どうもオペレーター見習いの桐山昴です。今日の勉強も終わったし帰ろうとしたら月見さんにとんでもないことを言われました。
「俺が東隊のオペを!?」
「そう、やってみない?」
東隊の防衛任務のオペを打診されました。
「いやいや!おれまだ全然見習いなのに東隊のオペレーターなんかやっていいんですか!?」
「オペレーターって言っても防衛任務だもの。基礎的なことさえできれば大丈夫よ。それに東さんたちを指揮しろって言ってるわけじゃないんだし気楽にやってみればいいのよ。私も隣で見てるから」
「気楽にと言われましても…そもそも東隊のオペレーターは月見さんなのに俺がオペしても大丈夫なんですか…?」
「急用が入ったオペレーターが別の人に代役を依頼することなんてよくあることだし気にしなくても大丈夫よ。」
そうは言ってもそんな急に…
「いいじゃないか、やってみたらどうだ昴」
すると話を聞いていた東さんも入ってきた
「ええ…いいんですか?東さん」
「月見も隣で見てるんだし、そんな気負わなくてもいいぞ」
そんな会話をしていると作戦室に三人の人たちが入ってきた。
「失礼します、東さん」
「お疲れ様でーす」
「お疲れ様です…?いたのか昴」
東隊のメンバー、二宮さん、加古さん、そして秀次だった。
「おう、三人ともよく来たな。突然だが今日の防衛任務のオペは昴がすることになった」
「・・・」
「あら・・・」
「・・・!」
「ちょ!東さん!」
俺まだ了承してないんですけど!?
「どういうことですか?東さん?」
そう尋ねるのは二宮さんだった。
俺は正直二宮さんが苦手だ…東隊の作戦室で初めて二宮さんに会った時にはいきなり舌打ちされてすごくビビった。さらに俺が東さんと月見さんに指導を受けると知った時にはこう言った
「東さん、こいつに指導するのは時間の無駄です。」
正直泣きそうになった。後から秀次に聞いた話だと二宮さんは才能のある人間が好きらしく一年間ずっとC級にいた俺を戦う才能がないのに無駄な努力を続けてるとして嫌っていたらしい。そりゃそうだ…その後は戦闘員としてではなくオペレーターとして指導を受けることを知ると俺を一瞥して作戦室を出て行った。それから二宮さんとは一度も話していない。
「ああ、月見の提案でな。昴もオペレーターとして少しずつ形になってきたから修行の一環として一度やってみるそうだ」
「へえ…面白そうですね。私はいいですよ」
そう答えたのは加古さんだった。
加古さんのことは正直よくわからない。初めて会った時に普通に自己紹介されたし、俺が東さんの指導を受けると聞いても二宮さんと違って特に反対しなかった。その後もたまに話はするが自分がどう見られてるのかはよくわからなかった。
「俺も構いません」
秀次はそう答えた。まあ秀次ならそう言うと思ってたけどさぁ…
「二宮も構わないか?」
「…月見、桐山のオペは問題ないのか?」
「はい、大丈夫ですよ。何かあった時のために私も隣にいますので」
「なら俺も構いません。好きにしてください」
え?…俺は一瞬ポカーンとしてしまった。二宮さんは絶対反対すると思ってたのだが・・・
「よし、なら今日のオペレーターは頼んだぞ昴」
東さんは俺の肩を叩きながらそう言った。もう逃げ場はないみたいだ…
「…はい!わかりました!よろしくお願いします!」
「あら、ふふやる気満々ね」
「頼んだぞ昴、お前ならできる」
こうなったらもうやるしかない。プラスに考えよう。あの東隊のオペができるんだ、こんな経験は滅多にできない。貴重な体験として頑張ろう!
加古と三輪の声が届かないほど昴は気合十分にオペに臨むのであった。
「お、終わった?」
「うん、終わったみたいね。ご苦労様桐山君」
結論から言うとオペは滞りなく終わった。門の位置と出現したネイバーの種類と数。これらを順次伝えているうちに気が付けば終わっていた。
ボーっとしている昴に東から通信が入った
『お疲れさん昴。初めてのオペはどうだった?』
「…!お、お疲れ様です!えっと…思ったよりはなんとかなってよかったです」
『はは、だから言っただろう?あまり気負わずにやればいいって』
「そうですね、私も結局一度も手を貸すことがありませんでしたし」
『そうだな。まあとりあえず今回は合格ってことでいいな。もしまた次があったらその時も頼むぞ昴』
「は、はい!わかりました!」
そう言うと東さんは通信を切った。
「は、はあ~…緊張しました」
「ふふ、でもミスすることなくちゃんとできてたじゃない。初めてであれだけできれば十分よ」
「はい!ありがとうございます!」
こうして俺の初仕事は終わったのだった。
しばらくすると東隊のメンバーが作戦室にもどってきた。
「みなさんお疲れ様です!」
「桐山君もお疲れ様。よくできてたわよ」
「ああ、月見さんと比べても遜色なかったぞ昴」
「は、はい!秀次も加古さんもありがとうございます!」
秀次と加古さんはそう言って褒めてくれた。嬉しい…
すると加古さんは二宮さんにこう尋ねた
「ねえねえ、二宮君はどう思った?」
「…あれくらいのオペなら誰でもできる。秀次も加古も褒めすぎだ」
う…やっぱり二宮さんは厳しい…
「相変わらず二宮君は厳しいわねぇ」
「お前らが甘いんだ。おい桐山」
「は、はい!」
「あれくらいで慢心するなよ。もっと精進しろ」
「はい…わかりました」
「ふん・・・」
やっぱり二宮さんは怖え…
「ほんと素直じゃないわねえ二宮君は。桐山君、二宮君は口ではああ言ってるけど内心では結構桐山君のこと認めてるのよ?」
「え?」
「そうよね三輪君?」
「…認めてるかは俺にはわかりませんが昴のC級戦を見てたみたいなんで気にかけてはいたと思います」
言われてみればなんで会ったことのないC級の戦闘なんか見てたんだ…?
「おい、二人とも余計な事を言うな。俺はただトリオンもないのにC級で無駄な努力をするこいつを見てられなかっただけだ。戦術の才能があるんだからとっととオペレーターやエンジニアにでもいけばよかったものを」
二宮さんは舌打ちしながらそう言った。
そうか…二宮さんC級の時から俺のこと見ててくれたのか…やばい、なんか泣きそうだ・・
昴は涙をこらえながら二宮にこう言った。
「二宮さん!俺もっとオペレーターとして努力します!また東隊のオペをすることもあるかもしれないのでその時はよろしくお願いします!!」
二宮は昴の方へ目を向けるとこう言った。
「口では何とでもいえる。行動で示してみろ。いいな?」
「はい!!!」
「ふん…」
そう言うと二宮は東に一礼をして作戦室を出て行くのであった。
「ほんとデレがわかりにくい男ね二宮君は」
「まあ二宮さんはああいう人ですから」
「ま、いいわ。」
そんなことよりと加古は昴に目を向けた
「桐山君。そろそろおなか空いてきてない?」
「ああ、そういえばもうそんな時間ですね」
「今日は桐山君の初仕事成功を祝って私がチャーハンをつくってあげるわ。」
「…!いいんですか!ありがとうございます!」
「気にしないで、チャーハン作りは得意なのよ」
そんな会話をする二人を三輪は青い顔で見ていた。ちなみに東と月見は話の流れで察したのか、既に作戦室を出ていた。
「…それじゃあ俺はこれで失礼します」
「あら、だめよ三輪君。どうせまたご飯食べてないんでしょ?三輪君の分も作るから食べていきなさい」
「・・・はい」
三輪は暗い顔で座り込むのだった。
「どうしたんだ秀次?まるで数週間前までの俺みたいな顔だぞ?」
「…今にわかる。というかお前のサイドエフェクトでわからないのか?」
「サイドエフェクトって何が…!」
その瞬間昴に悪寒が走った。
何だこの強烈なまでの嫌な予感は!?まるで一年前の大規模侵攻のようだ…
「どうした…」
「何だかわからないけどすごく嫌な予感がする…!」
「やっぱりサイドエフェクト発動してるじゃないか…」
三輪はそう呟く。こいつのサイドエフェクトが発動してるってことはもう確定でアウトじゃないか…
「ふんふんふ~ん。桐山君、三輪君二つ作るんだけど右と左どっちがいい?」
その時三輪の頭に電流が走った。二つ、二つということはどちらかは当たりかもしれない!そしたら昴のサイドエフェクトに頼れば助かる道がある!三輪は藁にもすがる想いで昴に尋ねた。
「おい昴、お前のサイドエフェクトはどっちに反応してる…?」
「…どっちも」
「…そうか」
終わった…今日は二つとも外れか…三輪はいよいよ諦めた顔でうなだれた。一方昴は何がなんだかわからないがとにかく悪寒が止まらなかった。
「よし!完成っと!二人ともお待たせ!さあ召し上がれ」
二人の前にチャーハンが出された。見た目はとても普通のチャーハンだった。
「…いただきます」
三輪は諦めた顔でチャーハンに手を伸ばす。
「・・・!」バタッ
やっぱりこうなったか…三輪は最後にそんなことを思いながら気を失った。
「しゅ、秀次!?」
「あら、三輪君ったら気絶するほど美味しかったのね。」
加古は笑いながらそう言った。
「あの、加古さん、秀次のチャーハンに何入れたんですか?」
「今日はもずくにチョコクリームを混ぜたチョコもずく炒飯よ♪初めての組み合わせだからどうなるかわからなかったけど気絶するほど美味しいってことは大成功ね」
そんなわけないだろ!!せめてもずくだけならあんな気絶することにはならなかっただろ。昴は心の中でそう叫んだ。
「さ、昴君も冷めないうちに食べて?」
「は、はい」
正直今すぐ帰りたかった。帰って愛する妹の美味しい晩御飯が食べたかった。でも目の前にには楽しそうにニコニコした加古さんが期待した顔で待っていた。こんな加古さんの前で帰れるわけがなかった。
「いただきます…」
あふれ出る悪寒を無理やり抑えながら一口食べる。
「………」
(辛みがある?これはキムチか?これなら美味しいのでは?いや待てなんだかねばねばする…納豆?…待て待て、まだ大丈夫だ。キムチの辛みとねばねばした納豆の食感、それにもちもちとした…もちもち?)
「あの加古さん、このチャーハンは何を入れたんですか?」
「ん~?最初はキムチと納豆を入れたんだけどそれじゃあ物足りないと思ってタピオカをい入れてみたのよ。キムチ納豆タピオカ炒飯ね♪どう、美味しい?」
「…はい、美味しい…です」
心にもないことを言った昴はその後無心でチャーハンを口の中に掻き込み、完食するのだった。
「ごちそう…さま…でした」バタッ
何か嫌なことが起こる予感はしても何が起こるかまではわからない。やっぱりこのサイドエフェクト、クソの役にも立たないのでは…?そんなことを考えながら昴は夢の世界へと旅立っていった
「あらあら、桐山君もよっぽど疲れてたのね。食べてすぐ寝ちゃうなんて」
一方そんなこと知る由もない加古は自身のチャーハンを美味しく平らげてくれた昴にご満悦であった。
「さて、私もお腹空いたし何か作りましょ」
そう言って加古は自分用のチャーハンを作るのだった。ちなみにその後加古が作ったもずくキムチ炒飯はまずまずの出来だったらしい。
「ふう、ごちそうさま…あら?」
チャーハンを食べ終えた加古はふとあることに気づいた。
「桐山くんの携帯?ずっと鳴ってるわね」
加古が昴の携帯を見るとLINEと電話が何件も来ていた。
「綾香…もしかして桐山君の妹さんかしら?」
すると再び着信がきた。加古は気絶している昴の代わりに電話に出ることにした。
「もしも」
「やっと出た。兄貴、何度電話したと思ってるの?今何時かわかってる?ご飯食べてくるのかどこかに泊まるのか知らないけど連絡ぐらいしてよ。この前心配かけないって約束したばかりでしょ?なんでそんなにすぐ約束破るの?大体いつも兄貴は…」
「…ふふふ」
こちらに一切言い訳させる気のないマシンガントークに加古は少し笑ってしまう。
「ちょっと兄貴聞いてるの?」
「ごめんなさいね?私は桐山君じゃないの」
「…え?あの、どちら様ですか…?」
「私は加古望、桐山君と同じボーダーの人間よ」
「…ボーダーの方ですか?兄貴…兄はどこにいるんですか?」
「心配しないで、うちの作戦室で寝てるわ。初仕事の後でよっぽど疲れてるみたい」
「初仕事…」
「あなたは桐山君の妹さんかしら?」
「あ、はい。桐山綾香です。いつも兄がお世話になってます」
「いえいえ、こちらこそよ。」
「あの加古さん、さっき初仕事って言ってましたけどもしかして今日」
「ええ、うちの部隊。東隊っていうんだけど、その部隊でお試しとして初めてオペをしてもらったのよ」
「そうでしたか。…あの兄はどうでしたか?」
「そうね…しっかり勉強してるのがちゃんとわかるオペだったわ。お兄さんの頑張りがよくわかるわね」
「そうですか…よかった…」
綾香は電話越しにほっとした表情で胸をなでおろした。
「ふふ、お兄さんのことがよっぽど心配だったのね」
「あ、いえこれはその…」
「照れなくていいのよ。お兄さんの初任務だもの。緊張して当然だわ」
「…ありがとうございます。兄は最近までずっとボーダーの戦闘員として伸び悩んでて暗い表情してたのでオペレーターに転向してからも不安だったんですけど、うまくいっててよかったです。」
「ええ、私にも何かできることがあったら協力するから心配しないで」
「ありがとうございます、頼もしいです」
ボーダーの先輩からのありがたい言葉に綾香は笑顔で答えた。
「…ところで綾香ちゃん?お兄さんから聞いたんだけど綾香ちゃんもボーダーに入るのよね?」
「あ、はい。まだ先ですけど」
「もし綾香ちゃんがボーダーに入って成長したら私の作る部隊に入らない?」
「…え?」
「今の私は東隊のメンバーだけど、私もいずれ自分のチームを組むつもりなの。その時に綾香ちゃんもどうかなぁって思って。もちろんお兄さんも一緒にね」
「あの…どうしてそんな急に?それに私まだボーダーにも入ってないしうまく戦えるかもわからないのに…」
「そうねぇ…勘よ」
「…はい?」
「ただの勘。桐山君のサイドエフェクトみたいなものね」
「サイドエフェクト?」
「ああ、ごめんなさい。よくわからなかったわね。ただ私の勘って結構当たるのよ?」
「…ふふ、急に変なこと言わないでくださいよ」
「あら酷い。ほんとによく当たるのに。それでどう?」
加古の問いに綾香はしばし沈黙したが、しばらくすると綾香はこう答えた。
「ありがたい申し出ですけど…お断りします」
「…どうしてかしら?」
「私は兄の作るチームで兄の下で戦いたいんです。だから加古さんの下では戦えません。ごめんなさい」
「…うふふ、そう言うと思ったわ。ただわかってたけど残念ね」
「私たち以外にも別の人はいると思うのでそちらの方たちをお願いします」
「でもそうなると中々人が見つからないのよねえ。イニシャル「K」のいい人も中々見つからないし」
「K…ですか?」
「そう、私自分の部隊を作るときはイニシャル「K」の人でメンバーを揃えようと思ってるのよ。でも才能のある「K」の人が中々見つからなくてね」
「…それは大変ですね」
変わったポリシーだなぁなんてことを考えながら綾香はそう返した。
「まあいいのよ、気にしないで。ただ気が変わったらいつでも連絡してね?」
「えっと…それは兄の携帯なので…」
「あらそういえばそうだったわ。だったら私と連絡先交換しましょ。」
「…はい、ありがとうございます!」
そういうと二人は電話越しで電話番号を伝えて連絡先を交換するのだった。
「それじゃあそろそろ切るわね?綾香ちゃんも何かあったら気軽に連絡してね。後桐山君はもう深く眠っちゃてるから今晩はここで寝かせていくことにするわ」
「わかりました。兄がご迷惑をおかけして申し訳ありません」
「いいのよ気にしなくて。それじゃあおやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
そう言うと加古は電話を切るのだった。
「ふう綾香ちゃんか、どんな子か楽しみだわ」
加古はいずれボーダーに入隊する綾香のことを楽しみにしながら作戦室を後にするのだった。
一方その頃綾香はネットで東隊について調べていた。
「東隊…東隊…あ、あった。この人が加古さんかぁ…綺麗な人だなぁ…」
綾香はいずれボーダーに入隊したときに加古に会える日を楽しみにしながらその日は眠りにつくのだった。
翌日、昴が目を覚まして帰宅すると烈火のごとく激怒した綾香によって連絡なしに泊まったことを説教され、加古のチャーハンのことをぼかし気味に説明するもすでに加古に対して憧れの感情をもっていた綾香には信じてもらえずそれどころか火に油を注ぐことになり、誇張抜きに一日中説教を受けることになるのだった。
ちなみに太刀川から加古のチャーハンのことを聴いていた烏丸は少しだけ慰めてくれたものの、「そもそもチャーハン食べる前に一度ご飯がいらないこと連絡したほうがよかったんじゃないすか?」という正論を叩きつけられたという。
後半は書いててすごく楽しかった