俺、【風祝 覡】の朝は早い。
朝は4時起き、そこから2時間ほど稽古をした後朝食・その他準備を済ませて6時半頃に登校。
7時に学校に着いた後、教室には行かずそのまま職員室を経由して生徒会室に直行、そのまま生徒会の仕事に取り掛かる。
仕事を始めて約1時間後に生徒会室の扉が開く。
「おはようございます、覡先輩」
入ってきたのは生徒会副会長であり2年生の【蔵内和紀】。
「おはよう、クラ」
「流石、今日もお早いですね」
蔵は席に着き、机の書類に目を向ける。
「これが今日の分ですか?」
「うん、よろしくね」
2人でそれぞれ仕事を進める、そして蔵が来てから10分後に再び扉が開く。
「おはようございます」
今度入ってきたのは生徒会書記で1年生の【綾辻遥】。
「綾辻、おはよう」
「おはよ、アヤ」
手を止めアヤに目を向け挨拶を返す俺とクラ、いつもの光景である。
「すぐお茶いれますね」
「あぁ、頼む」
「ありがと」
生徒会には電気ポットが配備されており、お茶は1年生であるアヤともう一人の子が入れてくれる。
数分もしないうちにアヤが作ったお茶をそれぞれの机に置いてくれる。
俺とクラは礼を言い、ほぼ同じタイミングでお茶を飲む。
その後30分頃に残り2人の生徒会委員が来て、いつもの様に仕事と談笑に時間を潰した。
・
・
・
その日の授業が終わり再び生徒会室、2人が部活でおらず現在は俺とクラ・アヤの3人のみである。
俺たち3人の共通点は生徒会であること以外にもある、それが【ボーダー】。
俺が家族に長く内緒にしていた秘密組織である、今では既に一般にも存在が公開されており、家族にも打ち明けている。
それぞれ所属する部隊は違うものの、同じ学校の生徒会メンバーとして友好的な関係である。
「2人とも、最近どう?」
目の前の書類に目を通しながら、ふと同じように書類仕事をしている2人に尋ねる。
「私たちは仲良くやれてますよ、少し前に入隊した木虎ちゃんとも上手くやれてます」
「俺のところも相変わらずって感じですね、弓場さんとののさんが言い合ったりそれを神田さんが宥めたり」
仲がいいのは良い事だ、先輩隊員として素直に嬉しい。
「そう、楽しそうなら何より。でもやっぱり大変じゃない?アヤは広報で忙しそうだし、クラは隊長にユバちゃんとノノがいるし大変そう」
俺がそう言うと2人の手が止まった、何か思うところがあるのだろう。
「・・・どしたの?何でも言ってみ」
俺がそう言うと2人は目を合わせ、順番を決めたのか先にアヤが話し始めた。
「・・・そうですね、ご推察通り忙しくて大変です。書類仕事は多いし撮影や取材もあるので中々ゆっくり出来る時間が取れなくて・・・」
「・・・そう、なら今度手伝いに行くよ」
「え!?良いんですか!!」
すごく驚いている、余程忙しいのだろう。
「S級に上がってランク戦に参加できなくなった分時間は余ってるから・・・今度差し入れ持って手伝いに行くよ」
流石にテレビ出演とかは出来ないけどね、と付け加えアヤを見ると嬉しそうな表情で俺を見ている。
「忙しい時は連絡ちょうだい、ジュンにも言っとくから」
「はい!ありがとうございます!!」
先程までの暗い表情が一転、にこやかな笑顔で書類を進め始めるアヤ。
そして・・・
「それでクラはどしたの?」
「・・・まだこれは弓場隊の皆にしか話してない事なんですが、近々俺と王子は弓場隊を抜けて“王子隊”としてこれから新しく始めようと考えているんです」
「・・・!ふむ、弓場隊から巣立ちするわけね。いいんじゃないかな?応援してるよ」
「ありがとうございます。弓場隊の皆にも激励をかけて貰ってオペレーターにはののさんの紹介で橘高羽矢さんに入っていただくことになってるんです」
「ふぅーん・・・それで?」
「えっとですね、あと1人・・・メンバー探しに苦労しておりまして」
「あと1人?3人+オペ体制で行くんだ」
「はい、一応3人で時間ある時に探してはいるんですが・・・」
これは聞いてて正直以外だった、クラもオージもコミュニケーション能力は高い。
初対面でも物怖じせずに話に行けるタイプの人間だ、本人たちの性格もあるが何よりあのユバちゃんの下に付いてたんだし。
「時間が中々取れないのもそうなんですが・・・何と言うか・・・」
ふむ、それなら・・・
「じゃあ今俺が教えてる子の中から選んで推薦しようか?アタッカーオンリーになるけど希望があればある程度は聞いてあげれるよ?」
「本当ですか!!ぜひお願いします!!」
柄にもなく大きい声で立ち上がるクラ、数秒後に自分の状態に気づいて顔を少し赤らめながら、失礼しました・・・と、言って席に座る。
クラと反応にフフと笑いが溢れ、わかった、と言いつつ俺は携帯を取りだしとある子に電話をかける。
「お、出たでた。急にごめん、今大丈夫?ちょっと紹介したい子がいてね?・・・ん、じゃあこっちの生徒会室に来てくれる?・・・うん、こっちの人には言っておくから。・・・うん。じゃあ待ってる」
俺は電話を切り、クラの方を見る。
「今から来てくれるから。一応先に軽く紹介しておくと六頴館中の子なんだけど、月一でやってる俺主催の【自由参加型攻撃手強化訓練】に参加してくれてる子」
「今から!?」
「“時は金なり”って言うし?・・・それで当人の事だけど、筋も中々だしもうそろそろB級に上がるんじゃないかな?って実力は今の時点でもあるよ、もしかしたらもう上がってるかも」
そんな話をしながら暫く待っていると扉を叩く音が聞こえた。
「覡先輩、樫尾です」
「はーい、どうぞ入ってー」
失礼します、と扉を開けて入ってきたのは黒髪の少し濃い眉をした少年だった。
「いらっしゃい、早かったね」
「先輩のお呼びとあらば、この程度問題ないです」
「ん、ありがとう。とりあえずまぁそっちの方に移動しようか。アヤ、お茶をお願い」
「分かりました」
アヤにお茶を催促し、お客様来訪用のスペースに移動する。
「っとまぁ今回ここに呼んだ理由なんだけど、カシオはまだC級だっけ?」
「いえ、昨日でやっとB級に上がることが出来ました」
「おぉ!やったじゃん、おめでとう」
「ありがとうございます、本当は次の指導の際にお伝えするつもりだったんですが」
「なるほどね、という事は次からB級でまずはチームを作らないといけないわけなんだけど・・・そこで樫尾にちょっと紹介したいチームがあるわけよ」
「紹介・・・?」
「うん。では続きは2人でよろしく」
「はい、ありがとうございます」
クラに話題を譲り俺は席へと戻る、そのタイミングでアヤがお茶を樫尾に差し出した。
「まずは自己紹介からだ、俺は蔵内和紀。六頴館高校の生徒会副会長をしている」
「じ、自分は六頴館中学校2年の樫尾由多嘉です!」
「あぁよろしく、それで今日来てもらったのは俺たちの隊に勧誘したかったからなんだ」
「蔵内先輩の隊ですか?」
「いや、正確には王子一彰・・・そいつがリーダーの王子隊だ。王子と俺、オペレーターには橘高羽矢さんの3人で構成が決まっている」
「決まっている・・・?」
「あぁ、まだ正式には発足していないんだ。俺と王子は元々弓場隊の隊員でね、そこから独立して新しく始めようとしている。君には王子隊の一員となってもらいたいんだ」
「・・・」
「?どうしたんだ」
「いえ、とて光栄なお話ではあるんですが・・・なぜ自分なのでしょうか?他にも凄い人は沢山いるはずです」
「ふむ・・・そうだな。確かに俺はまだ君のことをよく知らない、何が得意か何を使うのか。だが俺たちや樫尾のことを知っている覡先輩が俺たちに樫尾を推薦してくれた・・・性格的にも実力的にも合うと判断しての事だろうと思う。俺は先輩を信頼してるし尊敬している、だから君の実力に疑いも無く君を改めて勧誘している」
「・・・・・・」
「ど、どうした?」
「い、いえ凄く覡先輩を尊敬されているのが伝わって・・・正直圧倒されました」
「そ、そうか/////」
自分で言ってて恥ずかしくなったのか、本日二度目のクラの赤顔。
正直聞いてる俺も超恥ずかしかった、アヤはニコニコしてこちらを見ている・・・見ないで、恥ずかしいから。
「それでどうだ?」
「はい、そのお話お受けさせていただきます。よろしくお願いします、蔵内先輩」
「あぁよろしく」
その数日後に正式に弓場隊から2名が脱退し、その2人と新規メンバーの2人で王子隊なるものが結成されたとクラから電話があった。
弓場隊の方も2人分の穴を埋めるため、スナイパーの子が一人入隊したらしい。
ひとまず無事に王子隊が結成されたことは喜ばしい、弓場隊・王子隊の今後の活躍にボーダーの先輩として心から期待する。