このすばワタル   作:遊佐

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「うぅ……カズマ、カズマ、いますか?」

「いるよ」

「離れないでくださいね。でも恥ずかしいので耳塞いでください」

「やかましいわ! さっさと済ませろよ!」

 

西洋人形から逃げ回った俺たちは、辛くもトイレまで来ていた。

さすがに限界ということで入ろうとしたのだが、一応はレディファースト、めぐみんを先にさせている。

 

「あの、カズマ? ちょっと怖いので歌でも歌ってくれませんかね?」

「お前はトイレの前で我慢している俺に歌まで歌わせようっての!? いいからさっさと済ませろ! そして俺と代われ!」

「ま、まってくださいよぅ! そんなに言われたら出るものも出ないというか……」

 

こいつぅ!

くそっ! 下手に譲るんじゃなく、さっさと俺が済ませておくんだった!

と――

 

「!?」

 

ふと廊下の曲がり角にからこちらを覗く人形たちが――

 

「ぎやぁぁぁああああああっ!」

「はわっ! か、カズマ!?」

「あけてーっ! めぐみん、ここ開けてー!」

「ちょ、ちちちちちょっと、カズマ! そんなの無理です! まだ全部出ていな――」

「い・い・か・ら! 逃げるぞー!」

 

俺は普段は出ない火事場のクソ力でドアのかぎを開け破った。

 

「ひぃあああああああああああああああああああああああっ!」

 

 

 

*** このすばワタルっ! ***☆彡

 

 

 

「ぎゃあああああああああああああああああああっ! もうなんで追いかけてくるんだよ!」

「アンデットが寄ってくるのはアクアだけじゃなかったんですか?」

「知るかよ! ああ、もう! やっとトイレに行けたっていうのに!」

「まさか鍵まで破って突入してくるとは思いませんでしたよ。あれですか、真正の変態ですか?」

「やかましい! おまえはいいよな、半分は出せたんだろ! 俺なんか膀胱パンクしそうだよ!」

「そう思いまして。こんなの持ってきました」

 

――花瓶。

 

「……おい、それで何をしろと」

「カズマならこの中でも大丈夫でしょう。ちゃんと耳塞いでますから」

「バカ野郎! 俺の聖剣がそんな瓶にはいるわけないだろ」

「いえ、死んだときに見た大きさなら多分――」

「ちょっとまて! お前、今なんて言った」

 

とりあえず、近くの部屋に入り込んで鍵を閉める。

そのドアに、バンバンッと何かが当たる音がする。

 

「や、やばい! ここままじゃ詰む! アクアもいないし……あ、ワタル!」

 

俺はふと気づいてワタルの方を見る。

 

『グー』

 

寝てるしっ!

 

つか、この騒ぎで寝ているって、神経図太いな、お前!

あれか、小学生だからか!?

 

「い、いや寝ていてもワタルなら起こせば……あああ! 王者の剣、置いてきたままだぁ!」

 

しまった! 部屋に置きっぱなしだった!

それじゃあワタルには代われない!

 

「――く、黒より黒く、闇より暗き漆黒に――」

「だあああああっ!」

 

思わず、めぐみんの口を塞ぐ!

つか、何詠唱してんの!? バカなの? この屋敷ごと吹き飛ばす気か!

そうしている間にも、ドアを叩く音は激しさを増してきている。

こ、こうなれば――

 

「おい、いいか!? めぐみんはドアを開けたらとにかく走れ! そしてアクアを探してこい! 俺は覚えたてのドレインタッチで少しでも抵抗してみる! いいな!?」

 

こくこくこく!

 

めぐみんは口を塞がれながら、激しく首を縦に振った。

 

「よし、いくぞ――おらあ! かかってこいやぁ!」

 

バンッ――ガンッ!

 

「はぶっ!」

「……は?」

 

ふと見ると、そこにいるのは慌てた様子のダグネスと、床に散らばった西洋人形たち、そして――

頭にでかいたんこぶ抱えて白目であおむけになった、水の女神さまがおりましたとさ。

 

 

 

*** このすばワタルっ! ***☆彡

 

 

 

「はい、以上が悪霊退治の報酬ですね」

 

グッ!

 

俺とアクアは互いを見ながらガッツポーズを取る。

 

「それにしても、なんであんなに悪霊なんかがいたんだろう?」

「ああ、それはですね――」

 

と、受付のおねーさんが話してくれた内容に、思わずアクアの首根っこ捕まえて壁際に来させる。

 

「オイこら。墓場の結界って何のことだ」

「あー……えーと。めんどくさくて、やりました」

「……ギルドの報酬はもらわない。いいな?」

「――はい」

 

『………………』

 

もう何も言わなくなったな、ワタル。

わかるか? これがうちのパーティの日常だよ。




そりゃ救世主も呆れるわなぁ

皆さん、よいお年を。
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