鏡面のシャングリラ~クソゲーストリーマー、神ゲーに挑まんとす~ 作:岩木伊吹
一人暮らし用の、一室。一人の男が画面を眺めながら安酒を煽っていた。
「はぁ?こいついきなり何やらかしてんだ本当に……」
画面の中に写し出されるのは猫面の少女と巨大な漆黒の狼。彼にとってはどちらも馴染みのある存在である……彼女らにとってどうかはわからないが。
「サイガー0まで出てくるとか、こりゃクソガキ……元リーダーも口挟んで行きそうだな。まぁ鉛筆の野郎が適当に抑えるか、場合によっちゃそのまま爆発させるかもな」
「『弱小myutuberとその囲い程度潰してしまえ』くらい言っちまいそうな感じはあるが……クク、あの『
「こりゃ俺も本腰入れて情報集めるしかねぇか。とっとと追い付いて来いよ、
飲み干したカップ酒が片手でぐしゃりと潰される。歓喜に満ちた彼の目の中からは、獣のような狂気が溢れだそうとしていた。
夜が、満ちていく
「キツくないこれぇ!?」
黒い狼……リュカオーンのかぎ爪を再び弾きながら悲鳴を上げる。サイガー0と名乗る不審騎士が合流して多少ヘイト分散はしたものの、火力も耐久もリソースも足りていない。もう1人いればパーティー申請を確認する時間もあっただろうが、そもそもこれが初めての集団戦闘で勝手がわからない状態で今動かしているカメラに加えて新システムの理解に気を向ける余裕は無い。というかカメラの余裕も無くなってきたのでカメラは今自動にした。
右、左、なぎ払って左、リュカオーンの攻撃は苛烈さを増し、私は変わらず防戦を強いられる。正直なところ犬としての動きを越えていないからまだ対応できているが、あの騎士が来てからリュカオーンも「もう面倒だから遊ぶのやめようかな……」みたいな空気感になってきている。もっと余裕かましてくれないか?その間にぶっ倒すからさぁ!
「サイガー0さぁん!!」
「はいっ!?なんでしょうか!」
「こいつの攻略の手段なんか知ってる?」
「それがわかってたら姉もあれほどまで拗れていないと思います……っ!」
姉が誰かはわからないが多分私よりも進んでいるであろう彼……彼女?が言うなら私が知る余地もない。素直に突撃を再開しようかと思いリュカオーンに脚を向け一飛びした瞬間、夜に包まれたその目が薄笑いを浮かべ、遠吠えが周囲に響き、動けなくなった私は食われて叩きつけられたあと、お手をされて死んだ。
は?
『「リュカオーンの
「いや悪いことしちゃったなぁ……」
『しゃーない』『サイガー0配信付けてなくて草』『お互い配信者ってことで』『あっけなさ過ぎて草』『初見殺し』『リュカオーンの配信を観に来たらもう終わってて草』『草』『草』『しゃーなし』『咆哮を映像に残したの初じゃない?』『あんな行動するんだ』『わんこかわいかった』
リスポーンして目覚めたのはセカンディルの宿屋。胴の防具が消えていることとか気になることはいくつかあるが、一先ずサイガー0さんに謝罪の
「……またシステムを理解したころに一緒に遊ばせてください、っと。こんなところかな」
フクロウが飛んでいくのを確認したあと、改めて今の状況を確かめる。
アバターとして存在している私は上半身が以前の蛮族スタイルで、謎の刻印が胴から顔にかけて大きく刻まれている。多分これがリスポーン前に聞いたアナウンスにあった呪いとやらだろう。
防具欄を開き、説明を読む。
・リュカオーンの
夜襲のリュカオーンは強敵をこそ好む。そこに善悪賢愚は考慮されず、ただ己の存在を示した者にリュカオーンは自身の呪いを刻みつける。
それは己の獲物であるという徴であり、傷跡の呪いより発せられる黒狼の気配は半端な存在に大いなる力の残滓を示す。
呪いは、黒狼を超える力にて解呪するか、黒狼を打倒する他に解く術なし。
「リュカオーンの呪いが付与された部位は装備品を装備することができません。」
「リュカオーンの呪いを持つキャラ以下のレベルのモンスターはキャラから逃亡します。」
「リュカオーンの呪いを持つキャラは他の呪いに対して強い抵抗を得ます。」
「リュカオーンの呪いを持つキャラはNPCとの会話で補正がかかります。」
「センサーが反応してるんだけど本当に神ゲーかなこれ……?」
クソゲーをやっているとき特有のワクワクを感じてしまったこの神ゲーが本当に全ての面で神ゲーであるか、という点に少しだけ疑問に思いながらも、明日も学校なので配信をしめて一旦寝ることにした。
狼さんが沼広野に出るかもしれないからこれから向かうと聞いていた鎧さん「姉さんたちが来るまで保ちそうにないんでもう少し待ってくれませんか?」
既に遊びに飽きている狼さん「ダメです(わおーん)」
というわけでリュカ刻印です。彼は胴と足でしたが、彼女は頭と胴です。顔隠せないねぇ……
次回は学校です。投稿は他の進捗次第。9/1にはいつも通り出します。
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