ボーダー唯一の男性オペレーターは今日も忙しい   作:マサフ

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昴と氷見亜紀③

二宮隊の作戦室にて昴は氷見を待っていた。氷見への指導はいつも二宮隊の作戦室にて行われている。基本的には二宮達がいない時間に氷見を招待して指導しているが、二宮達も大体の時間を見計らって作戦室を離れるようにしている。チームメイトの気遣いに昴はいつも感謝していた。最も二宮は気を使っていることは絶対に認めないが。一度昴がお礼を言った際に

「勘違いするな、俺はただランク戦に行っているだけだ。」と言い放った様は気心知れてる仲間からすればどう見てもただのツンデレであった。

 

「し、失礼します」

「いらっしゃい」

 

 集合時間の10分前に氷見はやってきた。相変わらず昴とは目を合わすことができず、緊張している。というかいつも以上に緊張していた。原因はもちろん先ほど食堂でばったり鉢合わせたことだ。

 

「ところで氷見さん、一つ聞きたいことがあるんだけどいい?」

「はい…なんですか?」

「不躾な質問かもしれないけど…もしかして京介のこと好き?」

 

 一呼吸おいて昴はそう尋ねた

 

「・・・・・・・・・・・・へ?」

 

 しばし呆然とした氷見だったが、質問の意味を理解したとたん顔が今までにないほど赤くなっていく

 

「な…な…何を!?いや、わ…私は…!!!」

「急に変なこと聞いてごめんね?ただその反応を見るとやっぱりそうみたいだね」

「だ…だから…私は!!というかなんでわかったんですか!!」

「食堂で鉢合わせたときの反応を見たらだいたいわかるよ」

 

 慌てる氷見に昴は冷静に返した。

 

「うう…なんでそんなこと聞くんですか…私を辱めたいんですか…」

「悪いことをしたとは思ってるからその言い方やめてくれない?」

 

 もちろん昴が急にこんなこと聞いたのは嫌がらせのためではない

 

「氷見さん、まず犬飼との会話を想像してくれないか?」

「…はい?なんでですか?」

「いいからいいから」

「はあ…」

 

 氷見は疑問を抱きながらも犬飼との会話を想像してみる。

 コミュ力が非常に高い犬飼はあがり症の氷見でも多少は話しやすい人物である。気軽に話しかけてくる犬飼にそっけなさはありつつも軽い受け答えはできてる姿が想像できた

 

「想像してみましたけど…」

「じゃあ次は辻ちゃんで想像してみて」

 

 辻とは初めて会った時以来まともに会話をしていない。というか初めて会った時にもまともな会話なんてできていなかった。とはいえあそこまで動揺しているとこちらは少し落ち着ける。会話と言えるのかはわからないがそれなりの受け答えができてるのは想像できた

 

「想像しました…あのこれなんですか?」

「まあまあ、次は二宮さん…は別にいいや」

 

 二宮との会話を想像させるのはやめておくことにした。氷見と二宮の会話を想像してみた昴はとても緊張する氷見が見えたため、これを氷見に想像させるとこの後の話に説得力が持たせられなくなると思ったからだ

 

「じゃあ最後に…京介との会話を想像してみてくれ」

「!?か、烏丸君との…!?」

 

 氷見の元に戻りかけていた顔の色が再び赤くなった。烏丸との会話なんて想像しただけで緊張が最高潮になってしまう。何も話すことができずに烏丸の前で撃沈する姿が氷見には容易に想像できた

 

「うう…」

「うん、想像できたみたいだ」

 

 顔を赤くして下を向く氷見を見て昴はそう言った

 

「…こんなことしてなんの意味があるんですか…?」

 

 相変わらず昴の方には目を向けず、少し恨めしそうに氷見は尋ねた

 

「今想像してみてわかったと思うんだが…京介と話すことと比べたら他の人と話すことなんて緊張しないだろ?」

 

 そう言った途端氷見は目を見開いて昴の方を見た。すぐに再び目を背けたが

 

「京介のやつ相手に緊張するのはよくわかる。あいつは顔も中身もどっちもイケメンだからな。女子からすれば高嶺の花と言えるのかもしれない。だがむしろそう考えたら京介以外の人はそこまで緊張することないんじゃないか?」

 

 昴の思いついた案とは烏丸をより強く意識する代わりに他の人物をそこまで意識させないようにさせるものだった。食堂で見た氷見の反応から氷見が烏丸のことを好きなのは昔から烏丸が好きな女子を何人も見てきた昴にはすぐわかった。だからこそそれを利用すれば氷見のあがり症を治せるのではと考えたわけである

 

「…確かに桐山先輩の言う通り烏丸君と話すことと比べたら他の人と話すことは大したことはないですね」

「そうだろ?これで氷見さんのあがり症も克服できると思ったんだが」

「…そうですね。ありがとうございます」

 

 氷見はそう昴に礼を告げたのだが

 

「…ほんとに克服できた?」

「はい、おそらくですができました」

「…じゃあなんでまだ俺から目をそらすの?」

 

 氷見は相変わらず昴から目を背けたままだった

 

(おかしいな…俺の考えが間違っていたのか?)

「あの…氷見さん?やっぱり克服できてないよね?俺に気を使わなくてもいいからさ…」

「いえそんなことはありません。」

 

 相も変わらず目をそらしながらそう答える。確かに受け答えはどもらなくなったがどうして…

 昴は一つ勘違いをしていた。氷見はあがり症を克服できたのだが、そもそも氷見の他の人に対する緊張と昴に対する緊張は全く別のものなのだ。そのため他の人に対する緊張は克服できたが昴に対する緊張は未だ克服できていなかったのだ。そのことに気づいていない昴は

 

(やっぱり俺嫌われてる…?)

 

 新たな勘違いを重ねていた

 

 一方の氷見の胸中も穏やかではなかった。

 

(桐山先輩との会話、烏丸君と同じくらい緊張するんだけど…!)

 

 昴のおかげであがり症はおそらく克服できたものの、昴との会話を想像した結果、この有様である。むしろ悪化してるとまで言えるかもしれない

 そして新たな勘違いを重ねた男は変なエンジンがかかってしまったようで

 

「氷見さん…」

「何ですか?」

 

 以前のように言葉がどもることが無くなっていることを見るにあがり症を克服したのは事実のようだ。となるとやはり…

 

「氷見さんの考えていることはよくわかった」

「・・・!」

「俺はそこまで氷見さんに嫌われていたんだな…」

「…はい?」

 

 昴の言葉に氷見は緊張も忘れ昴の方を見る

 

「すまないが心当たりは何もないんだ…だが俺が師匠として至らなかったことが理由だろうか?何か悪いところがあれば言ってくれ。それか氷見さんが嫌だというなら俺から月見さんに話して…」

 

 昴の言葉に氷見は言葉を失くしてしまう。自分の態度が悪かったとはいえ昴をここまで思い詰めさせてしまったことに後悔を隠せない。しかしそれと同時に怒りの感情も込み上げていた。話には聞いていた。桐山先輩は非常に鈍感だと。烏丸君のことをよくイケメンだと言うくせに自身の破壊力には全く気付いていないと。

 氷見の感情はごちゃごちゃになっていた

 

「…がいますよ」

「・・・ん?」

「違いますよ!!そんなわけないじゃないですか!!桐山先輩にはとてもお世話になってるんですから!!教え方はうまいし、あがり症の私にもすごく気を遣ってくれるし、烏丸君と同じくらいかっこいいし!!!」

「・・・へ?」

「そもそも先輩は自分の顔の良さわかってるんですか!?よく烏丸君のことかっこいいだのイケメンだの言ってますけど桐山先輩も大概ですからね!?そのスーツ姿にどれだけの子が撃沈してきたかわかってるんですか!?」

「・・・え?」

「それでもただ顔がいいだけなら私もそこまで緊張しませんよ!!なのに先輩はずっと目をそらしたり、会話も碌にできてなかった私に根気強く指導してくれて…そんなのより緊張するに決まってるじゃないですか!!」

「…いや…」

「そんな先輩を嫌ってるわけないです!!むしろ先輩にそこまで考えさせてしまった私が悪いんです!!ごめんなさい!!」

「いや氷見さんが謝ることじゃ…」

「でも自分の破壊力をわかってない先輩も先輩ですからね!!わかってますか!?」

「破壊力って大げさな…」

「大げさじゃありません!!さっき言いましたよね!?何人撃沈させてきたかわかってますか!?わかってませんよね!?」

「…はいわかってません」

「だったら先輩も言うことがありますよね!?」

「…ごめんなさい」

「はいよろしい!!」

 

 頬を染めはぁはぁと息を切らした氷見が立ち尽くしていた。そこには普段クールで知られる彼女はどこにもいなかった

 

 数分後、落ち着いた氷見は昴に頭を下げていた

 

「ごめんなさい…ごめんなさい…勢いとはいえ先輩に対して偉そうなことを言って…」

「いや!俺も悪かったからさ!ごめんね!?あそこまで言わせちゃって!」

 

 お互いに頭を下げあう光景は非常にカオスであった

 

「というかさっき言ってた破壊力とか撃沈とかあれって本当なの…?」

「本当です。むしろなんで気づいてなかったんですか?」

「俺とすれ違うたびに顔を背ける子たちが多くておかしいなとは思ってたけど」

「それで気づかないほうがおかしくないですか?」

「スーツがそんなに似合ってないのかと…」

「その答えに行きつくほうがおかしいと思います」

 

 氷見は冷静にそう返した。気が付けばまっすぐ昴の方を見つめて会話ができていた

 

「そういえば氷見さん、こっち見て話せてるね」

「…さっきの話でなんだかもう吹っ切れました」

「そうか…よかった。初めての弟子だからこうして真っすぐ話せるのはやっぱり嬉しいね。ありがとう」

「・・・・・っ!!」

 

 ほんとそういうところだぞと思わず頬を染めながら腕を振り下ろす氷見だった

 

「…はあ、そういうわけですからもう師匠辞めるなんて言わないでくださいね?まだまだ教えてほしいことはたくさんあるんですから」

「もちろん。むしろやっとスタートラインに立てた気分だ。これからはビシバシいくからな!」

「ええ、望むところです」

 

 そう言ってお互いに微笑みながら二人は他愛ない話を続けるのだった。ぎくしゃくしてた二人がようやく師弟にそして友人になれた瞬間だった

 

「そういえば烏丸君とはどういう仲なんですか?随分仲がいいみたいですけど」

「ああ、京介とは幼馴染なんだよ。幼いころから仲が良くてさ…」

 

 

 

 

「ひゃみちゃんとキリくんやっと仲良くなれたみたいですね~いやーよかったよかった」

「師弟関係ならあれくらい当然だろう。むしろ遅すぎたくらいだ。全くぬるいやつめ…」

「まあまあそう言わずに、辻ちゃんもそう思うでしょ?」

「お、俺は…桐山先輩と…ひ、氷見さんが仲良くなれてよかったと…」

「辻ちゃんドア越しでもそんなに緊張するの?」

 

 作戦室の前では三人のチームメイトが昴たちをそっと見守っていたのだった。

 余談だが自身の作戦室の前で中を覗き見るスーツの三人は非常に目立っていたようで、後日その姿を映した写真がボーダー内に広まったとか。ちなみに炒飯作りが趣味のボーダー隊員は写真との関与をニヤニヤしながら否定したという。

 

 

 

 

 

後日

 

「なあ京介」

「どうしたんすか、そんなに真剣な顔して」

「もしかしてなんだが…俺ってそこそこかっこいいんだろうか?」

「…その発言は全くかっこよくないっすね。というか今更過ぎます」

 

 ようやく気づいたのかこの人はと呆れを含んだ目線で昴をみる烏丸がそこにはいた

 

その夜

 

「なあ綾香」

「なに兄貴」

「俺ってかっこいいのか?」

「顔はかっこいいんじゃないの」

「え?」

「なに?」

「いやそこは冷たく否定するものかと」

「顔はいいけど中身はアホだから」

 

 兄の質問にそっけなく返す妹がそこにはいた




ワートリ本編のひゃみさんももちろん好きですが、どちらかと言えば私は二次創作でひゃみさんにはまったんですよね。
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