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鳩原が二宮隊に入って数日後
「というわけで俺は今シーズンのランク戦が終わったら二宮隊を抜けることになりました」
作戦室にチームメイトと氷見を集めた昴はそう宣言した
「そっか寂しくなるね」
話を聞き終えまず声を発したのは犬飼だ。隊が発足してから約半年、いずれチームを抜けるという話は聞いていたもののいざそのときが来るとやはり少し寂しさは感じてしまう
「桐山先輩ほんとにやめちゃうんですか…」
続いて言葉を出したのは辻である。ボーダーのオペレーターは昴を除けば女性が苦手な辻にとっては雲の上のような人たちであったため、辻にとって昴は唯一気軽に話せるオペレーターであり、チームを裏から支えてくれてる頼もしい先輩であった。
「そんなに落ち込まないでよ辻ちゃん。別にボーダーを辞めるわけじゃないんだからさ」
「でも…」
先輩が隊を抜けることも非常に寂しいが、辻にとって懸念事項はもう一つあった。それは昴の次に入る新しいオペレーターのことである。今までは男の昴がオペしてくれてたおかげで事なきを得ていたが、新しいオペレーターが入ってきたとき、話したこともない女性のオペをちゃんと聞けるだろうか。辻はそこが不安で仕方なかった
「辻ちゃんの不安もよくわかるよ。そこでだ、今から俺の後任のオペレーターを発表しまーす」
そんな辻の不安も読んでいた昴がその不安を少しでも払拭するために選んだ新しいオペレーターを発表する
「新しいオペレーターさんはぁ・・・なんと!「私です」って氷見さん割り込まないで!!」
「先輩のやり方が大げさすぎるんです」
仰々しく発表しようとした昴に割り込む形で氷見が宣言した。昴が軽い文句を続けるも氷見は平然とした表情でそれを受け流し続けた
「ひゃみさんかぁ。まあ予想通りではあったね」
「少しくらい驚いてくれてもいいじゃないか犬飼」
「いやぁでもこれは割と予想できることでしょ」
犬飼はいつもの態度でそう返した。実際昴の後任に氷見が充てられるだろうということは犬飼も二宮も予想できていたことではあった。むしろ予想できていなかったのは
「氷見さんが…新しいオペレーターさん…?」
驚いた表情でそうつぶやく辻くらいであった。
「そういうことだから辻君、私と桐山先輩が入れ替わるまでに少しは私と話せるようにしてね?」
「うん頑張ります…」
氷見から目を背けながら辻が返答した。とはいえ氷見が後任と聞いて少しホッとしたのも事実であった。まだ少し壁を作っているとはいえ今から氷見以外の人となると自分はまた固まってしまうだろう。そう考えると氷見以上の適任は思い浮かばない。今から新しい人と話せるようになることと比べれば何倍もマシであった
…できれば桐山先輩のままが一番いいんだけどな…とはさすがに言えなかった
「ほーら、まずは目をみて話すところから」
「そ…それはまだちょっと早いです…」
ただし完全に打ち解けるにはまだ少し時間がかかりそうだが
「鳩原さん、そういうわけなんで短い間ですが改めてよろしくお願いします」
「…うんあたしの方こそよろしくね」
今までの話を黙って聞いていた鳩原に昴は改めて挨拶をしたのだが鳩原の表情は暗いものであった
「…鳩原さん、何かあった?」
「ううんなんでもないよ。気にしないで」
暗い表情が気になった昴が訪ねたものの鳩原の返事はそっけないものであった。
「…うんわかった。ただ何かあったらいつでも相談してね。短い間とはいえチームなんだからさ」
「うんありがとう」
何かあったことは明白だが鳩原本人が話す気がないためか昴は深追いすることなく話を切り上げた
「それにしてもひゃみちゃんも驚いたんじゃない?キリくんにうちのオペレーターを任せるって言われた時にはさ」
「いいえ、犬飼先輩の言ってた通り予想できてたことなので」
「ひゃみちゃんはクールだねぇ」
氷見はそう返したものの事実は異なる
それは昨日の話、作戦室にて指導を終えた昴が帰り支度をしている氷見に二宮隊の後任について話したときのことである
「あの…桐山先輩、今なんて言いました?私に二宮隊のオペレーターを任せるって聞こえましたけど…気のせいですよね?」
「いや気のせいじゃないよ。俺が二宮隊を抜けた後の後任を氷見さんに任せたいんだ」
数秒、作戦室を静寂が支配するが、静寂はすぐに消え去った
「えええええええええええ~~~!!!???」
帰り支度を済ませて作戦室を出ようとしていた氷見の叫びが作戦室を支配した
「ちょ!いきなり何言ってるんですか!?」
「だから俺の後任を氷見さんに任せたいなって」
「そこじゃないですよ!!なんでそんな急に言うんですか!!」
「俺の師匠の月見さんもいつも唐突だったから」
「そんなところはマネしなくていいんですよ!!ほんと先輩は私を驚かせるの上手ですよね!?」
「いやぁそれほどでも」
「褒めてません!!この鈍感!!」
「直球の悪口は傷つくからやめよ?」
以前の爆発したときと同じように氷見の叫びは止まらなかった。そんな氷見をなんとかなだめて昴は話を続ける
「まあこれは俺の勝手なお願いだし無理強いするつもりはないよ。もし他に入りたい部隊があるならそっちに行ってくれても構わないし。今すぐ決めろなんて言うつもりもないからゆっくり考えてほしいな」
「………はあ、もう」
氷見はうなだれながらそうつぶやいた。そんな言い方をされては断れないではないか。
急に言われて驚きこそしたものの二宮隊のメンバーとはある程度の親交はできてるし、別にほかに入りたい部隊があるわけでもない。考えてみれば氷見には断る理由が見当たらなかった
「いいですよ。先輩の後任は私がやります」
「…え?いいの?」
「何驚いてるんですか。先輩が言い出したことじゃないですか」
「いや…俺もここまで即決してもらえるとは思ってなかったから…」
「だとしたら先輩を驚かせることができて嬉しいですね。ざまあみろです」
「ほんと遠慮しなくなったな…」
「それに辻君のオペをできる子を探すのも大変でしょうし。多少慣れてきた私ならおそらく大丈夫でしょう。」
別のオペレーターが入って完全に固まってしまった辻を想像しながら氷見はそう話した
「何より師匠の頼みなんだから断れるわけないでしょ?先輩の後を引き継ぐことで恩を返せるなら安いものです」
「氷見さん…」
「そういうわけなんだし私がやりますよ。いいですよね?」
先ほどまで氷見を驚かせていた昴が今度は逆に驚かされてしまった。
自分に恩を感じる必要はない。一瞬そう言いそうになったがその一言は飲み込んだ。それをいうのは氷見に対して失礼だろう。自分を慕ってここまで言ってくれてるんだから。だったら自分の言うことはただ一つだ
「引き受けてくれてありがとう氷見さん。俺の後は任せたよ」
「はいもちろんです」
昴の言葉に氷見は笑顔で答えたのだった
「ま、今すぐ辞めるわけじゃないし。今はまだそんなに気負わないでいいよ」
「そうですね。もし今すぐ変わるって言ってたらトリオン体で殴っていたところでした」
「怖っ、まあ俺もトリオン体だしそこまでダメージはないけど」
「当然換装は解いてもらってましたよ」
「それ下手したら死ぬやつ…」
「アホなところがある先輩ならきっと大丈夫です」
「それどういう意味?」
先ほどまでの真面目な空気は一転して二人はいつもの軽口を叩きあうのだった
時は戻って現在
一人黙っていた二宮は話がある程度まとまったことを察すると話を始めた
「そういうわけだ。今シーズンで昴はウチを抜けてその穴埋めに氷見が入ることになる。昴がオペをする最後のシーズン、必ずB級一位に上り詰めてA級に入るぞ。いいな?」
二宮の問いにチームメンバーたちは顔を引き締め、声を揃えて返答をした
「「「「了解」」」」
昴がオペをする最後の試合がまもなく始まろうとしていた
「あそうだ。氷見さん今シーズンのROUND7のオペは氷見さんがやってね。卒業試験ってことで」
「…はい?聞いてませんよ?」
「今言ったからね」
「…ホントに殴っていいですか?」
「いきなり翌日の最終試合のオペを卒業試験にされた俺よりはマシだから大丈夫だよ」
昴は笑顔でサムズアップしながらそう返した。許されるならこの満面の笑みの師匠を弧月でぶった切るかアステロイドで蜂の巣にしたいと思った氷見であった