ソードアート・オンライン 〜Another life〜 作:ミチナガ
「ソードアート・オンライン、一名様限定プレゼント…?」
俺はそのゲームを知っている。普段はゲームに興味を持たない俺もソードアート・オンラインの名前は知っていた。機械には疎い俺だったが、フルダイブ技術というものには興味があったからだ。
毎日が退屈で、何のために生きてるのか分からない。俺は中学3年生にしてそんな悩みを抱えている。昔から勉強も運動も少しやればすぐに上達したが、そのおかげで本気で何かに打ち込んだ経験がない。おまけに生来の飽きっぽさが災いして趣味もあまり長続きしない。
そんな自分が嫌だった。本気で何かに打ち込んで、心の底からワクワクしてみたかった。それを実現してくれる存在、すなわちフルダイブ技術の結晶であるナーヴギアを知ったのは、つい最近のことだったと思う。ちょうどその頃、ソードアート・オンラインを特集した雑誌を見つけた俺は、こんな言葉に心を射抜かれた。
「これは、ゲームであっても遊びではない」
本来、ゲームは娯楽のはずだ。それを遊びではないと釘を刺すということは、製作者の茅場晶彦という人物はこのソフトのクオリティに余程の自信を持っているのだろう。それほどのゲームなら、俺の退屈を吹き飛ばす特効薬になってくれるかもしれないと思った。
それからは、どうにかしてナーヴギアとソードアート・オンラインを入手できないか考え続けた。俺は両親との仲は良好で、成績も悪くないからナーヴギアは買ってもらえると考えた。しかし、ソードアート・オンラインのソフトとなるとそうはいかない。聞いた話では限定一万本の販売のようで、とても俺なんかが購入できるとは思えない。
万事休す。そう思っていた矢先に、俺はとある懸賞サイトを見つけたのだ。
一名様限定なんて…。そんな感情を抱きながらも、僅かな期待に背中を押されて俺は懸賞に応募した。
「確か、当選者に発送されるのってそろそろだったよな…」
俺は今、一ヶ月前の懸賞のことを考えながら学校からの帰り道を歩いている。こんなに何かを夢中で考えているのはいつ以来だろう、もし仮にソード・アートオンラインをプレイできることになったら、俺は一体どうなってしまうんだろう……と様々な考えを巡らせながら足を進める。そのせいだろう、俺は人にぶつかってしまった。
「すみません。大丈夫ですか?」
咄嗟にこういう時の決まり文句を口にしながら相手の方を見る。
「大丈夫ですよ。そちらこそ、お怪我はないですか?」
「ええ、本当に失礼しました。」
俺がそう答えると、彼女は軽く頭を下げて去っていった。自分と同じくらいの歳の子だった。凛々しい雰囲気で美人だったな、なんて馬鹿馬鹿しいことを考える。いやいや、そもそも俺は男子校に通っていて女子とは縁がないし、緊張こそしないものの女子との会話のネタの一つも持ち合わせていない。ああいう子とは縁がないだろうし、今はそんなことに興味がない。その出来事はそれほど気に留めず、俺は再びソードアートオンラインのことを考え始めた。
「ただいま」
いつものように玄関のドアを開けて母に挨拶をする。その後すぐに自分の部屋に行こうとした俺に母はこう言った。
「今日、あんたに何か荷物が届いてたわよ」
その言葉の意味はすぐに分かった。心臓の鼓動が早くなるのを感じる。俺は返事をするのも忘れて自分の部屋へ駆け出した。
急いで部屋に入った俺は、机の上に置かれた大きな段ボール箱を見てすぐに封を切った。すると俺の前に二つの物が現れた。
一つはナーヴギア。そしてもう一つは…。
「Sword Art Online」
その文字を見た瞬間、何とも言い表し難い高揚感が湧き上がってきた。多分、今までの人生で一番と言ってもいいほどの物だ。俺はすぐにナーヴギアを被り、ゲームをプレイする準備に入る。説明書なんて今更必要ない。この日の為にナーヴギアの使い方はとっくに予習済みなのだから。
「リンクスタート!」
退屈な人生を変えてくれるであろう夢の世界に想いを馳せて、俺は合図の言葉を口にした。
こうして一人の少年、一色優太はソードアート・オンラインの世界へと足を踏み入れた。乾いた心を満たすことができる存在を求めて—————
更新頑張ります…!