鏡面のシャングリラ~クソゲーストリーマー、神ゲーに挑まんとす~ 作:岩木伊吹
ピチョン。
投げ込んだウキが川面に飛び込み、浮き上がる。
無言の時間が過ぎ、水の流れる音が響く。
「配信始まった?」
「うん、始まったねぇ……」
引きが弱い。多分水の流れと葉っぱだな。
「すごいリラックスしてるところ悪いけどこれ尋問配信なんだよサンラク」
「いやまぁそれは知ってるんだけど私あれ悪くなくない?」
「うん、そこの説明からしないとリスナー何もわからないでしょ」
「そうかな……そうかも……」
お、かかった。やっぱりマルチだと微妙にヒット判定が広いんだねこのゲーム。基本ソロでのんびりやるだけだからわからなかった。
「それじゃあ最初から話そうか?私としてもそこははっきりさせておいた方が良さそうだしね」
そう、まずは昨日の配信の最初から話さないといけない……
サードレマからほど近い
「よっこいせぇ!」
その辺を歩いていたヴォーパルバニーの首を刈り取る。さっそく
「……ってん?なんかいたね今」
ふと視界の端に入ったのはヴォーパルバニーの耳。千紫万紅の樹海窟から離れるようにぴょこぴょこ揺れるそれは、見え隠れしながら移動している。
「様子を見ようか。まずは尾行します。巣があるならそこを突いた方が早いので」
木々の隙間、好き好んで通りたいとは思えない細い獣道を進むように追いかけると、視線の先で目が合った。顔を上げて、明らかに私だけを見てひょいひょいと手招きをして、そいつは走りだした。
「あっちょっと待て!!」
獣道を走り込み、木々のスキマを抜けて、倒木を飛び越えて追いかける。……時間制限付きの脱出ゲームやってたときこんな感じだったな。
新緑の暗がりを抜けて広間のような森のギャップが前方に見える。「そこで止まってくださいね……ってうわ!?」
広間に踏み入れようとした瞬間に前方のヴォーパルバニーは手を体の前に翳し、扉をくぐっていった。扉は兎と私の間を仕切り、静かに鎮座している。どうしようか一瞬迷った私の目の前に突如としてウィンドウが開かれる。
『ユニークシナリオ「兎の国からの招待」を開始しますか?』
「うっそでしょ!?」
大声を上げたあとに口を手で押さえ、辺りをさりげなく見回す。
ユニークシナリオ。
シャンフロが神ゲーたる所以であり、シャンフロの配信者が配信の個性とする一大要素。
出現条件不明、受諾条件不明、しかしてその恩恵は最大。
シャンフロは「世界の開拓」が大きなメインのストーリーであるが、それとは別に無数のサイドクエストが存在する。その中でもユニークシナリオは何処でいつどのように誰がフラグとなるのか全く明らかになっていない未知のシナリオである。
でも、ユニークシナリオをクリアする事で獲得できる装備、スキル、魔法……そう言ったものはどれも一級品の性能を誇り、ユニークシナリオを探すためだけのクランも存在するらしい。
師匠とおじさん、そしてれいちゃんから聞いた話を統合した感想だけど……絶対にここを逃すわけにはいかない。
「えーここで出てくるとは思っていませんでしたが、機会をもらったならやっていきたいと思います。今日の耐久配信は後日に回して一旦こちらに集中しますね。まぁ、手に入りそうなら狙っていきますが……」
「いやぁまっさかワシの足にもちゃんとついてこれるとは思わんかったけぇ驚いたわ!流石あの夜の王に挑むだけのことはあるなぁ猫の人!今ウチじゃああんたのことで持ち切りなんじゃ!あの爪を捌き切って致命の一撃を与え続けるその目と技量は伊達じゃないってことじゃな!オヤジ……あぁ、オカシラからも見どころ在りそうなら連れてこいたぁ言われてたがこりゃ兄貴や姉貴達より良い掘り出し物をしたかもしれんなぁ!」
めっちゃ喋る。流石に斬れないねこれ……
ダブリュア
設定考えてないらしいので自由にしてもいいと判断したごめんなさい
手杵(通称兎杵)を使う武闘派……ではなく杖として使用する魔法職。ディアレに憧れているが師事したことはない。ビィラックの工房で遊ぶことが多く、手杵もそこで見つけてもらったらしい。方言に関しては4割くらい筆者の地元の岡山に寄せることで手癖で書けるようにしてますので少々のミスに関しては許して欲しいなって