そいつは世界観が壊れる力を持っていた 作:ナリキン
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書き終わった。読み返す。
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ギャグ? ギャグとは一体……。ままエアロ、投稿や。
ワートリ杯って、あるじゃないですか。なんでしょうかね、それ(情弱の極み)
「全く、困った人だわ」
とある街中にて、真昼間の正午の時、手を繋ぎ帰路に就く親子が居た。
「他の子より力が少し強いからって、化物扱いするなんて」
母親らしき女性は空いている手を頬に当て、さも困った風に首を振るう。
「それは……ぼくがおかしなやつだから。おもちゃを、あんなぐちゃぐちゃにするのは、ふつーじゃないから。だから……」
母親に手を引かれるがままに、歩みを進める少年は暗く俯き声を震わせた。何処ぞの幼稚園を指し示す制服は、少量の血と土で薄汚れている。
「そう? そんなの良くある事だと思うけど。私にとってこの程度では騒ぐ事でも無いし」
「でも、ふくえんちょーが……。ぼくみたいなおかしいやつは、いしとかつちをなげられてもしょうがないって……」
「まあ呆れた。ここにもそんなお馬鹿な人が居るのね。それで、思わずカッとなって殴っちゃったの?」
そう尋ねなれて少年は足を止めてしまった。どう答えようと怒られると悟り、親からの叱責を恐れて身を縮ませたのだ。
そして、母親は少年と手を繋いだまま正面へと向き直り、少年の返答をじっと待った。
少年は何か言わねばと思い、しかし声を出す勇気は無く、結局俯いたまま小さく頷いたのだった。
「そう。なら良かったわ」
温かく大きな手が、少年の頭を愛おしく撫でた。少年は大きく目を見開いき、驚愕とした表情で母親の顔を見た。母親は、見惚れる程に慈愛に満ちた優しい笑みを浮かべていた。
「私の子だもの。理由も無く人を傷付けたりしないって分かっていたわ。
もうあんな大人なんか忘れちゃいなさい。子供に鼻をへし折られて騒ぐような軟弱者よ。気に掛ける価値なんて無いわ。どうせ甘い夢を見て生きてきたのでしょうし、それに──」
「おかあさん?」
母親の少しばかり険のある口調が、少年の呼び掛けによってパタリとやんだ。
「だいじょうぶ?」
少年の心配げな声色に、母親は少し恥ずかしげに笑って誤魔化したのだった。
「ごめんね。ちょっと熱くなっちゃったわ。さ、家に帰りましょう。お父さんが待っているわ」
「……うん」
少年は再び俯き、母親に手を引かれて歩み出した。
季節の変わり目を感じさせる寒風が吹き、少年の黒く艶やかな前髪を揺れ動かす。露になった少年の瞳は、深緑に鈍く輝いていた。
それから十数分ほど歩いて親子は家に着いた。母親が玄関の扉を開けようとするも、鍵がかかっているようで開く気配は無い。
「あら? 鍵なんてかけたかしら」
母親は郵便受けを覗いたが、何時も納めてある鍵は何処にも見当たらない。次いで車庫へと目を向ければ父親の車が有った。何処かへ出掛けるという話も無い故、父親は家に居るはずである。どうやら、今日の父親は防犯意識が高いようだ。
仕方無しに母親がインターホンを鳴らすと、幾度かの足音の後に鍵が回され扉が少し開いた。ほんの隙間から片目で外を伺い、二人を確認すると扉を完全に開けた。
「今日はどうしたの? 何時もなら鍵なんて掛けないのに」
「いや……何でもないさ。ただの気紛れだよ」
母親が不思議そうに尋ねても、父親は顔を僅かにしかめて適当な返事で誤魔化した。普段より顔色が悪く、雰囲気もどことなく暗いように思える。小心者の父親の事だ。有給でも取れなかったのだろう。
「家に上がってくれ。少し、話すことが出来たんだ。……そう、大事な話だ」
そう言い残して父親は踵を返した。母親のみに視線を寄越し、少年に目もくれずに。そして少年もまた、自身の足元のみを見詰めてそれに気づこうとしなかった。
手を引かれて家に上がる。左手にリビングへの扉、正面の左側に階段と右側に廊下がある。話をするようなのでリビングへと足を進めた。
リビングには比較的大きなテーブルと四つの椅子が置かれてあり、父親は奥側の椅子に腰掛けている。手前のテーブルには冷めきった湯飲みが二つあり、来訪者の存在を証明していた。
母親は湯飲みを退かして席に着いた。少年は洗い場に跳び乗って手を洗った。血が固まってカピカピだ。手を綺麗にした後、少年は冷蔵庫の野菜室に安置されているプリンを取り出し、椅子によじ登って食べ始めた。先日の誕生日に母親から貰ったプレゼントだ。ブランド物のお高いプリンは、おやつとして十分であろう。
「それで、話ってなあに? この子が幼稚園を追い出された事?」
「……先程、両親が来たんだ」
父親が重々しく発した言葉を聞き、頬杖をしていた母親の眉が少し動いた。一段階息苦しくなった空間で、硝子と金属の擦れる音が木霊する。
「へぇ。またあの人達が来たのね。……で?」
「そいつを、家族として認めない、と。明日までに追い出せ、と」
父親は事も無げに少年を"そいつ"と言ってのけた。親が子を呼ぶ言葉としては、全くそぐわない言葉である。
「ふぅん、そうなの。……で?」
「こうも何度も言われると、辛くなってきて。近所の人にも、そいつのせいで避けられるし、職場でも上手くいかないし……。もう、もうこれ以上耐えられないんだ」
ウジウジして本音を伝えられない中高生のように、あくまで悪いのは少年であると密やかに言うのだ。堪え性の無い自分を正当化するその様は、大きいだけの子供のような陳腐なものだ。程度の低い苦痛ごときで泣き声を上げるようでは、大人になっても大人と見なされるわけが無い。
「あら、大変なのね。……で?」
「……『で?』だとッ!? さっきからどういうつもりだお前は!! 僕がこんなにも苦しんでいるというのに、お前はいつもそんな風に茶化しやがって!! そいつを引き留めるためにやってるんだろうが、もう無駄だからな!
……既にそいつは養子として引き取らせる話が決まっている。荷物を纏めて、今日中に出て行かせる」
母親の適当な返事に苛立ちが最高潮に達し、父親は遂に癇癪を起こした。拳をテーブルに叩き付けて怒りを露にする。飛び跳ねた二つの湯飲みは床に落ちて砕け散り、プリンは飛んだところを少年が掴んで膝に持っていった。そして我関せずといった風にちびちびとプリンを食むのであった。
「養子って、前来たどっかの企業の社長さんのこと? そこって確か人体実験して金を稼いでる所じゃなかったっけ。社長さんももう何十人と子供を引き取っているって話じゃない。大方前金として幾らか貰ってるんでしょうけど、借金抱えているからって子供を売るのは人間としてどうなのよ」
「五月蝿い! そんな文句言うんだったら少しは金を稼いでこい!!」
「私が稼いだ金をギャンブルで全部落とした人は誰だったっけ? あれだけあったら、あの程度の借金なんて余裕で返せたのに……。無駄骨折ったから貴方には、もう私のお金を渡さないって言ったでしょ?」
「…………ッ!!」
自身の過失を一つ責められ、父親はもう何も言えなくなった。相手を責めるにしろ自身の無実を主張するにしろ、父親がそれを行うには知識と度胸が圧倒的に不足していた。父親がそれから出来たことは、歯を食い縛って睨み付けるだけだった。負け犬の遠吠えにも劣る行為だ。
無知である事は罪である。ソクラテスもそう言うだろう。
「貴方って結構軟弱なのねぇ。体が脆くて頭が悪いけど、心は強い人って思ったから結婚したのに。それも偽物だったのね。がっかりだわ」
心底残念だと言いたげなため息を吐き、母親は静かに席を立った。そしてプリンを食べ終わってスプーンをペロペロしている少年の頭を、ポンポンと軽く撫でた。そんな母親の行動に、少年はスプーンを咥えたまま母親にキョトンとした顔を見せたのだった。
「お部屋に行きましょう。お服を着替えなきゃ」
「んー」
プリンの容器をゴミ箱に放り込み、二人して階段を登った。父親は終始睨み続け、終ぞその口を開くことは無かった。静寂の訪れたリビングには、ただ、手の骨が軋む音が鳴るのみ。
少年の部屋は母親との兼用である。階段を登りきってすぐ、両脇に扉がある。左が二人の部屋で、右は専ら物置に使われている。因に正面奥が二階のトイレだ。
どちらとも押戸では無く、引戸である。出入りの際に危険を感じてしまう設計はとんでもない欠陥だ。利用人数が少ないため今のところは何事も無いが、早いところ引っ越した方が身のためだろう。
二人の部屋は八畳の広さだ。普遍的なアパートの一室分と言えば聞こえは良いだろう。入って左が玄関側だ。
玄関側の壁には大きめな窓と、ダブルベッドが置かれている。母親と少年は一緒にここで寝ている。そこに目覚まし時計は置かれていない。二人してけたたましいアラームを嫌って、朝日と共に目覚めるようにしているのだ。
中央にはカーペットが敷かれており、その上に二つのクッションとちゃぶ台がある。ちゃぶ台には昨夜描いたまま置きっぱなしの絵が広がっている。クレヨンで描かれたのであろうそれは、描かれている人物が女性であると判別出来る程度には上手だ。園児が描いたにしては上出来だろう。
入って正面にあるのは窓と、その上にある時計だ。風通しを考えているのか右側にも窓がある。だが、その窓は雨戸で締め切っている。眼鏡掛けたおっさんが、あっちの家の窓辺で煙草を吸うのだ。開けておくと部屋が煙くなって仕様が無い。時々向かい側の家に入っていくのを見掛けるが、何をしている人なのだろうか。
あとは箪笥が二つ、クローゼットと化粧台、絵本の本棚が一つずつある。因に、少年のお気に入りは『わいは○まきりや』である。おう あきはぬるいでぇ(絶命)。
「ほら、何してるの? はやく脱いじゃいなさい。もう着ることも無いんだし、そこら辺に放っておきなさいな」
少年はいそいそと制服を脱ぎ、おもむろにベッドに跳び乗ってそれを窓から放り投げた。ゴムが手首を締め付ける感触は苦手の様子だ。跡も残るしね。しょうがない。
少年がモタモタと着替えている間に、母親は荷物をドでかいバッグに詰め終わっていた。いつの間にか服装が変わっている。手品でよく見るやつだろうか。
「着替え終わったわね。それじゃ、行きましょ」
「……どこにいくの?」
「私の故郷……は無かったわ。ここからずっと遠い所よ」
「ふーん。おかあさんがいっしょなら、どこでもいいや」
荷物を抱えた母親が一歩踏み出す毎に、床がミシミシと悲鳴を上げる。随分と力持ちだ。細いラインの奥底にはきっと隆々とした筋肉が詰まっているに違いない。
その音を聞き付けてか父親がリビングから出てきた。眉をひそめて訝しげな目線を送ってきている。
「お前……どこに行く気だ?」
「見ての通り、出ていくのよ。はいコレ、離婚届。署名してあるから好きになさい」
母親は懐から取り出した離婚届を、父親に事もなさげに押し渡した。そしてそのまま横に押して玄関へと歩んだ。当の父親は呆気に取られているのか、呆然として為されるがままだ。
靴を履く少年と母親の後ろ姿を見て、ようやく思考を再開した。先程言われた言葉を咀嚼し、理解し、そして癇癪を起こした。
「何だとッ!? 出ていくだとッ!? 巫山戯るのも大概にしろッ!! 命を救ってやった恩義を無下にする気か!?」
「子供を愛せないなんて夫として失格よ。恩義どころの話じゃないのよ。人間として付き合いきれそうにないわ。この子にもう少しまともな対応をしていれば、私はこんな行動には出なかったわ。もう、この子をこの場所に置いておく訳にはいかなくなった」
「…………ッ!! また……、また……、」
父親が怒鳴り散らす中、母親は冷酷に処置無しと言い渡され、少年は何でも無いかのように靴を履くのに苦戦している。そのじれったい後ろ姿を父親は睨み付け、親の仇を見つけたような怒気を撒き散らすのだ。
「またてめえかーッ!!」
「おかあさん、くつはけたー」
父親が少年の頭部へと拳を振り上げる。少年はそんな事など露にも知らず、靴を履いた事を報告し悠然と立ち上がった。無垢な幼子に大人の拳が迫る。
父親の拳は砕け散った。少年の体は鉄の塊のように硬く、そして立ち上がるその動きを成人男性の父親は抑えることが出来なかった。
怒りによって倍増しされた力が全て跳ね返り、接触した指の骨が粉々になった。衝撃が広がって甲に皹が入ったその時に、少年は立ち上がって手首を跳ね上げさせた。手首の骨はまっぷたつになり、父親の手の可動域はおおよそ二倍になった。良かった良かった。
「じゃ、行きましょうか」
絶叫を響かせ手を抑えて蹲る父親を見ることもなく、親子は扉を開いて去ろうとする。一歩踏み出し、ふと思い出したかのように少年は立ち止まった。そして父親の方へ振り向き、笑顔でこう言った。
「はじめてあそんでくれたから、プリンあげるね。あれおいしいよ」
「その人辛党よ?」
「んー、あきたからあげる!」
のほほんとした顔のまま親子は立ち去った。蹲る父親は心中に怒りと憎しみを渦巻かせる。後悔や懺悔の念などどこにも無かった。
ふつふつと湧き上がる衝動のままに、痛みを無視して冷蔵庫へと駆け上がる。野菜室に安置されてある一ダースから三つ減ったプリンの箱を、床に叩き付けた。飛び散る硝子の破片と堅めのプリンを鬱憤を晴らす為に、足で踏みにじった。
何度も何度も何度も何度も──。
息の上がった父親は、赤く染まった黄色い物体の前に膝を着くしか無かった。
母親は少年と荷物を抱えて街中を跳び跳ねていた。一歩前進する度にコンクリートが捲り上がり、そこら中から車のクラクションや警笛が鳴りまくってる。どうせ明日には居ないのだしどうにでもなるだろう。何なら父親に罪を被ってもらっても良い。
進路的に目指す先は山のようだ。鹿や熊、毒蛇、放しっぱなしの飼い犬に、密輸入して逃してしまった虎とかが生息する魔境だ。入るには何とかのライセンスが必要だった気がする。
「ねえ」
「なあに?」
「あなたは、どんな人になりたいの?」
母親に抱かれ、そしてしがみついている少年は、その質問に対して言葉が詰まってしまった。人生経験の少ない少年には、その問に対する答えを持ち合わせていなかったからだ。
尤も大人でも持っていない人は大勢いるが、それはさておき少年はこの問い掛けに答えなければならない。母親は無駄な質問など一切しない人柄だ。この場で質問することに意味があるのなら、今答える必要性があるのだろう。故に、少年は必死に答えを探るのだった。
「……どうして?」
「可笑しい奴って言われて落ち込んでいたから。なら、どんな奴って思われたいのか気になってね」
少年は考えた。自分がどんな姿で、どんな事を言われて、どういう風に思われると嬉しくなるのかを考えた。そして、数秒もしない内に自身の願望を見つけ出した。画面の奥にしか居ない、幼稚で、陳腐で、ありふれた夢そのもの。けれど何よりも格好いい存在だ。
「ぼくは……ヒーローみたいになりたいなあ。かめんライダーみたいに、ヘンシンしてわるいやつをぶっとばすんだ」
「副園長みたいな?」
「ふくえんちょーみたいなの」
母親はその返答にクスクスと笑った。高速移動しながらというのに器用なものだ。
「なら、あなたはもうヒーローよ」
「そうなの?」
「そうよ。きっと、そう」
流れる景色は灰色から緑色に変わった。突如として襲い掛かる爪や牙を事もなさげに弾き飛ばし、並みいる猛獣どもを怯え上がらせる。道なき道を一直線に突き進む母親は正に、覚悟ができている人間だ。
奥へ奥へと駆けていき、日の光まで遮られる深い森の中へ到達し、漸く駆ける足を緩めた。目の前には断崖絶壁が聳え立っており、生き物が登るには不適切な道である。
母親は少年と荷物を下ろし、何の変哲もない岩壁に手を突っ込み何かを引き出した。レバーのような物が母親の手から覗いている。すると一部の岩壁が揺れ動き、壁の中へと続く道が現れた。SFチックな仕掛けに少年は大興奮だ。
少年は薄暗い廊下を母親に手を引かれて歩いている。物珍しい景色なのか、ひっきりなしに視線をあちこちにさ迷わせている。
数分歩けば明かりが確りしている開けた場所に出た。目につくのはいかにもな宇宙船だ。月にでも行くのかなとワクワクしている少年とは裏腹に、母親は悩んでいるような顔をしている。反応が無いことを不思議に思った少年が振り向いて、母親は漸く口を開いた。
「戻るのなら、今が最期よ」
「え? 行かないの?」
シン……とただっ広い空間に静寂が訪れる。自然の音は全て遮られており、音を発するものは親子二人だけだ。その二人が黙ってしまえば静かになるのは当然だ。
「これから、私が言うことをよく聞なさい。
良いこと? これに乗ったら最後、もうここには帰ってこれないかもしれない。向こうだと満足に食事も摂れないし、地球の食べ物程美味しい物は無いの。お風呂に入る事は簡単には出来ないし、フカフカのベッドで寝る事も出来ない。悪い奴等に追われて、寝る事も出来ずに逃げなければならないかもしれない。もしかしたら、死んでしまうかもしれない。
あっちの世界は、こちらの世界を知っているあなたには、とても辛いものになるのよ。どんな苦しい時でも生きていく覚悟が、あなたには有るの?」
「んー? よくわかんないけど、おかあさんはここにいたいの?」
「え? いや……それは」
虚を突くような質問返しに母親は驚き、その表層に答えを滲み出してしまった。目敏くそれを見極めた少年は朗らかに笑い、幼年者とは思えぬ程の穏やかさで母親に語った。
「ならぼくは、おかあさんについていくよ。おかあさんといっしょなら、ぼくはどんなところでもへっちゃらさ。それに、いっしょじゃないとおかあさんをまもれないしね!」
輝きを放ちそうな程に純粋無垢な笑顔を前にして、母親は馬鹿馬鹿しげに自身の不安感を打ち捨てた。少年がそんな些事で母親から離れるなど、まずあり得ない事だったのだ。それを再認識出来たのなら、この問答には意味が有ったのだろう。
「全く、あなたって子は可愛いわねぇもう。私はあなたに守られる程弱くは無いわよ」
「わきゃー」
母親は少年を抱き締めて髪を揉みくちゃにする。アレだ、ネコ吸いのようなものだ。ストレスでも有ったのだろう。
「あなたはもう立派なヒーローだけど、このままだとヒーローには成れないわ」
「え!? そうなの!?」
少年はガビーンとした表情で驚いた。こんなに表情豊かだったっけと思いながら、母親は言葉を続けた。
「だってあなた、こんなに小さくて、か弱くて、可愛いもの。一人にすると狼さんにペロッと食べられそうだわ」
「こわくなればいいの?」
随分と素っ頓狂な解釈だな。これには母親も吹き出しそうになる。
「ん、フフッ……ふぅ。そうねぇ、強くなれば怖くなるわね。ヒーローでいたいなら、強くなるのよ。強くなって弱い人を助けるのよ」
「わるいやつをぶっとばすんじゃなくて?」
「悪い奴をぶっとばすのはヒーローとして当たり前なの。弱い人を守るのはね、その人に自分を守ってもらう為なのよ。人間は一人だと生きていけないから。助け合うのよ。どんな時でもね」
「ふーん。じゃあわるいやつをぶっとばして、よわいやつをまもるね」
「フフッ、お母さんとの約束よ」
適当な指切りをした二人は宇宙船へ乗り込み、コックピットに席を構える。少年はその瞳に深緑を滾らせ、母親は決意の極まった顔で操縦桿を握った。
「さあ、行きましょうか」
先行く不安も有るだろう。だがそれは前進無くば無用の長物と化す。まずは一歩踏み締めよう。未来は無限に広がっているのだから。そう、旅立ちは晴れやかに、だ。
「私があなたを──強くしてあげる」
けたたましい駆動音と共に、宇宙船は光の彼方へと消えた。
・石と土を投げてきたやつ
・眼鏡掛けたおっさん
・指切り約束
何故回収出来ないのかだって?
続きを書く積もりが無いからさ☆