ボーダー唯一の男性オペレーターは今日も忙しい   作:マサフ

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ランク戦の前に少し小話
ちなみにタイトルに18歳組とありますが時系列的にまだ18歳ではありません


昴と18歳組

「断る」

「二宮さん…そこをなんとかお願いします」

 

 昴の二宮隊としての最後のランク戦まで残り二週間を切っていたその日、作戦室にて昴は二宮に対して頭を下げて頼みごとをしていた。しかし二宮はそれを冷たく断っていた。その表情は二宮が初めて昴に会った時と同じくらい冷たいものであった。

 だがそれもそのはず、なにせ昴の二宮への頼み事というのは

 

「知るか、なぜ俺が成績の足りない馬鹿どもを手伝わなければいけないんだ?」

「お願いします…もう俺一人じゃ無理なんです…」

 

 二宮からすれば非常に馬鹿馬鹿しい頼みであったからだ

 

 

 

 遡ること数日前

 

 季節も冬真っ盛りの中、学生たちに学年末テストが迫ってきていたのだ。この学年末テストが一部のボーダー隊員にとって鬼門となった。テストにて赤点を取ったものは後日補修が行われるのだが、その日程がランク戦と丸被りしていたのである。しかもご丁寧に水曜と土曜の二日間。狙ってるのか?と思わざるをえない日程ではあるが、ランク戦を控えた隊員にとっては死活問題であった。

 昴の成績は中の上くらいであるため特に問題はなかったが、問題があったのは他の隊員であった

 

「桐山君ここわかんないよ~!」

「ここさっきも教えたじゃん…もうやだ…」

「お~ね~が~い~!見捨てないで~!!」

 

 まず泣きついてきたのは現在半泣きの国近であった。A級なのでランク戦には影響はないものの、補修があると知るや否や昴に泣きついてきたのである。テスト前になるといつも昴に勉強を教えてもらっていた国近だったが普段のテストと異なり一つの赤点も許されないためその勉強会は普段の倍以上の熱量を秘めていた。

 ちなみに太刀川もまた最後の学年末テストに向けて風間にしごかれている真っ最中であった。

太刀川隊ってバカしかいないのかな?幼馴染には悪いがそう思わずにはいられない昴だった

 とはいえ国近一人であれば昴も一人でなんとかできただろう。

 

「なあ桐山、ここはどうやるんだっけ?」

「だからそこは教科書のこのページを見ればわかるって言っただろ…」

「…おおほんとだ。サンキュー」

 

 問題は赤点の危機を秘めた男がもう一人いたことだった。男の名は当真勇。ボーダーでも鳩原と並ぶほどの実力をもったスナイパーだ。

 当真は今まで隊を組まずソロのスナイパーでフラフラしていたのだがオペレーターの真木理佐に「働け」と一喝されたことでトラッパーの冬島と共にチームを結成、今シーズンからランク戦に参加することとなったのだが問題なのはその成績であった。このままでは赤点を取ってしまいデビュー戦からいきなり躓くことになってしまう。しかしオペレーターの真木は当間の一つ下で勉強は教えられず、リーダーの冬島も勉強を教えられるほど賢くないため昴に白羽の矢が立てられたのだった。

 

「この馬鹿を頼むわ、桐山さん」

 

 正直国近さん一人でも手一杯だったがオペレーター仲間の真木さんに頭を下げられては断れなかった。

そんなわけで昴はただいま地獄をみていた。昴も成績優秀というわけではなくあくまで平均点より少し上というレベルであり、そんな中で馬鹿二人の指導というのは非常に厳しいものであった

 

「ごめんね桐山君、迷惑かけてごめん…」

 

 国近はいつになくしおらしく昴にそう告げた。ランク戦前に昴を巻き込んでしまったことに国近も少なからず申し訳なさは覚えていた

 

「別にいいからさ、今はとにかく勉強しよ?次からはちゃんと予習しような?」

「それはちょっと約束できない…」

「おい」

 

 それはそれ、これはこれであった

 

「しかしお前もよくやるよな~俺が言えた義理じゃないけどよく二人も引き受けてくれたよなぁ」

「ほんとにお前の言えた義理ではないな…正直投げ出したいけど、真木さんにも頼まれてるしそんなわけにもいかんだろ」

「ああ、真木ちゃん怖えもんなぁ」

「そうか?俺は怖いとは思わないけどなあ」

「…もしかしてお前真木ちゃんまで誑し込んでるのか?」

「その言い方俺にも真木さんにも失礼だからな?」

 

 真木さんとは何度か話したことあるけど自分にも他人にも厳しいストイックなだけで怖いって印象はないんだけどなぁ。お願いされて少しオペの指導もしたことあるけど、俺の教え方(氷見さん曰くスパルタらしい、月見さんよりはマシだと思うけど)にも共感してくれたし。    

 後三上さんにはメロメロだし 

 

「とにかく一度引き受けたんだ。途中で投げ出すことなんてしない。最後まで面倒は見る。だから頑張ろうな」

「おお、おお流石ボーダー一の色男だねえ」

「茶化すな当真」

「うう…ありがとう桐山君…今の桐山君顔だけじゃなくて中身もかっこいいよ」

「普段の俺どう思ってたの?」

「思い込みの激しい鈍感」

 

 どうしよう投げ出したくなってきた。それに鈍感はもう昔のはなしだっての

 とはいえ宣言した以上投げ出すわけにはいかない

 

「よし!国近さん!当真!やるぞ!!」

「はい!」

「おう」

 

 数時間後…

 

「少し前の安請け合いした自分をぶん殴りたい…」

「しっかりしろー桐山ー」

「投げ出さないって約束したよねー!!!」

 

 いやほんともう無理なんだが。冷静に考えて一人でおバカ二人を教えるのは無理があった

 

「…よし!今からしばらく自習!助っ人探してくる!誰かに助けてもらおう!うん!!」

「やっぱ桐山君今一かっこつかないね」

 

 うるせえ、どうあがいても無理なもんは無理なんじゃい。だからそんな目で見るな

 

 こうして物語は冒頭へと戻る

 

 

 

「お願いします二宮さん…」

「知るか」

 

 まず昴が頼み込んだのは隊長の二宮だが、ご覧のとおりであった。

 

「そこをなんとか…俺一人ではもう無理です…」

「なら放っておけ、その二人の自業自得だ」

「いえ、一度引き受けたことを断るわけにはいきません」

「ちっ…お人好しな奴め」

 

 二宮からすれば手伝う義理もないので取り付く島もなかった。というかわかりきってる苦行を引き受けた部下のことが理解できなかった

 

「だったら犬飼に」

「犬飼なら鳩原に教えてるところだ」

「え…鳩原さんってもしかして…」

「ちっ…」

(あっ…)

 

全てを察した昴であった

 

「勘違いするなよ。少なくとも国近や当真よりはマシだ。少し不安なところを犬飼がカバーしてるだけだ」

 

 仏頂面の二宮がそう答えた。実際国近や当真よりマシなのは事実である。少なくとも赤点を取ることはないだろう

 しかしこうなってはもはやどうしようもない。二宮は断固として手伝う気がないようだし、犬飼は鳩原の相手で手一杯。辻や氷見はそもそも年下だ。

 

「わかりました…」

 

 昴は諦めて他をあたることにした

 

「おい昴、わかってるだろうが深入りしすぎて赤点を取ったりするようなことは許さんからな」

 

 作戦室を出ていこうとした昴に二宮はそう声をかけた。馬鹿二人がどうなろうと知ったことではないが自身の部下なら話は別である

 

「ええわかってます。最後のランク戦を赤点で出られないなんてことにはしたくありませんから」

「わかってるならいい」

 

 二宮の返事を受け昴は作戦室を後にした。余談だがその後二宮は犬飼と鳩原のもとに何度も顔を出し、最後のほうには犬飼に代わって鳩原に付きっきりとなっていた。部下相手とは言え二宮も大概お人よしであった

 

 

 

「さてどうしよう…」 

 

 作戦室を後にした昴は誰を頼ろうか思案していた

 

(嵐山さん…駄目だ、ただでさえ広報の仕事で忙しいのに迷惑はかけられない。東さんは…いやあの人も忙しいはずだ。頼れない…そうだ!月見さんに頼もう!あの駄目な二人のことを聞いたらきっと手伝ってくれる!)

 

 指導はスパルタになるだろうが知ったことではない。むしろあの二人ならスパルタくらいがちょうどいいだろう。確か月見さんは秀次の作った部隊のオペレーターになったと聞いた。

 昴は三輪隊の作戦室へと向かうのであった

 

 

コンコン

「失礼します!」

 

 作戦室の扉をノックして昴は中へと足を踏み入れた

 

「お疲れ様で「だからここはこの公式を使えと言ってるだろ!!」す?」

 

 作戦室に入った昴が思わず耳を塞ぎたくなるほどの怒号が三輪隊の作戦室には響いていた

 

「何度説明すればわかるんだお前は!」

「いや悪いとは思ってるからあまり怒鳴らないでくれよ秀次」

「あなたの覚えが悪いからよ米屋くん」

「全く…これくらいすぐできるだろ」

「そう言われてもなあ…」

「お前というやつは…ん?昴か!」

 

 昴の存在にようやく気付いた三輪は怒りの表情から一転して笑みを浮かべて立ち上がり昴のほうへと歩み寄った

 

「久しぶりだな昴。どうした?何か用か?」

「ええと…まずどうしたんだ?」

 

 会話からなんとなく察しはついたものの昴は尋ねた

 

「ああ…悪いな。陽介の奴が余りにも赤点が多くてな、俺と奈良坂、月見さんの三人で次の試験に向けて勉強を教えているところだ」

「…そうか」

 

 予想通りの内容に昴はそう返すしかなかった

 

「それで昴、今日はどうしたんだ?」

「ええと…」

 

 正直この光景を見たら月見さんに助っ人を頼むことなんてできない。心なしか月見さんすごくいきいきした表情してるし。死にそうな顔で三人に囲まれていた彼のことを考えればむしろ月見さんに応援を頼んでここから引きはがすべきなのかもしれないが、そうしたら今度は秀次と奈良坂の顔が死ぬことになるだろう。

 

「…秀次がチームを結成したと聞いて少し様子を見に来たんだ!」

 

 結果昴は誤魔化すことにした

 

 いやいや秀次の様子が気になるのも嘘じゃないよ?実際そのうち一度挨拶に行こうかと思ってたし、それがたまたま今になっただけだし

 

「そうか!二宮さんには少し遅れてしまったが俺もやっとチームを結成することができた。これで後はお前が入っていたら嬉しかったが…全く…」

「その文句なら二宮さんに言ってくれ」

「わかっている。だがあの時は本当に驚いたんだぞ。俺の勧誘を蹴ったやつが二宮さんの部隊に所属していたんだからな」

「一番驚いたのは俺だよ。朝起きたら二宮隊のオペレーターになってたんだからな」

「ふっ…確かにそれは驚くしかないな」

 

 久しぶりの友人の来訪に普段は口数が少ない三輪も笑みを浮かべて話をしていた

 

「あら?その言い方だと私だと嬉しくなかったかしら?」

「月見さん…いえそういうわけでは…」

「月見さん!」

「桐山君も久しぶりね」

 

 昴の来訪に喜んでいたのは月見も同様であった

 

「本当ならお茶でも出すべきなんでしょうけど…今は見ての通りよ」

 

 視線の先には唯一残った奈良坂に絞られてる米屋の姿があった

 

「あはは…月見さんも大変ですね」

「やりがいはあるから問題ないわ」

 

 笑みを浮かべて答える月見さんの表情は正直言って少し怖かった

 

「できればもう少し話したいが…あまり余裕もなくてな…」

「いいよ気にすんな。急に来た俺も悪かったよ」

「そうかすまんな。試験が終わればまたゆっくり話そう」

 

 申し訳なさそうな表情を浮かべる三輪に昴はそう返した。また余裕ができればいくらでも話はできるだろう

 

「それじゃあ失礼しました」

「昴!」

 

 部屋を出ようとした昴に三輪は最後にこう言った

 

「俺たちは必ずA級に上がりいずれ必ず全てのネイバーを撲滅する。戦えないお前の分までな。だからお前もオペレーターとしてもっと強くなれよ」

 

 そう言った三輪の瞳には一点の迷いもなかった

 

「…ああ、もちろんだ」

 

 そんな三輪に対して昴は軽い相槌を返すことしかできずに三輪隊の作戦室を後にするのだった

 

 

 

 

「なあ奈良坂~さっきの人誰か知ってるか?」

「二宮隊のオペレーターらしい。秀次とは同期だそうだ」

「へえ…なんかあの人と話してる秀次すごい楽しそうだったな」

「同期だし仲がいいんだろ。そんなことよりお前はさっさと勉強しろ」

「…なあ息抜きにちょっとだけランク戦行っていいか?」

「殺すぞ」

 

 

 

 

「秀次のやつ相変わらずだなぁ…」

 

 あそこまで思想が固まっていると少し生きづらそうに思ってしまう。

 とはいえ仮に自分が家族を全て奪われていたらどうしていただろう。そう考えると三輪の考えを否定することもできなかった。

 

「…あれ?俺何しに行ったんだっけ…」

 

 数秒考えたのち昴は膝から崩れ落ちてしまった

 

「…助っ人探しに行ってたんじゃん!!」

 

 最有力候補の月見さんが潰れてしまった今、新しい人を探さなければいけない。しばらく崩れ落ちていた昴だがここで新しい人物を思い浮かべた

 

「そうだ!王子か蔵内、神田に頼もう!」

 

 弓場隊の王子と蔵内、そして神田の三人は昴と同い年であり頭もよかったはず。特に蔵内は優等生といって差し支えない人物である。

 

そうと決まれば弓場隊の作戦室へ向かおう。そう意気込んでいた昴だったが

 

 

「断る。帰れ」

「いや弓場さんに頼みにきたんじゃないんですけど」

 

 隊長の弓場に門前払いされてしまった

 

「俺は構いませんよ弓場さん」

「何言ってんだァ蔵内。この大事な時期に成績が足りないバカ共の面倒を見る必要なんかねえ」

 

 どうやらランク戦前ということで準備に忙しいようだった

 

「まあまあそう言わずにもう少し話聞きましょうよ弓場さん」

 

 弓場にそう待ったをかけたのは王子だった

 

「そうだそうだもう少し話聞いてくださいよー」

「うるせえぞ桐山ァ!」

「でもただで教えるってわけにはいかないよねぇスバルン」

 

 ちなみにスバルンというのは王子がつけた昴のあだ名だ。余談だが最初はバルスというあだ名だったが何度聞いても天空の城しか思い出せなかったため昴が必死に嫌がり続けた結果現在のあだ名となった

 

「…お金?」

「いやいやお金なんて取らないよ。…そうだねえ、確かスバルンのチームに新しいスナイパーが入ったんだよね。鳩原ちゃんだったかな?その鳩原ちゃんの情報を教えてくれないかな?」

「…そうきましたか」

 

 当然昴の一存でチームメイトの情報を売るわけにもいかない。ただでさえ鳩原にはスナイパーとして明確な弱点があるのだから

 

「そいつはありがてぇなァ。どうだ桐山?」

「そういうことだったらお断りします。」

「まあそりゃそうだろうなァ」

 

 だがなと弓場は話を続けた

 

「今シーズンのランク戦うちはどうしても勝たなきゃいけねえんだ」

「どうしてですか?」

「王子と蔵内が今期が終わればうちを抜けて独立するからだ」

 

 王子と蔵内の独立と聞いては昴も驚いてしまう。チームから二人同時に抜けるなんてことはそうそう聞かないからだ

 

「…喧嘩でもしました?」

「んなことするか。王子が自分でチームを組んでみたいんだとよ」

 

 そういうこと、と言って王子が立ち上がった

 

「僕も自分でチームを作って指揮を執ってみたくなったんだ。それで弓場隊を抜けることにしたわけ。そして弓場隊最後のランク戦ってなったら取りたいよね?一位は」

 

 王子は不敵な笑みを浮かべてそう言い放った

 

「そういうわけでバカ共の面倒を見てる暇はないわけだが…どうする?」

 

 鳩原のことを教えるか?そう言いたいのだろう

 

 昴ははぁとため息をついて返答した

 

「そういうことだったら諦めますよ。仲間の情報は売れませんから」

 

 それにと昴は言葉を続ける

 

「どうしても勝ちたいのはうちも同じですよ」

「どういうことだ?」

「俺も今シーズンが終われば二宮隊を抜けるんですよ」

「ほお…?」

 

 弓場は少し驚きを見せる。王子と蔵内も同様だ

 

「そういうわけなんで悪いですけど今シーズン一位を取るのはウチです」

「言うじゃねえか」

 

 ニィと好戦的な笑みを浮かべて弓場は答えた

 

「だったら俺たちも全力で相手してやるよ。首洗って待ってな」

「それはこっちのセリフです。今度は絶対に負けませんよ…まあ戦うのは俺じゃないですけど」

「何言ってんだ。オペレーターも一緒に戦う仲間だろうがァ。そこは自信持てや」

 

 弓場は淀みなくそう答えた。王子と蔵内もうなずいている。そう言ってくれると昴としても嬉しくなってしまう

 

「てめえらがどんな作戦立てようが叩きのめしてやるよ。楽しみにしてるぜ」

「スバルンの立てた作戦っていうのも面白そうだね。楽しみにしてるよ」

「ええもちろん俺も。最後の試合楽しみにしてます」

 

 お互いの宣戦布告が終わり昴は弓場隊の作戦室を後にしたのだった

 またランク戦で負けられない理由ができたな…どこか爽やかな気分になりながら作戦室を後にする昴

 

「…って違えよ!!助っ人探してるんだよ!!」

 

 本日二度目の崩れ落ちであった

 

 その後も…

 

「荒船!」

「おお!いいところに来た桐山!!」

「カゲとヒカリちゃんのテストが少しまずいんだよ。荒船君とゾエさんだけじゃ少ししんどくてさ…」

「…桐山か…お前も付き合えや」

「わりい!桐山先輩も教えてくれねえか!?」

「…急用を思い出したから失礼します!!」

「ちょ!待てよ桐山!!」

 

 手伝ってもらうはずが手伝わされそうになるのを何とか逃げ出したり

 

「加古さん!」

「あら桐山君ちょうどいいところに今新作の炒飯ができたから堤君と一緒に食べる?」

「…」←すでに死んでる堤

「お気持ちは大変うれしいのですが少し用事ができたので失礼します!!」

 

 せっかく勉強してるのに下手したら教えたこと全てを吹き飛ばしそうな炒飯から逃げたり

 

「柿崎さん!」

「ここはこの単語を覚えてだな…やっぱり俺が教えなくても大丈夫なんじゃないか文香?」

「ふふっ、いえ柿崎さんに教えてもらえて私嬉しいです」

「俺も嬉しいです!」

「ははそうか、なら俺も頑張らないとな。うん?桐山か?どうしたんだ?」

「…いえ失礼します!」

「…なんだったんだ?」

 

 非常に和気あいあいとしていた空間を壊すわけにいかず自主退場したりと結果、誰も見つからなかった

 

「…終わった…」

 

 非常に重い足取りで疲れから少しふらつきながら昴はそうつぶやいた

 

「誰も見つからねえ…」

 

 目星をつけた人がみな全滅ということで昴は軽く絶望を覚えていた。というか半分くらいは俺と似たような状況だったけどもしかしてボーダーってバカな人多いの?

 

 決して…決して?そんなことはないのだが意気消沈した昴にそんなことを考える余裕はない

 こうなったらもう覚悟を決めて自分一人で教えるしかないのか…?だがそれでは…

 

「…あの大丈夫ですか?」

 

 そんな絶望をしていた昴にある人物が声をかけた

 

「…はい?」

「なんだかすごく顔色が悪いですけど…気分でも優れませんか?」

(この人は…)

 

 目の前の人物には見覚えがあった。確か最近ボーダーに入った新人のオペレーターで…同い年だったはず

 

 ほぼほぼ初対面だったが昴は藁にもすがる思いだった。昴は相手の手を掴み尋ねた

 

「あの!」

「は、はい!?」

 

 突如大声をあげて手を握られたことに女性は混乱しながらも返答した

 

「つかぬことをお尋ねしますが…」

「は、はあ…」

「…勉強は得意ですか?今さん」

「…へ?」

 

 顔を真っ赤にした女性、今結花は呆けた表情でその言葉を出した

 

 

 

 

 

それから数日後

 

「赤点回避できたよぉーーー!!!ありがとう桐山君と今ちゃんんんん!!!」

「いやあほんと助かったわ。ありがとよ二人とも」

 

 当真はへらへらしつつ、国近は号泣しながら二人にお礼を告げた

 

「全く…これに懲りたら普段から予習、復習はちゃんとしなさいよ」

「するする!できたらする!!」

「ちゃんとするって言いなさい!!」

 

結局あの後わけがわからないまま連れられてきた今であったが、二人の成績を見るや否や激怒。二人を叱り飛ばしながら昴と共に勉強を教えたことで国近と当真は何とか赤点を回避できたのであった

 

「にしてもよくこんな頭のいいやつ見つけてきたなぁ桐山。俺も同い年だけど知らなかったぜ」

「まだ新人だからな。そこは仕方ないだろ。ほんと運がよかったよ…」

 

 昴は心底安堵した表情でそう言った。実際、今の方から声を掛けられなければ昴は今を見つけ出すことはできなかっただろう。今には感謝の気持ちで一杯であった

 

「ほんと助かったよ今さん…ありがとう…」

「…別に桐山君がお礼を言うことじゃないでしょ。悪いのはこのおバカ二人なんだから」

 

 今は少し頬を赤らめてそう答えた。というか試験期間の間今は昴を見るとずっと頬を赤らめていた

 

「なあ桐山、少し気になってたんだけどさ」

 

 当真は試験勉強の間、ずっと気にしていたことを昴に尋ねた

 

「お前今になにしたんだ?」

「あ、それ私も気になってた」

 

 今ちゃんに何したの?と国近も疑問を浮かべた

 

「何って別に何も………あ」

 

 今との出会いを思い出した昴は急速に青ざめていく。あのときは切羽詰まっていて気が付かなかったが女性の手を無理やり握り、そして強引に仕事を頼みこむ…

 

 セクハラ…パワハラ…

 

 様々な言葉が昴の脳裏をよぎった

 

「大変申し訳ありませんでした!!!」

 

 昴はその場で勢いよく今に土下座した

 

「ちょ!何してんの!?」

 

 慌てて今が止めに入るも昴は聞く耳を持たない

 

「初対面の女性に対して無理やり手を握った挙句、無理やり部屋に連れ込むような真似をして本当にすいませんでした!!!」

「ちょっと!変な言い方しないで!?」

 

 今は顔を真っ赤にしながら国近と当間に弁明する

 

「違うのよ!?部屋に連れ込まれたって言うのはここまで引っ張られたって意味で変な意味じゃないからね!?」

「じゃあ手を握られたのも違うの?」

「…それはその通りなんだけど」

「すいませんでしたああああ!!!」

 

 昴はさらに深く土下座を続けた

 

「ちょっとー桐山君、初対面の女の人の手を握るのは流石にダメだと思うよ?」

「おっしゃるとおりです・・・!ごめんなさい!!」

「いやー言葉だけじゃ足りないだろ。行動で示さないとなー」

「…どうしたらいい?」

「それはもちろん次のテスト前にも私たちに勉強を」

「ちょっと!!どさくさに紛れて変なこと言わないの!!」

 

 冗談半分で昴をいじる国近と当真を押しのけて今は昴の前にしゃがみこんだ

 

「桐山君本当に私は大丈夫だから、気にしないで」

「しかし…」

「嫌な気分なんかにはなってないから安心して。…むしろちょっとドキドキしてたし

「最後なんて?」

「なんでもない!」

「うわあリアル難聴だよ当真君」

「あれがわざとじゃないのがあいつのすごいところだよなあ」

「そこうるさい!!」

 

 外野二人を遠ざけて今は話を続ける

 

「わかった。じゃあ私にオペレーターのこと教えて?桐山君人に教えるのもうまいみたいだし、私新人だからさ。ね?それでチャラよ」

「…本当にそんなことでいいのか?」

「いいのよ。お願いしてもいいかしら?」

「…うんわかった!そういうことなら任せてくれ!!」

 

 今の言葉を受けてようやく昴は土下座を終え立ち上がった。

 

「それに今さんには国近さんや当間のことでも世話になったしね。俺でよければ何でも聞いてくれ」

「うん、じゃあ明日からお願いしてもいいかしら?」

「ああ大丈夫だ。それじゃあまた明日からよろしくな今さん!」

「ええ、よろしく」

 

 今はにっこり笑みを浮かべてそう話すのであった。二人目の弟子と言えるかはわからないが昴に新たな生徒が一人できた瞬間であった

 

「…ねえ当真君」

「なんだ国近?」

「なんか私たちダシに使われてない?」

「だなぁ」

「二人にはすっごくお世話になったのになんか釈然としないなぁ」

「ま、俺らが言えた義理ではねえだろ」

「というかオペレーターなら私でも教えられるのに…今ちゃんめ…」

「はは、妬いてるねえ」

 

 ちなみに当てつけというわけではないが、今後も二人がテスト前になると昴と今を頼るようになるのが恒例行事と化すのはまた別の話である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほんと助かったわ。ありがとう桐山さん」

「うんどういたしまして」

 

 後日、冬島隊の作戦室にて昴は真木からお礼の言葉を受けていた。真木が淹れたお茶を飲みながら二人は話を続ける

 

「当真から聞いたけど、あなた国近さんと当間の二人を教えてたのね。ほんと無茶なことをするわ」

「そこは今さんの助けもあって何とか乗り切れました…」

 

 ハァとため息をついた真木は言葉を続けた

 

「今回は助かったけど、できないことならちゃんと断りなさいよ。そしたら私も代わりの人を探してたんだから」

「そりゃあどうしても無理なことは断るけど、わざわざ頼まれたことを断るのも申し訳ないからさ」

「そんなことしてたらあなたいいように使われるだけよ。頼んだ私が言うのも少しおかしなことだけど桐山さんは断ることも覚えたほうがいいんじゃない?」

「うんそうだね…覚えておくよ」

 

 もう少し言いたいことはあったもののお礼をするためにわざわざ来てもらったのにこれ以上お小言を言うのも忍びないと思った真木はそれ以上の言葉は控えることにした

 

「…まあおかげでうちの初陣も綺麗に始められそうでよかったわ。そうね…お礼と言えるかは怪しいけど」

 

 一拍おいて真木は言葉を続ける

 

「今度のランク戦でぶつかることがあれば全員撃ちぬいてあげる」

「…はは望むところ」

 

 お互いに笑みを浮かべながら二人は軽いお茶会を続けるのだった

 

 

 

 

 

 

 

「おい当真、あんな笑ってる真木ちゃん初めて見た気がするぞ」

「一応三上ちゃんの前でも結構笑ってるらしいが…やっぱ誑し込んでるじゃねえか桐山…」

 

 外から作戦室の中を覗き込んでいる当真と冬島は見たことがない真木の笑顔に驚きを隠せないのだった

 

「あ、そうだ一つ頼み事していい?」

「何かしら?」

「次のテストのときにはちゃんと勉強してるか当真のこと見ててほしいな」

「言われなくてもそのつもりよ」

 

 

「」

「…ああ当真?勉強…頑張ろうな?」

 

 そして後のボーダーNo.1スナイパーは自身の作戦室の前で燃え尽きたのであった




小話のつもりだったのに気が付けば今までで一番文字数が多くなってた件
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