※先天性女体化※卑劣様スレより 今日も木の葉は平和です   作:匿名希望@ななし

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※先天性女体化※卑劣様スレより 今日も木ノ葉は平和です

  創設間もない木ノ葉の里はいつも上から下まで天手古舞だ。

 なにせそもそもは一族あるいは小規模の徒党を組んで活動していた忍たちが千手とうちはの同盟を皮切りに寄り集まった、過去に前例のない集合体である。

 家長には絶対的な決定権があり家人同士は血と家の絆で結ばれていた一族運営とは異なり、里内ではそれぞれの価値観、功名心、あるいは一族同士の因縁などによって何を決めるにも話し合いを行い、それがまとまった後には意見を却下された側へのアフターフォローも不可欠だった。

 交渉が決裂したらはい開戦とばかりに戦に明け暮れていた時代とは根本的に変わった現状に、みな今まで使ってこなかった部分の脳みそをフル回転させて例えるなら頭脳の筋肉痛をそこかしこで起こしていた。

 

 柱間もオレも、ガキの頃に散々「忍たちが無駄に殺し合わなくていいような世界にする」という夢を語り合ってきたが、その頃のオレの頭の中では夢を達成する最大の壁は里の創立そのものだった。

 なにせ当時は血で血を洗う争いが日夜繰り広げられ、仲間が、友が、兄弟が容赦なく死んでいく時代だった。そんな環境において複数の忍たちが和平を結び、共同で暮らす里を作るというのはあまりに壮大な目標だ。まだ柱間を千手と知らずに純粋に夢を語り合っていたときですら、夜に一人で布団に横たわっているときや、ひどく痛めつけられた仲間の遺体を弔っているときなどは本当にそんな日が来るのだろうかと疑問に思わずにはおれなかった。まして自分たちの交流が互いの父に知られて決別したあの日以降、それはあまりに眩しすぎる夢となり、現実にはただただ目の前の戦闘を生き延び、勝ち続けることで精一杯になっていたのだ。

 柱間は生来の器のでかさと言うべきか能天気さというべきか、戦に明け暮れながらもずっと里の創設を叶えられる、叶えるべき目標として邁進し続けていたようだが、それでもやはりオレ同様に里の創設自体が最大の目標となっていた節がある。里成立後についてのビジョン、例えば書物の編纂による忍術の体系化や子供の教育機関の設立などはあったが、それを具体的な施策として落とし込むだけの知識、処世術等は勉強不足の感が否めなかった。いや、そもそもお人好しであり器がでかすぎて常人とは価値観の若干ズレている柱間にはあまり向かない分野というべきか。

 そんな見切り発車でスタートした木ノ葉隠れの里がどうにか大きな破綻を見せずに形を整えつつあるのは……

 

 そこまで考えたところで控えめなノックの音が聞こえた。

「失礼します、火影様。能渡(のと)ですが…少々ご相談したいことが」

「構わない、入ってくれ」

 

 柱間の返答を受けて恐縮しながら入ってきたのは能渡ヒカリという男だった。こいつもご多聞に漏れず元は忍だ。戦闘面ではよくぞ今まで生きていたものだと言いたくなる腕前だったが情報の分析能力や戦術・戦略の組み立てについては一目置くべきものがあり、その辺の能力を見出されて現在は文官として腕を振るっている。

 今日も、扉間のもとで緑垂(ろくすい)という地方の大名らによる査察や会談のサポートを行っているはずだった。

 この緑垂という地は都の北方に位置する内陸で、広大な平野での米の栽培が主産業らしい。特に地政学的なうまみもないことから争いとは縁遠く、のんびりと田んぼや畑を耕してきた土地柄だった。

 つまるところ向こうにとっては忍者の武力・諜報力はさして需要もなく、しかして食料のほとんどを輸入に頼る木ノ葉隠れの里にとっては是非にも懇意にしておきたい相手である。なにをして緑垂のほうから木ノ葉を訪ねるか知らないがこれはチャンスだ、と。扉間が兄であり木ノ葉の盟主である柱間にまるで教鞭を振るうかのように熱弁していたので横で聞いていたオレも覚えてしまっていた。

 歓待の挨拶や夕餉の接待などは柱間が対応するとして、実務的な方面は扉間や能渡などが当たるはずだ。時刻を確認するが、まだ未の刻も半ば(14時ごろ)といったところだ。本日のスケジュールが全て終了しているとは考え難い。協議中になにか能渡では判断できない問題が発生して相談に来たのかも知れないが、そうだとしたらまずは扉間の元に向かうのが筋であるし、もしも扉間をもってして柱間に相談しなければならないと判断するような事態なら能渡に伝言を頼むようなことはせず扉間本人がここに来るだろう。

 不思議に思ってオレは書類を処理する手はそのままに耳だけを傾けた。

 

「それで、相談したいこととは?」

「は。現在緑垂から木ノ葉への米の販売ルートや価格についての交渉を行っておりまして、うまく話がまとまりかけたのですが急に桑名様が待ったをかけたんです」

「桑名…大名殿が?なんぞ不満があったのか?」

「不満、と言いますか…その」

 

 現在この執務室にはオレを含めて数人の人間が書類と向き合っている。皆信頼の置ける人物であるということもあるが、書類仕事に飽きやすい柱間の監督兼気晴らしの話し相手という意味合いもあった。そんなオレたちを憚って能渡がひっそりと柱間に耳打ちをする。

 別に聞こうと思えば聞けるのだが、そこまでせずとも後で直接柱間に聞けばいいか。目の前の書類を疎かにするわけにもいかないので手元に目を落としたときだった。

 

「……は?」

 

 それは普段はもとより戦闘中でもなかなか聞けない柱間のド低音ボイスによって阻まれた。まだチャクラや殺気は感じられない分マシではあるが、能渡はすっかり萎縮して慌てて言葉を重ねる。

 

「いえ!ですから先方が勝手に言ってるだけであって!もちろんそんなこと了承できるわけがないのですが下手な断り方をすると今後の食料確保に支障が出てしまうやも知れませんし、だから火影様にご相談をと…」

「ああ、すまん取り乱してしまったな。いやしかしなんだって……」

 

 剣吞な空気はすぐに収まったが、柱間は困ったように左手で額を抑える。

 ──大名がなにか妙な対価でも提示したのだろうか。もともとあいつらはオレたち忍のことを戦しか能がない蛮族だと思って見下している節がある。条約の制定や食料その他の価格交渉、祭典の招待等過去諸々にわたってそれらを実感してきた身だ。

 と、そこへ再びノックの音が響いた。

 

「邪魔をするぞ。能渡、どうした。会談でなにかあったらまずは私に相談するのが筋だろうに」

 

 返事も聞かぬうちにドアを開けたのは扉間だった。もとより扉間も普段の書類仕事はここで行っているわけだし、その感知能力でもって入室を憚るべきかどうかの判断は朝飯前なのだろう。特に遠慮のない足取りでまっすぐに能渡の元へと向かう。

 

「と、扉間さ」

「扉間、無事か!?エロ大名になにもされていないだろうな!?」

 

 まずい見つかった、と顔に書いてある能渡の呼びかけを遮って柱間がガタンと席を立ち、妹に気遣わしげな声を掛ける。

 

「…兄者は何を言っているんだ?」

 

 本当にな。と扉間に同意するセリフが喉元まで出かかったが辛うじて飲み込んだ。

 対する柱間はわなわなと拳を握りしめ、机に叩きつけた。

 

「あのエロ大名、米の販路締結の書類に調印してほしくばお前と一晩二人きりの会談させろと言ってきたんぞ!!」

 

 瞬間、室内に何とも言えない沈黙が下りる。

 有り得ん!と言い放つ柱間。

 あーあー言っちゃったよこの人、と言いたげに肩を落とす能渡。

 兄の剣幕に気圧されたのかちょっと身をのけぞらせてる扉間。

 オレとしてもここまであけっぴろげに宣言されてしまってはこそこそ聞き耳を立てるのも馬鹿らしく、書類仕事をいったん諦めて観戦の姿勢に入った。

 

 一晩二人きりで会談。まぁ要するにヤらせろという訳だ。

 誰と?扉間と?

 どんな悪食だよ。

 

 こんな目つきと口が悪くて目的のためなら手段を選ばない上になまじ頭が良いせいで編み出した卑劣な忍術は数知れず、うちはを始め千手と相対した忍ならこいつを敵に回したときの厄介さは骨身に沁みているだろう。そのうえ常に澄ました可愛げのないツラで理路整然と話す様の鼻に突くことと言ったら……

 

 「能渡、会談の議事録を見せてみろ」

 

 オレの思考は扉間のしれっとした一言で中断させられた。

 扉間は能渡から手渡された速記用の文字で書かれた紙束に素早く目を走らせる。

 

 「価格交渉は相当頑張ってくれたみたいだな、よくやった。通年の仕入れ価格では向こうに譲歩した代わりに今冬の古米の買い入れは当初の見立てよりだいぶ安く済んでいる。これは大きいな、なにせ里には備蓄米というものがほとんどないから喫緊の課題だった。なに、来年までに里の有用性を示せれば仕入れ価格についても十分交渉の余地はある。あとはそうだな、私が条件を飲んだにも関わらず反故にされては敵わないから……」

 

 そういうと放置されていた柱間の筆を勝手に使って素早く議事録の最後にサラサラと文章を書き足していく。

 

「この条件で良いならぜひご一緒しましょうと伝えておけ」

 

 こともなげに言って議事録を能渡に押し付ける。

 

「えっ」

「と、扉間!?」

「それで里の食料問題が大幅に解決するなら安いものだろう」

 

 そう言って腕を組み、顎を落としている兄に向き直る。

 

「おおかた良家の淑女に囲まれてきた好色家の大名殿が気まぐれで忍の女をつまみ食いでもしたくなったのだろう。とはいえ味をしめられても厄介だからな…もう御免被ると泣くまで搾り取るか、あるいはつまらんマグロ女に徹するか…さすがに大名のシモの事情までは調べていなかったからな。どっちが有効かはまぁそのときの流れで判断すればよいか」

 

「と」

「いいわけねぇだろうが!!」

 

 室内に響く怒鳴り声と、一拍遅れて室内に響く椅子が倒れる音。

 それが自分が発したものだと理解したのは一瞬遅れてのことだった。

 

「……マダラ?」

 

 珍しく驚き露にする扉間に、オレは一体何を言ってるんだと頭の片隅で冷静に思いながらも机を回り込んで大股で歩み寄る。 

 

「調印と引き換えにヤらせるだぁ?」

 

 ──あのクソ女、とっ捕まえたら殺す前に散々辱めてやらなきゃ気が済まねえ!

 

 木ノ葉の里創立前、まだうちはと千手が泥沼の争いを繰り広げていたときによく聞いたセリフだった。

 

 実際に最もうちはに損害をもたらし、また当主という立場上ヘイトを集めやすいのは柱間であるはずだった。

 しかし扉間もそれに次ぐ戦果を挙げている・圧倒的パワーによりある意味気持ちのいい戦法の柱間と違いクレバーでなんでも有りな戦い方をする・そして、女。

 主にこれらのの理由によりうちはから最も恨まれているのは扉間だった。品性のよろしくない者たちがそうやって野卑な言葉を吐いているのを耳にしたのも一度や二度ではない。

 

 同盟前にはマダラ自身も扉間に対する恨みや憎しみを持っていた。だが扉間はあくまで忍としてうちはに立ちはだかっていたわけで、情報を吐かせるための拷問ならいざ知らず奴の体が女だからと凌辱してやろうという発言は同じ一族の人間とはいえ少々同意しかねるものだった。

 

 それが今、同族でもなくましてや忍でもない、扉間や千手に恨みを持つわけでもない顔も知らないエロジジイが、ちょっとつまみ食い感覚で扉間を抱く?

 ふざけるな。

 第一こいつもこいつだ、なんだ『ご一緒しましょう』って。

 お前ちょっと前までは戦闘、今は里の施策に奔走して碌に寝る暇もないくせにそんな嗜みがあるのかよ、化粧したところ見たことないどころかオレは16になるまでお前が男だと思い込んでたんだぞ。

 つーか大名がとんでもない不細工なゲス野郎だったらどうすんだよ嫌だとか悔しいとかないのかよああそうだなお前はそういう感情は飲み下して合理的判断ができるいけ好かない女だったな。というかなんだすっかり官吏ヅラが板につきやがって、戦場に立つお前は澄ました顔で大地を樹上を自在に駆け抜け、最小の動きで最大の戦果を挙げ、どこまでも賢しく手段を選ばずの本当に憎たらしい奴だった。

 ──だが、その内実は柱間に負けず劣らず熱かった。どんな劣勢だろうと手傷を負おうとこいつは冷静に、しかし懸命に生にしがみついてきた。全ては兄と、兄の抱く夢のためだろう。

 そんな扉間の姿も知らないエロジジイが、忍をたかが蛮族と侮る腑抜け野郎が、こいつを抱く?

 

「……いいわけ、ねえだろうが…!!」

 

 自分でもよく分からない憤りで、食いしばった歯の間から唸り声のようにもう一度そう発すると、とりあえずオレが怒っていることだけは伝わったが真意の分からないらしい扉間は口を噤んだ。まぁオレだって自分がなんでこんなに腹立たしいのかよく分かっていないからそれは置いておく。

 視界の端に涙目でオロオロする能渡の姿が映る。 

 そんな膠着状態を打ち破ったのは

 

「良く言ってくれたマダラ!その通りぞ!」

 

 何やら脳内でおめでたい解釈が炸裂したらしい柱間が手を打った。オレと扉間の元へと歩み寄り、双方の肩をバンバンと叩く。

 

「扉間、ワシたちに瑕疵があるわけでもないのだからお前がそんな取引に応じる必要はない。そしてマダラ、よくぞ扉間のために怒ってくれた」

「……は?」

 

 別にこいつのためじゃねえと言おうとしたオレに、柱間がぱあっと笑顔を向ける。

 

「お前が扉間の心配をしてくれてワシは嬉しいぞ!」

 

 そうじゃねーよと理性が叫ぶが、柱間の心底嬉しそうな様子にオレはぐ、と言葉に詰まってしまった。

 おい扉間お前から訂正しろよ、なんでオレまでまとめて『訳分からん』みたいな顔して見てんだ。ああもうなんなんだよこの状況。

 さて、と柱間が言う。

 

「大名殿は我が木ノ葉の力をよくご存知ないようだから、協議の続きはワシとマダラで行ってこよう。なにも一晩も大名殿の貴重な時間を取らせずともきっと有意義な話ができよう」

 

 と、能渡に言い渡す。口は笑っているが目が笑っていない。ついでにオレの肩に添えられた手にも有無を言わさぬ力が込められている。

 まだ書類が残っているだの、お偉いさんの相手は嫌いだのと聞いてもらえる状況ではないようだ。

 はぁ、とため息をついて協議に向かうために羽織を手に取る。

 

 ──火影のもと、今日も木ノ葉隠れの里はなんとか平和に回っている。

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