噂は聞いたことがあった。ただ目の前のリーダーはそのことすら知らなかったらしい。

 

「あんたあんなかっこいい人知ってるなら紹介しなさいよ!なんで隠してるのよ!!」

「俺だって今日初めて会ったんだよ」

 

 小声で話す二人を尻目に昴は少し悩んでいた

 

(まいったなあ…)

 

 香取さんの戦いは何度か見た。粗削りな部分はあるものの才能は確かだし磨けばA級クラスの隊員達にも届くほどだと思っている。問題は香取さんの性格だった

 

(少し気が強くてわがままな性格らしいけど…どう話そう)

 

 昴は気の強い女性が少し苦手であった。正確に言えばそういう女性を相手にどういう風に話せばいいのかがよくわからないのだった。

 犬飼に丸投げしようかと思ったが、犬飼のほうを見るとニヤニヤしながらこっちを見ていた。これ多分助けてくれねえな…

 

(まあ考えてても仕方ないか)

 

 昴は意を決して香取に話しかけた

 

「えっと香取さんだよね?はじめまして」

「…!は、はじめまして!香取葉子です!」

「桐山昴です。どうぞよろしく」

 

 香取さんを見ると何故か緊張しているようだった。よくわからないが何を話そう。戦いのことでも話せばいいかな

 

「香取さんの戦いは何度かみたことがあるけど中々大したものだと思うよ」

「ほ、ほんとですか!?」

「うん。ボーダーに入ってまだそんなに経ってないのにあそこまで戦えるのはすごいよ。鍛えればA級の隊員にも劣らないものになると思う」

「…!あ、ありがとうございます!嬉しいです!」

 

 なんか思ったより素直な子だな。ただの噂だったのかな?

 

「それで若村に何か用?」

「あ…いえ、今日うちの部隊が防衛任務なので探しに来ていて…」

 

 若村を見るとハッとした顔をしている。ランク戦に熱中しすぎて忘れていたのか。

 

「そっか、ごめんね?ランク戦に熱中しすぎたみたいで、ただ何かつかめたみたいだしあまり責めないであげてほしいんだけど…」

「は、はい!もちろんです!」

「ありがとう。それじゃあそろそろ時間か。防衛任務頑張ってきてね」

「はい!ありがとうございます!!いくわよ麓郎!!」

 

 そう告げると香取は若村を引っ張って消えていった

 

「う~ん」

「どうしたの?」

「いや、思ったより素直でいい子だなぁって思って。やっぱり噂ってあてにならないなぁ」

「多分それキリくんと烏丸くんだけだと思うよ」

「え?なんで?」

 

 犬飼は面白いものを見る目で昴を見ながらそう言った。

 

 

 

 

 

 

「はあ…まさか烏丸君と同じくらいかっこいい人がいるなんて!しかも聞いた!?私の戦い見てくれたのよ!桐山さんがああ言うならもう少しアタッカー続けてみようかしら!」

「はあ!?お前アタッカー辞めるつもりだったのかよ!!」

「うるさい!麓郎には関係ないでしょ!!」

 

 気分屋なリーダーにイラつきながらもここしばらく悪かった機嫌が良くなったこと関しては昴に感謝しつつ防衛任務に臨むのであった

 

 

 

 そして防衛任務終了後

 

「ねえ華!聞いて聞いて!今日すっごくかっこいいオペレーターの人に会ったの!!」

「もしかして桐山先輩?」

「そうそう!もしかして知ってたの!?」

「話したことも何回かあるよ」

「ええ!?華ずるい!!」

「同じオペレーターだからね。」

「いいなあ!私も一緒に話したい!」

「その時はちゃんと猫かぶらないとね」

「どういう意味!?」

 

 もぎゃあもぎゃあと騒ぎながらも機嫌がよくなった幼馴染を見て華は嬉しそうにほほ笑むのであった。

 

「そういえば桐山先輩と烏丸君って幼馴染らしいよ」

「うそぉ!?」

「よく一緒に遊んでるんだって」

「その光景見てみたい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後

 

「桐山君、あなた弟子作ってみない?」

「・・・・・はい?」

 

 月見さんの唐突さは相変わらずだなぁ…

 昴は呆然とした表情でそんなことを考えていた

 




今後香取隊に出番があるかは不明()
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