別に意味なく試合を頼んだわけではない。
俺は昔、父さんがテロに巻き込まれて大けがをした時妹達や母さんを守るために力を求めた。
そう、ただ我武者羅に力を…
まぁそのせいでなのはに泣かれるわ、父さんに本気で殴り飛ばされるわ…
でも仕方ないことだった。
俺は家族のため、と言いながら皆を見ていなかった。
一人家で待つなのはや不安で押しつぶされそうだった美由希、自分達のために一人働き続けた母さん。
本当なら俺が皆を支えなければいけないのに…
だからこそ俺は誓った、もう間違えないと。
忍は月村と言う名を受け継ぐ以上狙われる。だからこそ恋人として守り、共に生きていくと。
だから…
「明久、君は俺の勝手な考えかもしれないけど誰かのために強くなっているような気がする」
「…」
「だからこそ確かめたいんだ、頼む」
自己満足かもしれない。
初めて会った時、唯言いようもない異質のものに見えなかった。
サッカーの時、考えが改まった。彼は底知れず見た目不相応に大人だった。
温泉の時、驚愕した。左胸の巨大な貫通痕。そして見えにくかったが体の所々にある傷。
なのはと同じ年とは思えない動きと体つき…そして…懐深さと信念。
side明久
さて、どうしたものか…
僕は頭を下げる恭也さんを見て悩む。
記憶確かなら彼が扱うのも一種の殺人術だ。
要するに『人を殺すため』の技を極めている。
しかし恭也さんの目は『守るため』に戦うことを望んでいる気がする。
「けどな…」
僕なんかがそんなこと教えれるわけないんだけど…
でも彼の意思も尊重したい…
「う~ん…」
未だ頭を上げない恭也さん。
「はぁ…わかりました。
僕なんかでいいなら引き受けます」
「「え!?」」
「本当か!?」
「ちょっと明久君!?言ってはなんだけど恭也は…」
「で、どこで?」
「いや、話w「外でしよう。武器はどうする?」恭也!!」
「持ってるんで大丈夫ですよ」
「そうか」
さすがに中ではできないので外に出るとしよう。
side咲夜
「どうしよう…」
「駄目だわ、話について行けない…」
「十六夜さん、貴女も止めなくていいんですか!?」
止めなくてと言われても、
「忍様、今回の件は高町様より懇願し、明久がそれを受け入れた…
もうこの時点で私達が口出しできるような問題ではありません」
「でも…」
「それに明久が負けるとは思ってませんから」
「恭也は剣士よ?すずかとあまり年の変わらない子が…」
そう言えばそうだったわね。
今明久の体は9才ほど。体格も筋肉の質もいつもとは違う。
けどなぜかしらね…
「明久が負ける姿ってのが思い浮かばないのよね…」
別に彼が負けたことがないって意味ではない。
しかし思い浮かばないものは仕方ない。
「とりあえず私達は見守るしかないのですよ」
窓の向こうで距離を取り武器を構える明久達を見て私は呟いた。
side明久
僕は七ッ夜を取り出し刃に霊力を込め腕にぶつける。
「斬れませんね」
「いきなりそれはやめてくれ」
「あ、失礼(苦笑」
「あと…いつもの喋り方でいいぞ?」
「ん?」
「無理に話し方を変えなくていい。
今ここにいるのは…二人の
「了解、じゃあやりましょうか」
恭也さんは小太刀を構え、僕は半身になり、七ッ夜を持った右手を肩の高さまで上げる。
「「行くぞ!!」」
掛け声とともに一足で距離を詰め、恭也さんは薙ぎ払うように、僕は逆に斬り上げる様にし、刃のぶつかり合いにより火花が散った。
side恭也
やはり俺の目に狂いはなかった。
明久は…強い。怒涛のように2本の小太刀で斬り伏せようとするが、彼は唯一本のナイフでそれは防ぎ、もしくは俺の手首に蹴りや左腕を使った防御で弾いている。
なら…
「斬!!」
俺は引き斬るように力を込めると、
「甘い!!」
彼はなんとナイフを小太刀の刃に沿えながら引く動き、速さを合わせ此方へと近づき、斬り払ってきた。
しかも普通の斬り払いではない。俺の小太刀にナイフを沿えることにより、擬似的な鞘走りをやってのけたのだ。
「っ!?」
俺はそれをもう一本の小太刀で防ぐと、
「吹き飛べ!!」
明久は流れるように横蹴りをたたき込んできた。
『メキッ』
「がっ!?」
その蹴りは溜めがない…いやその身体からは想像できない威力が込められており、俺は茂みへと吹き飛ばされた。
side明久
「…」
僕は恭也さんが吹き飛んで行った茂みを眺める。
まだ闘気は消えていない。
「恭也さん、準備運動はこれまでにしませんか?」
僕がそう言うと茂みから恭也さんが立ちあがり、
「そうだな、だいぶ体も温まったしな」
うへ…六鹿をたたき込んだのにあまり効いてないや…
まぁ、瞬間的に恭也さん後ろに飛んで威力殺してたけど…
「さすがと言うべきか…」
恭也さんは小太刀を鞘に納刀し、
「行くぞ!!」
居合…人によっては予想できれば単純な技と言うかもしれないがそんなことはない。
例え軌道がわかってても防ぐのは簡単ではない。
その刃は達人においてなら振るのに0.2秒とかからないという。
そんな速さに人がついて行けるか?
簡単に対処できるなら居合と言うものは残っているはずはない…
来るのがわかっていても反応するのが難しい…それが居合…抜刀術だ。
僕は意識を鎮める様に…そう…ただ恭也さんだけを見つめる。
「「!!」」
神速の居合。一足で恭也は懐に潜り込み明久に抜刀し、斬りかかった。
そして明久は…
「え?」
そこには居なかった…いや…
「上!!」
そう読み合いにおいて明久は踏み込みを見ると同時に水月により上空へと飛び、
「隙だらけだ…」
-閃鞘・八穿-
上空から恭也に向かって斬りかかった。
「!!」
しかしその斬撃は恭也をとらえることはできず空を斬り、
「ハッ!!」
「あがっ!?」
横合いから来た
「っ!!」
明久は何とか受け身を取るが体に違和感を覚える。
「フフ…なるほど…ね…」
徹しか…
まぁ、威力は抑えてくれたみたいだが…
それ以上に、
「速い…」
そう、一瞬とはいえ彼を見失った。
「これが…『神速』…」
ハハハ…あぁ…
「速い…だけど…それが出来るのは君だけじゃないよ…?」
side恭也
なんて奴だ…まさか虎切を見切られ、おまけに徹も…
「どんな反射神経だ…!!」
彼の攻撃を神速で避け、横腹に徹を叩き込んだのだが、明久は同じ徹を使って小太刀を弾いたのだ。
「くっ!!」
今のうちに決めなければ!!
恭也は神速を使い明久に近づく。
しかし…モノクロの世界。その世界に恭也が見たのは同じように
「なっ!?」
スローモーションのようにうつる世界…しかし明久の動きは確実に此方を見ての動きだ。
まさか…あいつも神速を!?
side明久
モノクロに世界…しかし彼が使うのは神速とは別のものかもしれない。
七夜の技術。それは人外に対抗すべく肉体のあらゆる枷を外す。
そう、明久が今行っているのも水月の応用…いや、一種の昇華かもしれない。
ただ、力を抜き、何も考えず…それこそ体の奥底、無意識かへの侵出…
「…」
何も考えていないわけではない。考えているけど考えていない。ただ感の様に考えが浮かぶ。
「くっ!!」
恭也は構えを取り、最速とも言える速さで刺突を決めてきた。
明久はそれに対抗するように空を跳び、
-閃鞘・八隼-
あり得ない動きとも言える空を蹴ることにより明久も最速の刺突を叩き込んだ。
それは横一直線を横合いから崩すような軌道。
「がっ!?」
明久の刺突は恭也の刺突を叩き落とすように決まり、恭也は地面に叩きつけられる。
「く…そ…」
負けてる…そう完璧に先読みをされている以上負けている。
「だが…!!」
簡単に負けるわけにはいかない。
世界にはまだ俺よりも強い奴はたくさんいる。もしかしたらそいつらは忍を狙うかもしれない!!
飛びそうになった意識を保ち恭也は立ちあがると一気に神速を重ね掛けした。
そして二刀を納刀し、意識を唯一点に集中する。
先ほどまでスローモーションに見えていた世界は止まったように…モノクロからさらに色が失われたような世界に変わり…
「!!」
閃…抜刀した斬撃は自分の理解すらも超えるような速さで抜き放たれる。
力も速さも超えた境地の太刀筋…今出せる最高の技。
その斬撃は明久を斬り裂き…明久は霞のように霧散した。
「…え?」
後ろから感じる気配…
「ありがとう…」
明久は背中合わせから体を捻るようにして恭也を蹴りあげる。
そしてそれを追うようにして跳び、斬り付け、空を蹴り、また恭也に突進する。
それは繰り返すごとに速く、そして怒涛のように恭也に斬撃をたたき込み、
「終わりだ」
空に打ち上げられた恭也に周りに飛ぶ8人の明久により斬撃、蹴りが叩き込まれ、
-閃鞘-
落ちていく恭也の下、そして上空から…
「血だまりに…沈め」
-瞬獄-
助走なしでは考えられない切り上げと、空を蹴急降下してきた斬り落としを同時に叩きこんだ…