このすばワタル   作:遊佐

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「「 それが神器!? 」」

 

次の日の朝、合流したダクネスとめぐみんがテーブルに置かれた抜き身の王者の剣を見て、そう口を揃えた。

ちなみに俺の横にはアクアと、手で顔を覆ったクリスがいる。

 

「エリス様から渡された神器……その話もすごいが、昨日からカズマが言ってた妄想が本当だと?」

「おい、ダクネス。お前エリス教徒なのに主神の神託を疑うのか?」

「エリス様の神託を疑うのではない。お前の話だから疑うんだ」

「よしわかった。今からスティールで剥いてやろう」

「望むところだ、やってみろ。その前にお前の手をつぶしてやる」

 

俺とダクネスがにらみ合う。

 

『け、喧嘩はやめたほうが……』

 

ちっ……ワタルがいたんじゃ、下着剥きはできんか。

女にスティールすると絶対に下着を盗んでしまうから、禁じ手になっちまった。

俺が不貞腐れて座り直すと、目の前のダクネスはふふん、と鼻を鳴らした。

ちくしょう……今度、健全な方法で泣かせちゃる!

 

「違うんです。知らなかったんです。まさかそんな効果があるとは思わないじゃないですか。だって天界すらただの武器と判断した剣なんです。そんな重要なアイテムだなんて思いもしなかったんです」

 

俺の横に座っているクリスが、手で顔を覆ったままなにやらぶつぶつ呟いている。

延々とぶつぶつ言ってるが、何を言ってるのか小声すぎてわからん。

 

「うーん……そんなすごい武器には見えないんですが。確かに装飾は、なにやら紅魔族の琴線にビンビンに触れるんですが」

 

めぐみんは、紅い目を輝かせながら王者の剣を見ているようだ。

 

「あたしが見てもただの剣にしか見えないのよねー? なんであの上げ底エリスが、こんなものをカズマに届けさせたんだか」

 

アクアがしげしげと王者の剣を手に取りながら訝しむ。

ちなみに鞘から抜いたのもアクアだ。

 

「まあともかく、だ。その証明をするから、ちょっと外に行こうぜ」

「ここでやらんのか?」

 

俺の言葉にダクネスが眉をひそめた。

 

「ああ。ここじゃいろいろと面倒なことになる上に、ちょっと面白いことが起こりそうだからな」

 

なにしろ、ロボの召喚が見れるかもしれんのだから!

 

 

 

*** このすばワタルっ! ***☆彡

 

 

 

といわけで、やってきました雪原へ。

これだけアクセルから離れれば大丈夫だろう。

 

「ううう……寒いわ。冬なのになんで外に出ようというのかしら、このヒキニートは」

「その寒い雪の中を、雪精討伐の賞金目当てに無理やり連れだしていた、昨日のお前は何だというんだ?」

 

アクアのアホな発言にツッコミしつつ、俺は腰に下げた王者の剣の鞘を握る。

 

「よし、ワタル。準備はいいか?」

『あ、はい。いつでも』

 

俺はワタルの了承を得て、王者の剣を引き抜いた。

 

「「「 まぶしっ! 」」」

 

閃光と共に俺は幽霊のように浮いていたワタルと入れ替わり、目の前には剣を抜いたワタルがいる。

 

「ええっと……初めまして? 戦部ワタルといいます」

「「「 ええええええっ! 」」」

 

アクア、めぐみん、ダクネスは驚き、クリスは昨日から何度ついたかわからないため息を吐いた。

 

「か、カズマがこんなかわいい少年になった! あのカズマが!」

「こめっこよりは年長みたいですが、私よりもずっと下みたいですね。まさか本当に入れ替わるとは」

「さ、流石はエリス様の神器! カズマのクズさが欠片も感じられない!」

『おいこらおまえら。いい加減泣かすぞ』

 

めぐみんはいいとして、アクアとダクネスは覚えてろよ。

 

「あの……一応、ここにカズマさんがいますんで。ちゃんと声も聞こえてますから」

 

ワタルが不憫に思ったのか一応、という感じで説明している。

 

「カズマじゃないのね……カズマならそんな素直なこと言うはずないもの」

「確かに……カズマのゲスっぷりが全く感じられません。清く正しい少年ですね」

「ああ。あいつのクズさは筋金入りだからな。騙されるのかと思っていたが、まさか本当だとは」

『よしおまえら、絶対に泣かす。死んでも泣かす。おい、ワタル、ちょっと入れ替われ』

「か、カズマさん? 落ち着いて……」

 

くっそう。マジで許さんからな。

 

「ああもう……本当にどうしたもんだか」

 

クリスはワタルの姿に、顔を歪ませている。

昨日からホントにどうしたんだ?

 

「へー……ねえ、ワタル君。ちょっとアクアおねーさんって呼んでみて?」

「え? あ、はいアクアおねーさん。よろしくお願いします」

「うんうん。礼儀正しいいい子ねぇ。カズマに爪の垢でも飲ませてやりましょう」

『お前はカエルの腹の中で消化されても二度と助けんわ!』

「あ、私もお願いします。めぐみんおねーちゃんで」

「ええと、私も……ダク、ダクぅ……ぇちゃんとか」

 

こいつら……

 

「ええっと……」

『おい、ワタル。そいつらはほっとけ。それよりロボだロボ。ちゃんと呼べるのか?』

「あ、はい……どうでしょう? やってみますね。すいません、ちょっと龍神丸を呼ぶので離れてください」

「「「 龍神丸? 」」」

 

アクアたちが首傾げるのをそのままに、ワタルが少し離れたところに移動する。

――いよいよか! オラ、ワクワクしてきたぞ!

 

「すぅ……よぉし! いきます!」

 

王者の剣を構えたワタルが、真剣な顔で叫んだ!

 

「りゅぅじんまるぅぅぅぅぅっ!」

 

ワタルの持つ王者の剣から光が点に放たれ――

 

 

【 オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ! 】

 

「りゅ、りゅうじんまるぅぅっ!」

【ワタル!】

 

ゴーレムみたいな四頭身のロボを呼び出したワタルが、泣きながらそのロボ――龍神丸に縋り付いた。

そしてその龍神丸もワタルを腕に抱くように抱擁している。

てかそのロボ、話せる上に自立で動くんだな、すげえ!

 

「会いたかった! 会いたかったよ、龍神丸!」

【すまなかった、ワタルよ。お前を一人にしてしまった】

「いいんだ! 会えたんだもん! ちゃんと会えたんだから!」

【ああ。私たちは一緒だ。私はいつでもお前の傍にいるぞ】

「うわああああああああんっ!」

 

ワタルが号泣している。

……そらそうだよな、まだ九歳だ。

勇者だ何だと言われても、わけもわからない土地で一人で気を張っていたのだろう。

龍神丸という気を許せる相手に、年相応な口調で話すワタル。

その姿を見るだけで、今まで無理していたんだというのがわかる。

 

「「「「 ううっ……グスッ…… 」」」」

 

見れば事情もよくわからないであろうアクアたち、そしてクリスまで涙ぐんでいる。

そうだよな……こんなのみたらそうなるよな。

だから俺が目から汗が出ても、しょうがないことなんだよ、うん。

 

「ヒック……ヒック……龍神丸、僕は、いったいどうしちゃったの?」

【ワタル。お前は世界を渡る時、守護龍から落ちたのは覚えているか?】

「ズズッ……うん。守護龍に何か黒い霧みたいのがまとわりついたのが見えたけど」

【どうやらドアクダーの残留思念が残っていたようだ。そのせいでワタルは、次元の狭間に落ちたらしい】

「次元の、狭間……?」

 

龍神丸の説明によると、ワタルが落ちた次元の狭間はその衝撃で穴が開いていたそうだ。

すぐに助けに行こうとした守護龍は、残留思念の呪いで助けに行けず、ならばと助けに行こうとした仲間たちが準備している間にどんどん穴が塞がれていったらしい。

慌てた守護龍は穴を維持したが、塞がる力が強く、時間を少し稼ぐのが精いっぱいだったらしい。

そのため急遽、聖龍妃という偉い人が神部七龍神の力を借りて王者の剣を復元し、閉まりかけた穴に放り込んだそうだ。

 

【救世主としての力と勇気があれば、ワタルは必ず戻れるはずだと、皆が信じている。そして私がいる限り、どこであろうとワタルを一人にはさせん】

「龍神丸……みんな……ありがとう。うん……僕、頑張るよ! 必ず創界山に戻ってみんなを安心させる! そして現世界に戻るんだ!」

【その意気だ、ワタルよ!】

 

ええ話やーうんうん。

 

【さて……であれば、ワタルよ。こちらの世界で世話になっている人たちにも改めて挨拶させてほしい】

「あ……うん。そうだね! みなさん! こちらが僕の大親友で僕の相棒、龍神丸です!」

【ワタルが世話になった。今後ともよろしく頼む!】

 

龍神丸がペコっと、頭を下げる。

うん、礼儀正しいね。

 

「………………」

 

おや?

 

ふと、アクアたちの方を見ると、何やら四人でぼそぼそと話し合っている。

なんぞや?

 

「決まりね」

「「「 うん 」」」

 

そういって四人は、ワタルに話しかけた。

 

「「「「 もうずっとワタル君のままでいるようにしてね 」」」」

 

ブチッ!

よろしい。ならば戦争だ。

 

『……へえ。なあ、ワタル。俺も龍神丸に挨拶したいんだけど、一旦代わってくれるか?』

「あ、はい。そうですよね。今、代わります」

「「「「 ちょっ!? 」」」」

 

ワタルは、素直に王者の剣を鞘にしまう。

代わってもらった俺は、龍神丸を仰ぎ見た。

 

「初めまして。ワタルと体を共有している佐藤和真だ。カズマでいいよ。俺もみんなも、ワタルが元の世界に戻れるように協力するから安心してくれ」

【ああ、よろしく頼む、カズマ】

「こちらこそよろしくな! さて、龍神丸はちょっとそこで待っていてくれ」

【うん?】

 

俺は、にたりと笑顔を向けて振り返る。

ちなみに手には『クリエイト・アース』で作った砂がある。

 

「「「「 ヒッ…… 」」」」

 

どうしたのかな、みんな。

そんなに青い顔をして。

 

「ちょぉっと、パーティメンバーとその他一名にOHANASHIしなきゃな……」

 

アクアたちは逃げだした!

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