お手柔らかにお願いします!
どこまでも続いているような白い空間。そんなところにポツンと一人で立っていた。
ここはどこだろ?今まで何してたんだっけ?
そう考えていると、一際眩しい光に襲われて目をつぶった。
んぬぬ、眩しかった。一体なんなんだ?てか今、どこにいるんだ?なんでかわからないけど目は開かないし、全身があったかい。いや、嘘。鼻と足先だけ寒い。
っておわっ!急に頭も寒くなった!いや別に髪の毛が少ないとかじゃないからな!いやそうじゃなくて!
よくわからないけど早くここから出してくれぇ!!
「うおっ!出てきたぞ!頑張れ!!!」
こんな状況になってから初めて人の声を聞いたぞ!?ほんとにどうなってるんだ!?
「頑張れ!ローブデコルテ!!あとちょっとだ!!」
この緊迫感のある声色。そして出てきたぞという言葉。
もしかして:出産?
そう頭に浮かんだと同時にぽんっとわさわさしたところに落ちた。
「よし!頑張ったな!ローブデコルテ!!お疲れ様!!」
これ、外に出れたってことでいいのかな?でもまだ体が上手く動かない…はよ動かせろぉ!ていうか目が見えないから動いたら危険ですね!はい!止まります!
そうして止まっていて少ししたら、横でカサカサっていう音がした。振動もきたし、何か動いたのかな?
とか考えてたら柔らかいものでわしゃわしゃされてます。何故?しかも体がぺろぺろされてる気がするし…。
この時にはなんとなーく、自分が人間じゃないことは察していた。じゃあ一体何…?とか思ってたらよーやく目が見えるようになってきましたよ!
目の前に馬!!
俺の体を真っ白いタオルで拭いてくれる人たち!!
そして自分の体!!!
もうわかってしまった。まぁまず目の前に馬がいた時点でわかったような気がしてたんだけど!!
なんと!馬に転生!やったね!!
いやどういうこと?????
自問自答を繰り返していたら、鼻をごしごし拭かれた。お姉さんやめて!もっと優しく拭いて欲しい!
されるがままになっていると口に哺乳瓶?みたいなのを突っ込まれた。どんどん流し込まれる謎の液体。ちょー怖い!何飲まされてるの俺!?あ、でもそんなに味悪くないかも。逆においしい。ちょうど喉が使えるようになってきたからたくさん飲んだるぜぇ!!
「この子すごい勢いで飲んでいきますね…他の馬よりも断然飲むの早いですよ」
だって久しぶりの飲み物だもん!しかもおいしいし!あ!お姉さんもうなくなっちゃったよ!はやく次の欲しい!あ、もうないのね…そっか…。
そういやこのわさわさしてたの藁か。初めて触ったというか寝転んだわ。意外とあったかい。
よし、一旦ここで今まであったことを整理しよう。めっちゃ眩しくて目をつぶったら馬になってて、タオルでわしゃわしゃされて謎の液体を飲まされた。うーん、考えるほどわからないぞぉ?
あーーー、もう考えるのが面倒になってきた。いきなり情報量が多すぎたんだ。そうこれは夢。きっと脳がだいぶバグってリアルすぎる夢をみせているんだ!はー良かった。夢なら安心できるわ……。夢の中で寝るなんてちょっとおかしいかもだけど、おやすみなさい……。
『こら!坊や!起きて!!』
ハッ!!
今、人とは違うような声が!?
もしかして、お母さん…?
『大丈夫?坊や?』
この安心する声。優しく全てを包み込んでくれそうな暖かさ。まさしく母ッ!!お母さぁぁぁん!!!!
お母さんに優しくされたことで、久しぶりに人(馬?)の優しさに触れたと気付き、お母さんに甘えたくなってしまった。
ボタボタと涙を流してお母さんを呼ぶ。
『ひひぃん…!!!(おかあさぁん…!!!)』
「おうおうどうしたんだ!?急に泣き出したぞ!?どこか痛むのか!?!?」
違うと首を横にブンブン振る。
ごめんよ人の皆さん!どこも痛くない超健康体なんだ!!でも、今はお母さんに甘えさせて!!
お母さんにもっと近付きたい!!くそう!なんで上手く立てないんだ!これじゃお母さんに近付けないだろ!!
「お、立とうとしてる。結構はやいな。まだ生まれてから20分くらいしか経ってないのに。」
前足に力を入れて、後ろ足で跳ぶ!ぐぇっ、頭から藁に突っ込んじゃった…。これお母さんに見られるの恥ずかしいな…。はやく立てるようになろう。うん。
少し休憩してから、もう一回前足に力を入れて、後ろ足で跳ぶ!うぶぇ、左に吹っ飛んじゃった。うーん後ろの左足の力が強かったのかな?次はちょっと右の力強くしてみよう。
お!今回は皆さん手伝ってくださるのか!ありがたい!じゃあ今度こそ…!
失敗。失敗。失敗。
「…なあ、こいつ立つの下手じゃないか?」
う、うるせぇやい!!わかってるわそんなん!いまいちまだ筋肉の使い方とかがわからなくて立ててないだけじゃい!そりゃ、他の馬よりちょっと下手かもしれないけど…。
ああああ!もうやけだぁ!おもいっきり跳んでやる!はいせーの!ドン!!
立てちゃった……
「うお、!?足の方問題ないか!」
なんだなんだ?急に足さわってくるじゃんびっくりするぞー?
「はい!大丈夫そうです!」
アッもしかして跳んで立っちゃったから足に問題ないか心配してたのか。すみません…。
立てたとはいってもまだ足がくがくしてるし、自分でろくに動けない。お母さぁん!
『よく頑張ったね、良い子。』
さっきからこっちの立つ様子を緊張したような眼差しで見続けてくれたお母さん。ようやく安堵してこちらにすり寄ってきてくれた。お母さん、好き…!
あ、お乳飲んでいいんですねわかりました!ん?それ超恥ずかしくないか!?いやでも今の俺は子馬…子馬…子馬……よし!いける!失礼しますお母さん!
「しっかし真っ黒だなぁ、どこからの遺伝だ?」
「父母両方鹿毛なんですけどね…。多分ローブデコルテの五代くらい前に青毛の父がいますね」
「大分隔世遺伝だなぁ」
「……こいつ走れんのかなぁ…まあ俺たちがなんとかするしかないか」
これはまだ三が日を終えてまもない2013年1月4日の出来事であった。
いろいろな架空馬を読んで自分でも書いてみたいなと思い書きました。
亀更新です!よろしくおねがいします!
あと謎の液体は乳酸菌です。
ちなみにお母さんのローブデコルテさんはこの作品では史実より三年長生きします。(エレーデちゃん生まれた年被っちゃってすまん!!!)