朝・・・僕達はアルフと共に海鳴公園に来ている。
この場所でなのはとフェイトがお互いの全てのジュエルシードを懸けて決闘を行うのだ。
フェイトはまだ来ていない。
この決闘は当然リンディさんたち管理局も映像で見ている。
「ここなら・・・いいよ。出てきて、フェイトちゃん!」
振り向くと電灯の上にバルディッシュを持ったフェイトが立っていた。
「フェイト・・・・もうやめよう。これ以上あんな女の言うこと、聞いちゃだめだよ。このままじゃ不幸になるばかりじゃないか。だから・・・フェイト」
フェイトに必死に懇願するアルフ。主のことを想う気持ちが言葉の端々から感じられる。しかしアルフの必死の訴えにもフェイトは首を横に振る。
「だけど・・・それでも私は、あの人の娘だから」
娘・・・か・・・
そんなどうあっても意思を曲げないフェイトに対してなのはは無言で己のデバイスを起動させ、バリアジャケットを身に纏う。
「ただ捨てればいいってわけじゃないよね?・・・・逃げればいいってわけでもない」
なのははただ静かに言葉を紡ぐ。
「きっかけは・・・きっとジュエルシード。だから懸けよう。お互いが持ってる・・・全部のジュエルシードを!」
〈プット アウト〉
レイジングハートがこれまで封印してきた全てのジュエルシードを解放する。
〈プット アウト〉
バルディッシュもそれに答える様にジュエルシードを解放する。
これで合計21個、全てがここに集まった。
「それからだよ。・・・全部・・・それから」
レイジングハートを構えるなのは。フェイトはじっとなのはを見据え、バルディッシュを変形させる。
ユーノとアルフはその様子を黙って見守る。
「私たちの全ては、まだ始まってもいない。・・・だから、本当の自分を始めるために・・・・・」
そしてなのはは最後の言葉を目の前の黒の少女に告げる。
「始めよう。最初で最後の本気の勝負!!」
なのはの言葉にフェイトは答えない。しかし、フェイトの紅い瞳は口よりも有言に語っていた。
ここに、二人の少女の最後の戦いの幕が上がった。
「明久、なのはは勝てると思う?」
徐に霊夢はそう質問してくる。
「さぁね・・・運次第だと思う」
一方的な試合にはならないはずだ。
二人とも、力は同等と言って良い状態になってるから。
________
【海上】
空の上で桃色と金色、二色の光が舞う。
美しくも、凛々しく、勇ましい光。
「やぁあああああああ!!」
「はぁあああああああ!!」
『ガキンッ!!』
共にデバイスをぶつけ合い一瞬つばぜり合う後に互いに弾かれ合い後退する。
〈フォトンランサー〉
フェイトはすぐに体勢を立て直し自分の十八番とも云える魔法を発動させる。
〈ディバイン・シューター〉
それを見たなのはも素早く、レイジングハートに魔力を注ぎ迎撃するための魔法を発動させる。
フェイトの周囲に雷を纏った金色の魔力弾が、なのはの周囲には桃色の魔力弾が形成される。
そして二人は、
「ファイア!!」
「シュート!!」
同時に撃ち出した。
桃色と金色の光弾は互いに相殺することなく避け合いそのまま術者へと殺到する。
なのはは迫りくる雷弾を紙一重で躱し、フェイトは上に上がり桃色の光弾をやり過ごそうとするが追尾性能があるのか光弾はフェイトを追う。
それを見たフェイトは回避は出来ないと判断し即座に障壁を展開する。
光弾と障壁が衝突すると同時に閃光が炸裂し一瞬だがフェイトの視界を遮る。
その一瞬の隙をついてなのははフェイトの真下よりすでに形成していた次の光弾を撃ち放つ。
「シューート!!」
放たれた四つの光弾は狙いを過たず、上空のフェイトへと襲い掛かる。
しかしフェイトは冷静にバルディッシュを大鎌に変形させ、迫る光弾を迎え撃つ。
一つ、二つ、三つ、四つ・・・
三つの光弾を光刃で薙ぎ払い、最後の一つを躱した。そのまま勢いを殺すことなく光刃の大鎌を振りかぶりなのはへと迫る。
なのはは手を前に出すと、
〈ラウンドシールド〉
桃色の円形の障壁が展開され金色の刃とぶつかり合う。
盾と刃が火花を散らす。
フェイトは盾ごとなのはを貫かんと力を込め、なのはは盾の硬度を高めるとともに目を瞑る。
そのときフェイトの後ろで何かが煌めいた。それは先程フェイトが回避した魔力弾だった。
なのははフェイトの刃を受け止めながらたった一つ残った魔力弾を制御していた。
「っ!!」
背後からの奇襲。しかしフェイトはそれを察知したのか、振り返り腕を突き出し自分の盾を張る。
飛来した魔力弾は一つではフェイトの障壁を砕けるはずもなく直撃と同時にあえなく光の粒となり霧散した。
フェイトは再びなのはの方に顔を向けるがそこにはすでになのはの姿は無かった。なのはの姿を見つけんとあたりを見回すフェイト。しかし自分の前後左右どの方向にもなのはの姿は見当たらない。
〈フラッシュムーブ〉
直後、フェイトの真上から魔法による加速を伴ってなのはが接近する。
「せぇええええええええええいっっ!!」
喉が張り裂けんばかりの咆哮と共に己の魔杖を鉄槌として打ち下ろすなのは。
「っっ!?」
間一髪のところで反応し上を見上げるフェイト。その眼には敵である少女の純白の姿が映る。
反射的に武器を構えてなのはの打撃を防ぐフェイト。
鍔づり合いになる二人のデバイス。
その時、眩い閃光が爆発し、辺り一面を照らし出す。
その閃光の中、フェイトは光りに紛れて、なのはに斬りかかる。
なのはは間一髪のところでフェイトの斬撃を避けるが胸のリボンが斬られ一部が宙を舞う。
即座に離脱しようとするがその方向にはすでにフェイトの仕掛けた金色の魔力弾が浮いていた。先程の斬撃はなのはを仕掛けた罠の方へ誘導するための誘いだったようだ。
「あっ!?」
〈ファイア〉
バルディッシュの声に従いなのはへと襲い掛かる魔力弾。フェイトの張った罠に驚きつつもなのはは障壁を張って魔力弾を防ぐ。
なのはの障壁に弾かれ、受け流され、あらぬ方向へと飛散する魔力弾。その内のいくつかは海へと落ち、水飛沫を上げて着弾する。
一旦距離を取り離れる両者。
「はあっ・・・はあっ・・・はあっ」
「はっ・・・はっ・・・はあっ」
乱れる息を整えようとする。この戦いが始まってからすでに一時間が経過している。両者ともに疲労の色が濃い。高町なのはとフェイト・テスタロッサ。生まれた世界も、これまで生きてきた人生も、何もかもが違う。
金の少女は最愛の母の願いを叶えるために覚悟を持ってこの使命に身を投じた。
それでも、白い少女は諦めるということをしない。
初めての出会いから、ずっと心の内に思い起こしていた。あの悲しみを潜めた瞳を。
知りたかった。話して欲しかった。そして、できるなら力になりたかった。それが例えお節介でも、大きなお世話であっても。なぜならそれが高町なのはが高町なのはであるという一つの証明でもあるから。
故に、なのはは諦めない。必ず目の前の少女の悲しみを打ち消し、この出会いを、素晴らしいものへと変えてみせる。
戦いは終幕へと確実に近づいている。
初めて会ったときは、魔力が高いだけの素人だったのに。・・・もう違う。速くて、強い・・・
フェイトなのはの潜在能力の高さに驚愕していた。わずか数週間で自分とここまで渡り合えるようになるとは思ってもみなかった。
なのはの魔導師としての才能は、間違いなく自分と同等以上だということを確信する。しかしそれでも、降参するという選択肢はフェイトにはない。
迷ってたら・・・・やられる!
これ以上の長時間の戦闘は無理だと判断し、決着をつけるべく、己の最強の威力を誇る魔法を発動させる。
強大な魔力を感じて身構えるなのは。
フェイトの足元に魔法陣が出現する。それに伴い膨大なまでの魔力が閃電となって荒れ狂う。
「ファランクスシフト・・・」
そしてフェイトの周囲に自分の全魔力を込めた電を纏う魔力弾の弾幕が敷かれた。
これがフェイトの持つ魔法の中で最大級の破壊力を持つ魔法。高密度に圧縮した貫通射撃弾を大量に布陣し、その大軍勢の槍の嵐を一点に集中し乱れ撃つ。
〈フォトンランサー・ファランクスシフト〉
正にフェイトの本気の一撃と言っていい魔法である。
なのははレイジングハートを構えるが・・・・・
「っ!?」
突然出現したバインドによって両手の動きを封じられてしまった。
______
【公園】
「まずい!フェイトは本気だ!」
アルフが叫ぶ。フェイトの使い魔である彼女にはあの魔法の恐ろしさが誰よりも分かっているからだろう。
「なのは、今サポートを!」
「ユーノ、手出ししたらダメだよ」
「でも明久、このままじゃなのはが!」
「これはなのはとフェイトの、二人だけの戦いだ・・・勝敗を決められるのはあの二人だけ。
誰であろうと手出しすることは許さないよ」
「でも明久、あの魔法はホントにやばいんだよ!?」
「たとえそうだとしても・・・僕達に手出しする権利は無い。
ましてや、手出しすると言うことは彼女達を信じていないのと同じだよ」
「「・・・」」
『(大丈夫だよ。ユーノくんもアルフさんも手出さないで。これは私とフェイトちゃんの一騎打ちだから)』
なのはからの念話が届く。その声は強い決意で満ちていた。
_____________
「アルカス クルタス エイギアス 疾風なりし天神よ、今導きの下打ち掛かれ」
流れるように詠唱を紡ぐフェイト。それに比肩して雷の強さも増大していく。
「バルムル ザルメル ブラウゼル」
詠唱が終わり、ついに雷の槍陣が完成し、その姿を現す。
そしてフェイトはおもむろに片手を挙げ、
「フォトンランサー・ファランクスシフト。打ち砕け・・・・ファイア!!!」
雷光の槍群が一斉になのはへと襲来する。
『ドドドドドドドドドドドドドッッッッッッッ!!!!!!!!』
魔力弾の爆発により、辺りは煙に包まれる。
「なのはぁっ!!」
ユーノは動こうとするが、明久により踏みつけられ動けなかった。
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ・・・」
フェイトは完全に疲労困憊といった感じだ。しかしその眼は未だ黒煙の上がる場所、なのはのいた場所に向けられている。そして手には保険として一つの魔力弾。
「攻撃が終わったら、バインドも解けちゃうんだね」
声が聞こえた。黒煙が晴れるとそこにはなのはが立っていた。
「今度はこっちの番だよ!ディバイィィィィンッッッバスターーーーー!!!」
レイジングハートから発射される桜色の光。フェイトはそれに、まだ撃っていなかった魔力弾を投げつけるが、大した抵抗もせず、一瞬で呑み込まれていった。避ける事も出来ないそれを、咄嗟に防御魔法を展開させて防ぐ。
「くうぅぅぅぅぅ!!!」
直撃・・・でも耐え切る・・・あの子だって・・・耐えたんだから!!
なんとか最後まで耐え切ったフェイト。そんな彼女の四肢を桜色のバインドが拘束し、身体をその場に固定する。
「バ、バインド!?」
何とか抜け出そうともがくフェイトだが、抜け出す事が出来ない。
なのはは巨大な魔方陣を展開させ、
「受けてみて、ディバインバスターのバリエーション。これが私の・・・全力全開!!!」
周囲の魔力をかき集め、収束していくなのは。
それは明久君との練習の時・・・
「魔力ってのはね、簡単に2通り出し方があるんだ」
「2つ?」
「そう、一つは内側。まぁ、なのは達で言うリンカーコアだね。
もう一つは外から」
「えっと・・・」
「要するに回りだよ。
周りに漂う魔力を回収する・・・収束だ」
明久君のヒントで完成したバリエーション!!
「スターライトォォォォ・・・ブレイカァァァァァ!!!」
眩しい桜色の魔力光。周りの魔力を根こそぎ回収して撃ち出された砲撃はフェイトを飲み込んだ。
やがて砲撃が収まり、バインドから解放されたフェイトが、糸の切れた人形の様に海に落下していく。
「あっ!?」
「ほいっと・・・」
すると海面に落ちる直前に明久がキャッチしていた。
side明久
「間に合ったね」
「アキ君!!」
なのはは近づいてくると、
「おつかれさま」
「うん、ところでフェイトちゃん・・・」
「大丈夫だよ」
「・・・うっ・・・」
ん、意識を取り戻したみたいだね。
「フェイトちゃん!!」
「・・・あ・・・」
フェイトはなのはを見て、そして僕を見上げ、
「大丈夫?」
「////!?////」
何を赤くなって・・・
「!!」
「にゃっ!?」
僕は魔力を感じ、なのはを引き寄せ、
「鏡壁『幻影結界』」
鏡のような結界が張られると、空から紫電が降り注ぎ、結界と衝突する。
少しして、
「・・・やられたな・・・」
「「え?」」
僕が見つめる先・・・そこには11個のジュエルシード・・・
「めくらましか・・・」
「ごめん。反応が遅れて半分持ってかれたわ」
「ゴメンよ・・・」
霊夢達はこちらに飛んできてすまなそうに言う。
「いや、仕方ないよ。とりあえずアースラに行こう。フェイトとアルフもついて来て」
「「うん(あぁ)」」
僕達はアースラに向かった。