TS衛生兵さんの成り上がり   作:まさきたま(サンキューカッス)

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33話

 それは、遠い記憶の彼方にあった下らない景色です。

 

 そこには、一人の平凡な男が喜色満面にガッツポーズして立ち上がっており。

 

 周囲にはそれなりの数の観客と、大きなスクリーンに映されたゲーム画面がありました。

 

 

 その中心に居るのは、かつての自分です。

 

 そう、これは最初の有名FPSゲーム世界大会の決勝の舞台。

 

 それは選ばれた数十の精鋭チームが覇を競い、互いを撃ちあい、そして散っていった本ゲームの伝説の一夜でした。

 

 

 ────最後のアレはないぜ、せめて撃ちあってくれよ!

 

 ────いや、俺も撃ちあいたかったです。ただ、そんなことしなくても勝てたんで。

 

 ────誰だよコイツを神って言った奴は! 逃げてるだけじゃねぇか!

 

 ────つまり、お前らはチャンピオンと撃ち合いが出来るレベルに達していなかったって事だ。

 

 

 

 

 

 たかがゲームの大会とは言え、世界大会であるその会場はそれなりの規模でした。

 

 それなりの大きさのイベント施設が借り切られ、中にはスポンサーの垂れ幕がそこら中に掲げられています。

 

 参加プレイヤー全員に席とモニターが用意され、司会の後ろの大型モニターには神視点でゲーム映像が流れていました。

 

「最後の、●●チームが裏を取ったのが決め手でしたね! 見事な戦略勝ちでした!」

「運が良かったってだけじゃ、ないでしょうね。ちゃんと敵チームの索敵方法を事前に把握していないと、選択できない移動ルートでした」

「追い詰められた●●が一転、奇跡のムーヴで大逆転! これだからこのゲームは面白い!」

 

 その大会で、オンラインで知り合っただけの初対面に近い仲間と共に。

 

「それでは皆様、新たなるチャンピオンに祝福を!」

 

 自分は、くだらない『世界最強』の名を手に入れたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、周囲は安全です。行きますよゴムージ」

「あ、ああ」

 

 自分達は敵の部隊が様子を見に来る前に、いち早く焼け焦げた家屋から脱出しました。

 

 台所側の窓を越えた先にあったのは、そこら中に血痕が飛び散った小汚い路地でした。

 

 見た感じ、敵が居そうな気配はありません。

 

「……」

 

 自分は先に路地に降り立って、周囲を探った後、ハンドジェスチャーでゴムージに追従するように指示しました。

 

 小隊の指揮と言うのは、部下の命を預かることと同義です。

 

 ゴムージが新米の2等兵である以上、歩兵として普通程度の働きを期待するのは厳しいでしょう。

 

 偵察やクリアリングなどは、未経験ながら自分が行った方が良いと思われます。

 

 どちらも同じ素人歩兵なら、先輩である自分の役割です。

 

「お、おいそんなズンズン進んでいいのかよ? そもそも、本当にこの道で大丈夫なんだな……?」

「……さあ」

「おい!?」

 

 そんな事を言われても、土地勘もマップもない市街で迷わず進めるわけ無いでしょう。

 

 しかしモタモタしても敵に見付かるだけなので、足早に移動するしかないんです。

 

 今の我々に出来ることは、進んだ先が袋小路でないことを祈るのみ。

 

「せめてもっと慎重に、敵が先にいないか確かめてから────」

「……シッ! 止まってください、敵です。息を潜めて、数分待機」

「……っ!」

 

 ゴムージが不満げに自分の肩を掴んだ直後、前方に敵の気配を察知しました。

 

 そのまま物陰に隠れて数分、息を潜めます。

 

「……」

「……」

 

 すると、自分達が通ろうとしていた狭い十字路を、目を血走らせたサバト兵が横切りました。

 

 気付かず直進していたら、間違いなく見つかってましたね。

 

「……もう大丈夫でしょう。進みますよ、ゴムージ」

「お、おお。ちゃんと警戒してたんだな、お前」

「ええ、こう見えて偵察兵としての訓練も積んでいますので」

 

 銃の扱い方は教えてもらえませんでしたが、それ以外の偵察技術は時折アレンさんに指導されていました。

 

 言わずもがな、いつもの小隊長殿の無茶振りです。

 

 アレンさんは丁寧に、様々なことを教えてくれました。

 

 視界に映った違和感を絶対に見逃さない事、手榴弾の射出音や軍靴特有の移動音を聞き逃さない事。

 

 そして異常を察知したら反射的に行動できるよう、常日頃から非常時を想定しておく事。

 

「いくら衛生兵といっても、ちゃんと前線兵か。頼りにしてるぜ、先輩!」

「……どうも」

 

 この世界はゲームではありません。現実だからこそ、五感を研ぎ澄ませばゲームより情報量は遥かに多いです。

 

 風から漂ってくる硝煙の香りや、周囲の怒声の遠近、死んだ兵士の鮮度など、ゲームにはとても表現できないヒントが数多く存在します。

 

 それらを最大限利用しつつ、自分自身の直感も頼りに撤退していく。それがきっと、この場を逃げ延びる上で最上でしょう。

 

 

 

 

 幸いにも、その後しばらく、周囲に敵部隊の気配はありませんでした。

 

 ゆっくり道なりに進んでいくと、裏路地はそのまま大通りに繋がっていました。

 

「……うーわ、もう大通りは押さえられてるな」

「ここで撃ち合ってくれていたら、楽だったのですが」

 

 オースティン兵は、もう大通りから撤退していたようでした。

 

 マシュデールの街並みは崩壊し、死体や血肉が転がる大通りを、凄まじい数の敵部隊が闊歩しています。

 

「……」

「おい、ここを突破するのは無理だろ。引き返そうぜ」

 

 ゴムージは、すぐさま迂回を提案しました。

 

 確かに彼の言う通り、このまま大通りを突っ切っても射殺されるのがオチでしょう。

 

 大通りを避け、もっと細く敵兵の少ない道を使って前進した方が良いと思われます。

 

「どうした、先輩。何を立ち止まっている、ここを突破するとか言わねえだろうな」

「……いえ」

 

 しかし、ここを引き返して迂回するとなると更に路地を奥深く進むことになります。

 

 当然、敵の哨戒部隊にバッタリ出くわす危険も高まってしまうでしょう。

 

 ────と言うか何となくですが、このまま迂回しても『敵に見つかるだけ』の様な気がします。

 

「……」

「どうした、早く戻るぞ」

 

 では、どうするべきか。

 

 武器や弾薬の尽きた状況で生き残るため、自分は今までどんな事をしてきたでしょうか。

 

 

 対人戦において重要なのは、自キャラの性能を最大限に引き出すことだけではありません。

 

 長い時間をかけ訓練所に籠り、最強のエイム力と防御技術を身につけた(プレイヤー)であっても、ある視点が欠けていれば全く怖くないのです。

 

 それはFPS初心者が上級者になるための最初の壁であり、何千年も前からずっと「戦争」における定石でもあります。

 

 

 敵を知り己を知れば、百戦危うからず。

 

 

 対人戦で勝つには、敵のやりたいことを察さねばなりません。

 

 敵の目線に立って、敵の動きを潰す。あるいはそれを狙って、自分の動きで敵を誘導してやる。

 

 

 ある程度の上級者同士になると、ゲーム内でこの読み合いが何度も発生します。

 

 敵が裏取りを狙っているのが分かったなら、逆に待ち構えて殺せば良いでしょう。

 

 敵が高いポジション目指して移動していたなら、投げモノを使って奇襲してあげます。

 

 あのゲームでは自分のエイム能力を高めるより、敵の動きを予測できるようになった方が百倍強くなりました。

 

 

 それは、きっと実際の戦争でも同じこと。相手が人間である以上、相手の立場に立って物事を考れば自ずと道は見えてきます。

 

 

 では、この市街戦において『敵のもっともやりたいこと』は何でしょうか。

 

 見敵必殺、我々を何としてでも殺したいのでしょうか? それとも物資略奪、家屋に残された財産や物資を思うがまま奪いたいのでしょうか?

 

 ────否。

 

 もし自分が敵の立場ならば、間違いなくこう考えるでしょう。

 

 

 勝ち戦で死にたくない、と。

 

 

 

 

 

「ゴムージ、引き返す前に大通りの反対側を目掛けて、山なりに石を投げてください。手榴弾と誤解させられれば十分です」

「はぁ?」

「あの店付近に敵を集められれば、自分たちが進む路地を哨戒してる敵を追い払える可能性が高いです」

 

 おそらく、敵は自分の命を最優先に考えます。

 

 少しでも脅威を感じたら、即座に集まって警戒体制をとります。

 

 そして、堅実に周囲の異常を調べる事でしょう。

 

「おい、それで俺達の居場所がバレちまったら!」

「はい、なのでなるべく山なりに投擲してください」

「大体の方向はバレるだろ!」

「さっきの家の隣家に、木製のゴミ出し箱が有ったでしょう。そこに入れば隠れられます」

 

 恐らく、今この辺りを哨戒している敵は突撃兵ではありません。

 

 今先行してレンヴェル少佐たちに追いすがっているのが突撃部隊で、そして後方で地形の確保を行っている彼らは本来防御部隊に所属する兵と思われます。

 

 そして、突撃兵と防御部隊の最大の違いは「死を恐れるかどうか」。

 

 防衛部隊は生き残ってナンボです、敵の砲撃をかいくぐって、突撃してくる敵兵を迎撃するのが仕事なのです。

 

 だからこそ彼らは、きっと余計なリスクを背負わない。

 

 敵の気配を察知した瞬間、真っ直ぐ飛び込んできたりはしない……筈です。

 

「この付近に敵が隠れていると気づけば、きっと敵は哨戒部隊を広場に呼び戻すでしょう。その一瞬の空白を逃さず、路地を迂回しながら全力疾走します」

「いや、そんな無茶苦茶な」

「ゴムージがやらないなら仕方ありません。自分は肩が弱いので山なりにならず、おそらく投げた方向もバレバレになると思いますが────」

「おいやめろ、そんなプルプルした腕で何するつもりだ。分かった、やめろ、俺が投げるから!」

 

 その辺に落ちていた拳大の割れレンガを拾ってみたら、思った以上に重たくてビックリしました。

 

 ダメですね、これ投げたら肩を壊しそうです。

 

「投げモノは、もっと軽いのにしましょう。あ、空の薬莢とかどうです? これなら……」

「おう、そうだな、そうするか……。俺、とんでもねぇガキに付いてきちまったか?」

 

 彼はブツクサ言いながらも、思い切り薬莢を大通り目掛けて投げ付けてくれました。

 

 ゴムージは結構肩が強く、かなり山なりの良い軌道で薬莢が放り投げられます。

 

「それ、走りますよ」

 

 それが地面に落ちる前に、自分達は引き返して大きな木箱のゴミ入れに飛び込みました。

 

 ちゃんと、人間二人分くらいは入るスペースがありそうです。

 

 ただ、底に生ごみがこびり付いていましたので、ゴムージに先に入らせました。

 

「変なところ触らないでくださいね」

「てめぇなんかに欲情するか鼻垂れ!」

 

 かなり大きめの木箱でしたが、二人で入るとそれなりに狭かったです。

 

 床に仰向けに寝たゴムージに抱きかかえられるように、自分たちは二人で木箱に収納されました。

 

「■■■■!!」

 

 ゴムージと身を寄せあって息を潜めていると、激しい怒声が街中に響きました。

 

 やがて街の大通りの方向が騒がしくなり、ザワザワとした話し声が聞こえ始めます。

 

「どうやら、敵は薬莢に気付いたみたいですね」

「だな」

 

 さて、ここからが重要です。

 

 敵が哨戒部隊を呼び戻したタイミングを見計らって、全力で走らねばなりません。

 

 その空白の瞬間に、敵の警戒網を突破せねば自分たちの命は無いのです。

 

 分が悪い賭けですが、何となく『この方法以外に』自分が逃げれる可能性がない気がします。

 

 敵が読み通り、哨戒部隊を呼び戻してくれればよいのですが……。

 

「おっ。敵さん、反対側の路地に俺たちが潜んでると思ってるみたいだぜ」

「ほう? そう言えば貴方、敵の言葉が分かるんでしたっけ」

「まぁな、元々オヤジがあっちの生まれなんだ」

 

 ゴムージが言うには、敵は何故か自分達の位置を誤認している様でした。

 

 一体、どういうことでしょうか。

 

「薬莢の跳ねた方向が、こっちに向いたっぽいな。反対の路地を走ってたオースティン兵が、うっかり薬莢を溢したと思われてる」

「それは僥倖ですね」

「そしてお前さんの読み通り、奴さん哨戒してる部隊を集め始めた。こいつは良いぞ」

 

 敵はやはり、堅実に行動してくれる様です。

 

 潜んでいるオースティン部隊の規模が分からないので、徒党を組もうという判断ですね。

 

 やがて数分後、何回かザワザワと木箱の前を数名の敵兵が通っていく気配がしました。

 

 かなりの数の哨戒部隊が、裏路地に潜んでいたようです。

 

 適当に進んでいたら、間違いなく捕まっていましたね。

 

「■■■ーっ!!」

「■■!」

 

 敵は大通りで何やら声高に号令を受け、複数部隊を編成され反対側の路地へと駆けていきました。

 

 一方で、自分たちが潜んでいる木箱のある細い路地に戻ってくる兵士はいません。

 

「今なら安全と思われます」

「よし、とっとと逃げるぞ」

 

 本当は、集まって部隊を編成しているこの隙を突くつもりでしたが。神様は想像以上に、自分たちをひいきしてくれた様です。

 

 サバト兵が反対側を重点的に哨戒してくれるとすれば、かなり安全に移動できるでしょう。

 

 

 

 

 

 

「この分かれ道はどっちに行く?」

「……左方向へ進みましょう。新鮮な死体の転がっていない道の方が安全なはず」

「違いねぇ」

 

 そして自分達は、人気の無い寂れた小道をひたすら突き進んできました。

 

 やはり、そこかしこに死体や血痕があり、時折便臭や血の臭いが鼻を付きます。

 

「うっ……、ひでぇ事しやがるな」

「前々から思っていたのですが、ゴムージ、もしかしてお前は西部戦線上がりじゃないのですか?」

 

 少し気になったので、自分はゴムージにそう問いました。

 

 上官への態度といい、死体に対する反応といい、彼はまるで一般市民のような面が多々見受けられました。

 

 とすると、西部戦線すら経験していない兵士なのかもしれません。

 

「ああ、マシュデールで門番の仕事をしてたらいきなり徴兵されたんだよ。有り得ねぇぜ」

「やはり」

 

 ゴムージはどうやら、マシュデールの衛兵だった様です。

 

 自分は衛生兵なので死体にある程度耐性があるのですが、ゴムージは結構顔色を悪くしていました。

 

 西部戦線を経験していない人間からすれば、きっとそこら中に転がっている血肉は地獄絵図に見えるのでしょう。

 

 

 自分も普段ならきっと、心を痛めていたと思います。

 

 しかしこの時の自分は、きっと何処かおかしくなっていたのでしょう。

 

「……ふむ、この付近の死体の血が固まってますね。死斑もある……」

 

 この時の自分には、戦友達の遺体が『情報オブジェクト』にしか見えていませんでした。

 

 まだ血を流し続けている遺体は、きっと殺されて間もない人です。

 

 つまり、そんな死体が転がっている先には敵部隊が待ち受けている可能性が高いと推測されます。

 

 だから自分の脳は、この時死体を『どれくらい前に敵部隊がここを通過したか』という情報源として処理していたのです。

 

「……とっ! マズいです、敵がこの路地にまっすぐ走ってきます」

「お、おいどうすんだ。ここらに隠れる場所は無かったぞ」

「死んだふりをしときましょう。ほら、落ちている肉を背中に張り付けてあげます」

「お、おお、分かった」

 

 そして、数多くの死体が転がっているという事は、自分たちにとっても良い隠れ蓑になります。

 

 隠れ場所がない咄嗟の事態に、死んだふりがそれなりに有効に作用するのです。

 

 とはいえ、普通の哨戒部隊ならば死体をしっかり見聞するでしょう。調べられて息があると分かった瞬間、射殺されても不思議ではありません。

 

 ただし、

 

「■■■!!」

「■ー!!」

 

 走って移動している部隊は、何かしら急ぎの用事で移動中だと思われます。

 

 オースティン兵を追っているか、あるいは召集があったか、いずれにせよ道端の死体にかまける余裕は無いはずです。

 

 だからきっと無視して貰える。この時の自分は、そんな判断を下しました。

 

 

「……■■■、■■■?」

 

 

 ゴムージの背に血肉を塗った後。

 

 自分は新鮮な死体さんの血を腹周囲に擦りつけ、さっき腹を撃たれた直後の体勢で倒れ込んでいました。

 

 実際に自分が撃たれた時の姿勢なので、リアリティはある筈です。

 

 ある筈、なのですが、

 

 

「■■■■」

「■■■?」

 

 

 この時の自分の想定は、流石に甘かったようで。

 

 敵の兵士────二人組の銃を持ったサバト兵は、死体の振りをした自分とゴムージの前で、立ち止まりました。

 

 

「……」

 

 

 心臓の音が高鳴ります。

 

 見た目は死体として、不自然じゃない程度に装飾したつもりなんですが、何か違和感でもあったのでしょうか。

 

 と、ここで自分はある致命的なミスに気づきました。自分たちは、市民に身をやつしているのです。

 

「■■」

 

 そもそもこの場に、市民が死んでいるのがおかしいのです。

 

 今まで、このマシュデール市街で一人でも民間人を見かけたでしょうか?

 

 否、マシュデール市民の大半はもう、とっくに脱出して首都へ避難しているのです。

 

 この地に残っているのは、オースティン兵士のみ。民間人なんて居ません。

 

 だというのに、市民の装いをした死体が転がっていたら、不審に思うに決まっています。

 

「■■■」

 

 兵士の一人が、自分に銃を突きつけました。そりゃそうです、自分だって哨戒中に民間人の服を着た死体があれば警戒します。

 

 撃たれる、殺される、怖い、怖いです。

 

「……」

 

 そのままゆっくりと、二人の敵兵は歩いて近づいてきました。

 

 どうしましょう、ここはなりふり構わず立ち上がって、全力で逃げ出すべきでしょうか。

 

 いえ、しかし、そんな事をしても生き残れるとは思えません。

 

「…………っ」

 

 ここは死んだふりを通す、それ以外に生き残れる道が思いつきません。

 

 ですのでお願いです、撃たないでください。

 

「■、■■■」

 

 生唾を飲み込んで、自分は何とか平静を保ち続けました。

 

 そんな自分を弄ぶように、敵の兵士は小銃を自分に押し当てて、

 

 

「■、■■~♪」

 

 

 自分のワンピースのスカートをめくりあげ、自分の陰部を見て大喜びし始めました。

 

 ……。

 

 

「■■■っ!!」

 

 

 直後、そんな舐めた事をした敵兵は、相方のサバト兵に顔面をブン殴られました。

 

 民間人少女の死体を辱めるって、相当なクズ行為だと思います。

 

 それで相方の兵士は怒ったのでしょう。自分は下着を付けていなかったので、凌辱された後に撃たれた感じに見えなくもないですし。

 

「■■■、■■■」

「……■■!」

 

 ぶん殴られた後もヘラヘラ笑いをやめなかったクズ兵士は、そのまま逃げるように走り出しました。

 

 もう一人の兵士は、そんな彼を追いかけてぶりぶり怒りながら立ち去りました。

 

「……」

「……もう、良いですよゴムージ。立ち去りました」

「お、そうか」

 

 あの兵士、ワンピース女性の死体(じぶん)を見つけたからふざけて捲りあげたのですね。

 

 そんなくだらない事で、いちいち立ち止まらないで欲しいものです。緊張して損をしました。

 

 こんなアホなことで尻に敷いてた手銃がバレていたら、末代まで祟ってやるところです。

 

「にしても先輩、今日はよく見られる(・・・・)日だな」

「……」

「痛ぇ!」

 

 上官に舐めた口を利いたので、自分は一発ゴムージの腹をぶん殴りました。

 

 今のが小隊長殿なら、きっと満身創痍にまで追い込んでいるのでしょう。

 

 これは指導です。決して、腹いせではありません。


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