このすばワタル   作:遊佐

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「……か、カズマ君が少年になった!」

 

クリスの声にはっ!?と声を上げようとする。

が、声が出ない。

と、周りを見ると……俺、宙に浮いています。

 

『!? !! !?』

 

思わずパニックになるが、目の前にいるワタルの視線に気づいた。

……もしかして、入れ替わった!?

 

「え……あれ? か、カズマはどこ行ったの!?」

 

クリスも周囲をきょろきょろと見まわしている。

やっぱり見えていないのか。

 

「ええと……カズマさん。とにかく大声で叫んでみてください。僕はそれで喋れるようになりました」

 

マジか。

とにかく大声で叫んでみる――と。

 

『!? !! ――っ! あああああああああ! あ、声出た』

「出ましたね」

 

ワタルもほっとした顔でこちらを見ている。

うん、ありがとう、助かった。

 

『あーあー……ゲームなんかでよくあるアレね。魂が入れ替わるとか、人格が入れ替わるとか。今回は体が入れ替わったか』

「みたいですね……というか落ち着いてますね、カズマさん」

『廻り回って肝が据わった、ってところか。そもそも異世界にいる時点で変なことにはそれなりに慣れてきたからな』

「死んで生き返る世界ですもんね」

 

まったくだ。

あと、目の前でまだ慌てているクリスを見てたら、なんかほっこりしたことも冷静になれた理由かもしれんが。

 

「え、えええっと……ええー……これ、どういうことなの……私が全く何も感知できない現象って……どういうことなんですか……」

 

なんか口調がバグってるな、クリス。

 

「あの……お姉さん?」

「――はっ! ああ、うん、なんでもないよ!? なんでもないけど……びっくりしたよ!」

 

ワタルの声になんとか反応するクリス。

だが、まだ混乱しているようだ。

目がぐるぐると泳ぎ廻っている。

 

「まさかこんなことが起こるなんて……何もかもイレギュラーじゃないですか……どういうこと……」

『おーい、クリス。帰ってこーい』

 

と呼んでも俺の声は届かないんだっけ。

しょうがない。

混乱しているクリスは置いといて、っと。

 

『なあワタル。それでそれ、やっぱり王者の剣とかいうのか?』

「あ、はい。間違いないですね。でも、確か折れたはずなのに、なんで元に戻っているんだろう?」

『……自己修復能力があるとか、かな? 勝手に元に戻ったことあるか?』

「いえ。王者の剣が欠けたことがないのでわかりません。折れたのは最終決戦のドアクダーとの戦いででしたから」

『そっかあ……とりあえず武器が手に入ったのはいいことか。それに触れられるようになったしな』

「あ、はい。でもその代わり、カズマさんが前の僕の状態になっちゃってますけど……」

 

申し訳なさそうな顔で俺を見るワタル。

まあ確かに、俺の状態がこのままだと困るんだけど……多分その心配はないな。

 

『この状態が俺の想像通りなら、多分大丈夫だ。ワタル、剣を鞘にしまってみ』

「あ、はい」

 

ワタルが剣を鞘にしまう。

と――

 

「ほらな」

 

やはり先ほどの閃光と共に、俺は元の体に戻っていたのだった。

 

「つまりは、この剣を抜いているときだけワタルがこっちで肉体を得る。この剣はそういうアイテムってことだな」

「……そう、なんだね」

 

ようやくまともな受け答えができるようになったクリスは、頭を抱えるようにそう答えた。

 

「これ、まんま神器みたいなもんだよ。しかも本来は封印されなきゃいけない系の。まさかこんなものだとは、本気で思いもしなかったよ……」

 

クリスは、ものすごく落ち込んだ声で呟いている。

これ、そんなにヤバいもんか?

というか、なぜ司祭から依頼を受けただけのクリスが、そんなに気にしているんだ?

 

「えらく深刻だな、クリス。なんかあるのか?」

「…………」

 

クリスは俺の言葉に『はっ』としながらも、しばし逡巡したのちに溜息を吐く。

 

「あのね。これ、ほんとにここだけの話にしてほしいんだけど。あたし、エリス様から神託を受けて神器の回収をやってるんだよ」

「ほお」

「この世界に転生した勇者が持っていたアイテムって、強力でしょ? その勇者が死んだ後も残り続ける神器を封印するのが、あたしの役目でもあるの」

「ああ、なるほどな」

 

確かにアクアの所で見せてもらったチートの数々、アイテム系も数多くあった。

そして魔剣の何とかさんしか使えない、あのチート武器なんかがこの世界に残っているとすれば――

 

「使用者がいなくなったら使えないとかじゃないんだな」

「ロックが解除された状態で放置されちゃうものもあるんだよ。ほかにもロック機能がないアイテムもあるし、機能が生きてても強力で厄介な能力があるアイテムもあるから……」

 

なるほど、そりゃあぶねーわ。

 

「でもこれ、ワタルと俺にしか多分使えないだろ。クリスも抜いてみるか?」

「もう抜いたよ。でも何も起こらなかったから、ただの武器だと思ってたんだよ」

「じゃあ問題なくね?」

 

やっぱり他の人に使われないわけだし。

 

「問題は、それをエリス様や天界が認識している神器じゃないことなんだよ。どんな効果があるか分かったもんじゃない……」

「いや、それこそワタルに聞きゃいいじゃん。これ持ってた本人がいるんだし」

 

とワタルを見る。

 

『ええと……王者の剣自体は、龍神丸を召喚できる勇者の剣を仙人に強化してもらったもので、炎と氷の力があります』

「なにそれすごい」

 

確かに神器だわ!

これで俺も魔法剣士になれる!?

あ、駄目だ……剣抜いたらワタルになるわけだし。

 

『なによりこれがあれば多分、龍神丸が呼べるかもしれません』

「マジか! 見たい!」

 

そうだよ、ロボだよ!

ロボに乗る勇者だったよ、ワタルは!

 

「ええと……カズマ君? あたし、そのワタル?くんの話、聞こえないんだけど……」

「あ、そうか……ええとな」

 

ワタルに聞いた話をクリスに伝えた途端――

 

「カズマ君! やばいよ、それ! 絶対にヤバい奴だよ! むしろ封印しなきゃダメなやつじゃんか! 剣渡して!」

「駄目に決まってんだろ! エリス様からワタルへと渡されたやつなんだから、大丈夫ってことだろうが!」

「そんなの知らなかったからで、むしろ私が封印しなきゃいけないモノじゃないですか! 取り消しますから返してください!」

「エリス様じゃないお前が取り消してどうする! 信仰はどうした!」

「い・い・か・ら、私に――」

 

クリスが剣を取り戻そうと手を伸ばしてくる、と――

 

「カズマ! うるさすぎるんですけどーっ!」

 

うちのトラブルメーカーのアクアさん、ご入場です。

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