【成り代わり】鉄血のナントカ【異世界転生?】   作:くずみ@ぼっち字書き。

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一方その時"三日月"は 20

 

 

 

 実働部隊の作戦会議と称して、部屋にはおれとダンテ、それからシノとアストンと昭宏が居た。

 取り敢えず、皆に向かってニッコリと笑ってみたら、ダンテを除いたメンバーは3秒固まった――挙げ句、シノから「怖えよ!」と叫ばれた。

「『お前を狩って喰う』って顔じゃねえかソレ。普段の悪どいニンマリより3倍質が悪りぃぞ!」

 とても心外。

「無邪気に微笑んでみたつもり」

「……悪魔の無邪気さってそんなものかもな」

 ガクブルすんな。物凄く失礼だぞヲイ。

 それはさておき。

「例のドノミチコロス、あっちに元一軍の奴らが居る。MSのパイロットだってさ」

 言えば、元参番組の面々は皆一様に嫌な顔をした――まあ、そんなもんだよね。あの屑どもには散々虐げられてたんだし。

「あいつらMS乗れるのか?」

 昭宏が首を捻る。

「4年もあればなんとかなるんじゃない?」

 知らんけど。

 ふぅん、と、あまり興味なさそうなシノだけど、具体的な名前を出してやれば。

「……ふぅん?」

 お。今度の『ふぅん』は殺気満々だ。

 元々ヤマギを“苛めてた”連中だし、“仲良し”のお前にしてみたら、到底赦し難い相手だろ。

 ヤマギ、いまだに時々魘されてるみたいだし。

「で、ここらで一つ白状しとく」

 今のうちに秘密の暴露と共有を――アストンは巻き込む事になって悪いけどさ。

 向けられるそれぞれの視線を受け止めながら。

「マルバとその一党、実は『おれが殺りました』。縞パン(青)捨てに行った帰りに」

 4年前のことだ。

 どうだ衝撃の告白だろう、と思いきや。

「知ってた」

 と、ダンテはあっさりと頷き。

「だよな」

 シノが今更だと肩を竦め。

「だと思ってたよ」

 昭宏は苦笑した。

 途中参入のアストンは、首を傾げてから、

「そいつが誰か知らないけど、単に三日月がこっそり敵を片付けてたってことだろ」

 いつもと何が違うのかと、不思議がる始末である。

 ――このおれの扱いよ。

 まあいいけど。

「ウェイプアウトしたと思ってたのに、まだ残ってたみたい」

 誠に遺憾。埋め損なった機体は1台も無かったから、多分、あの場に居なかったんだろう。

「オルガは知らねえんだろ?」

 シノが片方の眉を上げる。

「言って無いからね」

「なら、ビスケットもクランクも知らねえわけだ」

「名瀬もな」

 ダンテが補足する。

「って、どこまでバレてんの?」

 誰にも告げて無かったんだけど。

「ユージンは気付いてねぇな」

 昭宏が苦笑い。まあ、気付いてたら大騒ぎするだろうしね。

「トドは勘付いてたぞ」

 ダンテが鼻を鳴らした。そりゃね、お前と双璧をなす、“諜報参謀”の通名は伊達じゃ無いさ。

「で、どうするよ?」

「多分、オルガは見逃すだろうね。獲物はドノミチコロスだけだし」

 元一軍の残党なんて、小物に関わる気は皆無だろう。

 放って置いてもどのみち自滅するだろうけど、折角のこのこ出てきてくれたんだし。

「シノ、任せていい?」

 奴らの始末。

「おう。MSの回収の必要は?」

「無い」

 存分に潰してくれ給え。

 視線を合わせる先で、シノも嗤う――ソレこそ『奴等を狩って喰う』って顔。

 良いね。

「5機いるから、アストン、シノを手伝ってもらっていい?」

「任せろ」

 不敵な笑みを浮かべて、アストンが力強く頷く。ん、頼もしい限り。

「で、おれと昭宏は、ドノミチコロスの金ピカ艦を、マダムたちが確実に潰せるようにエスコートな」

「ああ。わかった」

 できればお前には、ラフタのエスコートをしてもらいたいんだよ、昭宏。

「ダンテは、例によって通信頼むわ」

「おう。チャドと別回線で繋いでやるよ」

 流石に解っていらっしゃる。

 グルリと見廻して、皆で頷く。

 さあ行こう。そろそろ座標に近づく頃だし、ブリッジで“オルガ”が待ってる。

 フワリと廊下を遊泳しながら移動するさなか、

「なぁ、三日月。さっきから気になってたんだが」

「なに、昭宏?」

「ジャスレイの名前間違ってるぞ。“ドノミチコロス”じゃなくて、ドミノコルスだ」

 おおお!

 やっと突っ込んでくれたか。誰も彼もスルーするから、気が付いてくれてないのかと思ってたよ!

 嬉しさのあまり、ニコリと微笑めば、ダンテを除いた3人から距離を取られた。

「バカ昭宏突っ込んでんじゃねぇよ!」

「昭宏さん、気にしちゃ負けなことってあるんですよ!」

「すまん! 俺が悪かった!」

 シノとアストンに責められて、昭宏がアワアワしてるし。

 ――……どうなの、この状況。

 ダンテを顧みればちょっと肩を竦めて、

「『どのみち殺す』って言いたいだけだろ?」

 何でもないことのように訳してくれるんだから凄いよね、この相棒は。

 ホント、流石に解っていらっしゃる。

 

 

 さて。モニターにはけったいな船影が映し出されてた。

「“黄金のジャスレイ号”発見。――こいつ、本当に隠れる気あるのかよ?」

 ダンテがやれやれと首を振る。

「さぁな。自信があるんだろ……まぁ、自分とこの親分を殺ったんだ。テイワズそのものから追われる可能性は高いし、実際今は、ほとんどそんな状況だろ。投げやりになってるのかも知れねぇな」

 “オルガ”の口調もぞんざいだった。

「……“オルガ”」

 声をかければ、顰められたままの顔がこっちを向いた。

「何だ」

「ド腐れ外道野郎が雇ったMSのパイロット、元一軍の連中みたいだよ。阿頼耶識はないから、大した腕じゃないと思うけど……俺たちに恨みがあるかも知れない。用心した方がいいかも」

 一応告げてはみるけど、反応は芳しくない。

「そうだな――ハエダやササイを殺った時にも、怖気づいて、金を貰って早々に逃げ出すような連中だ。忠誠心なんてものはあるはずもないし、度胸だってどうか怪しいもんだな」

「……逃げると思うか?」

 ユージンの問いかけに、“オルガ”は肩をすくめた。

「さぁな。ただ、ハエダやササイと違って、ジャスレイは逃げる奴を後ろから撃つくらいのことはするだろう。死にもの狂いでこられたら、なかなか難しいかも知れねぇな」

 ちょっと考えるように視線が泳いでから。

「まぁ、わざと逃げ口を開けておくなり何なり、“死兵”にしない工夫は必要だろうな」

「それで、後ろから一網打尽?」

 一度ならず“オルガ”の敵として出てきたんだ。今後も鬱陶しく湧いて出るかも知れないから、この機に潰しておくことをお勧めするよ――だけど。

「まさか。面倒だから、そのまま逃がすさ。うまくすりゃ、歳星にでも辿りつくだろ」

 “オルガ”の回答は、予想通り自滅待ちだった。

 チラリとシノとアストンに視線を走らせれば、小さく頷きが返る。

 ん、よろしく。

「……とにかく、俺たちは、圏外圏の安定と、これからの鉄華団のために、戦うだけだ」

 まあね。

 おれにはそんな壮大なお題目は無いけど、こいつら食わしてくのには必要だよね。

「これからしばらく、仕事できるかわかんないからね。稼げるうちに稼いどこう」

「おいおい、もう俺たち、随分稼いでるだろうが」

 これぐらいで満足してもらっちゃ困るな、ユージン。

「全然足りないよ。クジャン家の財産なんて、どれだけあるかわかんないんだし」

 言えば、“オルガ”が溜め息を落とした。

「――確かに、地球外縁軌道統制統合艦隊の仕事をするにも、買い叩かれるようじゃ話にならねぇ。ふっかけても、向こうが仕方ないとおもうくらいの実力を見せつけてやらねぇとな」

「おお、三日月だけに見せ場は作らせねぇぜ!」

 ユージンがニヤリと笑いかけてくるのに、肩を竦める。

 そうそう手柄は譲らんけどね。

「是非ともそうしてくれ。……だが、猫が鼠をいたぶるような真似はするんじゃねぇぞ。俺たちは強いんだからな」

 その言葉に、ブリッジが湧いた。

「俺たち“宇宙ネズミ”なのにかよ?」

「“宇宙ネコ”に改名するかぁ?」

「止せよ、変なイキモノみたいだろ!」

 ゲラゲラ笑い合いながらの軽口。これから戦闘なんだけど、ホントにお前ら場馴れしちゃってさ。

「そろそろか?」

 “オルガ”が聞いてくる。

「そう。そろそろ出るよ」

 アチラさんも気付いただろうし。

「よし。ミカ、昭弘、シノ、アストン、行けるな?」

「「「おう!」」」

「はいよ。いってくる」

 ブリッジから格納庫へ。

 それぞれのMSのコックピットに飛び込めば、ドッグの扉が開いた。

 さあ、狩り尽くしてやろう。

「“三日月・オーガス”、バルバトス、行くよ」

〈昭弘・アルトランド、ガンダムグシオンリベイク、出る!〉

〈ノルバ・シノ、流星号、行くぜ!〉

〈アストン・アルトランド、オルトロス、行く〉

 一条の乱れもなく、軌跡を揃えて出陣。

 その後は、二手に分かれた。

 シノとアストンは、そのまま黄金のジャスレイ号から飛び出してくるMS5機に向かい、おれと昭宏は、後続のMSと姐さんたちを少し待つ。

 イサリビとカガリビ、ハンマーヘッドから出撃したMSは総勢で15機だ。

〈――俺たちのターゲットはジャスレイ・ドノミコルスだけだからな。油断は良くないが、あんまり過剰に叩いてはやるなよ、特にミカ〉

 ――うぇへぇ。

 なんで名指しで来るかな。

〈今回は、うちがメインじゃねぇんだ。とにかく姐さんたちのフォロー中心でな!〉

 “オルガ”の念押しに、若干の不満を持ちつつも、皆んな了解を唱えてる。

 拙いMSパイロットに、戦闘経験に乏しい艦。

 対するは、百戦錬磨のタービンズと鉄華団――オーバーキルもいいトコって、ホントに?

「シノ、アストン。ちょっと待って」

 ――あれ? なんか違和感。

〈なんだよ三日月?〉

〈なにか気になることが?〉

「アイツら、艦から距離取らない」

 臆病風に吹かれたってことかも知れんけど、微妙な距離だよな、あれ。

「昭宏、待機。姐さんたちが先走らないように抑えてて」

〈おう。行ってくる〉

 後方に戻る昭宏を見送りつつ。

「ダンテ」

〈おう。どーした?〉

「ド腐れ外道の装備、追加されてるモン無い? つか、用途不明金あったよな?」

〈……そういや、ダミー会社でなんかあったな。なんに使ったかは抜けなかったぜ〉

 だよね、隠し財産漁ってたとき、ちょっと変な金の動きあったよね。むしろ犯罪の匂いがプンプンしてたアレ。

「こっちの映像送るから、前情報と変わってるものがないか調べて。なんか引っかかる」

〈『はいよ』――……お?〉

 反応早いな。お前、絶対間違い探し得意だろ、ダンテ。

〈……あー。砲の数と形が微妙に違うな。これ…超電磁砲か?〉

「そうきたかー」

 ド腐れ外道野郎にはウンザリだね。

 レールガン違法じゃないか。突貫で載せやがったのか。歳星の近くにいた理由もこれか。悪足掻きしやがって。

「シノ、アストン、聞いてるね。あちらさん、レールガン装備したっぽい」

 多分、ダインスレイヴの試作品かその辺だろう。威力は推して知るべし。

「並のMSなら、下手すりゃ装甲ぶち抜かれる――これ、確実に姐さんたち狙いだね」

 5機のMSはむしろ囮だ。

 護衛代ケチるはずだよ。初めから捨て駒なんだし。主戦力は艦自体だ。

 追加してきた2艘にも、超電磁砲を積んでる可能性大。近づいたところを撃ち取る狙いなんだろう。

〈面倒くせえ野郎だな〉

〈どうするんだ?〉

「作戦変更。先に装備削る――悪い、昭宏、姐さんたちの盾役頼むわ」

「任された!」

 グシオンリベイクが一番硬いからね。

〈“ミカ”、どうした?〉

 イサリビから通信が。

 急襲しないことを不審に思ったんだろう。

「“オルガ”。ちょっと情報に漏れがあった。ドノミチコロス、レールガン装備したっぽい」

〈なんだと……ダインスレイヴか⁉〉

「多分、その類い」

 “オルガ”の脳裏にも、ナノラミネートアーマーさえ穿いた、あの悪夢のような光景が浮かんだかもね。

 通信に混じったノイズは、“オルガ”の溜息かな。一拍の間のあと。

〈“三日月・オーガス”〉

 届いたのは、冷たいほど冴々とした声だった。

〈やれ。すべての脅威を潰せ。敵を。悪い夢を。――俺たちが連れて行くんだ。皆を、ここじゃない『明日』へ〉

 いつかの時間軸で、辿り着くことができなかった未来へ――皆が笑ってられる『明日』へ。

 ああ。そうだね。

 “オルガ”に連れてって貰うんじゃない。“三日月”が連れて行くんでもない。

 “おれたち”で連れてくんだ。

 きっと、それは今尚何処かで命を削ってるだろう、まだ見ぬ孤児たちの未来にも繋がるから。

「はいよ。りよーかい」

 軽い返事で。だけど声は、冷たく、熱く。

「叶えるよ。“オルガ・イツカ”」

〈おう。やって来い――あ、とどめは譲れよ!〉

 ――……なんで最後怒鳴るかなぁ。

「うぇへぇ〜」

 途中まで格好良かったのに、いまいち締まらんよね。

「シノ、アストン。かなり危険を伴うけど」

〈いつものことだろ〉

〈何をすればいい?〉

 食い気味に答えられて、溜息が。

「即答過ぎ。お前ら命知らずもいい加減にしとけよ」

〈〈お前が言うか〉〉

 なんでハモるんだよ。こちとら『命大事に』が信条なんだぞ。

「取り敢えず、撃たせる」

〈撃たせるってレールガンをか〉

「そう。おれが突っ込むから、追撃頼む。くれぐれも当たるなよ。発射したら、すぐさま艦を潰せ。残すのはジャスレイだけでいい」

 装備はレールガンだけじゃないから、砲をひとつ制したからって、艦が無防備になるわけじゃない。

 MSで装甲艦を潰すなら、どうしたって密接する必要が出る。なまじの腕なら、近づくことすら困難だし、特攻されたらMSの方が潰されるだろう。

 だけど、こいつらなら。鉄華団のエースパイロット二人ならば、それが可能だ。

〈撃たせられるか?〉

「撃たせる」

 ヘイトを稼ぐのはわりと得意なんだ。

「昭宏、砲撃がきたらすぐに、うちの連中と姐さんたちを少し前に出して。くれぐれも出しすぎんなよ。ジャスレイの艦にもレールガンはあるんだからな。お前らの出番はもう少し後だ」

〈了解した〉

 よーし。それじゃ。

「行ってくる」

 限界までセンサーを広げる。推進を上げて突っ込む先、砲台が動いて、照準を合わせてくるのを感じた――鳴り止まないアラート、だけど、これはレールガンとは別の砲身だ。

 サブシスが弾き出した軌道から機体を逸し、滑り込んでメイスで殴る。

 一番デカくて重たいメイスだからね、結構ガツンと。艦の装甲でも、弱い部分を狙えば。

 ――ん。結構凹むね。

 ガンゴンゴンと。

 艦が振り落とそうとして揺れるのに合わせ、リズミカルに殴ってみる。

 センサーの先では、同じようにシノとアストンも打楽器祭りだ。

 さて。煽りはこんなもんか。

 スイと離れれば、複数の砲身の先が追いかけて動く。そうそう、来い来いレールガン。

 トライアングルみたいに移動した敵艦の位置を確認。

 三艦で一斉に撃つか――こっちを一掃するつもりだね。

「そろそろ来る。シノ、アストンよろしく。昭宏、誰も前に出させるな――って、おい! 誰だ突っ込んでくんの⁉」

 うちの連中じゃない――タービンズの、誰だ? 百里? ラフタか‼

「昭宏‼」

〈すまん、抜かれた! 止める‼〉

「早くしろ‼」

 砲身が動くのを確認――畜生、レールガンだ。

〈バカ野郎! ダンジ、戻れ‼〉

 シノが叫んでる。

 なんでだよダンジ⁉ ――なんでお前がラフタを追って出るんだ‼⁉

〈三日月、来るぞ‼〉

 アストンの声が――

 アラートは大音量。全てのセンサーが予兆を捉えてる。

「散開‼ 回避しろ‼」

 弾丸の軌道から機体を翻す――シノが、アストンが同様に躱している。

 はるか後方ではユージンがイサリビを軌道修正。

 カカリビもハンマーヘッドも、予測軌道から逸れてるけど。

 時間が引き延ばされたような錯覚――ダンジのランドマンロディ改の腕が百里をとらえて止める。

 さらに4本の腕を最大に伸ばしたグシオンリベイクか二人を掴み――

〈回避!〉

 ほぼ同時にレールガンが発射され――3つのMSが、センサーから消失した。

〈――ダンジ⁉ おい、ダンジ‼!〉

 血を吐きそうな叫びだった。

〈クソッ! お前言ってたじゃねえか! 『死ぬときはでっけぇおっぱいに埋もれて死にてぇ』って!」

〈昭宏さん‼〉

 アストンも必死に呼んでいる。

 その先で。

 大破したランドマンロディ改を、グシオンリベイクと百里が庇うように支えていた。

〈……その夢……まだ捨ててねぇっす…〉

 酷いノイズの後で、それでも届いた声に。

「〈〈ダンジぃイイイイイ!!!〉〉」

 ――お前ホントに死んだかと思ったじゃないか‼

 元一軍のMSが3機まとめて消え去る威力の弾受けてよく生きてたな、ダンジ。お前には『不死身の男』の称号をくれてやろう。

 掠めただけでもあれって、ホントに何なのダインスレイヴ。

 グシオンリベイクの腕も一本消し飛んでるし。

 だけど、これで勝機はこっちに。

「行くよ!」

〈〈おう‼〉〉

「皆も続いて――デルマ、昌宏、アストンに加勢。ビトーとペドロはシノに。昭宏、来て‼」

〈〈〈〈はいよ!〉〉〉

〈おう!〉

 他の砲身はともかく、レールガンの連射はできない。

 ほら、流石に元海賊所属のMSの着艦は見事の一言。

 弱い所を狙いすまして、まるでクジラに群がるシャチの群れみたいに。

 見る間に削られていく艦が逃げようと藻掻くけど、どこにも逃げられない。

 そっちは任せた。

 黄金のジャスレイ号とやらの逃げ道を塞いで、昭宏が怒れる女神たちを連れてくるのを待つ。

 艦からは、引っ切り無しに音声通信が飛んできてるけど、シャットアウト。

 興味ないし。

「“オルガ”。奴らがレールガンぶっ放した映像データ、そっちに送った」

〈おう。せいぜい上手く使ってやるさ〉

 そう言う“オルガ”の向こう側で、誰かが喚く声がする。煩いな――これ、ジャスレイからの通信? 切ってて良かった。

 そんなことより。

「ダンジ、回収した? どう?」

〈前とは反対の脚が折れたが、それだけだ。命に別条はないな〉

「そう」

 ――良かった。

 ここまで来て死なせるとか無いしね。

〈三日月!〉

 グシオンリベイクがタービンズの姐さん達を引き連れて到着。

「昭宏。どう?」

〈腕一本やられたが、どうってことねぇよ〉

「そう」

 こっちも良かった。

「じゃあ、マダムたち、ご存分に」

〈ちょっとお膳立てがすぎるんじゃないか、坊や?〉

 アミダ姐さんの声がちょっと渋い。

〈そりゃ助けてもらっといてなんだけど、あたしらだって弱くないよ!〉

〈……ラフタ。でも、確かにそうだな〉

 ラフタとアジーもご不満かね。ふむん。

「あんたらが強いのなんて知ってる。だけど、おれたちは“鉄華団”だ。おれたちに頼むってことは、こーゆーこと〉

 なんてったって“最強”を自負しておりますから。

 その意図は伝わったらしい。

 短い笑い声がして、

〈――なるほどね、“鉄の華を背負う男達”のエスコートならこんなものか〉

「そーゆーこと」

 ご納得いただければ何より。

 黄金のジャスレイ号のブリッジの前へと導けば、3体のMSの爪先が、ハイヒールみたいに艦上に突き立った。

 花束を渡すように、アミダの百錬にメイスを恭しく差し出す。

 引っ込められないブリッジなんて、粉砕してやれば良い。

 アミダの手にメイスが渡って。

〈アンタは気に入らない男だったけど、ここまで愚かだとは思ってなかったよ。残念だ〉

 冷たい声だった。

 何処かに虚しさみたいなものを潜めながらも、勁くて揺るぎのない、女王みたいな。

〈さあ、ジャスレイ。オネンネの時間だよ。――永遠に眠ってな‼〉

 振り上げられたそれぞれの武器が、一気にブリッジに振り下ろされた。

 閃光。

 爆発の衝撃から、バルバトスとグシオンリベイクで女達を守る――おれがアミダを、ラフタとアジーは昭宏が。

 金ピカの艦が爆散して、デブリになって消えていく。

 センサーには、他のニ艦も、敵方のMSの残りも、もう映っていなかった。

〈掃討完了!〉

〈艦もMSも全部狩ってやったぜ! 三日月、後でなんか奢れよ〉

 流石だな、うちのエースども。

 つか、それ口止め料かよ、シノ。

〈わりとチョロかったな〉

〈暴れたりねぇな〉

〈そーそー〉

〈あと10艦くらい潰せるぞ!〉

 お前らは調子に乗んな。

「“オルガ”、終わった」

〈よし、良くやった〉

 イサリビから沸き立つ声が聞こえる――ん、カガリビからもか。

〈マクマード・バリストンの仇は、タービンズがとった! 鉄華団が見届けた‼〉

 “オルガ”が高らかに宣言して、この戦闘は幕を下ろした。

 

 

 あの後、ダンジがさらに3度目の緊急搬送をされた。

 ようやく出てきた医務室へトンボ返りってお前。

 3度目の正直で、もう駄目かと思ったじゃないか。

 シノは顔色を変えて、「お前、ホントに夢叶えて逝く気なのかよ!!?」と叫んでいた。

 ラフタを助けた件で、アミダ姉さんから感謝の抱擁をくらった直後の出来事だった。

 巨乳に顔を埋められて、その質量に窒息。

 幸せそうに目を閉じ、鼻から大量の血液を失いながら運ばれて行く姿に戦慄した。

 お胸様も過ぎると凶器に違いないのだ。

 “オルガ”は「バカじゃねぇのか‼」と怒鳴り、ユージンは「いい店に連れてってやらねぇとな」と呟き、名瀬は馬鹿笑いして嫁たちから抓られていた――ホントもげろよ。

 昭宏は呆れた顔で、「俺は別に」とか何とか言ってたけど、視線がラフタに向いてて笑った。

 ラフタはラフタでツンツンしてる割に、チラチラと昭宏を目で追ってた。

 なに、ちゃんとフラグ立ったの?

 昌宏も勘付いてかニヤニヤしてた。

 そんなこんなで。

 事後処理に忙しいのは、例によって“オルガ”達で、実働部隊はわりと余裕だ。

 あとはアーレスに帰るだけだしね。まぁ、その後はグラズヘイムに連れて行かれるだろうけど。

 できれば、その前にクーデリアとフミタンに会っときたい。

 無理なら、せめて連絡ができればいい。

 ――これからだって、きっと護るよ。

 圏外圏の未来に欠かすことのできない“光”を。それから、彼女を支えてくだろうフミタンを。

 その“光”が照らす道の先で、おれたちは笑ってられる――今だってそれを信じてるから。

「おい、“ミカ”」

 呼ばれて振り返れば、難しい顔をした“オルガ”が居た。

「お疲れさま。どしたの?」

 チョコ――マクギリスに完了報告してたんじゃないの?

 また何か難題押し付けられたとか、そーゆーことなら、そろそろサクッとヤって来ようか。

「――……縁組がきた」

「なるほど。カルタ姫とだね」

「なんで分かった?」

 “オルガ”の目が見開かれる。

 わからいでか――物凄く分かりやすく好意を示されてたじゃないか。

 ついでに現状を振り返ってみなよ。

 これまでカルタがずっとマクギリスを想い続けて、大幅に婚期を逃してることを、イシュー家の現当主は憂慮してただろう。

 そこへ来て、ようやく娘が他に目を向け始めた。よりにもよって火星のスラムあがりの男に――当主の嘆きは如何ばかりだったろう。

 だけど、事態は一変する。

 件の男は、セブンスターへ養子に入る運びとなった。

 これを逃したら後がないって、飛びついたんだろ、きっと。

「……返事は待って貰った」

「拒否権あるの?」

 分かり切ったことを聞けば、引っ捕まってギリギリと締め上げられた。

「アダダダダダダ‼」

 ギブギブ、放してよ!

 タップしても腕の力は緩まないから、無理くり抜け出す。

 逃げたおれをギロリと睨んでから。

「それで、お前はラスタル・エリオンのとこに養子にいけ」

 なんか、爆弾がきた。

「はぁあああ⁉」

 ちよっとどーゆーことさ⁉ なんでおれがアライグマんとこなんかに行かなきゃなんないのさ‼?

「嫌だ‼ 断る‼」

 そもそも、豆板醤の養子になるのだって千歩譲ってんのに、アライグマの養子なんて1万歩譲ったって拒否案件だ!

「もう決まったことだ」

「聞いてないし! なんでそんなことになってんの⁉」

「ラスタル・エリオンがお前を欲しがって譲らんからな。これ以上拒否するのも面倒くせえ。お前、行って掻き回してこい――さもなきゃアリアンロッド艦隊乗っ取れ」

 意味分かんないし!

「ヤーーーーダーーーーー!!!」

「決定事項だ」

「断固拒否する! 人権損害だ‼ 労働法違反だ‼!」

「ここでは俺が法律だ」

 そんな馬鹿な⁉

 ちよっといくらなんでもおれに対してヒド過ぎじゃないのか‼

 アーレスに着くまでの道すがら、おれと“オルガ”の攻防戦は、みんなも巻き込んでずっと続いた。

 

 

 

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