──ランバネインが早めに離脱するのは確定。彼らを利用してエネドラを殺してもらうか? ⋯⋯いや、エネドラは彼らが始末してくれるらしい。ならやることは1つ。
「さあ──始めましょうか」
『来るぞ、ユーマ!』
「わかってる」
放たれる剣による刺突。
剣の刀身を伸ばしたこともあって、それは遊真の頭を撃ち抜こうとする。
「──ッ」
それを遊真は横にステップをすることで躱す。
しかし、剣は躱した先に向かって迫る。
「おっと」
間一髪、直撃を避ける。
「私を早く倒さないと、貴方は未来で後悔することになりますよ」
更に相手を惑わす言葉。
その言葉にサイドエフェクトが反応しなかったことで──その言葉が事実と知る。
『相手は恐らく、遠征部隊の中でも指折りの手練だろう。
それにジンと同じようなサイドエフェクトを持つと思われる』
「ああ、早めに倒さないとダメなヤツだ。けど──」
『短期決戦は無理だな。長期戦でも可能性があるとすれば、全方位から絶え間なく射撃で包囲するぐらいだろう』
こうして話している間でも、ネオンはケシキを見続ける。
こちら側の戦力は少ない。それに、黒トリガーに対抗出来る戦力も、妨害されて動けなくなっている。
「行け」
ネオンがそう言うと、ラービットは素早くこの場から離れた。
嵐山たちがそれを防ごうと銃撃するが、ネオンの剣で切り捨てられる。
「あなた達には、時間が来るまでここで遊んでもらいます」
√
ヒュースとヴィザは目の前の敵と対峙していた。
『さあ、どう仕掛けてきますかな?』
『2対2でも問題はありません』
一方、ボーダーの二人も通信で作戦を立てていた。
『迅、おまえはどっちをやる?』
『どちらかというと、オレが爺さんの相手をしたほうがよさそうだね』
『わかった』
ボーダーの二人──迅と木崎は分断して戦うつもりだ。
迅はすでに雨取と三雲たちへたどり着けないように、エスクードで分断してある。
本来なら木崎ではなく、遊真を連れてきたかったが、今はそんなことを言えない。
──この爺さんは時間稼ぎが目的。だけど、こいつを放っておくと、後で取り返しのつかないことになる。
迅はエスクードをヴィザの足元と、アフトクラフトの彼らの間に生やした。
「ヴィザ翁!」
空中へ発射されるヴィザ。
「お前の相手は俺だ」
木崎がレイガストパンチでヒューズに殴り掛かる。
この時点で、アフト側には一手の隙ができた。
「風刃、起動」
それを使って迅は風刃を起動し、エスクードを踏み飛んで、ヴィザに接近する。
「宙に浮かせるとは、今の玄界の方はなかなかおもしろい考えをしておられる。
ですが──空中であれば、こちらは気兼ねなく全力をふるえる」
『今だ』
数百メートル離れた地点から、三発の銃弾が飛来する。
「狙撃手による追撃。正確ですが、正確過ぎるが故に、どこを狙っているかが丸わかりです」
だが、それは剣聖の前に全て切り捨てられる。
風刃を振るい、斬撃をヴィザに放つ。
当然、彼はそれすらも切り捨てる。
が──未来視はこの程度のモノではない。
ヴィザの背中に向かって、どこからか斬撃が現れていた。
「背後ですな」
「背中に目でもあるの?」
不可視の斬撃が背後の斬撃を斬り殺し、迅に向かってと放つ。
──この実力派エリートを、舐めてもらっちゃ困る。
風刃を再度振った後、すぐさま風刃を受けの形に直し、オルガノンの直撃を防ぐ。
地面に吹き飛ばされる最中、迅は風刃の1発が直撃ではないが当たった事を確認した。
当たったけど、かすった程度か⋯⋯もうこの作戦は使えないから、プランBに移行しないといけないな。
不敵に笑う究極の老兵。
おれも真似をして笑ってみると、少しだけ気持ちが楽になった。
──そうだ、実力派エリートはいつも笑顔でいないと、な。
『忍田さん』
迅はボーダー本部に連絡を取る。
『どうした、迅』
『今、おれがいる所に呼んで欲しい人がいるんですけど──』
√
時間は少しさかのぼり、ランバネインが作戦通り、ラッドのゲートから登場した。
「んー? 二人だけか? 拍子抜けだな」
ランバネインと向き合うのは、那須隊の那須と熊谷。
『熊ちゃん』
『わかってる、少し引き気味に戦おう』
ここから付近の部隊まで、距離がある。ゆえに、ここは合流して確実に倒したいところだが──。
「数を見て侮るのはよくないな。コツコツと、着実に片づけていこう」
ランバネインは聞いている。
今の玄界の兵はなめてかかれる相手ではない、と
『くる!』
ランバネインの両手から二発の光弾が放たれる。
「バイパー」
それと同時に、那須はバイパーを撃った。半分ずつに分割したそのバイパーは、ランバネインの光弾に直撃し、相殺──しきれなかった。
おかまいなしに来る弾は、那須と熊谷に直撃した。
「大丈夫か?」
──はずだった。
「ごめんね、那須さんたち!」
那須は彼らの顔を知っていた。
本来、今はこの街にいなかった彼ら─
「──里見くん!」
「佐伯!」
草壁隊である。
「エスクード二個使ったのに、一個ぶっ壊れて、ヒビ入ったし⋯⋯どんだけ威力あんだよ」
『あんたたちはシールドがないと思って戦った方がいいわ』
『その方がよさげだな』
草壁隊、隊長の草壁早紀が敵の戦闘力を冷静に見積もる。
『近くにB級の連合部隊が作られつつあるから、彼らと共闘した方がいいでしょうね』
『同感だ。あんなやつの攻撃、何発もくらってられねーよ。
隼人、ヒットアンドアウェイで援護頼む』
草壁隊スナイパー、宇野隼人の返事は、たいへん、わかりやすかった。
なにせ、返事を狙撃で済ませたのだから。
「もう1人いたか、今からこれで5人」
シールドで狙撃を防ぎ、楽しげに笑うランバネイン。
こちらも、狙撃が防がれることは想定済みだ。
「今だ!」
その狙撃を合図に、佐伯は殿を務め、エスクードで弾の妨害をする。
「その壁は単体では俺のケリードーンの相手にならないぞ」
打ち出される光弾と、それに呼応して破壊されていくエスクード。
ジグザグと移動して、斜線をずらし、弾トリガーで応戦しながら、彼らは連合部隊との合流を急ぐ。
だが──。
「なんだ、もう壁は張らないのか?」
空を浮遊して、ランバネインは上空に不気味に現れた。
「バイパー!」
那須はバイパーをランバネインに向ける。が、
「言い忘れてたがな──ケリードーンは遠距離の撃ち合いに自信があるんだ」
バイパーよりも早く、バイパーよりも力強く、放たれた光弾は彼女を撃ち抜かんとした。
ランバネインの光弾の一部は狙撃によって防がれ、佐伯がエスクードを生やして、被弾を無くす。
「撃ち落としたのは先程の狙撃手か? 誰でもいいが、いい腕だな」
『東さんたちが援護に入った。
目的地にピンを刺すから、あんた達は今のうちに移動しなさい』
ピンが刺された場所は旧三門大学だった。
√
「どっからどう見ても偉そうなヤツとクソガキ二人だが⋯⋯」
本部基地、南西。
エネドラはラービットを倒した敵の元に出現した。
『二宮隊、黒トリガー使いと遭遇。これから戦闘を開始する』
しかし、その部隊はボーダーでも指折りの部隊。
「ラービットを殺すぐらいの腕はあ──」
「隙だらけだね」
会話をする時間など与えない。
たとえ、敵が黒トリガーだとしても、やることはいつもと変わらない。
「人が喋ってる時は黙って聞くって習ってねえのか?」
銃弾が貫通した場所がみるみるうちに無くなる。
『ありゃ、攻撃が全然効いてませんね。どうします?』
『手数優先で攻めて、まずは情報を集める。
犬飼は距離を保って撃ち続けろ。
辻は引き気味で俺たちの援護だ』
『犬飼、了解』
『辻、了解』
『やることは変わらない──どんなヤツでも撃ち落とすだけだ』
血の王冠を被った、射手の王が対峙するは──。
「余計なことしやがって⋯⋯てめえら──」
変幻自在の攻撃法を持つ、泥の王。
「皆殺しにしてやる!!」
地面から飛び出す鋭い棘の数々。
犬飼と二宮は後ろにバックステップをして躱し、辻が2人に当たるかもしれない棘を全て切り払う。
「メテオラ」
犬飼が全身に撃ち、二宮がメテオラで身体を吹き飛ばす。
「やれるものならやってみろ」
「ウチの隊長は怒ると怖いよ〜」
「クソ猿が⋯⋯!」
√。
「なかなかやりますね。ボク相手にここまで戦える相手は久しぶりです」
嵐山たちのクロスファイアを冷静にケシキを見て対処し、3人に向けて広範囲の攻撃を仕掛ける。
「
遊真は躱してすぐに、ネオンの懐に飛び込む。
──速いッ!
「
からの強化した拳による一撃。
「危なッ──」
それはマントにかすっただけで、躱された。
躱した先に佐鳥のツインスナイプが放たれる。
だが、頭に向けての一撃は避けられ、供給機関への一撃は剣で切り捨てられる。
「素晴らしいですね、ここまでの連撃を避けるのはかなり難しいです」
「おまえ、つまんないウソつくね」
「バレちゃいました?」
「おまえが言った言葉のほとんどがウソだってわかってる」
ネオンはそれを聞いて少し笑った。
「やっぱり、私には頭脳労働よりも、命をかけたやり取りの方が似合ってます」
ウソじゃない。
「じゃあおまえは、なんでしなかったんだ?」
「あっちでは頭脳労働が多かったんで」
ウソじゃない。
「あなた達と戦えて、ボクは久しぶりに楽しいですよ」
嘘をついた。
「やっぱり、同僚みたいに主人大好きっ! とは思いませんからね。
1人の主人と100万の国民なら、私は国民を選ぶでしょう」
部分的にウソをついた。
⋯⋯ダメだ、コイツの話を聞いていたら。目の前が真っ暗になっていく。
「ん? 今、ケシキが変わったな。
エネドラが⋯⋯ほうほう。ヒュースが──へえー、そうなんだ。ヴィザさんは──流石です。ランバネインのところはアレ使うか。
みんな頑張ってくれてるみたいだから、今度は────私の番だね」
空気が変わった。
「今からは本気であなたを殺した方が良さそうなんで、そのつもりでお願いしますよ?」
『気をつけろ、ユーマ』
「大丈夫、仕掛けはもう設置した」
ネオンは構えを変えた。
蛇腹剣を左手に持つ。
「
ネオンの蛇腹剣がネオンを包み込む箱を作り、弾丸を防ぐ。
嵐山と時枝はクロスファイアで絶え間無く波状攻撃を仕掛ける。
佐鳥はスコープで隙間を探すが、
『全く隙間がないですよー!』
どうやら、伸びた蛇腹剣を幾重にも重ねているらしい。
「!」
そう考えたのと同時に、遊真は相手の狙いに気がついた。
まずい、遅すぎた──。
「アラシヤマさんたち、そこから離れ──────」
言い切る前にそれは起こった。
箱は、ネオンの全力の、身体を回転させた、薙ぎ払いで解体された。
箱を構成していた幾重にも重なった刃が、半円状に、ありとあらゆるものを切り刻んでいく。
嵐山と時枝はバラバラになって
遊真は『弾』印で後方に回避したが、それでも幾度か切り刻まれる。
それにより、トリオンがかなり漏出してしまった。
「なかなかやりますね。だけど、それじゃあもう虫の息ですね」
声の主は残酷な笑みを浮かべながら、どこか悲しみも含まれていた。
──嗚呼、このケシキは誰も殺さないけれど──誰も救われないじゃないか。
未来の分岐点まで、あと38分24秒。
誤字脱字を発見したら、報告してくれるとありがたいです。
あと今回文字数少なくてごめんなさい。
次からは元通りになってる、と思いたいです。