そいつは世界観が壊れる力を持っていた 作:ナリキン
誤字報告感謝です。淫乱野郎さん。
悪口にしか見えないですね。
●経過観察 一日目・二日目
彼を普通の身体にしてやると誓ったが、一体何に手をつけていくのか正直分からない。故郷の人達はサイドエフェクトを持つ者が大半だったが、検査する前に大抵死んだから情報が全く無い。そもそもじっとしてくれない。
取り敢えず玄界の形式に則って記録をつけることにした。医療に関しては玄界の技術しか知り得ない私に、この記録が意味ある物となることを願う。
私が被験者
中心部のトリオン供給器官は玄界の平均値と同等、末端部にいくに連れて小さくなっていっている。数は計測不能だが、数百は下らないだろう。彼は言わば、数百人と同等のトリオンを生産し、その小さな身体にその全てを留めているのだ。
私はこの特異性をサイドエフェクトと捉え、『トリオン供給器官多重体質』と名付けた。
玄界で計測したのは恐らく、多数あるトリオン供給器官の内の一つだったのだろう。このサイドエフェクトが彼の身体にどんな影響をもたらしているのか、予想がつくような現象は多々存在する。一つ一つ確かめていくしか他無いだろう。
●経過観察 三日目
彼の皮膚は非常に柔軟だ。つつけばプニプニとした弾力が返ってくる。そんな身体で石や大人の拳を弾いたり、火に焼かれてほんの少しの火傷しか負わないのは不可思議であった。
今日行った検査は、外部刺激に対する反応についてだ。手っ取り早く痛覚を調べるために彼の皮膚をつねろうと指先で摘まむと、彼が痛みを感じる一歩手前で硬化した。
トリオンを可視化すると、つねった部分にトリオンが集中しているのが分かる。恐らく刺激を受けた部分のトリオン供給器官が活性化し、トリオンを放出して擬似的なトリオン体に変化させたのだろう。
次に指を少し切って血を出させた。出た血は培養液に保存し後の調査に役立てるようにした。数滴垂れた後、流血は止まった。切れた皮膚は既にくっついていた。トリオンを可視化するが切れた部分にトリオンは見られなかった。
ただ、トリオンが放出された証拠はあった。服を仕立てる時に出る布地の余りのような、或いはネズミが食い荒らした残骸のようなものであった。恐らく、損傷部の組織をトリオンで補填した後、元の組織に置換したのだろう。
私はこの特異性をサイドエフェクトと捉え、『反射的換装体質』並びに『トリオン置換再生体質』と名付けた。
この現象は刺激を認識している程強く発現するようだ。目隠しをした状態で皮膚をつねると、痛みを感じてから皮膚が硬化した事、または、同じ箇所を再び切ると、再生速度が速くなった事から推測するに、トリオン供給器官に情報を伝達する物質があるのかも知れない。
●経過観察 四日目・五日目・六日目
彼に玩具を与えると大抵日を跨ぐこと無く壊れる。あの細腕で、どうやってあそこまでの力を出せるのか不思議に思われていた。故郷では日常茶飯事であったが、玄界では異常なことらしい。
今日行った検査は、彼の出す力についてだ。二日間の大半を計測機器を整えるので消費したが気にしない。製作出来たのが少ないけど気にしないったら気にしない。
トリオンで構成した計測機器は雑に扱わない限り壊れる心配はない。壊れても設計図はデータサーバーに保存してあるので直ぐに作れるから安心だ。
以下、計測結果。
・握力 9.4kg
・指圧力 16.2kg/cm^2
・脚力 20cmの跳躍より算出 20.8kg
・推進力 27.3kgf
脚力が少しばかり高いが、他は玄界における五歳児の平均値と同等だ。到底物を直接的に壊せるような数値では無い。しかし、壊す時は大体興奮時であったので、トリオンで花火を再現し、彼に見せてから計測した。
以下、計測結果。
・握力 642kg
・指圧力 295kg/cm^2
・脚力 10mの跳躍より算出 960kg
・推進力 1125kgf
素晴らしい。これなら玩具が壊れるのも納得だ。人を殺していない事が奇跡と感じてしまう。
興奮時にトリオンの放出が多数確認された事から、やはり彼の体内にはトリオン供給器官に情報を伝達する物質が存在するようだ。もしかしたら脳の一部になっているトリオン供給器官がそうなのかもしれない。または、脳内分泌物質がトリオン供給器官を刺激してトリオンを放出しているのかも知れない。
興奮し過ぎて歯止めが効かなくなったのか、彼はハチャメチャに暴れだした。幼いが故に感情の抑え方が分からないのだろう。これに関しては慣れさせるしか対処法がない。
この特異性をサイドエフェクトと捉える事は難しい。興奮時に全身をトリオン体に換装している事だけは事実だ。それが体への刺激によって起きるのか、はたまた全く別の要因からなるものか判別がつかない。
名付けるにはまず、脳のジンクスを解明することから始めなければならないだろう。詰まり私には永遠に不可能というわけだ。嘆かわしいことにな。
●経過観察 七日目
彼の瞳が時々深緑に鈍く光っているのを見かける。私の故郷には良く居た体質だったから気にしていなかったが、これも何かあるのかも知れない。
今日行った検査は、彼の視る力についてだ。簡易的な視力検査ボードをトリオンで作成して視力を測った。かなり細かい所まで言い当ててくる。視力3.0は有るだろう。
逆の目に移った時、彼の瞳が深緑に変化した。すると彼は視力検査ボードをピカピカしていると言った。もしかしたらと思い、視力検査ボードのトリオン出力を半減させると、彼は暗くなっていくと言うのだ。どうやら瞳が光っている時は、彼はトリオンを視ることが出来るようだ。
試しにトリガーを起動してトリオン体に換装すると、彼は私がピカピカしていると言った。彼の話を聞くに、時々人の身体の心臓に近い部分が、僅かに光っているのが見えていたらしい。
詰まり彼の目には周囲が発光しているように見えているのだ。物によって光りの色が異なり、そして眩しくは無いらしい。彼も不思議にしていた。
この状態を任意に発動できるのではなく、勝手になるそうだ。恐らく、何かを見たいという思いが、目を構成するトリオン供給器官に作用しているのだろう。そして視力も素の目より高くなっているはずだ。精確な検査は出来ないが、私の皮膚を見て血管が見えると言ったのだから間違いではない。
私はこの特異性をサイドエフェクトと捉え、『トリオン視認体質』並びに『強化視力』と名付けた。
この状態の彼は、あらゆる物質を透過してトリオンを視る事が出来るだろう。玄界に居た時にトリオン供給器官を服越しや壁越しに視ていたのだから。任意に発動できるようになれば、彼から隠れることの出来る者は居なくなるだろう。
●経過観察 八日目
彼は味の無い栄養飲料に我慢が出来なくなったらしく、味を付与する装置を作っていた。そして完成した。舌に有る味蕾を何とかの化学物質で刺激させて、味を脳に誤認させるとか何とか。
無色透明の液体からオレンジ味がするようになった。いや、オレンジだけって……他にも無かったのか?
トリガーの研究に行き詰まっていたので、彼の設計を真似て自分も味を付与する装置を何台か作った。塩味と醤油味は飲むのがしんどかったけど、味が有るとは実に良い。気分がリフレッシュする。
それでも彼は満足できていないようで、そのうち食感を再現する装置でも作りそうだ。どうやって再現するのか、私にはさっぱりだけど。
●経過観察 九日目
昨日の彼を見るに、彼には私にはない発想力を十分に持っているようだ。発想力の無い私が得意なのは、膨大な知識を組み合わせて既存の物を改良することだ。目的物を予備知識なしに作り上げるのは非常に困難である。
彼がトリオン体に換装出来る絶対条件として、数百人分のトリオンとトリオン供給器官を一つのトリガーで処理しなければならない。どれだけ容量を増やそうとも、どれだけ処理能力を向上させようとも、彼をトリオン体に換装する事は叶わなかった。
構想は一応練ってはいたのだ。彼の全身をそのトリガーでトリオン体に換装出来れば、理論上問題なく活動できるようになる。だが、普通のトリガーでは彼を仕舞いきれない。容量が圧倒的に足りないのだ。もし、この場に故郷の設備と同等の物が揃っていたとしても、彼が扱えるようなトリガーは作れないだろう。
故に彼が使えるようなトリガーの開発を、彼自身に任せることにした。私とは異なるアプローチで開発するだろうと。私には考えた以上のトリガーを開発する事ができない。だから私はトリガー開発を諦めて、医療面から改善策を考えることにしたのだ。
私は前回の火傷事件を恐れて、一方的に彼がトリガーを製作する事を禁じていたが、それは所詮私の臆病さが滲み出ただけに過ぎない。トリガーの爆発ごときで彼が死ぬわけがないのだから。
けど、目の前で爆発させるのは心臓に悪いからやめて欲しい。早速作って爆発させた彼を見て、任せたことをちょっぴり後悔するのだった。
●経過観察 十日目
今日でもって大体の機器を修復し終えた。これからは改良に移るが、難航していると言わざるを得ない。私には最高峰の知識と技術が有ると自負しているが、それが活かされる道具が無いのは事実だ。彼の事で焦って、トリガー生産工場の機具を回収していないのが響いている。明日には行くことにしよう。
そんな彼はというと、寝起きから早速トリガー製作に勤しんでいる。楽しげにするものだから私も思わず頬が緩んでしまった。これはいけない。敵地で気を緩めるなと戦場のラッパ吹きが言っていたではないか。
頭を振って雑念を追い払い、もう一度彼を見ると妙な光景があった。彼の体からトリオン体が伸びており、その形が手のようになっていた。その第三の手は確かに物を掴んでおり、精密な動きでトリガーを組み立てている。ドライバー、はんだごて、ドリル、メッキ用具など持ち変えるのが面倒な物、果てにはプリント基盤、薬剤、ネジ、接続コード、トリガー容器が蠢いてトリガーを形作っている。
彼はいつの間にか一本打法から卒業したのか、形作ったであろうトリガーを両手でプログラミングしていた。効率化が進んでいるようで感心だ。
何をしているのかと聞くところによると、手が欲しかったから増やしたと簡単に言った。気楽にできる芸当ではないと思うのだが。
コツとか聞いてみたがほぼ無意識に行使していることが分かったので、彼特有の技術が使われているようだ。彼以外が体得するには難しいと言わざるを得ない。私も一本出すので精一杯だった。
私はこの特異性を、人が元来持つ原始的な力であると捉えた。しかし、最大で二十本の手を出せる彼の行使能力ついては、彼特有のサイドエフェクトであると捉え、『トリオン体体外形成能力』並びに『トリオン直接操作能力』と名付けた。
凡人がトリオンで手を形成できると認識しても、彼の領域に達するには生涯を捧げる必要があるだろう。それほどのサイドエフェクトであり、元から備わっている性質を強めるものだ。無意識にできるのは才能なのだ。
●経過観察 十一日目・十二日目
彼が寝静まったのを見計らって、トリガー生産工場へ遠征艇を動かした。彼が起きるまでに事を済ませる為に迅速かつ効率的に行動した。結果的に五時間程掛かってしまったが、生産ラインの各機具の設計図や無事な現物を丸々運ぶことに成功した。他にも点検用の道具や修理用具も手に入ったので、機具の改良も捗るだろう。
拠点への帰還途中に、僅かながらトリオン反応を捉えた。拠点から遠い場所とはいえ、この土地に人が来ているのだ。何処に目があるか分からない以上、地上に姿を表すのは控えるべきだろう。不法入国者として追われるのは避けたいものだ。
帰還時に彼のトリオン反応を確認する。寝床を移動していないようで一安心した。寝相が少し変わっているが、追加した監視システムも正常に作動しているし、発信器も彼の位置を指し示してある。ここから出ようとしても警報装置が私に通知を送るので、心配はしていなかったが。
運び込んだ機具達は彼が起きてから設置するとして、彼が起きるまで少し眠ることにした。彼が起きればトリガーを作るはずなので、その音で起きられるだろうと。まあ現実はそんなに上手くいくことはなく、起きたのは寝てから十時間後だった。
彼はトリガー製作をしておらず、私が起きた時は逆立ち歩きをして遊んでいた。どうやらトリガーの材料が尽きていたらしい。材料ぐらいそこらの機械を使って作れるのだが、いつも私が作って渡していたのでどうするか分からなかったようだ。
これは教えずとも何でもこなすからと、知識の共用を疎かにしていた私の責任だろう。今日一日暇だったと愚痴られたので、暇潰しの道具に頑丈な玩具を作らなければなと思った。
その前に新しい記録媒体を作った。いい加減玄界のパソコンで記録するのを辞めたいと思っていたのだ。何故態々指で入力しなければならないのか。面倒ったらありゃしない。
●経過観察 四百七十六日目
先日の誤作動で十三日目以降の記録が消し飛んでしまった。彼の弁明では、トリガー接続コードが私の記憶媒体と接続できるのが悪いそうだ。ここに来てから随分と生意気になってきた気がするので、少し折檻した。母は強いのだよ。
消失した記録だが、これと言って特筆するべき事はない。一時期彼が外出している疑惑が立ち上ったが、いや今も有るのだが大きな事は一応起こっていない。
しかし、変化を書き記さねば経過観察日誌の意味が無いので、私の記憶が有る限り書き記そう。
☆拠点について
・拠点そのものを移動可能に。
・隠密性の向上と彼の無断外出を抑制するために、地下2mから地下30mへ移動。
・拡張して間取りを追加。
開発室、監視室、貯蔵室、遠征艇ドッグ、食堂、寝室、便所と大まかに壁を設置。廃棄物はトリオン変換装置でクリーンに処理。
・自爆装置の設置。
作らずにはいられなかった。
・栽培装置の設置。
穀物や野菜を爆速で育てる装置。彼が噛みごたえも欲して、一から現物を作ることになった。作物の養分はトリオンを代替に。
・調理器具の製造。
日本の一般家庭にあるような物。景色が寂しいので食堂も建造した。
・部屋の景色を変更。
天井に天候を再現した。昼夜サイクル、晴れ、雨、曇りなど。味気ない壁には彼が描いた絵を飾った。
・超大型トリオン貯蔵装置の設置。
研究の過程で、彼のトリオンを消耗させる必要があった為、消費先として開発した。超大型一つにつき五百人分のトリオン量を貯蔵可能。
彼の肉体的負荷がかからない放出可能量は、貯蔵可能量のおおよそ半分である。
・遠征艇の改造。
トリオン砲を四門設置。コールドスリープ装置を撤去し、居住可能スペースを増築。鉱石採集装置の設置。エンジンと一部計器の修繕。ブラックホールの回収。推進力の改善により貯蔵可能量を増加。出発可能状態を維持。
☆被験者について
・トリガー起動の成功。
彼が体内のトリオンを自在に操れると判明し、大きい器官のトリオンを一つ除いて空にした。この条件ならトリガーを起動できたが、彼の状態は劣悪なもので起動時は殆ど意識が無かった。それから三日程寝込むなど肉体的にも負担が大きい。安全を取るための最終手段にしかなり得ないだろう。
これは果たして成功と言えるのか?
・トリガーの開発。
彼をトリオン体に換装出来るようなトリガー開発は難航しているようだ。しかし、武器トリガーなら換装せずとも使用できると知り、アニメで良く見るような物を沢山開発していた。ドリルとかバズーカとか。使う機会は無い。
・性格の変化
より一層甘えん坊になった。いや、人並みに欲求を露に出来るようになったと言う方が適切か。玄界の環境がどれ程彼を抑圧していたか計り知れない。あんな息苦しい国はもう行くべきではない。
・新たなるサイドエフェクトの発見。
以下、検査内容と名称。日数などは、検査した日にちなど覚えて無かったので省く。
・トリオン可視化装置の改良によって、彼の体内には八つの一際大きいトリオン供給器官が存在することが判明した。脳に二つ、脊柱に五つ、心臓に一つある。
それらの器官が周囲から生産されたトリオンを吸収し、計らずも栓の役割を担っていた。彼の体が過剰トリオンによってトリオン体に換装しないのは、これらの器官の為だと推測される。
私はこの特異性をサイドエフェクトと捉え、『余剰トリオン蓄積体質』と名付けた。
この器官はあくまでトリオンを生産する器官である。便宜的に栓と称したが、枷が外れれば溜め込んだ分を一気に放出することだろう。それが引き起こす影響は未だ未知数であるため、慎重な検査が求められる。
・トリオン可視化装置の改良によって、彼の体から常に微量のトリオンが放出されている事が判明した。また、放出する穴が経絡系上に三百六十一箇所存在する事も判明した。この穴は私にも同数存在することから、人体に備わっているツボの事だろうと推測される。
彼の全身はトリオン供給器官で覆われている為、存在しない部分が穴であると判断できた。『トリオン体体外形成能力』のトリオンは、この穴から放出されているトリオンを操っていたようだ。
私はこの特異性をサイドエフェクトと捉え、『過剰トリオン排出体質』と名付けた。
トリオンで穴を一つ塞ぐと彼の体調が悪くなったので、人体に強い影響を与えるものであると推測できる。この穴を攻撃する武器を作っても良いかもしれない。
・『トリオン置換再生体質』だが、彼のトリオンは自己の皮膚組織以外に置換させる事が可能であると判明した。エネルギー、熱、電気、物質など、かなりの範囲が置換可能だ。物質に関しては人体を構成する物質が置換可能であった。
しかし、トリオンを自前で置換するのは非常に体力を消耗するようで、あまり検査に付き合ってくれなかった。とても残念に思う。
私はこの特異性をサイドエフェクトと捉え、『トリオン置換再生体質』を改めて『物質置換能力』並びに『自己修復体質』と名付けた。
妙ではあるが、彼はトリオンの扱いに関して慣れているのだ。トリオンを他の物質に置換できると教えたら、彼は暴走させること無くそれをあっさりとやってのけた。まるであらかじめやり方を知っていたかのように。
彼の奥底にあるものが何であれ、受け入れてやるのが親としての役割だろう。彼は賢明な人柄だ。心配することなど何も無いだろうに。
・彼の皮膚を分析すると、核の内部に極小のトリオン供給器官が存在する事が判明している。詰まり彼は細胞単位でトリオン供給器官を持っていることになる。
一つ一つは計器に表れない程の小さな量だが、全体的に五百人分を越えるトリオンを生産しているのだ。トリオン可視化装置に写るのは、『余剰トリオン蓄積体質』によって吸収仕切れず、漏れ出た過剰分のトリオンである。
何が言いたいかと言えば、彼はかくれんぼが超絶に下手なのだ。トリオン可視化装置に写ったトリオンの軌跡を追えば彼が必ず見つかる。そもそもの気配が大きいので狭い間取りでは何処に居るか検討が付いてしまう。
全然勝てないと不思議がっていた彼にこの事を話すと、憤慨して私を殴ってから本気で隠れてしまった。何故かトリオン可視化装置にトリオンの軌跡が写らないし、あれだけ巨大だった気配が消失した。極めつけて景色と同化していたので、部屋に雪を降らさなければ絶対に見つからなかっただろう。
彼が行った隠形は恐らく、トリオン生産を制御してから放出を抑制することでトリオン反応が無くなり、またそれによって生命の気配が希薄になることで出来た事だろう。景色と同化していたのは、トリオン生産を制御する前に放出されたトリオンを、真白の物質に置換して表面にコーティングしたからだそうだ。
ぶちギレた状態でこんな精密な技をするとは末恐ろしいものだ。てか今気付いたが、これをされるとすべての監視システムに引っ掛からないのでは。トリオン以外で監視する仕組みが必要だな。
私はこの特異性をサイドエフェクトと捉え、『絶交』と名付けた。命名権は彼にあるので、これを使われる度に私は『彼が絶交した』と書かねばならなくなった。辛い。
・彼の身体の成長に伴ってトリオン供給器官も増大・増加している。トリオン生産量は増幅しているが、トリオン供給器官数に変化は見られない。彼のトリオン供給器官が全ての細胞に存在しているとするのなら、数に変化が無いのは妙である。毎日垢や抜け毛で喪失しているのに。
その疑問を抱いた私は、彼の皮膚片を採取し観察を行った。そして、トリオン供給器官が分裂している様子を観察することに成功した。核分裂と同時に分裂しているようだ。トリオン供給器官がそんなにポンポン増えて良いのだろうか。いや、良くないからここに居るのだった。
私はこの特異性をサイドエフェクトと捉え、トリオン供給器官複合細胞を略し『トリオン細胞』と名付けた。強そう。
これを『トリオン供給器官多重体質』の根源となったものか、はたまたそれによって引き起こされたものか、判別することが不可能である。鶏が先か卵が先か、誰も知らないように。
・彼が二人になった。と言っても一人はトリオン体だったが。ドッキリ大成功とはしゃいでハイタッチしている二人に、拳骨を食らわせたら一人が霧散したからな。どうやら『トリオン体体外形成能力』で自身を模したトリオン体を作り、『トリオン直接操作能力』でそれを操っていたようだ。
遠隔操作可能で視界や触感を共有出来るらしい。これで外に行っているのではと思ったが、ならこの能力を知らせる訳が無いと結論付けた。
私はこの特異性をサイドエフェクトと捉え、『分身能力』と名付けた。サイドエフェクトを組み合わせた能力もまた、サイドエフェクトと言えるだろう。
☆アリステラについて
・近々戦争が起きるようだ。相手国の戦力的に占領される事は無いが、アリステラの消耗は避けられないだろう。計算すると五年もしない内に滅びるという結果が出た。それまでには他国に移動する必要がある。
・周期的に拠点の近くに来る者が複数居る。察知されないように確認すると、みすぼらしい身なりをした孤児や、巡回するトリオン兵が殆どであった。一般人は未だ見かけていない。私たちの存在には気付いていない様子だ。この状態を維持しよう。
・アリステラの最新技術は高水準だが、それが末端に浸透していない。殆どがワンオフ品である。量産技術が追い付いていないようだ。
・弟が残していた受信機に爆破装置を組み込んだ。中核に位置する物を崩壊させて、脱出時の目眩ましにするためだ。最も、もしもの時の保険ではあるが。
誤作動したら知らん。
☆彼の行動について
最も注視すべき点は、彼が外に行きたがっている事だ。私はそれを禁止して彼の行動を監視しているが、防げているとは言い難い。本当は行っていないのかもしれないが、彼の能力と頭脳があれば私なんぞ簡単に出し抜く。それこそ認識もさせずにだ。
彼の外出の有無を、私には確認の仕様がないのだ。悔しいことにな。
取り敢えず、戦争中に外出させなければ良い。それだけは絶対だ。
・指圧力の計測結果 295kg/cm^2
→ジョジョの奇妙な冒険。第二部に登場するスト様の指圧力破壊度数。他は適当。
・『強化視力』『トリオン視認体質』 血管が見えた。壁越し、服越しに見えた。
→NARUTO。白眼。
→鬼滅の刃。透き通る世界。
・トリオン体の腕をいっぱい作るやつ
→HUNTER×HUNTER。ネテロ会長のあれ。
・部屋の景色
→ハリー・ポッター。天井のやつ。
・八つの大きいトリオン供給器官
→NARUTO。八門遁甲。
・経絡系上に三百六十一箇所の穴
→NARUTO。点穴。
・『絶交』
→HUNTER×HUNTER。念能力の内の一つ。絶を使う。
・『トリオン細胞』
→NARUTO。柱間細胞。語感だけ。
・『分身能力』
→NARUTO。分身の術。
→HUNTER×HUNTER。精神を飛ばすやつ。
君は幾つ気付けたかな?