このすばワタル   作:遊佐

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プロローグ

それは、子供のころに聞いた話――

誰もが一度は夢見る、おとぎばなし――

 

さあ、物語を始めよう――

 

 

 

*** このすばワタルっ! ***☆彡

 

 

 

ここは神様たちが住む世界、神部界。

その中心に存在する神々の山「創界山」は、7つの階層に分かれており、様々な世界となっている。

そんなある日、神様たちの世界に悪の帝王「ドアクダー」が現れ、創界山のシンボルであった七色の虹は色を失ってしまった。そして神部界を守護する七匹の龍――神部七龍神は封印され、「創界山」を乗っ取られてしまった。

封印される前に力を分けた龍の神様が、古の救世主の生まれ変わりである「戦部ワタル」を異世界から呼び寄せ、仲間と共に創界山を救う旅が始まった。

様々な困難、各階層に暮らす人々との出会いと別れ、激しい敵との戦いの末、ついに悪の帝王ドアクダーは、救世主となったワタルの手により討たれた。

かくして創界山に平和が戻ったのだった。

 

そしてそれはワタルと仲間たちとの、別れの時でもあった。

 

 

 

*** このすばワタルっ! ***☆彡

 

 

 

「さよなら、ワタル~!」

「元気でな~!」

「また、会おうねぇぇぇぇぇっ!」

 

「みんな~! ありがとう! さよなら~!」

 

金色の龍に乗り、ワタルが神部界を去っていく。

共に過ごした仲間たちとの別れを惜しみながら、涙が流れそうになるのをじっと堪え、ワタルは戻るのだ。

父や母が待つ、現世へと――

 

だが。

 

悪意は、決して終わってはいなかったのである。

 

『おのれ、ワタル! ワシはタダでは滅びぬぞ! 貴様も道連れじゃ!』

 

それはどこまでも悪意のある怨念。

龍王の剣によってすら滅ぼされることのない悪意の怨念の残滓だった。

 

「えっ!?」

『むっ!? これは!?』

 

守護龍によって世界を渡ろうとしていたワタルに、突如暗黒の霧がまとわりつく。

 

『ぐおおお!?』

 

その怨念の力に守護龍が呻き、のたうつ。

 

「うわっ!?」

 

その挙動の激しさに、ワタルは掴んでいた龍の角から手が離れてしまい、その体が宙へと舞ってしまった。

 

『しまった!?』

「うわあああああああああああああああああああああっ!」

 

助けようとする守護龍も、暗黒の霧に阻まれ身動きができない。

そしてワタルは――

 

世界から消えた。

 

 

 

*** このすばワタルっ! ***☆彡

 

 

 

「佐藤和真さん……ようこそ、死後の世界へ」

 

その言葉と目の前にいる少女を見て、佐藤和真は思った。

 

――なるほど、俺はまた死んだのか、と。

 

 

 

*** このすばワタルっ! ***☆彡

 

 

 

――そして彼は完全に思い出したのだ。

自分は冬将軍に殺されたのだ、と。

 

「あの……落ち着かれましたか?」

「あ、すんません」

 

目の前にいるエリスと名乗った女神は、憂いを帯びた表情で首を振り、彼を案じている。

そんな様子に、彼――佐藤和真は少しだけあの異状は世界や仲間たちを懐かしく思いながら、生まれ変わりを受け入れようとしていた時だった。

 

「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

「「 え? 」」

 

カズマとエリスがそれまでの雰囲気を完全に忘れたような顔で、突然響き渡った声に顔を上げる。

そこにいたのは、みっともなくも泣き叫びながら落ちてくる一人の少年の姿だった。

そしてその少年とカズマは、奇跡的な確率と言ってもいい程のドンピシャでクリティカルに。

 

 

 

 

 

   メ ゴ ガ シ ャ ァ ァ ッ!

 

 

 

 

 

互いのつむじ部分を寸分たがわぬ精度でぶつけ合ったのであった。

 

「あががががががががががががががががが」

「おががががががががががががががががが」

 

「え、あ、え、えーと……?」

 

カズマと落ちてきた少年が、互いの頭を押さえたままゴロゴロと転がりまくる。

ここが死後の世界なのか神のいる場所のせいなのかは不明だが、なぜか二人の頭は潰れも陥没もせず、R-18のような凄惨な血みどろ現場ですらなかった。

 

「え、えーと……か、カズマさん? 大丈夫、ですか? 一応、ヒールっと……」

「あがががががが……ううう、俺、死んでるのに死んだかと思った。てか、死んでるのに何で痛いの!?」

「あ、いえ、あの、ここにいるのはあなたの魂の状態なんですが、魂そのままの状態だと会話もできないので仮初の肉体のようなもので覆っていてですね」

 

思わずといった形で淡々と戸惑いながらも律義に説明しようとするエリスであったが、カズマの知りたかったことは自分で言っときながらそんなことではなかった。

 

「てかなんだよ! つか誰だよ! 俺の頭にクリティカルにぶつかってきたのは! てか子供!?」

「おごごごごごごごごごごご……」

 

カズマが叫びながら振り返ると、未だに頭を押さえたまま痛みに喘ぐ少年がいた。

 

「え? マジに誰?」

「え、えーと……誰でしょう?」

「エリス様にわからないことが、俺にわかるわけないでしょう?」

「……そうですね、すいません」

 

とても困った顔で首をかしげるエリス。

ともかくも、と痛みに苦しむ少年にヒールのかけるのだった。

 

「あの……?」

「あーいたたたたた……あ、すいません」

「いえ、それはいいのですが……あの、あなたはどなたでしょうか?」

「え? あ、はい。僕は戦部ワタルっていいます。えっと……」

 

少年は、自らの名前を言った後にこう言った。

 

「ここ、創界山ですか? 僕、どうやら守護龍から落ちたみたいなんです」

 

 

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