原神フレンズ大紹介(大嘘)   作:山田太郎2号機

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※このお話しは、初っ端から魔神任務『俺(私)たちはいつか再会する』のネタバレを含みます。


それが嫌だという方は、読み飛ばすことをお勧めします。というかこんな駄文読むよりも実際にプレイした方が百倍おもろいから、是非ともそうして。
















じゃ、本編行きます。






小話・1

 

 

1,兄妹、一国でまさかの再会エンド。

 

 

 

 

 

「俺は、まだ蛍と同じ世界には行けない。少なくとも今は・・・出来ない」

 

 

 己の半身とも言うべき存在であり、これまで自分を探すために旅を続けてきた妹に向けて兄が放った言葉は、そんな残酷なものだった。

 

 金髪の少女――『蛍』が何かを話すより前、その兄、『空』は続ける。

 

 

「聞いてくれ、蛍。――俺は既に旅をした。だから、蛍も俺と同じように終点に辿り着けば、この世界の淀みを見届ける事が出来る」

 

 

 ――俺達はいずれ再会する。急ぐ事は無いんだ蛍。待つだけの時間が充分にある。

 

 

 蛍は答えない。ただじっと俯いて、空の言葉を理解する事を拒んでいるようにも見える。

 

 当然だ。これまで彼女が多くの苦難を越えてきたのも、仲間達と共に長い旅をしてきたのも、全ては天理の調停者なる謎の存在に囚われた兄、空を見つけ出すため。

 だが現実には、その兄はこの世界に仇なす『アビス教団』の者らに『王子』と称され、こうして妹の前に敵として立ちはだかっている。

彼女がその事実にショックを受けないはずがない。

 

 そんな彼女の側に浮遊する白い少女――『パイモン』は、旅を重ねて『最高の仲間』になった相棒の様子を不安そうに見つめていた。

 

 

「・・・俺達には、充分時間がある」

 

 

 空は繰り返す。まるで自分に言い聞かせるかのように。

 

 

 ゆっくりと、空の隣に控えていた人影が動き出す。

 全体を灰と青色に揃え、顔まで一分の隙も無く肌の露出のないその装いは、さながら硬質で冷たい鎧騎士のような印象を感じさせる。ただ一点、胸の中心に胎動する青いコアのみが異様な存在感を放っていた。

 

 

 

 アビスの使徒。

 世界の侵略者たる『アビス教団』の精兵、その中でも水元素を巧みに扱う『激流』の号を冠するソレが虚空に手をかざすと、突如として空間が歪み出す。歪みは程なくして空間を穿つ孔にまで広がり、中心には紫色で幾何学の紋様が浮かんでいた。

 

 

「――転移門」

 

 

 それがなんであるかを知っている男――ダインスレイヴは僅かに顔をしかめる。

 直ぐに使徒は孔を通り、この場から姿を消す。空も続いて孔に入ろうとしており、後数秒もすれば使徒と同じく、空はこの場から完全に離脱する事だろう。

 

 

「まずい、このままでは・・・!」

 

 

 今ここで空を逃がすという事は、せっかく掴んだ手がかりをむざむざ手放すのに等しい。

 そうはさせまいとダインは駆け出そうとして――

 

 

 

 ――それより速く、蛍の手が空の腕を掴んだ。

 

 

「なっ!?」

「――ほ、蛍?」

 

 

 蛍がその場に居る事にこの場の誰もが疑問に思ったことだろう。

 何せつい数瞬前まで、空と蛍との間には10メートル程もの距離があったのである。だというのに蛍は現在空の側に立ち、その腕をしっかりと捕まえている。

 歴戦の猛者すら知覚出来ぬ程の早業。ダインと空(とパイモン)が驚くのも無理からぬ話だ。

 

 

「――何処にいくの?」

「ヒッ」

 

 

 空の話を聞いていた時と同じく俯いているため、蛍のその表情をうかがい知る事は出来ない。

 だが、空は蛍のその底冷えするほど硬い声色に無性に嫌な予感を覚えた。

 

 

「・・・蛍?」

 

 

 恐る恐る蛍の名を呼ぶ空。その頬に冷や汗が一筋流れる。

 それは蛍の様子の異変からか、はたまた彼女によって無言で加速度的に締め上げられている己が腕の痛みからか。

 

 数多くの死線をくぐり抜けてきただろうダインスレイヴですら、蛍が無言で発する鬼気迫る覇気に尻込みしている。それを間近で受ける空は言わずもがな。

 パイモンだけは戦いの感覚に疎いためか、この状況は一体どういうことだと首を傾げていた。

 

 

「お兄ちゃん」

「蛍? 一体どうs「返事」ハイ」

「私ね、お兄ちゃんをずっと、ずうっと探してたんだよ?――それなのに、お兄ちゃんだけ好き勝手言うだけ言って、用が済んだらそれでハイサヨナラしようだなんて」

 

 

 ――ドウイウツモリ?

 

 

 瞬間、顔を上げた蛍の表情を見て、空の顔は一気に青ざめる。

 あ、ヤバい俺死んだ、と。

 

 

「お、おい蛍落ち着けよ! 一体どうしちゃったんだ・・・なんかお前、変じゃないか? 目に光がないっていうか、凄く怖い感じになってるぞ」

「・・・あ、パイモン」

 

 

 目に光がなく、凄く怖い。

 相棒の急変を不思議に思ったパイモンは、今の蛍の顔をそう評した。事実蛍の澄み切った琥珀色の双眸は今や濁りきり、表情も能面のように一切の起伏がない。

 

 ――元から感情の起伏は薄い方だったけど、それでもこんな虚無みたいな顔をする奴だったかな、とパイモンは疑問に思う。

 

 

「・・・うん、そうだね。ここじゃ話しづらいよねお兄ちゃん。じゃあ取りあえず続きは外に出て、私の部屋でゆっくりしようか」

「え」

「ダイン、そしてパイモン――きっと二人ともお兄ちゃんに聞きたい事が沢山あるだろうけど、とりあえず今日のところは私とお兄ちゃん、二人だけで話をさせてくれない?」

「ああ・・・」

「お、おうっ!」

「ほた「お兄ちゃんは黙って」ハイ」

 

 

 冷や汗を流すダイン。

 顔を引きつらせる空。

 終始不安そうなパイモン。

 取りつく島もない蛍。

 

 最早この場で彼女を止める術などなかった。その眼力たるや、風魔龍の風礫すら一瞥でかき消しそうな勢いである。

 

 

「私にここまでさせたんだから、今夜は覚悟してよね、お兄ちゃん」

「え? 蛍、それはどういうッ――!?」

 

 

 妹の不穏な言葉の意味を聞き返した刹那、恐ろしく速い手刀で蛍に意識を刈り取られる空。

 半ば入りかけていた転移門から容易く引き剥がされ、そのまま蛍にずるずると秘境の出口へ引きずられていく。

 空の体躯は一応蛍より大きいハズなのだが、その程度の生涯など妹の怪力を前に全く意味をなしていない。

 

 

「――パイモン。これは、取りあえず、一件落着で良いのか・・・?」

「さ、さぁ。良いんじゃないか? よくわかんないけど、兄妹で再会は出来たんだしな」

 

 

 その後ろ姿を、ダインとパイモンは若干引き気味に見つめていた。

 

 

 

 

 

 ・・・

 

 

 

 

 

「――でも最後に、その秘境の一番奥で、カワイコちゃんは一緒にお兄さんと帰ってこれたのね。良かったじゃない」

 

 

 夕方。

 

 ジンの執務室で、パイモンは事のあらましを説明していた。

 それを聞くのは部屋の主たる西風騎士団団長代理ジン、そして彼女と仲の良いリサの二人。パイモンが精一杯説明するのを二人は微笑ましげに見守っている。

 

 

「確かに喜ぶべき事だ――だがパイモン、何故君がその報告を? 彼女の性格からするに、そういった重要な事柄は自分から伝えに来ると思うんだが・・・」

「うーん・・・でも、ずっと探していた家族が見つかったんだ。今日くらい誰にも邪魔されずに二人でいたって良いんじゃないか? オイラは別に気にしないぞ!」

 

 

 ジンの疑問は、蛍を知る誰もが抱いたものである。

 確かに、本来パイモンが説明役を担うことは殆どない。その前に蛍が全て説明してしまうからだ。

 だが今回、パイモンはおろか、他の人に一切の説明をしないまま、彼女は兄を引き連れて宿屋に引きこもってしまった。故に理由もその思惑も誰一人預かり知れない。

 

 

「そうだな。――しかし、栄誉騎士の目的が達成された今、団長としてこれから先のことについて彼女と話し合わなければならない」

 

 

 そこまで言って、少しバツが悪そうに目を伏せるジン。

 騎士団の団長として団員の行動報告を求める一方、本心では今も行われている筈の兄妹の語らいを妨げたくはないのだろう。

そんな友人の様子を見かねてリサは溜息をつく。

 

 

「全く・・・貴女ったら相変わらずお固いんだから。今日一日くらい、二人っきりにしてあげたって良いじゃない」

「――それも、そうだな。急を要する訳でもないし、彼女が報告をないがしろにするとは思えないしな」

 

 

 リサの鶴の一声に、ジンは安堵混じりの笑みを浮かべた。

 己に何処までも厳格でありながら、他人には何処か非情になりきれないジンだから皆大好きなんだと、相棒の蛍は言っていた。パイモンはその様子を見てニパッと笑顔を綻ばせる。

 

 

 

 三人で語り合い、夜は更ける。

 旅人である蛍が為した偉業は数多く、ちょっとやそっとでは語り尽くせない。パイモンによる相棒二人との武勇伝は、朝まで続く事になった。

 

 

 

 ――時を同じくして、兄妹間でどんな話し合いが行われているかなど知る由も無く。

 

 

 

 

 

 翌日。

 

 

「――ああ、パイモンか」

「どうしたんだ!? ダイン、何かすっごく疲れてるみたいだぞ・・・」

 

 

 蛍の泊まっている宿屋。

 一夜明けてそこに向かったジン達を、背を壁に預けてげっそりした表情で出迎えたのはダインスレイヴだった。

 ちなみにリサは居ない。朝にリサが起きている事は少ないので仕方ない。

 

 

「ダイン――栄誉騎士と一緒に行動を共にしていた、ダインスレイヴ殿か」

「・・・ああ」

「ダイン、本当にどうしちゃったんだ――もしかして、昨日実は怪我をしてて、それを我慢してたのか?」

「いや、そうじゃない。そうじゃないんだ・・・」

 

 

 ダインの歯切れが悪いのをパイモンは心配する。

 そんなに知りたいなら自分で確かめてくると良い、と言って上の階を指し示したきり、ダインは口を閉ざしてしまった。その態度に首を傾げるジンとパイモン。

 

 

「本当にどうしちゃったんだ、ダイン・・・」

「――ひとまず、行ってみるほかないだろう」

 

 

 ジン達は階段を上り、そして蛍たちの泊まる部屋の前へとたどり着く。

 

 そこで聞こえてきたのは、

 

 

 

 

 

 ――蛍、もう無理だって。これ以上したら――んじゃうから――

 ――何言って――まだ百回もしてない――ホラさっさと私で岩元素共鳴して――

 ――イヤホント――妹に絞り殺されるとかマジで笑えないから――

 

 

 年若い少年少女の物議しか醸さない会話であった。

 

 

 何をしているかなど口にするまでもない。

 一晩中王子様(笑)が栄誉騎士(仮)に元素爆発を強いられ、そして今も絶賛戦闘中()という訳だ。別に突破ボーナスがチャージ効率なわけでもないのに、何とも非情な妹である。

 

 扉の前で絶えず響く捕食者(ホタル)被捕食者(ソラ)の悲痛なやりとり。

 だが暫くするとそれも途切れ途切れとなり(主に男の方の会話が消えていったのだが)、代わりに謎の湿り気を帯びた音が大きくなる。

 

 実に生々しい。

 

 

「・・・」

「・・・出直そうぜ、ジン」

 

 

 一応、きちんと日を開けて宿屋に訪ねているジン達は悪くない。

 繰り返そう。別にジンやパイモン、そして約束通り次の日を待ったダインスレイヴには何の落ち度もない。

 

 しかし尋問対象である空の悲惨な末路を知ってしまった後だと、何故か訪ねた此方側が悪いような錯覚に陥る三人であった。

 

 

 

 階下に戻る二人。上ってから引き返すまで一分かかっていない。

 一階には先程と同じ場所にダインスレイヴが立っており、先程と同じ顔でただ一言。

 

 

「・・・解ったか」

 

 

 二人は黙って頷いた。そのまま500モラ傭兵(ダインスレイヴ)の横に並ぶ。

 それからジンは宿屋の窓から見える空を遠い目で眺め、パイモンはぐるぐると円を描いて飛びながら、ハイライトの消えた瞳で自身の飛行の後に残る星座をボーッと見つめていた。ダインに至っては朝っぱらから麦酒をがぶ飲みする始末である。

 

 

 空を眺め時折『あ、ちょうちょ』と現実逃避する西風騎士団団長代理。

 周りをふわふわ漂っては『アハハ、待てぇ』と無限に自身のケツを追っかける空飛ぶ非常食。

 そしてスタイリッシュな格好いい服を着ているのに、日中から深酒をする隻眼の飲んだくれ。

 

 

 混沌とした顔ぶれである。

 

 

 謎の三人の組み合わせに宿屋に訪れた誰もが怪訝な顔を向けるが、誰も尋ねるようなマネはしない。絡んだら絶対に面倒くさい厄ネタに進んで首を突っ込みたがるバカは此処にはいないのだ。

 

 だが三人が、宿屋の者達が現実を直視せずとも、時間は非情に進む。

 一人の嬌声と一人の断末魔が空に消え、モンドの朝は過ぎていく。

 

 

 

 

 

 ほらお兄ちゃん。やるべきことは、まだまだ沢山あるんだから――

 ゆる、ゆるして、ほた・・・アッ――

 ――ふふ、旅の収穫だね。

 

 

 

 満 身 創 痍(おわり)

 

 

 

 

 

 

 ・・・

 

 

 

 

2,クレー、一人でおつかいをする。

 

 

 

 

 

 ――この小包を清泉町のドゥラフさんのところにまで届けてくれないか。大事な荷物なんだ。

 

 

 じゃじゃーん!!

 西風騎士団火花騎士、クレー参上!

 

 

 いまね、クレーは騎士団のニンムの真っ最中なの。

 しかもジン団長からじきじきのニンムで、すごくすっごく大事なものが入ったにもつを、清泉町のドゥラフさんに渡してほしいんだって。

 だから途中でどっかーん! して壊さないようにって、何度も何度も注意されたんだ。

 

 

 城内爆破は反省室。

 ケガ人居るところにジン団長あり。

 山火事は一巻の終わり。

 

 

 ふふん、クレー知ってるよ。

 これはクレーが騎士団で生きていくための心得。だから、今回のニンムでは山火事に注意して行けばいいの!

 

 だから今日はクレー、火の出ない特製爆弾を鞄に詰めてきたよ! これなら山火事にもならないし、清泉町の木も燃えないから、絶対に怒られないんだ。

 

 

「クレー・・・やけに自信満々だったが、本当に大丈夫だろうか」

 

 

 最近はジン団長に怒られてばっかりだったけど、今日こそいっぱいホメてもらうんだ。

 

 ――それじゃ、ドゥラフさんのところまで、出発進行!

 

 

 

 

 

 みんな。クレーだよ!

 

 クレーね、さっき珍しい模様のトカゲを・・・って、そうじゃなかった。

 ちゃんとニンムに集中しないと。失敗、失敗。

 

 ――うん、それでね! ちゃんとクレー、清泉町にたどり着けたんだ。

 それで早速ドゥラフさんって人を探してたんだけど・・・

 

 

「ドゥラフさん? ああ、彼は今、狩りに行ってていないんだ。そうだな、帰りは――昼頃になるかなあ」

 

 

 残念、ドゥラフさんはお仕事でいないんだって。

 ニンムが早く終わったらお外で遊んでいいってジン団長と約束してたから、ちょっとがっかり。

 

 でもクレーは我慢したの。クレーは大人だから!

 

 だから聞いたおじさんに『あとで荷物だけ渡しておこうか』って言われても、ちゃんと自分で渡しますって言えたよ。

 西風騎士団の一員として、セキニンジューダイ? なニンムを放り出すなんて出来ないもん。

 

 

「・・・退屈だなぁ」

 

 

 でも、やっぱり待つ時間はつまんない。

 おじさんからは町の周りだけなら遊んでもいいって言われたけど、どこに行っても木と畑しかなくておもしろくない。

 

 

 ・・・ちょっと町から出ちゃうけど、シードル湖に行ってみようかな。

 

 

「うん、そうしよう!」

 

 

 シードル湖のスズキは美味しいから、ちょっとだけ捕ってお昼ごはんにしよう。

 ジン団長にバレたら大変だけど・・・やり甲斐はあるもんね。

 

 

 

 

 

「おぉ―――!!」

 

 

 湖には、スズキが沢山!

 青色のから、金色のやつ。それ以外にも変なサカナがいっぱいいる!

 

 きっとこれだけ居れば、大漁間違いなしだね!

 

 

「それじゃあ――えい、どっかーん!!」

 

 

 湖に爆弾を投げ入れたら、これまでに見たことないくらいのサカナが浮かんできた。

 スズキに鉄砲フグ、グッピー。・・・そしてこの、変なサカナ!!

 

 

「――Gua」

 

 

 ・・・()()()

 

 お面を被ってヒルチャールみたいな、サカナ。鳴き声もなんだかヒルチャールみたい。

 

 今回の爆弾は特別製で、爆発すると大きな音とショーゲキハを起こすような仕組みにしてるの。

 だけどその代わり火力が弱くて、魔物相手だとちょっと火力不足かもって思ってたんだけど――。

 

 

「Yo dala si? Zido dala !!」

「――えーっと、もしかして、怒らせちゃった、かなぁ?」

 

 

 ヒルチャールサカナはとっても怒ってるみたいで、ずっとクレーに大声で何か叫んでる。クレーの方を指さししたり、足をぺたぺた地面に打ったりしてるだけで、いますぐ襲ってくる様子はないみたいだけど。

 ・・・どうしよう。ちょっとだけ怖い。

 

 いつものボンボン爆弾は、新型の特製爆弾のケンキューに夢中で作ってなくて、今は持ってない。でも、だからって新型のやつを当てても倒せないのは、今のヒルチャールサカナを見たら分かっちゃう。

 

 

「yo mani mi, Ye dada !!」

 

 

 でもさっきから、ヒルチャールサカナの様子が変。

 何を言ってるか分からないのは変わらないんだけど、それでもずっと見ていたら、突然また水の中に入っていったの。

 

 

 ――ヒルチャールは水に弱い。だからクレー、困った時は爆弾でヒルチャールを水に落としてみると良い。

 

 

 ジン団長はそう言ったあと、お手本だって言って風元素で湖にヒルチャールを投げ込んでた。

 

 だからこのヒルチャールそっくりのサカナも、きっと水が怖いはず。

 それなのに、しばらくしたらヒルチャールサカナは湖に浮かんでたサカナを沢山抱えて、岸に上がってきたの。

 そしてそれを地面に置いて、クレーとそのおサカナたちをかわりばんこに指差しはじめたんだ。

 

 

「Ye dada, Todo yo mita !!」

「・・・え、クレーに?」

 

 

 クレー、その時初めてヒルチャールサカナが何をしてたのか分かったんだ。

 きっと、助けてくれたお礼をクレーにしてくれてたんだって。

 

 

「Mimi tomo, mosi mita !!」

「――うん、一緒に食べよう!!」

 

 

 だからクレー、その日はヒルチャールサカナと一緒におサカナを食べたよ!!

 おサカナは沢山あったから二人で食べきれるか心配だったけど、ヒルチャールサカナが沢山食べてくれて、すぐになくなっちゃった。

 

 

「Ika yaya kundala yo, Mimi mani ye !!」

「うん、ばいばいヒルチャールサカナ!」

 

 

 そのあとはクレーもニンムがあったから、握手して別れたんだけど、その時もヒルチャールサカナはクレーに手を振って見送ってくれた。

 ヒルチャールのお面って、今までずっとこわ――へ、変だなって思ってたけど、なんだかヒルチャールサカナにあった後だと、ちょっと可愛いなって思えるようになったんだ!

 何時かヒルチャールサカナにもう一度会えたら、その時はまた一緒にサカナをどっかーん!!ってしたいなぁ。

 

 

 

 ――あ!

 ちゃんとニンムはカンリョーしたから安心してね、ジン団長!

 

 

 

 

 

 ・・・

 

 

 

 

 

「・・・成る程。以上だな、クレー?」

「うん! 火花騎士クレー、キチンとニンムホーコク出来たよ!」

 

 

 西風騎士団の執務室。普段は団長が書類の処理を執り行うその部屋には、絶えず多くの紙束と要望が舞い込んでくる。それらを効率よく消化するため、娯楽の類いを極端に少なくし、代わりと言わんばかりに壁一面の資料が収められたその部屋は、ある種その部屋の主の性格を表していると言えよう。

 

 子どもからすれば面白くないであろう部屋の中、任務を終わらせたクレーは団長ジンと対峙していた。

 

 クレーはやりきった、という顔で目をキラキラさせながら、ジンの次の言葉を待っている。大方ジンに褒められる事を期待しているのだろう。

 だが当のジンの顔はきわめて険しく、複雑だ。怒っているようにも見えるし、安堵しているようにも見える。

 

 

「クレー」

「うん!」

「とりあえず、報告は受け取った。・・・一人でよく頑張ったな、クレー」

「うん! クレー、凄く頑張ったよ! だから今から外に遊びに――」

「クレー、待て」

 

 

 褒められて終わりだと思っていたクレーは、ジンの制止の声に何事かと首を傾げる。

 今にも飛び出しそうなクレーの肩に手を添え、ジンは続けた。

 

 

「シードル湖で爆破漁をした、というのは、本当か?」

「・・・あ」

 

 

 固まるクレー。

 眉をつり上げるジン。

 それを扉の間から盗み見て、無言で爆笑するガイア。

 

 

 

 クレーの任務は、最後の最後で失敗してしまった。

 

 

 

 

 

 ――orah!!

 

 

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