淡い空   作:夜神 鯨

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終わりの始まり

20世紀最高の物理学者と呼ばれるアルベルト・アインシュタイン。

 

彼は生前「第二次世界大戦では原子爆弾が兵器として利用されましたが、第三次世界大戦が起こったら、どのような兵器が使われると思いますか? 」という記者の質問に対して「第三次世界大戦についてはわかりませんが、第四次大戦ならわかります。石と棍棒でしょう」といった予言を残している。

 

予言と言うよりは自身への皮肉を込めた未来への警告であったこの予言は結局の所当たる事は無かった。彼ほどの天才でも未来を言い当てる事など出来ないんだろう。

 

何故なら世界は4度もの世界大戦を経てなお、強大な兵器をもって殺しあっているのだから。

 

第三次世界大戦が起こった当初の事はよくわかっていない。殆どの文献がその後の第四次世界大戦で焼け落ちてしまったからだ。私自身も第三次世界大戦後の生まれである為、何故第三次世界大戦が起こったのかを正確には知りえない。

 

聞き及んだ話によると最初は大国と小国の小競り合いから始まったそうだ。この大国をAとして小国をaと呼ぶとしよう。

 

元々a国はA国一部だったが第二次世界大戦後a国はA国から独立、その頃からいざこざが絶えず、国境沿いでの争いも何度か行われた。

 

冬になると港が凍ってしまい使えなくなってしまうA国としては時刻の発展の為、どうしても不凍港が欲しかった。その為古来から何度も南下政策を行いやっと不凍港を手に入れたのだが、その不凍港を有する土地がa国として独立。

 

喉から手が出る程まで欲した不凍港を手放さざるを得なくなる。一度手にした獲物を逃したくないA国はありとあらゆる手を尽くしてa国手に入れようとした。

 

そしてa国を手に入れるためにA国が宣戦布告をした瞬間、A国をも上回るB国が突如介入してきた。それが気に食わないA国はB国に対して牽制を行いB国もそれに釣られるように警戒度を上げていった。

 

まるで冷戦と呼ばれた時代を彷彿させるような緊張が世界中を満たす中、そしてB国の意識がA国に向いている隙をついて、急成長を遂げていたC国が世界各地に手を出し始めた。

 

世界はいつ爆発してもおかしくない火薬庫と同じ状態へと陥って行ったのだ。

 

まだこの段階では第三次世界大戦は起こっていなかった。何度か小競り合いが起こっただけで本格的な戦闘は世界中何処でも起きていなかった。

 

では何故、第三次世界大戦は起こったのか、誰がどんな目的で放たか分からないが第三次世界大戦の引き金は1発の核ミサイルだった。

 

何処誰かが放ったか分からない最初の1発はB国の首都に向かって放たれた。B国は即座に核ミサイルの迎撃を行い、それと同時に2発目の発射が行われる前に報復核攻撃を仮想敵国全てに行った。

 

B国の報復核攻撃を受けた各国は同じく迎撃及び全ての仮想敵国に核攻撃を行った。1日で1万発を超える核ミサイルが世界中を飛び交い、僅か3日で第三次世界大戦は終結した。

 

大国と呼ばれた国々は互いに撃ち合った核ミサイルで滅び難を逃れた国々も放射能汚染に苦しんだ。当時200億を超えると言われた人口はその僅か3日で50億人にまで数を減らし、人類が生活出来る地域は25%まで減少した。

 

第三次世界大戦が終結してから僅か1年で第四次世界大戦が勃発した。人々は残った資源、主に水を求めて日々殺しあった。

 

誰も止めるものがいなくなった第四次世界大戦はその後100年に渡って続き、この世から国家と言う枠組みが消滅した事で終戦を迎えた。

 

第三次世界大戦後、劣悪な生活環境に人類は倫理観と言ったものを一切捨て去り、非人道的な実験、クローン技術や効率良く敵を殺す為の兵器開発を推し進めた。

 

凄まじい程、技術を進歩させてきた19世紀から21世紀までの時間を凌駕する勢いで技術を進歩させた人類は第四次世界大戦を終結させるまでに総人口を1億人ほどまで減らしていた。

 

急激な技術進歩を遂げた人類はその代償として人としての形を失っていた。国家なき後世界は3つの勢力に別れ再び争う事となる。

 

旧アジア州及び旧オセアニア州で生き残った人々を中心に空中に浮かぶ7つの航空母艦で生存する勢力【ムラクモ】

 

旧アフリカ州及び旧アジア州で生き残った人々を中心に3つの移動式陸上要塞で生存する勢力【ガウディーマ】

 

旧ヨーロッパ州及び旧アメリカ州で生き残った人々を中心に5つの潜水艦で生存する勢力【ナヴィーレ】

 

それぞれの勢力がこの荒廃した世界で生き残りをかけた生存戦争を続けている。

 

 

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「……隊長…大隊長……はぁ、起きないですね」

 

朦朧とした意識の中、身体を誰かに揺らされる感覚と同時に可愛らしい女性の声がする。どこかで聞いたことのする声だが頭がボーっとして思考がまとまらない。

 

「…少佐…不知火少佐、起きてください!!」

 

全身を電流が駆け巡ると同時に女性の声がハッキリと聞こえるようになる。そのあまりの衝撃に朦朧とした意識は覚醒し、私は目をパチクリさせながら飛び起きた。

 

「っっ!!……強烈な目覚ましをありがとう。黒潮中尉」

 

声にならない悲鳴を上げながら飛び起きた私の前には私の副官でありバディでもある黒潮中尉が申し訳なさそうに微笑みながら待機していた。

 

「電気ショックによる目覚ましをしてしまい申し訳ありません。お疲れのご様子でしたので起こすかどうか悩みましたが、作戦区域まで後1時間となりましたので、勝手ながら起こさせていただきました」

 

「いえ、いいのよ。こちこそごめんなさいね、私ばっかり寝てしまって」

 

むしろ謝らなくてはいけないのは私の方だろう。作戦区域まで到達していないとは言え一大隊を預かる者がそれまでの指揮を副官に全て任せて長時間の睡眠をとっているのだから

 

申し訳なさそうにしている黒潮中尉の気を紛らわそうと彼女の頬を撫でようと腕を動かす。しかし、黒潮中尉の頬まであともう少しといったところで体が引っ張られ彼女の頬まで手が届かない。

 

「……本格的に寝ぼけてるわね。戦闘区域に向かっているのだから機動兵器(ドール)の中に決まっているわよね」

 

そう言いながら周囲を見渡せば前周囲モニターがドールを中心とした360度周囲の景色を流している。本機を中心に4機で構成されるダイヤモンドを4つ組み合わせた大きなダイヤモンドを形成した編隊を組んでいる様子も映し出されている。

 

少し離れた後方では同じくダイヤモンドを構成する集団が3つ確認できる。右翼に展開するのが野分中尉率いる第二中隊(イーグル)、左翼に展開するのが嵐中尉率いる第三中隊(ホーク)、そして私たちの後方に展開しているのが雪風大尉率いる第一中隊第一中隊(コンドル)

これに加え私が率いる本部中隊本部中隊(ラプター)とこの場には来ていない補給整備中隊補給整備中隊(ミスルトウ)の計5個中隊が私達第二一独立機動遊撃大隊の構成になる。

 

「仕方ありませんよ、不知火少佐はこの作戦が始まる2時間前まで単独偵察任務に就かれていたんですから」

 

黒潮中尉の言葉を聞きながら私は操縦席の固定ベルトを外し彼女を抱きしめる。機体の重力制御装置によってほぼ無重力となった機内で、私よりも少し背が高くふくよかな体に身をうずめながら彼女を撫でる。

 

視聴覚拡張インプラントによって拡張された視界には行動開始からの経過時間が移し出されていて、約9時間もの間黒潮中尉が単独で大隊の指揮及び機体の制御を行っていたこと明らかにしていた。AIによって作戦区域までの移動はほぼオートメーション化されているといっても部隊の中核を成す大隊長機では常に気を張り詰め、ロクに休むことも出来なかっただろう。

 

「ごめんなさいね、貴女にばっかり迷惑をかけてしまって」

 

「いえ、大丈夫です。第四世代である私はそもそも睡眠が必要ありませんし、ロールアウトされたばかりのこの機体になれる時間も必要でしたから」

 

黒潮中尉を含む大隊構成員のほとんどが所属している企業である【ムラクモ】の第四世代義体になる。彼ら彼女らは生まれてからすぐ培養器によって成人するまで成長し、その過程で各部位の換装やナノマシンの投与の他この世界の常識や一般的な知識を全て与えられる。

 

意識が覚醒してからすぐに活動する事が出来る他、定期的なナノマシンの投与だけで他のメンテナンスをする必要がない。

 

体内を循環するナノマシンが身体の全てを制御しているため睡眠や不要物質の排出をする必要が一切なく。過度な毒素や放射能で汚染されない限り一定のパフォーマンスを保ったまま動き続ける事ができる。

 

大隊内で第四世代では無い者達は補給整備大隊にいる古株か私ぐらいなもので、補給整備大隊にいるものでも古い世代で第三世代までしかおらず勢力結成当時の人間の状態からナノマシン投与をへて義体化された第一、第二世代の義体化者は戦いの中で果てたか、耐用年数が切れて既に朽ちてしまっているため存在していないだろう。

 

脳以外全ての部位をでは無く義体によって構成されている第三世代も全身義体とナノマシンによって管理させている為、睡眠はほぼ必要ない。一日1時間取れば十分に活動ができてしまう。

 

【ムラクモ】に所属する全ての者は身体の全てをナノマシンによって管理されている為、睡眠をする必要も、食事を取る必要も、ストレス発散をする必要もない。

 

「私も本来は睡眠なんて必要ないんだけどね」

 

「ですが不知火少佐は第零世代、国家と呼ばれるものが存在した時代から生きるデータベースとも呼べる方!!それに普段でも私達の倍は戦闘しています。こんな時ぐらいお役に立てて下さい」

 

第零世代、第三次大戦後に作られた。最初の人造人間達。《ヴァルキュリア》シリーズと呼ばれ、名前を与えられた12人の娘たち。遺伝子操作を施され、当時の最新技術を惜しげもなくつぎ込まれた人類の最高傑作。私はその12番目《レギンレイヴ》の名前を与えられ、主にナノマシンによる人体の進化を目的に作られた。その影響もあって黒潮中尉達と同じ睡眠を必要としない体になっている。しかし、徐々に睡眠が必要に無くなっていたせいか、睡眠が必要ないにも関わらず眠たくなる。食事も本来は殆ど足らなくてもエネルギー確保ができるのにも関わらず食事が欲しくなる。

 

「まあ、そのせいで上層部に気に入られていないのも事実なんだけどね」

 

「任務の規模や貢献度を考えれば大佐の地位を当たられても起こしくないですし、少佐の階級で独立大隊と言えどアルカナ部隊を預かっているのは不知火少佐だけですよ」

 

【ムラクモ】が所有する軍隊の内、7つの航空母艦を守護する名目で構成された21の舞台を《アルカナ》と呼ばれ、主に航空母艦の守護や重要な任務に投入される。ほとんどの部隊は連隊以上の規模で構成されているが、不知火の率いる部隊と《ヴァルキュリア》の一体が率いるもう一つ部隊だけは大隊でありながらアルカナに数えられる。

 

「さてと、こんな話は終わりにして任務に戻りましょう。黒潮中尉引き続き機動兵器(ドール)の操縦は任せます。ロールアウトしたてで前の機体と操作感が違うところがありますが、基本は前機と同じです」

 

「了解しました。オートパイロットを解除して手動操縦に戻します。I have」

 

「You have」

 

互いに操縦席へと戻りベルトを締める。各箇所の確認を手早く終わらせ、操縦権限の確認を終わらせる。

 

「大隊長機から各中隊長機へ作戦区域まで残り30分、各隊長は各機体の確認をした後報告」

 

私が流した通信から5分経った時点で雪風中大尉から連絡が入る

 

「こちら第一中隊異常なし」

 

それに続くように各隊長から通信が入る

 

「同じく第二中隊異常なし」

 

「第三中隊異常なし」

 

「こちら本部中隊異常なし」

 

最後に副大隊長である秋雲少佐から異常なしの連絡が入り作戦開始まえの準備が整う。

 

「第一中隊、当初の作戦通り先行偵察任務をお願いします」

 

「了解しました。第二小隊を偵察に当てます」

 

雪風大尉の命令を受けた第一中隊第二小隊の4機が戦列を離れ偵察任務の為先行して敵の進軍予想地点へと向かう。

 

今回、第二一独立機動遊撃大隊に与えられた任務は第7航空母艦に接近している【ガウディーマ】の3個大隊を第7航空母艦に接近する前に撃退すること。第7航空母艦自体も戦闘予想地点から既に退避行動を行っている上に迎撃に出ている部隊と共同での任務になる共同部隊である四〇一機工連隊はアルカナ部隊ではないが1000人規模の地上部隊。地上用の機動兵器(ドール)も十分に支給されている為、個々の戦闘力も悪くない。【ガウディーマ】の3個大隊を相手にしても渡り合えるだろう。

 

今回は四〇一機工連隊が防衛陣地をもって敵を食い止め、私達が機動力を生かし敵への遊撃を行い、敵を分断、各所で孤立した敵を撃破する。その為に重量ギリギリまで広域殲滅用実弾兵器を搭載してきている。

 

「第一中隊長から大隊長へ、偵察隊からの映像が上がってきています」

 

作戦区域まで残り15分のと頃で偵察部隊から通信映像がつながる

 

「了解、こちらに回してください」

 

すぐさま雪風大尉に映像を回すように要請を出す。雪風大尉から回ってきた来た映像には衝撃的な映像が映りだされる。

 

「ッ!!これは」

 

「不味いわ、雪風大尉、すぐに偵察隊を戻して!」

 

「了解しました」

 

映像に映し出されたのは大地を埋め尽くす黒い波に四〇一機工連隊の部隊と思われる集団が飲み込まれるところだった。

 

「大隊、速度上げろ!敵集団を分断するぞ!」

 

「「「了解!!」」」

 

巡行速度で移動していた大隊は速度を上げて最高速度での移動を開始する。

 

「情報と違う、行軍速度も速いし3個大隊どころか3個連隊程の規模がある」

 

「敵戦闘集団とエンゲージ」

 

「各大隊、散開各中隊ごとに各自戦闘開始。第一中隊は四〇一機工連隊の援護、第二中隊は敵陣左翼から、第三中隊は敵陣右翼から回り込みなさい」

 

「「「了解!!」」」

 

私の命令に合わせて、各中隊が散開していく。爆炎と共に各所で攻撃が開始されるが、敵の物量が多すぎて敵の侵攻速度は変わらない。

 

「本部中隊私に続け、敵中央を突破して司令部を叩く」

 

『『了解!』』

 

「黒潮中尉頼んだわ」

 

「任せてください」

 

黒潮中尉が操縦する機体は敵集団の上空を通り抜ける、敵が飛び上がり攻撃を仕掛けてくるが、接敵する前に黒潮中尉が放った後学兵器に撃ち抜かれ墜落する。

 

「相も変わらず【ガウディーマ】の兵士は気持ち悪いですね。あれでは化け物です」

 

「まあ、【ガウディーマ】はクローンと遺伝子工学に優れた勢力だからね。私達のように機動兵器(ドール)を造るより、兵士を大きくした方が効率いいのでしょう」

 

大地を埋め尽くす【ガウディーマ】の兵士達は小口径の弾丸を弾く黒い毛を持ち、鉄をも引きちぎる強力な顎をもつ4足の獣。子供程の知能を持ち上位者の命令には絶対服従の兵器達、タイプビーストと呼ばれる【ガウディーマ】の先兵単体の戦闘力は高くないが生産性に優れ環境適応能力も高い。

 

「こちらイーグル5敵左翼集団撃破」

 

「こちらホーク8敵集団の分断に成功」

 

しかし、機動兵器(ドール)を操る我が大隊の敵ではない、私の目の前に表示されているコンソールには、敵を示す赤いシンボルが次々と消失してく様子が映し出されている。3個連隊、約3万ほどの敵を前にしてもうまく立ち回れている。

 

「敵飛行型と会敵、迎撃します」

 

「タイプワイバーン、面倒な敵が出てくるわ」

 

こちらが優勢かと思ったのもつかの間、新たに表れた敵はコウモリのような皮膜の翼に、鏃のように尖った尾をもつ鱗に包まれたトカゲの様な姿をした獣、上空をこちらと同じように飛び攻撃を仕掛けてくる。タイプワイバーンと呼ばれるこの獣は知能高く、こちらの行動を予測する厄介な敵だ。幸いにも遠距離攻撃は持っていないことが救いだが速度が速く機動性に優れている。機動兵器(ドール)であっても丁寧に対処しなければ負ける。

 

『中隊、各個に広域殲滅弾(ダーインスレイヴ)を投下機体を軽くしろ!。優先事項をタイプワイバーンの殲滅に移行。ここを抜かれれば、四〇一機工連隊被害が広がる!』

 

陸戦型が機体の殆どを占める四〇一機工連隊は上空からの攻撃に弱い、ただでさえ波のように押し寄せるタイプビーストを食い止めている最中に上空から強襲されれば一気に前線が崩壊する可能性も高い。

 

私の命令と共に本部中隊はダーインスレイヴの投下を開始、黒く染まった大地が白く光り戦場に大きな空白地帯を構成することに成功する。

 

しかし、そんな喜びもつかの間、空白地帯が出来たのは僅かなことでダーインスレイヴによってできた空間は後続から来たタイプビーストの群れにあっという間に埋め尽くされてしまう。

 

『各機速度を生かせ!空中の敵ばかりに気をとられるな!』

 

第二一独立機動遊撃大隊は空中地上双方の群れに攻撃を仕掛ける。けして近付き過ぎず、遠距離からの攻撃で確実に数を減らす。小隊単位で連携を取り確実に敵を葬っていく。タイプワイバーンが前線に行かないよう撃破しながらも、少しでも味方前線の負荷を減らす為に空対地攻撃も繰り返すが、焼け石に水。どんどんと敵が押し寄せ、僅かに空いた空間もにすぐに元通りに戻る。

 

「厄介な、敵の数が多すぎる。これ以上戦闘をすれば」

 

コンソールに表示される戦況の状況はいいとは言えない。すでに相当数の敵を撃破しているのにも関わらず敵の勢いは衰えることがない。四〇一機工連隊は第1防衛拠点を放棄、遅滞戦闘を繰り返しながら第2防衛ラインへの移動をしている。

 

左右に展開している第一、第二両中隊も離脱者を出してはいないもの、飛来したタイプワイバーンに攻撃され、多少なりとも損害を出している。このまま続ければ離脱者が出始めるだろう。

 

『第7航空母艦司令部こちら第二一独立機動遊撃大隊、応答願う』

 

『……ザッ………ザザ……』

 

『司令部!』

 

『………』

 

「クソッ!繋がらない」

 

「繋がらない?司令部とですか!?」

 

本来ならば司令部と通信が取れないなんてことはあり得ない。機動兵器(ドール)は既存の通信規格とは全く異なる通信機器を装備している。そのため強力なジャミングが行われても問題なく通信が行える。

 

その為通信が出来ないという事は第7航空母艦司令部に何かがあった可能性が高い。

 

どの道このまま行けば弾切れを起こして戦えなくなる。それならば1度大規模な撤退をしてしまうべきだろう。既にこちらは実弾兵器は撃ち尽くし、残った光学兵器もこのまま行けば焼き付きを起こして使えなくなってしまうだろう。

 

『四〇一機工連隊本部、四〇一機工連隊、こちら第二一独立機動遊撃大隊長』

 

『こちら四〇一機工連隊長ライトマン大佐だ』

 

通信に出たのは四〇一機工連隊長ライトマン大佐、1度も挨拶をした事無いが先程行っていた後退の手際を見るにそれなりに優秀な指揮官のようだ

 

『ライトマン中佐ご挨拶が遅れましたこと誠に申し訳ありません。私は第二一独立機動遊撃大隊長不知火少佐です』

 

広域通信からライトマン中佐への秘匿回線へと切り替えを即座に行う。流石に指揮官同士の話を広域通信で垂れ流す訳にも行かない。

 

『いや、噂は聞かせて貰ってるよ、それで要件はなんだね』

 

『はい撤退を進言します。このままでは双方ともに押しつぶされます。その前に大規模な撤退を』

 

『それをされちゃァさあ、困るんだよねぇ』

 

『!!?』

 

突如、2人だけの秘匿回線に割って入る女性の声が聞こえる。

 

決して有り得ない第三者の登場に2人して驚愕する。本来なら秘匿回線に割り込むなんて事は有り得ない。例え同じ部隊の者であっても決して割って入ることなど出来ない。

 

しかも相手が話しているのは流暢なガウディーマ語。それだけで彼女がこちら側の者でない事がわかる。

 

『貴様!!何者だ!』

 

『私は《ナンバーズ》のNo.2ティロン』

 

《ナンバーズ》私たち《アルカナ》に匹敵する精鋭部隊一体一体が一騎当千である怪物達、いかに《アルカナ》であろうと部隊長クラスでなければ対等に渡り合えない。

 

「不知火少佐、前方からタイプドラゴンです!その数3」

 

【ガウディーマ】の中でも最高戦力と言えるタイプドラゴン、それがこの戦場で暴れ回ったら戦況が一気にひっくり返される。

 

『貴女は売られたのよ不知火少佐、いえ《ヴァルキュリア》の《レギンレイヴ》!!』

 

『大戦時代の遺物を破壊できれば私達の序列も上がる』

 

『お命頂戴いたします』

 

向かってきた3体のタイプドラゴンの上はそれぞれ人影が見える。

 

「なッ!!3体の《ナンバーズ》!?」

 

《ナンバーズ》が1つの戦場に複数体投入された記録はない。その《ナンバーズ》がこちらに向かって突撃してくる。戦況がひっくり返さ柄れるどころではない、あれらを始末しなければ部隊が全滅してしまう。

 

「黒潮中尉、操縦を変わりなさい!」

 

「は、はい。You have」

 

「I have」

 

黒潮中尉から操縦を引き継ぎ、敵《ナンバーズ》へと突撃していく

 

『秋雲少佐、隊を預けます、貴方が指揮をして撤退しなさい』

 

『了解しました、大隊私が指揮を執る。即時反転、《ダーインスレイヴ》が残っている機体は各自投下のち全速力で離脱しろ!本部中隊は私と殿だ。行動開始!!』

 

大隊の指揮を引き継いだ秋雲少佐は即時に指揮を執り撤退を開始する。

 

「私達も行動するわよ、黒潮中尉情報の整理と機体管理は任せるわよ」

 

「はい」

 

自身の機体を駆りタイプドラゴンへと接近する。高速で移動しながら右腕部に装備した光学兵器(アシナヅチ)を射撃する。放たれたエネルギー弾はドラゴンに命中するが、厚い鱗に弾かれ大したダメージを与えられない。それでも射撃は途切れさせずに接近を続ける。目と鼻の先まで近づいたところで敵のドラゴンから高熱のブレスを放たれるが、ギリギリで回避し、《アシナヅチ》に装着された銃剣で翼を切りつける。高密度のエネルギー刃がドラゴンの首筋を切りつけるが、別のドラゴンが放ったブレスによって回避行動を取らされる。

 

そのまま、空中をステップする様に後退し、左右の腰部位にマウントされた誘導機動兵器(ニギハヤヒ)を起動させる6機の《ニギハヤヒ》は私の思考に誘導されエネルギー弾を放ちながらドラゴンへ攪乱を仕掛ける。

 

「3対1はキツイ!!黒潮中尉大丈夫?」

 

「なん…とか」

 

機体に内蔵されている慣性制御や重力制御装置を用いても私が操縦する機体では完全にGを消し去ることが出来ない。私は問題ないが黒潮中尉には大きな負荷が掛かっているだろう。

 

「AIへ私の体内にある制御用ナノマシンを黒潮中尉へ投与」

 

機体に搭載されたAIに命令すると首元に針が刺され、体液が吸われている感触を味わう。気を紛らわす程度だがないよりはマシだろう。残念ながら黒潮中尉の方を見る余裕はないが、前下から聞こえてくる苦しそうな声は和らいだように感じる。

 

『おとなしく私たちに殺されろ《ヴァルキュリア》!!』

 

敵タイプドラゴンの攻撃を間一髪で避け、ドラゴンに騎乗している《ナンバーズ》に向けて《アシナヅチ》を放つ。

 

『甘いわ!!』

 

放たれたエネルギー弾は彼女に着弾する事は無く。拳に弾かれて四方に散る。

 

「本当に化け物ね」

 

思わずポロリと愚痴が出る。

 

愚痴ったところで状況が打開できるわけではない。現状タイプドラゴンの鱗を突破できる攻撃は接近攻撃しかない。だがそれを許してくれるほど相手も甘くない。さてどうするかと悩んでいると急に通信が入る。

 

『不知火少佐…まだ無事のようね』

 

『金剛少佐!?【ナヴィーレ】近接区域で第3航空母艦の護衛中では?』

 

金剛少佐、私と同じく独立大隊の隊長であり《アルカナ》の一員、そして《ヴァルキュリア》の生き残りであり、共に【ムラクモ】で身を寄せ合っている。

 

『私達は嵌められた!【ムラクモ】は最初から私達《ヴァルキュリア》の生き残りを排除するためにこの作戦を計画したのよ』

 

『ここまで【ムラクモ】に貢献した私達をなぜ今更』

 

【ムラクモ】の妖撃隊とし数多くの作戦に従事してきた、情報の行き違いや想定外の戦闘も多くこなしてきた。

 

そう、【ムラクモ】がいくら私達を切り捨てようと関係ない。こんな状況簡単に打開できるはずだ。

 

『金剛少佐、私達ならどんな状況でも打破できるはずです。こんなところで死ぬべきではありません。また生きて会いましょう』

 

『そうね…不知火少佐…私たちならきっと………クソッあいつらそこまでして私達を排除したいか!!しら…いやレギンレイヴ今すぐ退避しろ!!…やつ…ら……で私達ご…すつもり…だ!!』

 

『金剛少佐よく聞き取れませんもう一度』

 

彼女との通信が次第に悪化していく。司令部に通信を試みたのと同じ感覚だ。

 

『…いいか…く…逃げ……ザ…ザーザー……』

 

「少佐強力なジャミングが区域全体に通信及びレーダーが機能していません」

 

機動兵器(ドール)に搭載してある通信機はどんな強力な電波を流してもジャミング出来ない。しかしそれが出来るとしたら。

 

『上層部めそこまでして私達を殺したいか!!』

 

「黒潮中尉すぐに退避するぞここに居てはまずい!!」

 

後退する四〇一機工連隊を気にしている場合ではない。このタイミングで上層部がこちら側にジャミングをかけてきた以上この戦場事消し去る可能性がある。

 

「少佐、レイダーに機影を捉えました!!…しかし、これは…」

 

「なッ」

 

黒潮中尉から回されたデータには【ムラクモ】の最終兵器である縮退爆弾である《ラグナロク》が数機こちらに向かって飛翔してきているのが見える。

 

「クソッふざけるな!!奴らこの星ごと吹き飛ばすつもりか!!」

 

着弾地点がどこになるか分らないが今更横に距離を取っても遅い

 

『貴様、戦いを放棄して何処へ行く!!』

 

『黙れ!!貴様らに付き合っている暇なぞない!!』

 

少しでも高く上空へ逃げるにはこれしかない。機体の全エネルギーを推進力へと回し推進部が焼けきれんばかりの速度で上昇を始める

 

「クソッ上がれぇぇぇぇ」

 

そう私が叫んだ瞬間、空中で光が炸裂し視界が真っ白に包まれる。そして同時に機体を衝撃が襲い、私たちは意識を手放したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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