【成り代わり】鉄血のナントカ【異世界転生?】 作:くずみ@ぼっち字書き。
正直なところ、イサリビに戻った直後の記憶は曖昧だ。
前日寝不足のうえ、さらに一晩貫徹で走り回ったんだから仕方がないと思うけど。
クーデリアがサヴァランに言葉をかけてたこととかは覚えてる。
その後でシャワーを頭からかぶったのも――めちゃめちゃ傷に染みたからね。
だけど、シャワールームから出た記憶がすでにない。
まさかまっぱで倒れたとか無いよね?
さらに目覚めたら“オルガ”のハンモックって、あれ? おれいつの間に潜り込んだの??
――本人はもういないけど。
先に起き出したのか、それとも、おれに寝床を占拠されて別の場所で休んでいるのか。
そもそも、いまは朝なのか昼なのか夜なのか。
宇宙に出た船の中では、そのあたりが分かりにくい。
起き上がってみれば、体中の傷は手当済で、動きに支障は無さそうだった。
ハンモックから下りようとして――って、おれのブーツどこよ?
何もかもが分らない。
分からないから――うん。二度寝しよう。
ぼすん、と、ハンモックに突っ伏したところでドアが開いた。
「起きたか」
――いや、また寝るとこ。
ツカツカと踏み込んできたのは“オルガ”だった。まあここ“オルガ”の私室だしね。
「……おれのブーツは?」
「あ? ああ、そこら辺だな」
指差された部屋の隅に、あ、あったわ。
「“オルガ”」
呼びかければ、何故か“オルガ”が虎のような顔で笑った――って、それ笑顔じゃないよね? 厳密には。
――え、ちょっとなに? 何があったの??
「“ミカ”……テメェ依頼人の侍女に手ぇ出してんじゃねえぞこの碌でなしがぁ!!」
ガシッと掴まれた頭が、
「アダダダダダダダッ!!!?」
――うえええええぇ!? 出してないよね!? 出してなかったよねぇ!??
心の叫びは口にも出てたらしい。
“オルガ”から、いつものフミタン並みに絶対零度の視線を浴びた。
「一昨日の深夜、テメェの部屋から出ていくフミタン・アドモスを見たという証言が上がってる」
「未遂です」
正直に答えたのに、頭を掴む手に更に力がこめられた――何故だ!
「そうか。ならなんで、シャワーブースからゾンビみたいに出てきたテメェが『膝枕…』とか呟いとき、あの小娘ふたりはともかく、フミタンまでもが名乗り出てくるんだ?」
「妄想が現実に!?」
あの過酷な逃走劇の最中、確かに叶えたいリストの筆頭にフミタンの膝枕が存在してたけどさ――え、実現したの!?
じゃあなんでフミタンいないの???
「させると思うか?」
「――ボスが阻んだのか!?」
カッと目をかっぴらけば、バシリと頭を叩かれた。
「“オルガ”だってんだろ」
フーっと長い溜め息をついて、“オルガ”がハンモックに腰かけてきた。
「本当に未遂なんだな?」
「据え膳我慢した心意気を褒めてくれ」
またバシリと叩かれる。
――なんだよもう。
「って、おれシャワーブースから全裸で這い出したりしてないよね?」
こわごわ聞いてみる。
それで『膝枕』とか言ってたら、通報事案なんだけど――お巡りさん、おれです。
「下は履いてたな」
「セーフ!」
「アウトだド阿呆。マジで女に関してはどうしょうもねえな、テメエはいつでもよ」
睨んでくるのにそっぽを向く。
「えーと、うん、おれそろそろ自分の部屋に戻るわ。ハンモック占拠してごめんね?」
「その件だが、お前の部屋はもう無い」
「は?」
「お前を一人部屋にしておくのはいろいろ拙いって話になって、全員一致で閉鎖が決まった」
――え、なにどーゆーこと? つかその話し合いのメンツ誰ぞ?
「当面は俺と同室な」
「いやいや意味わかんねぇし」
「嫌ならクランクと同室だ』
「謹んでお断りいたします」
「テメェに拒否権は無ぇんだよ」
“オルガ”がすっかりやさぐれてるけど、やさぐれたいの、おれの方じゃない?
「あと、口調が三日月じゃねえ」
直しとけ、と、“オルガ”は言うけど。
内心でちっとばかり溜め息――だっておれ、“三日月”であって、三日月じゃねえもん。
どうあがいても、オリジナルにはなれないからね。まあ、振りくらいならしてる――いや、してねえな。うん。
気を取り直して。
「シノとか昭弘とか、ダンテとか、せめてアインとかと一緒じゃダメ?」
「良からぬ上映会疑惑が持ち上がってるから駄目だな」
うわ。そのネタどこからバレてんのよ。
――ま、いっか。“オルガ”と一緒なら、不測の事態でも手が打ちやすいしね。
「りょーかい」
起き上がってブーツを履く。
とりあえず、腹減った。アトラの飯を食いに行こっと。
「三日月さん!」
食堂に行けば、ワッとチビ共に囲まれた。
飛びついてこないのは、至るところに巻かれた包帯を気遣ってくれているのか。
中では年長のライドが、心配そうに覗き込んでくる。
「怪我、だいじょーぶ?」
「シャワーで沁みる」
答えれば、安心したような、呆れたような顔で溜め息をつかれた。
おい、いま『三日月さん不死身だから』って呟いたのはどのチビだ、エルガーか?
「ビスケットは?」
「まだ休んでるよ。兄貴の方も。タカキが見てるって」
「ふぅん」
なら、まあ安心かな。
「三日月!!」
厨房から飛び出してきたアトラに、チビ共が道を開けてニヤニヤする。
――やめろ。ニヤニヤやめろ。
アトラのカラメル色の大きな瞳は、いつもながらうるうるしていて、なんだか舐めたら甘そうに見える。髪の色もカフェオレみたいだし。
――腹減った。
じっと覗き込めば、アトラの頬に朱が上った――リンゴみたいで美味そうだね。ちょっと端っこ囓っていい?
「アトラ。なんか食うもんある?」
「もちろん! なにがいい?」
ガッツリいきたいトコだけど、たぶん無理。
「……軽いもの。昨日の昼から食ってないから」
「たいへん! ミルク粥とかどうかな? お腹がびっくりしないように」
「じゃ、それで」
「すぐ作るね!」
また厨房に飛び込んでく後ろ姿を見送って、席につく。
「お前らは食ったの?」
「うん。さっき終わった」
テーブルの向かいにライドが座った――チビ共も食堂を出てく気配はない。
なに? ドルト大冒険の顛末でも聞きたいの?
首を傾げれば、目の前に水の入ったコップが出てきた。
「……サンキュ」
なんだ、致せり尽せりじゃないか――なんでこんなに優しく育ってんだコイツら。
ホロリときそう――涙腺詰まってんのか、水気出てこないんだけどね。
なにを聞いてくるでもなくワキャワキャしてるのを眺めながら、ああ、コイツらも守らなきゃなって唐突に思った。
――そうだ。『鉄華団』ってのは『みんな』ってことだったわ。
改めてその重圧を思い出すけど、うん、俺、プレッシャーあるほど強くなるんだよね。
ほどなくして運ばれてきたアトラのミルク粥を掻っ込んで――うまい。
やっぱアトラの飯食うと、帰ってきたって思うよなって呟いたら、「そういうトコだよ三日月さん!」ってライドに叫ばれた。
――解せぬ。
その後はチビ共も引き連れて格納庫へ。
「ダンテ」
「おう。三日月、もう起きて平気なのか?」
例の装置の前でなにかの作業をしてたらしきダンテに素早く近づき。
――smack!
「「「ギャーーーーー!!」」」
頬にキスしただけでこの騒ぎである。
「なななにしやがんだテメェ頭沸いたか!??」
仰け反りすぎて後ろに転がっていったダンテが、高速で頬を拭いながら喚く。
そんなに嫌がらなくてもいいじゃないか――面白いな、もう。
ちびっ子共も、意味なく駆け回っててカオス。
「キス千回するって。あと999回な」
「いらねぇって言ったろ!!」
通信でのやり取りを蒸し返せば、やはり返る絶叫。
「うるーせぞ! なんの騒ぎだよ」
お。この声はユージンか。
振り向けば、シノと昭弘とアインまで。
「逃げろお前らキス魔だ!」
ダンテがなんか悲痛な声で叫ぶけど、もう遅い。
まずはスルリと昭弘の懐に飛び込んで、胸ぐら掴んで引き寄せる。
はい、顎にsmack!
「うお!?」
事態を把握してか身を翻そうとするギャラルホルンの三尉――敵前逃亡はダメでしょアイン――の肘を掴んで頬にsmack!
「うわぁ!?」
呆れ返ってるユージンは、だけど逃げずにおとなしく頬にsmack!
「なにやってんだお前…」
そして笑い転げてたシノは、大きく腕を広げた。
「C'mon!」
あ、こいつ悪ノリしてるわ。
その腕の中に飛び込めば、ゲラゲラ笑いながら顔が寄せられる。
唇は冗談じゃないから――お互いにね――その横にsmack!
ありがとう、お前ら。おかげで生きてかえれたよ。
ぎゅっと抱きしめたら、みんなくっついてきて団子になった。
「ただいま」
「おう。おかえり」
「よく帰ってきた」
「無茶したもんだな」
「ったく手間かけさせやがってよ」
「…ふざけんのも大概にしとけよ」
そのあとは、何故かチビ共も交えてのキス魔大戦になった。
「三日月、ダンテ。オルガが呼んでる。作戦会議するって」
と、ビスケたんに声をかけられたのは、彼の兄貴がドルトコロニーに帰って行ってからしばらく経った頃だった。
あの逃走劇から、翌々日くらいまでは避けられてたみたいだったけど、そのあとは拍子抜けするくらいあっさりと、距離感はもとに戻った。
「俺もか?」
ダンテが首をかしげる。
「ん。妥当だね。行くよ」
格納庫の見た目ガラクタの装置の前で、あれこれ遊ん――収集した情報をリストに保存して、頷く。
ビスケたんがモニタを覗き込んで微妙な顔をした。
「なにしてたの?」
「おれによる情報収集の基礎講座(笑)。サンプルとしてギャラルホルンのデータ集め」
今んとこは火星支部とかそのへんの――アリアンロッドあたりはガードが堅くて歯が立たない。
「……(笑)って必要なの?」
「絶対必要」
「――って言ってるけど?」
ビスケたんが目を向ける先で、ダンテは肩をすくめた。
「名称はともかく、けっこうスゲェよ。そもそも何処でこんなん覚えてきやがったのか」
「『企業秘密』」
「三日月までオルガみたいなこと言って…」
ビスケたんがふうっと息を吐いた。
3人で連れ立って歩く。
「メンバーは、おれ達の他にユージンとクランク、あとはトドか」
呟けばビスケたんが目を丸くし、ダンテは外れの火星ヤシを食べたときみたいな顔をした。
「なんで分かったの三日月」
「なんでトドが?」
「妥当だから。次はおやっさんとチャド、シノと昭弘、アインあたりが呼ばれる」
「――さっきも妥当って言ってたよな?」
ダンテが少しだけ不満そうに尋ねてくる。
「トドと俺が妥当ってどんな?」
そうか、チョビ髭――トド・ミルコネンと同列にされたことが不服か。
ちょっと笑いそう。確かにこれまでのチョビ髭は碌でもない印象が強いけどさ。
「トドは使える」
答えれば、これまた意外そうな顔。
「あの男が使えなかったのは、上が無能だったから」
だって、ハエだし。
しきりに首を傾げる二人をしり目に足を進める。
「なら、俺は?」
食い下がるね、ダンテ。
「ドルトを忘れたの? あのとき、お前の情報がおれたちを生かした。生きて、船に戻るための指針の元はお前が集めた」
真っ直ぐにダンテに向き合う。
驚いた顔、見開かれた眼を真っ向から覗き込んで。
「“オルガ”がそれを認めない筈がない」
――お前が、鉄華団の情報収集の要になるんだ。
立ち止まってしまったダンテの手を取って引っ張る。
「行こう、『情報参謀』」
お前はきっと、この先でそう呼ばれるから。
会議はどうせ“オルガ”の独壇場に等しいから、おれは、目を開けて寝ててもあまり差し支えない――と、思う。
コツは完墜しないで2割くらいは覚醒しておくこと。矛先が向いたときに上手く逸らさないと面倒だからね。
案の定、“オルガ”は知識として得ている情報をもとに予測を立て、それを裏付けたり補足するためにダンテやトドから報告を吸い上げていく。
むしろ反則技みたいなそれに、ビスケたんやクランクは不審がってるけど、まあ、今更だよね。
特に意見を求められることもないので、ぼんやりしてれば、“オルガ”がチョコ――マクギリスと連絡を取りたいとクランクを困らせていた。
となりのダンテをちょいちょい突っつく。
「なんだよ会議中だぞ」
と、小声の抗議に。
「ダンテ、こないだから集めてるあれ」
こういう時に活用しないでいつ使うのさ――ギャラルホルンの火星支部のあれとかそれとか。
もとの回路が火星支部のMWのものだったおかげか、表層部分は結構引っこ抜けた。
例えば、火星支部長と縞パン(青)が更迭されたこと。新しいトップが“誰”かとか、ソイツは“誰”の推薦で就任したとか、さ。
じっと見据えれば、その目が大きく見開かれた。
「――いや待て、確か、こないだ傍受した中に、火星支部のトップが更迭されて、後釜に、アイツの息のかかったヤツがついたって、確か……」
「誰だ、そいつは!」
ほらね、“オルガ”が食いつく。
「えーっと、確か、新江ナントカって……」
――新江・プロトな。
まあ、そこまで出てくれば上出来か。
ほら見ろ、“オルガ”がニンマリしてる。
クランクは不審がってるけど、それくらいならダンテだけでもどーとでもなるんだよ。
アクビを噛み殺していれば、話題はトドに移っていた。
“オルガ”から情報収集がてらに廃品売却させてるって聞いてたけど、格納庫のアレをガラクタと一緒に売るとか言い出したときはちょっと本気で締めた。
チョビ髭以外の毛根死滅させるぞって脅したら、泣かれた――その後、おやっさんの拳骨食らったけど。装置は死守したからまあ良いや。
一瞬、船を漕いでいたみたいで、カクンとなった――ら、となりのダンテに支えられた。
さらに反対側からはビスケたんの呆れ顔。
そして話題はいつの間にか、海賊の話に。
「……多分だが、昭弘の弟が、ブルワーズのヒューマンデブリの中にいる」
皆が息を呑む。
多分、なんで知ってんだとか、そんなとこなんだろうけど。
――……また、いろいろ分捕れとか言うんだよね。うん。わかってる。
まあ、頑張るけどさ。
昭弘の弟はもちろん、ブルワーズにはアストンがいる。クールビューティー二人目。切れ長の目が好みのおれとしては、外せない。
――男だから見て愛でるだけだけど。
あとはデルマも拾いたいし。
うちのチビ共とあわせて、まとめて構ったら楽しいだろう。
それから海賊船に興味がある。
きっと良い回路とか通信設備とか、いろいろ積んでるはず――分捕るなら丸ごとだよね。
不用品は売っぱらえば金になるし。
ちょっと目が覚めてきた。
話題はあっちにいったりこっちに来たり、思いつくままに進んでる感じ。
メンバーの大半が未成年者の作戦会議なんて、まあ、こんなものだよね――ブルワーズのガンダム・フレーム強奪を目論む“オルガ”が、ギャラルホルンとの戦争を疑われてる。
――するかもね。
だって、この先、確実に力をつけていく鉄華団を、あの“永遠の害獣ラスカル”が見逃すはずないし。
どんな形であれ、敵になるのは間違いない。
悔しいかな、害獣アライグマの力は強大で、抗うには鉄華団だけではどうしようもない。
だから、“オルガ”らマクギリスと手を組みたい――もとの話とは異なる形で。
そのあたりは、“オルガ”が考えることだ。
おれがするべきは、敵の力を少しでも削ぐこと――少しずつでも弱らせてやること。
並行して、味方の戦力の増強。例えばダンテへの情報収集講座(笑)とか、パイロット全員で宇宙空間でのMSによるラジオ体操とか鬼ごっ――模擬戦とか。
遊んでばかりいるわけじゃないんだよ――あんまり理解されてないっぽいけど。
“オルガ”が大きく息をついて、それから胸を張った。
「俺は、火星とギャラルホルンが変革された、その先の未来をこの目で見たい。――力を貸してくれねぇか?」
気圧されたように皆が黙るさまを、見守る。ここで怯むようじゃ、この先は着いてこれないよ。
「あー……てめぇの云うことは、やっぱり半分もわかんねぇんだけどよ」
ユージンが顔を上げた。バリバリ頭を掻きながら、
「でもまぁ、ホントに動かせるんなら、それより面白ぇことはねぇよな。……やってやろうじゃねぇか」
ヤケクソのような口調だけど、声は明るかった。
「――僕も」
ビスケたんが続く。
「うん、兄さんを見てて思ったんだ。今を、変えたい。僕らが、少しでも良くなる方向に。――オルガ、君は、CGSを変えて鉄華団にした。それと同じことが、世界に対してできるかわからないけど……僕もやる、戦うよ」
ギュッと両手を握りしめて、噛みしめるように答えるその目には、決意の光がキラキラしていた。
「お前の云う、ファリド特務三佐に近づくこと、それでギャラルホルンがどう変わると?」
クランクは、試すみたいに“オルガ”に尋ねる。
「――少なくとも、火星の血が入ってるから、コロニー出身だからで、昇進を差別されるようなことはなくなると思うぜ。マクギリスは、使える人間は何でも使う男だ」
――そうだね、チョコは、“オルガ”のことも使おうとするはず。お互い様だろうけどさ。
できればおれは遠慮したいけど。
だけど、単純にみれば結構いい話だ。生まれによって出世の道が閉ざされてるなんて、バカなことは減るだろうから。
「……わかった、ギャラルホルンの改革のため、私もお前に力を貸そう」
長い沈黙の後で、クランクが笑った。
「お、俺は云われるまでもないぜ!」
ダンテが拳を握って叫ぶ。
「オルガ、ヒューマンデブリだった俺たちを、解放してくれたのはお前だ。俺だけじゃない、チャドや昭弘だってそう云うさ。俺たちは、お前とともにいく」
命も何もかもを賭けて付いていくと、そこにあるのは忠誠に等しい思いだ。
皆が表明する中、ひとり、難しい顔をしているチョビ髭を見据えれば、ビクリと、その肩が張った。
どうせ、ガキに扱き使われるなんてとか、つまんないプライドとかで葛藤してるんだろうけどさ。
「トド、お前は?」
見据える先で、視線は泳いでるけど、お前、もう行末は決めてるはずだろう?
「どうする? 外れる?」
――そんなことできるの?
いまのこの高揚を投げ捨てて、またもとの味気ない毎日に戻るとか。
「でも、お前、オルガといて楽しくなかった?」
――言えないだろ。『楽しくなかった』だなんて。
だって。ここまで生きてきて、これだけ“お前”が活かされることなんて、一度だってなかった筈だ。
「〜〜〜、あぁ、クソ、面白かった! 面白かったぜチクショウめ!」
ガリガリと頭を掻きむしり、弱った毛根に自らダメージを与えつつ、チョビ髭は叫んだ。
「お前が次何やらかすのか、面白くなっちまったじゃねぇかよコンチクショウ! あぁクソ、俺も手ぇ貸してやる! 俺の手は高ぇからな!」
――そこは買い叩くから。
ポソリと呟けば、横でダンテが吹き出した。
つられたように皆も笑う。
「ああ、わかってるよ、トド」
「……頼むぜ大将。俺は、無駄死したくねぇ」
情けない声でさらにトドが懇願するのに、“オルガ”は大きく頷いた。
「わかってる。――ユージン、ビスケット、ダンテ、クランク、トド……ミカ」
向けられる視線が、どうあっても付いてこいと言っている。
「俺たちはひとつのチームだ。絶対に生き残るぞ!」
「「「「「「おう!」」」」」」
さてと。ここから、未来を切り拓いて行かなきゃね。
そして、来たる大清掃大会である。
だいたい、“オルガ”とチョコ――マクギリスのせい。
あの作戦会議のあと、クランクから新井プロトへ、そこからマクギリスへの伝言ゲームは問題なく完遂されたようで、後日、秘密裏に連絡が来たそうだ。
そこで決まったイサリビ強襲――いや攻撃じゃないけどさ――なんと、セブンスターズの三巨頭が“遊び”に来るんだってさ。
この『男所帯にうじが湧く』を、悲しくも極めてしまったイサリビにである。
そりゃ艦をあげての大掃除になりもするさ。
掃除用具は、艦内探したらそれなりにあった――つか、使用形跡が無いものも多数。うん、購入だけしてみたんだな。
いつの物か分からない洗浄剤は、容器の底にへばりついて固まってたから、自作してみた。
とりあえず、電極槽をこしらえて循環水を通せば電解水になるし。
低重力、無重力エリアで吸い込んだりなんたりしても、影響が少ないもんじゃないとね。
あとはボデイソープ代わりにもなる液体石鹸とか。これは後で投入予定。
そんなこんなで。
「はい。『第一回掃除王決定戦!』開催〜」
どんどんパフパフ〜♪
掃除なんて、ただやるんじゃ面倒くさいだけ。チビ共は真面目だから、言いつけられれば黙々とこなしてくだろうけど、どーせなら楽しくやった方が良いでしょ。
タカキとライドが率いる年少組チームVSシノ&ユージンVSビスケたん&昭弘VSダンテ&アインVSおれ&おれ作成掃除ロボの混戦である。
各チームに振り当てられたエリアを、どれだけキレイにできるかのポイント制。
一番ポイントを稼いだチームの勝ち。
判定は女子組――クーデリアとフミタンとアトラに委ねてみた。
勝利チームには、アトラによるちょっと豪華なデザート一品追加とくれば、年長組はともかく、チビ共が俄然張り切っている。
「って、三日月、そのロボット本当に掃除できるの?」
「うん」
ビスケたんが疑わしそうにしてるけど、それなりにスグレモノなんだよ、これ。
ル☓バもびっくり。床壁天井ところ構わす張り付いて、お掃除してくれるのだ。
塵の吸引、電解水/洗浄剤の噴霧並びに拭き取り、さらに磨き機能まで搭載――ついでに無駄に喋る。
『ヒドイ! ビスケたんニナンテ負ケナインダカラァ!』
無機質だけどなんかウザい音声が流れ、掃除ロボがビスケたんに宣戦布告。
チビ共は興味津々でロボット突いている。
おい、シノ、ひっくり返すの止めろ――ほら、電解水噴射してきやがるからソイツ。
もとが清掃用の器具に、悪乗り機能追加しすぎて、もはや製作者たるおれにも良く分からないことになってるんだ。
ギャーギャーと始まる前から若干の混迷を見せつつも、
「よーい、ドン!」
アトラの果敢な掛け声に押され、おれたち洗浄戦士部隊は、果てしない汚染の荒野の勝者たらんと走り出した。
―――HAHAHAHA、HA…。
その掃除の過酷さは聞くも涙語るも涙――むしろ笑うしか無いだろう。いや、表情筋動かないんだけどね。
……思い出すと絶叫しそうだから割愛する。
と、いうか、日頃から掃除はやっておいた方が良い。こうなる前に絶対にだ――って言うことが、みんなの共通認識として刻み込まれたと思う。
おれは、もう数体、掃除ロボットを作成しようと心に決めた――今度は無駄な機能をつけたりしないで。
そうして、『第一回掃除王決定戦!』は、妹から掃除の極意を伝授されていたタカキ率いる年少組の勝利で幕を下ろした。
彼らの丁寧な仕事ぶりが、女子から高い評価を得たのである。
ちなみにおれは二位ね。
その頃の”オルガ”と言えば、なんと消毒用のアルコール噴霧で酔っ払って、クランクに担いで運ばれてたとか。
だから電解水を使えばよかったのに……。
さて、掃除のあとはシャワーである。
まあね、艦内をキレイにしてもおれ達が汚れてたら意味ないしね。
ここでおれは、秘密兵器を投入することにした。
シャワー用水のタンクにパーテーションを組み、片方に作成した液体石鹸を混入し、コンプレッサーで圧縮した空気を送り込んだ。
最初にシャワーブースに向かうのはお嬢さんたちだと聞いているから、香りはスイートフローラルに。
まるでポプリみたいにふんわり優しく香るそれは、はっきり言って自信作だ。
シャワーをひねれば、最初の数分間、もこもこの泡が降り注ぎ、その後で、すすぎ用の湯に切り替わる仕様。
きっと喜んでもらえるものと、このときは疑いもしなかった。
まさかこれが、あんな事態を引き起こすとは思ってなかったんだ、断じて!
結果的に、もこもこの泡はシャワーブース内を埋め尽くす勢いで、お嬢さんたちは物凄い叫びを上げたし、チビ共は新しい遊びに夢中になった。
そして、フローラルからメンソールに切り変えるタイミングを誤ったせいで、”オルガ”とクランクとちょび髭とおやっさんが、スウィーティーな香りを纏うことになったのである。
仁王の形相で、おれの頭を握り潰さんとしたクランクの、その香りだけが優しかった。
〈全員配置につけ! 御三方がお見えになるぞ!〉
戦闘配備並みに緊迫した“オルガ”からの指示が飛び、清掃活動による疲労感が蔓延していた艦内は騒然となった。
クランクから締め上げられた頭を奪還したあと、ハンモックでふて寝していた最中である。
あくびを噛み殺しながらブリッジまで出向いていけば、丁度、モンターク商会の船をセンサーが捉えたところだった。
予想してたよりもマクギリスの行動が早い――これは、あちらさんにも切羽詰まった事情があるのか、それとも何かで煮詰まっていて、ちょっとした気晴らしにでも飛びつきたいと思われたか。
いずれにせよ、巻き込まれる側としては迷惑な話だ。
やがて、モニタにも映し出された船の外観はたいへんに優美で、いかにも海賊に狙われそうな印象だったけど、どうせ、安全が確保された航路しか通らないんだろう――そのあたり、流石にセブンスターズの一角だよね。
皆で出迎えるぞ、と言う”オルガ”の後ろにズラリと並んでいれば、本来なら雲上人とでも言うべき面々が、やたらと気楽そうに現れた。
「やぁ、鉄華団の諸君」
白い歯を見せつつ、機嫌良さそうに声をかけてくるのはガエリオだ。
物珍しそうに団員や船内を見回している様子は、ウキウキ感を少しも隠せていない。
――……以前に会ったときの警戒心どこ行ったの。
マクギリスは仏頂面のようなものを作ってるけど、それ、見せかけだよね?
目の奥に潜むのは、どう見ても面白がるような光だし。視線が絡めば――『黙ってろ』とでも言うような圧が。
ちょっと待て。
――あんたら、ホントに遊びに来たの?
と、言うよりマクギリス、あんた、『”オルガ”で遊びに来た』とか言わないよね?
密かに危惧していれば、
「お前たちが、例の鉄華団とか云うのなのね。構えずとも良い、私がカルタ・イシューだ」
上から発言とともに、お姫様が降臨した。
例えとかじゃなくて。セブンスターズ筆頭、イシュー家の純血当主代行――正真正銘のお姫様なんだよね。このひと。
――ホントにボス……”オルガ”って凄いよね。
こーゆートコ。今も昔も。
今更だけどさ。
世界の頂点とも言うべき輩の足を、宇宙ネズミと蔑まれ続けているおれたち――後ろ盾もなにもない圏外圏の孤児の元へと運ぶ気にさせるんだから。
「ようこそ、レディ・イシュー、むさ苦しいところですが、お寛ぎ戴ければ。俺が鉄華団団長、オルガ・イツカです」
堂々たる挨拶だった。
マクギリスが薄く笑い、ガエリオは満足そう。
カルタは瞳を瞬かせてから、その唇を綻ばせた。
「あら、思っていたより礼儀を知っているのね。お前が、今回の件を発案したと聞いているけれど」
カルタの発言に、一瞬、”オルガ”の視線が泳いた。
あ、これ”オルガ”の知らないシナリオだわ。あのトウモロコシ畑での出会いのときと同様、マクギリスがサラリとでっち上げでもしたんだろう。
――あんまり”オルガ”をイジメるんじゃねえよ?
ジロリと睨む先で、マクギリスは涼しい顔――でも、圧をかけ続ければ、反対に睨み返される。
あれ、これもしかして意趣返し――先に”オルガ”がなんかしてたの?
でも、おれは”オルガ”の味方だからね。さらに圧力を上げて睨めば、とうとうマクギリスが苦笑した。
ともあれ、このままここにいても仕方ないし。
「とりあえずは、こちらへどうぞ」
’’オルガ’に促されて、一同は艦長室へと向かった。
大半の団員は、一旦ここで解散。
おれはクランクと一緒に、四人の後ろを付いていく。
とは言え、艦長室に入るのは四人だけだ。
おとなしく扉の外で待とうとすれば、何故か”オルガ”も部屋を出ようとして、マクギリスに腕を掴まれ引き戻されて行った。
――いや、”オルガ”、なんで出てこれると思ったし?
この艦に来ることが決まったときに、巻き込まれることだって決まってたに違いないよ。
静かに手を振るおれに向けて、信じられないものを見るような視線を投げないでいただきたい。
――では、ごゆっくり。
胸に手を添え、優雅に一礼してから扉を閉める。
大丈夫。不穏な空気を感じたら、艦長室の扉であっても、ちゃんと蹴り壊すから安心して。
暫くは無言で艦長室の前に控えていたけれど。
「……オルガ・イツカも底の見えない男だが」
ふう、と息を吐いて、クランクがこっちを見た。
「お前もよく分からんな、三日月」
「そう?」
おれは“オルガ”ほど、かっ飛ばした原作知識の披露とかはしていないけどね。
「さっきの礼はなんだ。あれほど見事にできるなら、日頃から…」
「付け焼き刃」
始まりそうな説教を遮れば、キュッと眉をあげて見下される。
「清掃ロボットに電解水、洗浄液を作ったのも付け焼き刃か」
「そう」
キッパリと頷けば、またため息が落とされた。
「アインが言っていた。お前の知識は異常だと――お前がダンテと作り上げた装置は、単なる通信機の域を超えている。全て独学と聞いているが、到底信じられんと」
うん――アインから直接言われたこともあったわ。
「――……気持ち悪い?」
「いや。不思議な事だと思うだけだな」
言葉に嘘がないのは、その視線が語っていた。
「これからする話を、あんたが信じるかは知らない」
前置きに、クランクは目を瞬いて、それから頷く。
「おれたちは、ある日、ひどく長い夢を見た――その中で、オルガ・イツカと三日月・オーガスは、生きて、そして死んだ」
どう言えば伝わるかなんて知らない。
だから、おれは“三日月”の言葉で、そのまま話す。
話せないことーーこの世界を物語として知っているんだってことだけ隠して。
クランクの目を見ながら。
「クランクも、アインも――おれたち鉄華団も、みんな死んだ。あんた達は、三日月が殺した。鉄華団は、権力に押しつぶされた。抗っても抗っても――……」
クランクは黙って聞いている。
「“おれ”は、あんなふうに“オルガ”を死なせたくない。ビスケットを、シノを、チビどもを、フミタンを、みんなを、あんな――あんなふうに――」
声は震えなかった。だけど、言葉が詰まる。
こみ上げてくる――叫びたいような。これが怒りなのか、哀しみなのか、愛しさなのか、よく分からない。
ボスが“オルガ”になって。
ここにいて、“三日月”として生きてるうちに、どれほどにも皆が大事になって、だから、どれほどにも憎い――ノブリス・ゴルドンとラスタル・エリオンが。
奴らに道を許した運命が。
荒れ狂うような熱が、轟々と体内で燃えている。
クランクが腕を伸ばしてきて、大きな手が頬に触れた。そこは乾いていて、流せる涙なんて、おれは持って無いのに。
――あんたが痛そうな顔をすることは無いよ、クランク。
“三日月”は、戦うための力なら持ってるんだ。
「……三日月は文字を覚えた。“おれ”は文字を知ってた。三日月は阿頼耶識に使われた――だから、“おれ”は阿頼耶識を使う。三日月は何も知らなかった。“おれ”は――“おれ”は知りたい。知って、知って、知ってる全部を使ってやる」
それはクランクには理解し難い話だったろう。
おれの、説明ですらない、こんなバラバラの言葉の羅列は、望む答えでは無いはずなのに、否定も疑念も挟まずに、ただ聞いてくれる男の度量の広さを知る。
「“オルガ”は――“皆で生きるための未来“を探してる。ここはもう、あのとき見た流れから大きく外れてるから」
暫しの沈黙の後、クランクがとても小さな笑みを見せた。
「三日月は、誰かの手を借りることを知っていたか?」
言われて、目を瞬いた。
三日月は、ひとの手を借りることを――知らなかったのかも知れない。
「“お前”は、誰かの手を借りることを知っているか?」
問われている意味を測りかねて、首を傾げる。
――手を貸してくれると言っているの?
「――……『手伝って』って、こないだ頼んだ。シノとダンテと昭弘と、アインにも」
「ああ。そうらしいな」
大きな手が頭を撫でる。
振り払わずにそのままに。掌にすり寄るようにして、
「あんたにも――“オルガ”を助けてって、言っても、いいの?」
小さく聞いてみたら、クランクの目が見開かれて、それから大きくて静かな笑みが返った。
「俺は手を貸すと、あの時に言ったはずだ」
あの作戦会議のときか。
うん。言ってたね、確かに。
「アインも、お前たちを助けるだろう。全てを背負おうとはするな」
「――……うん」
――ありがとう。
照れくさいから、お礼は唇の動きだけになった。
小一時間ほどして、扉が開く。
「クーデリア・藍那・バーンスタインはどこ?」
出てきたのはお姫様――カルタ・イシューだけだった。
――え? 他の三人は?
部屋の中をチラ見すれば、どうやら“オルガ”は残る二人に絡まれている模様。
小さく息を吐いて、背筋を伸ばす。
「『クーデリア・藍那・バーンスタインであれば、展望エリアにおります。お呼びいたしますか?』」
尋ねれば、カルタからは面白がるような眼差しが向けられた。
ついでに、つむじの辺りにクランクの驚愕の視線が突き刺さってる気がする。
どうせ、おれが敬語使うとは思わなったとか、そんな感じなんだろうさ。
――いや、敬語くらい(ちょっとなら)使えるんだよ。棒読みだけど。
「いや、私が出向こう。この艦の中も歩いてみたい」
「『僭越ながら、お二方はよろしいのでしょうか?』」
「先程からオルガ・イツカにベッタリよ。少し飽きたわ」
声には拗ねたような響きがあった。
“オルガ”にマクギリスを取られて、お姫様はご機嫌斜めか。
「『では、わたくしがご案内いたします。この場に控える者を別に呼びますので、暫しのご猶予を頂けますか』」
「許す」
許可か出たので、インカムを操作。
「――艦長室室前からブリッジ。至急でアインと昭弘をこっちに寄越して。おれ達はお姫様と展望エリアに向かう」
〈了解した〉
〈すぐに向かう〉
いいお返事。良かった。
なにもないとは思うけど、艦長室を放置するわけにはいかんからね。
「『では、こちらへ』」
前を遮ることなく、誘導する。
クランクも付いてくる。そりゃね、おれひとりにお姫様を任せられるはずが無いし――任されても困るし。
物珍しそうに艦内を見回しているカルタは、演技ではなく気楽そうで不思議に思う。
――ねえ、そんなに無防備にしてて良いの?
あんたに危害を加えるような相手は、確かにこの艦には居ないけどさ。
ジッと見上げてみれば、無作法と取られてか、クランクの手に顔の向きを変えられる。
そのやり取りを見で、カルタはクスクス笑った。
「なんだ、私になにか聞きたいことでも?」
「『……』」
駄目だ。敬語打ち止め。
『助けて』とクランクを見上げれば、察してか溜息をつかれる。
「申し訳ございません。不調法者ゆえ、これ以上の言葉を持ちません」
代わりにクランクが答え、カルタは小さく鼻を鳴らした。
「最初に構えずとも良いと言ったはずだ」
「――建前かと思った」
正直に口に出したら、カルタは堪えられないように吹き出して、クランクは仁王に変怪して頭を掴んだ。
――アダダダダダダダっ!!
「お前が三日月・オーガスだろう? ガエリオから聞いている。鉄華団には小さくて無礼で生意気だが優秀なパイロットがいると」
――小さいと無礼と生意気が余計だよガエリオ。
カルタが顔を寄せてくるのを、真っ直ぐに見上げる。
特徴のある化粧に印象を持ってかれるけど、顔立ちはそのものは整ってるんだな。
「……三日月は花の香りじゃないのね」
ふと気づいたように、カルタが瞬きをする。
クランクに顔を向けて、
「お前は花の香りがするのに」
心底不思議そうにのたまう姫君に気が抜けそうになるよ。
クランクが物凄く渋い顔で、ギロリと睨んでくる――いいじゃん。いい匂いで。
「……お姫様がくるから、みんなで身ぎれいにしようとしたんだ。“オルガ”達は、おれが間違えてフローラルになっただけ。ホントはクーデリア達だけにするはずだったんだ」
――その後、メンソールを浴びなおそうとしてたけどさ。大興奮のチビどもが泡を全部使い切っちゃってたから、どーにもこーにも。
この艦では、いま、“オルガ”率いるおっさんどもが、全員優しいフローラル――ってことを、掻い摘んで説明しただけなのに、カルタがこれ以上ないってくらい笑う――セブンスターズって笑い上戸だったりするの?
展望エリアに足を踏み入れれば、クーデリアが立ち上がってお姫様を出迎えた。
フミタンも側に控えてる――アトラは、給仕の手伝いかな。
奥に設えたテーブルには、すでにお茶の用意がされていた。
星明りの中、女の子たちだけのお茶会って、なん だかとてもファンタスティック。
おれとクランクは、入口付近に控える。
ほら、レディ達の会話を邪魔するわけにもいかないからね。