ネオン   作:アメイジング長なす

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あけましておめでとうございます。

お久しぶりです。
1年と少しぶりですね。
今年度もよろしくお願いいたします。



大規模侵攻──4

 

「初見で私の星の杖を防いだのは、あなたが2人目です」

 展開される、彗星の如き速度で迫る刃の群れ。

 その刃を見て──未来の姿を視る。

 

「おっと──」

 紙一重のタイミングで迫り来る刃の数々を凌ぐ。

「これはどう?」

 斬撃を目の前の老兵に振るう。

 

 だが、

「その剣を纏う帯が、斬撃の弾数──ですかな?」

 斬撃を躱して、切り捨て、そして、反撃の刃を向かわせる。

 自分の動きが読まれてきているのか、刃が徐々に身体を掠める。

 

 ────まだ負けられないんだよ。

 

 風刃をリロードしてすぐに斬撃を地面に3発と、刃に1発、伝播させる。

「──その一手は初めて目にしますな!」

 高速で回転する刃から、斬撃が剣聖に撃ち込まれる。

「ならば、私は全力で切り捨てるまで──!」

 刃からの斬撃には、刃をぶつけて相殺し、地面からの斬撃には、地面ごと刃で斬り潰す。

 

 ─────ここ! 

 

 迅は続けざまに、3発、物体に伝播させずに直に剣聖に撃つ。

 そして自分は剣聖の右側に移動し、残りの斬撃を剣聖の左側に、今度は2発、星の杖に伝播させる。

「──」

 迅は刃の群れを、未来視を利用して突破する。

 

「────帯は全部で11発でしたな? 残りの2発はどこに撃ったのでしょうか?」

 3発は躱し、刃に刃をぶつけながら、左の2発を刃で受ける。そして、迅の直接攻撃を仕込み刀で防いだ。

 

「……ほんと、なんで防げるの?」

「経験を積めば誰でも出来ます。それと、一度使った手は速度を上げても防げますよ」

 ──ですが全てではありません、とヴィザは言った。

 

「全部防いだじゃん。どの口が言えるんだよ」

「経験に差があるだけです。貴方は十分にお強い方だ──貴方ほどの強者は久方ぶりです」

 迅はまた深く未来を読み、

「なら、まだ戦って貰ってもいいかな?」

 自身の身体から、残り二発の風刃が放たれた。

「ええ、よろこんで」

 ヴィザは不敵に笑う。

 

 √

 

 木崎レイジはヒュースの時間稼ぎをしていた。

 ヒュースの蝶の盾ランビリスは磁力を利用して、目的にあった道具を作ることができる。

 ヒュースは近距離戦用のブレードを作成しながらも、レイジに磁力片を浴びせる。

「──」

 対するレイジは建物を盾に磁力片をやり過ごし、もう片方の手に持った銃型トリガーのハウンドで応戦する。

 上空へ射出したハウンドは、建物を跨いでヒュースに降り注ぐ。

 

 ──それでくるなら、こっちは……

 盾を作成してハウンドを防ぎながら、レイジの元へ駆け寄り、ブレードで切りかかろうとするが───

「──ッ!」

 しかし、レイジが予め用意していたスパイダーに足を引っ掛ける。

 

 ヒュースが不意をつかれたところに、

「スラスター、オン」

 レイガストで殴る。

 ヒュースは防御するも虚しく、高速のアッパーカットをモロに受けてしまう。

「チッ──」

 盾で銃撃を防御しながら、体勢を立て直す。

 

 ……コイツは確実にオレの時間稼ぎ。だが、仕留めることが出来るなら、積極的に仕留めようともする。遠距離から近距離まで幅広く対応してくる。厄介な兵士だ。

 

 ヒュースは考える。

 ……コイツを無視してヴィザ翁の援護をするのもありだが……相手のあの黒トリガーの効果がわからない以上、迂闊にあの黒トリガーに近づくのはやめておいた方がいいか? 

 それとも、オレがやられる前提で加勢するか? 

 

 ──いや、オレの最優先はアレだ。

 

 解を出したヒュースはレイジにランビリスの磁力片を断続的に放ち、この場から去ろうとする。

「させるか」

 レイジはハウンドの射出方向を変化されることにより、多方面攻撃を試みるが、

「それは読んでる」

 しかしヒュースは盾を使って防ぎつつ後退する。

 このまま離脱して──

 

「スラスター、オン」

 レイジはシールドモードのまま、スラスターによる加速でヒュースに一気に詰め寄る。

「なに──っ!」

 ヒュースに衝突した直後、もう片方の手で銃を打ち続ける。

 すぐさま盾を形成し防御するが、いくつかは被弾してしまう。

「くそ───っ!!」

 突然の突撃、ゼロ距離射撃──ヒュースは先の展開に頭を回すよりも、今──この瞬間の攻防に脳のリソースを割いた。

 

 レイジの側面から磁力片を放つと、レイジは銃を捨て分割シールドで防ぐ。

 ──これでも止まらないのか! 

 スラスター突撃により、壁に衝突するヒュース。

 木崎はスラスターの形を、ヒュースを包み込むように変形させた。

「スラスター──オン」

 

 片方の手にレイガストを持ち、当たる直前にシールドを解除。

 ヒュースが盾をまたも作るも、立て続けに盾ごと殴りつけ、ヒュースの顔に徐々に傷をつけていく

 

 ──これ以上は受けきれない──! 

 

 ヒュースは刃を付属させた車輪を2つ形成し、レイジの両側面にそれぞれ向かわせる。

「──」

 レイジは攻撃をやめて、ヒュースから距離を取りながら、冷静に車輪の防御に徹した。

 

「ここで足止めを食らってる場合ではないんだ」

 ヒュースは焦りながらも、確かな勝利を見据えた。

 

 √

 

 遊真は目の前の瓦礫の山の頂きに立つ、もう1人の未来視と向き合っていた。

『レプリカ⋯⋯付けてた『印』は?』

『ほとんどが埋もれている。瓦礫を処理したら、少しは使えるかもしれないな』

 

 なるほど、コレはまずいな。

 

「算段は着きましたか?」

 未来視が遊真に話しかける。

「私のサイドエフェクトはもう降参した方がいい、って言ってますよ?」

『レプリカ』

「それはできないな」

『どうした?』

「⋯⋯分かり合えないですね」

『アイツは嘘をついた。まだ巻き返せる可能性があるってことだ』

「降参なら、目的は達成しますよ?」

『⋯⋯何が言いたい?』

「────おまえ」

『『弾』印を発動させて、瓦礫を掘り返す。そこから使えるモノを使う』

「その嘘は──」

『相手は恐らくジンと似たようなサイドエフェクト──いや、もしかすると、ジンと全く同じ未来視を持っているかもしれない。ユーマのその作戦は難しい』

「笑えない、ですか?」

『でも、今のトリオンを考えると、今できることはこれぐらいだ。もし未来が見えるのなら、単純に手数で押して、考える隙を無くすほうがいい』

 

「…………ああ」

 ────もう、おまえと喋るのはうんざりだ。

 

 √

 

 この玄界において、アフトクラトルの不利な点は、土地勘がないところ。つまりは地形の把握ができていないことだ。

 ゆえに、目の前の建物がどういう構造なのかわからないので、迂闊に入ることはできない。

 

『人型は警戒しているな』

 東春秋は慎重にスコープ越しにランバネインを監視する。

『タイミングを変えますか?』

 草壁隊、佐伯竜司が東に尋ねる。

『いや、盤上は整えた。あとはおまえたちのタイミングに任せる』

『じゃあ十秒後に』

『わかった』

 

 √

 

「『(バウンド)』──二重(ダブル)

 遊真が遊真自身の手によって射出される。

 ネオンはそれを見ていたのか、その時には既に剣を構えていた。

「狙いは──瓦礫」

 ネオンが作戦を看破しても、遊真はどうでもよかった。

 重要なのは瓦礫の山の中にある印を、一つでも多く掘り起こすこと。

 

「ならば───」

 ネオンの剣が遊真に向かって放たれる。

「これはどうですか?」

 遊真は『弾』印を複数展開して、自身の身体を弾き、瓦礫に直行する。

「──と、見せかけた攻撃ですね」

 遊真が向かって来るのと同時に、既に設置させていた『射』印(ボルト)でネオンを狙い撃つ。

 無論、ネオンはその未来が確定したのを視た時点で防がれる。

「なるほど」

 防いだことを確認した直後、瓦礫の山を『強』印によって、瓦礫が飛散しながら瓦解する。

 

「ワザとだな」

「何がですか?」

 睨みつける遊真と、相も変わらず微笑を崩さないネオン。

「一応言いますけど、舐めてるわけではないです。ただ私のサイドエフェクトがそうした方がいいって言ってきたから、それに従っただけです」

 嘘がなかった。

 なら、これはどういう意図だ? 

『──時間稼ぎ』

「ああ、オレをここに引きとどめることだ。たぶん目的が果たされるまで時間稼ぎする。もし失敗しても、オレを倒して黒トリガーを奪えばいいと思ってる」

「正解ですよ。背後を見せたら貴方を人質にします」

 

 残りのトリオンも多くはない。

 漏出は止まっているが、それでもここで時間稼ぎを長々としたら、先にトリオンが尽きてしまう。

「大人しく人質になってくれてもいいですよ。というより、なりませんか?」

 ──それでも、遊真はネオンと対峙する。

 

 √

 

「今だ!」

 佐伯が声を上げる。

 草壁隊の面々は三門大学から走って離脱しようとする。

 

 しかし、ランバネインは、

「敵に背を向けることがどういうことか──」

 雷の羽が唸り、即座に飛行する。

「教えてやらんとなぁ!!」

 放たれる蒼弾。

 それは佐伯たちに────

 

『かかった!』

『了解』

 即座に放たれるボーダー側の攻撃。

 ランバネインはシールドを張って防御する。

 蒼弾は、またもエスクードに防がれた。

『佐伯たちはこのまま離脱して、可能な限り他の部隊の援護を頼む。それ以外、俺と残りのヤツらは攻勢に出て、コイツを倒す!』

 東の宣言で、作戦は実行された。

 

 ランバネインは連携のとれた動きに、作戦が実行されたことを考え、

「なるほど……確かに楽しく飛べそうだな」

 勝気な笑みを浮かべた。

「お前たちが俺を撃ち落とせるか、試してやろう!」

 

 √

 

「クソ猿がっ……!」

 エネドラは苛立っていた。

『ぜんぜん効いてませんね』

『ああ、だがトリオン体である以上、伝達系と供給機関は存在しているはずだ』

 そんなエネドラをよそに、二宮たちは内線で情報を伝え合う。

『俺たちが黒トリガーを相手にしている分、他の部隊も少しは楽になる』

 

「テメェらクソ猿が! 調子に乗ってんじゃねぇ!!」」

 再度放たれる攻撃。

 しかし何度も二宮たちはそれを見ていて、且つ、エネドラの有効射程圏外にいるため、二宮たちは冷静に対処しつつ、再度攻撃を再開する。

「馬鹿みたいに意味のない攻撃をしてきやがってよぉ……!」

『迅曰く、俺たちがコイツの相手をする時間が長いほど、防衛が成功する確率が上がるらしい』

『うわ、黒トリガー相手に時間稼ぎって……』

『問題はない。俺たちは勝たなくていい。負けないように立ち回るぞ』

『了解』

 

 離れながら戦う彼らに、エネドラは苛立つ。自信の思う通りに戦えないことに、腹が立つ。

 ──。

 彼は身体を液状化させ、地面の亀裂に潜り込む。

 ───これで終いにしてやる!!! 

 

 二宮達は経験から相手の狙いが読めた。

 だが、その狙いを防ぐことは──

「いい気になってんじゃ──」

 ──孤月一閃。

 姿を現したエネドラごと、ブレードを切り捨てる。

「メテオラ」

 メテオラが続けて放たれ、またもエネドラの体は爆散する。

「液状化……少しでも隙間がある場所においては厄介だが、種が割れれば問題ない」

 油断は無い。

 目的は、二宮隊の勝利ではなく、街の防衛の成功。

 そのためには、仲間も自分も捨て駒には入れる──ボーダーは、ヒーローなんてかっこいいものではない。

 自分たちの故郷を守るための武力装置だ。

 

『この作戦が無事に終わったら、迅に焼肉を奢らすぞ』

『今言っちゃうかー』

 二宮の不器用な激励に、犬飼は思わず呟く。

 

 

 それと同時に、轟音が彼らの耳に届いた。

 

 

「犬飼、辻、援護に向かえ。ここはオレがやる」

「「──了解」」

「簡単に行かせるとでも思ってんのか──?」

「行かせてもらわないと困る」

 

 二宮はいつもの真顔でそう言ったが、あの轟音の原因を本部からの連絡で知ってから、内心では焦っていた。

 それ故に2人を向かわせた。

 これに間違いは無い、と彼は考えた。

 

 勝利条件は、『三門市の防衛』なのだから。

 

 √

 

 ネオンの脳裏にケシキが映る。

 ──これは、金の雛鳥? 

 玄界の、私達以外の誰かが私達の遠征艇に乗っている。

 本国に着いた後、私たちの屋敷にいる……? 

 

 2つ目のケシキが映る。

 ──こっちは、わたし……? 

 玄界の基地にわたしが捉えられている。

 遠征艇にはわたしとヒュース、それにエネドラもいない。

 黒トリガーは回収されているらしい。

 恐らく、失敗したケシキだろう。

 

 ──これは、なに。

 ケシキが無限に枝分かれをする。

 容赦なくネオンに畳み掛ける。

 寒気と吐き気もする。

 助けて。

 

「おい、大丈夫か……」

 ヒュースが駆け寄って来る。

「無理」

「……働き過ぎだ。少しは休め」

 そう言って、ヒュースはわたしを担いで、わたしの部屋のベッドに降ろす。

「最後に食事を取ったのはいつだ?」

「3日前──かな」

「──はぁ。少し待ってろ」

 

 いつになくヒュースが優しい。遠征が近づいているからだろう。

「わたしだって、気をつけてはいるよ」

 頭が破裂しそうに感じながら、ケシキを淡々と眺める。

 考えるのがしんどい。

 いっそ、ここらで寝るのはどうだろうか? 

 ヒュースが持ってきたご飯は、明日の朝ごはんにするというのは? 

 

 これはわたしの幸福な記憶。

 そして、わたしの過去。

 過去は捨てよう。

 

 私は未来を勝ち取るために来たんだ。

 人並みの幸福もいらない。

 必要なのは祖国の平和。

 ──そのためなら、私は玄界の全員から恨まれてもいい。

 

 




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