いろいろ足りないかもしれないですがよろしくお願いします!
やあ!俺は元名無しの子馬!
っていうのも、正式な名前じゃないけど、名前がついたんだ。
どうやら俺が泥で遊びまくってたから、「どろんこ」っていう幼名になった。
「ほんとにどろんこはいつも体が黒から茶色になるぐらい遊ぶよなぁ」
へへ、だって意外と泥遊びって楽しいんだぞ?水がびっちゃびっちゃするし、自分の足で土を柔らかくしていくのが楽しいんだ!…なんか俺馬になってから精神年齢低くなってるような気がする。
「はいはい、楽しそうでよかったよ」
そう言いながら体を水洗いしてくれる兄ちゃん。名前はハルト。
ハルトは生まれた時からずっと世話をしてくれてる。なんなら俺が生まれるとき、出産の手伝いをしてたらしい。らしいっていうのもよくハルトが
「俺どろんこが生まれたときいたんだぜー?あの変な立ち方も見てるし」
って話しかけてくるから知ってるんだ。てかその話はやめろォ!
「てか、本当にどろんこって真っ黒だよなぁ。どろんこのお母さんだっけ?五代くらい前に青毛がいたの。そっからの遺伝ってだいぶ遠いよなぁ」
そうそう、俺青毛なんです。全身真っ黒!しかし蹄だけ白い!面白いね!
「流すから足あげてー、はい、いーよ。ありがと。にしてもこれ傷じゃないんだもんなぁ、かっこいいよ、雷みたいで」
しかもなぜか左後ろ足のところにハルトいわく雷みたいな模様があるらしい。ほかのところでいう、靴下?みたいなもんらしい。
「はい、終わったよ」
ありがとなハルト!早速遊びに行ってくるわ!ってぐぇ!手綱引っ張るなよぉ!!
「おいおい、もう馬房に戻る時間だぞー?」
あれ?こいつ平然としてるな?もしかして隠れマッチョ?この!このぉ!!
「うぉ!引っ張るな引っ張るな!!もう戻るんだぞー!?」
疲れたしもういいかぁ。はよ帰ろ帰ろ!
「変わり身はやいなぁ…まあおとなしく戻ってくれるならそれでいいんだけど」
ちなみに俺の離乳はすでに終わってる。時の流れが早すぎるっ!
離乳の時は大変だったなぁ…俺お母さんにべったりだったから、離れるって気づいたとき暴れだしたからね。暴れたと思ったらお母さんの手綱を持っている人の服を噛んでずっと動かなかったし。
無理やり離れさせられたときなんて、柵飛び越えたわ。いつも世話してくれるハルトには申し訳なかったけど、無我夢中だったから気にしてる余裕がなかったんだ。飛び越えたってなったらもう大騒ぎ。人が慌てて俺を抑えようとするけど、それを突き破って進もうとしたとき、お母さんが普段出さない大声で俺のことを叱ったから、ようやく暴れるのをやめた。
お母さんは叱った後、優しく『頑張ってね』って言ってくれたから、落ち着いて柵の中に戻れたんだ。
みんなお母さんが大声出したことにも驚いてたけど、そのあとすんなり戻っていった俺に一番驚いていた。そりゃあそうだよなぁ、さっきまで暴れまくってたやつが自分から戻っていくんだから。
「ほれ、着いたぞ」
お、そんなこと考えてたらもう馬房が目の前に。ちゃんと寝藁が敷いてある!いいねぇ!しかも飼い葉もいっぱいある!ありがとなハルト!!
飼い葉に突っ込んでた顔を上げて、ハルトの顔に鼻を摺り寄せる。
「おうおう勢いよく食うなぁ、喜んでくれてよかったよ」
だって目一杯遊んできた後だぞ?そりゃお腹ペコペコよ。
もっしゃもっしゃ飼い葉を食べていると、ハルトが、
「どろんこは一体誰に買われるんだろうなぁ...」
って急に言い出したから、ういうい、寂しいのかぁ?って鼻で頭をつついてやった。勿論俺だって離れるのはすっごい寂しい。でも、お母さんに頑張ってねって言われたからにはシャキッとしてないといけない。お母さんの言い付けは絶対だゾ☆
とか言ってたら本当にお別れの時間が来ちゃいました。当然拳で抵抗しようと思ってたけど、迎えに来た調教師さんがどっかで見たことある顔だなーって思って、頭をフル回転させて思い出したら矢萩さんだった。
え、俺コントレイル君と同じ厩舎に行けるの!?やったー!!!まだコントレイル君いないけど!!
嬉しくて跳ねそうになるけど、ここから離れなくちゃいけないってことも思い出して、感情の整理がついてない。
ここから離れるってことは、お母さんにも会えないし、なによりハルトをはじめとして、俺を生まれたときからずっと育ててくれた人達と会えなくなってしまう。
どうしよう、今すっごく辛い。
もともと俺は人間の頃から別れっていうのがすごく苦手だった。だって、せっかく仲良くなれたのに離ればなれになるなんて嫌だろ?あ、もうこの人と会えない、話せないかもしれないんだって。小学校の時に引っ越してった友達を見てそう思った。それ以降別れが一番辛いものになった。
「おい、どうした?大丈夫か?」
昔のことを思い出し、別れが辛くなっていつまでもその場から動かない俺を見てハルトがそう問いかけてきた。
ハルト、そんな心配そうな顔しないでくれ。大丈夫、そのうち動けるようになるから。
「なぁどろんこ。少し話、しないか?」
え?
「すみません、少しお時間貰ってもよろしいでしょうか?」
「あぁ、今日の予定はもうここで引き取るだけだから、大丈夫だよ。」
「ありがとうございます。じゃあどろんこ、ちょっとあっちに行くぞ。」
そう言ってハルトは俺の手綱を引き、いつもの馬房に戻ってきた。
なんで急にこっちに来たんだ?そう思った時にハルトは口を開いた。
「なぁどろんこ。お前、ここにいるみんなと別れるのが辛いとか思ってるだろ?」
思っていることを当てられて体が強張る。
「やっぱ当たってたかぁ。まぁみんな知ってたけどなー、お前が異様に別れを嫌がること。お?なんで知ってる、みたいな顔してんな。そりゃ母馬と別れる時あんなに暴れたこととか、放牧の時構ってやらないといつまでも袖を噛んで離さないで、遊びに行かないこととか。そんな事があればよほど鈍感じゃない限りわかるよ。お前、結構わかりやすいぞー?」
「そんなに俺らのことを好いてくれるのはもちろん嬉しい。けどな?どろんこがこれから頑張って、レースに出ることを待ち望んでる人達がいるんだ。馬主、調教師、生産牧場。なんなら、お前の父馬、母馬の馬主とかだって期待してる。」
「そんな人達に恩返しってことで、頑張ってみないか?今日がまずその第一歩。」
「どろんこは賢いからなぁ。もちろん寂しい思いが消えない訳じゃないと思う。だから、いつでも帰ってこい。俺はいつも通り寝藁をしいて、飼い葉をたっぷり用意して、一緒に遊ぶからさ。」
ハルトに鼻を撫でられる。そっか、恩返しか。育ててもらった人達にそれで返せるのなら、頑張ってみる。
てか、帰ってこられるの!?知らなかったんだけど!?それ知ってたらこんなに落ち込まなかったよ!?もちろん寂しいことには変わりないけど!!
あーもう!お母さんにも頑張ってねって言われたんだからシャキッとしろ!俺!!ハルトだってこう言ってるんだ!ならやるしかないだろ!?
よしッ!!ハルトありがとう!もう大丈夫だ!早く矢萩さんのところ行こう!
「おっとと、引っ張るな引っ張るな!ははっ、やっぱりそれぐらい変わり身早くねーとどろんこじゃねーわ!」
なにおう!?言ったなこいつ!必殺鼻グリグリの刑に処すぞ!
「はははっ!くすぐってーよ!」
どうやら攻撃になっていないらしい。残念。まぁ、楽しかったからいいか!
「お待たせしました」
「おぉ、戻ってきたか。もう大丈夫なのかな?」
「はい、この通り鼻を押し付けられるくらいには元気になりました」
「はは、それは良かったよ。じゃあ、お預かりしますね」
「わかりました、お願いします。どろんこ、元気でな。さっきも言ったように、いつでも帰って来ていいぞ。ただ、怪我だけは注意してな。お前が怪我したらみんな悲しんじまう」
おう!わかった!みんなを悲しませるわけにはいかないからな!なおさら注意しとくぜ!
そのあと馬運車に乗せられていよいよここを旅立つんだなって時に、馬房の方から大きな嘶きが聞こえた。お母さんだ。その嘶きに俺も答えるように、大きく嘶きをした。
『ヒヒィィィィィィン!!!(俺はもう大丈夫!安心して!!だから!俺のこと応援しててほしい!また会おう!お母さん!!!)』
馬運車が動き、牧場から新たな地へ移動する。別れを嫌がったとある馬は、牧場の人達、そしてお母さんの声に背中を押されて、覚悟を決めた一頭の競走馬としての第一歩を踏み出した。
毛色はご都合主義だから……!ユルシテ…
どんどん時間を進められるよう頑張ります!!!