鏡面のシャングリラ~クソゲーストリーマー、神ゲーに挑まんとす~ 作:岩木伊吹
今日の配信開始は移動の後にしよう
師匠との通話で方針を決めた私は、翌日いつも以上の即帰宅をかまし、つぶやいたーで帰りが遅くなる旨と、ラビッツ探検をする!と書いたサムネを世界に伝え、シャンフロにログインする。
ログインした先は兎御殿の麓にあるラビッツの街、その一角。私はそこにあるあばら屋を現在拠点として借りている。
「おう、サンラクサン。戻ったんじゃな。今日ははいしん?とやらをするのか?」
「ただいまーダブリュア。今日は一旦TAしてから配信するつもりだよ」
「てぃーえー……とはなんじゃ?」
「タイムアタック、誰よりも速く、何よりも強い証明をすることだよ。私はね、今日中にエイドルトまで走り抜けるから」
「ほうエイドルト。……エイドルトぉ!?」
「初めて会う相手に一番欲しい情報をもらえたら、人間はそれだけで信用してしまう。相手が二番目と三番目を隠しているとはそもそも思わないわけだからね」とは師匠の話だ。少なくとも今回の騒動で私のことを始めて知った人はラビッツで何が出来るのかを私から一番欲しがっている。それ以上に欲しいであろうこのユニークを開始する方法については配信でノーカットで流しているわけだから、それを解析しているらしい考察クラン(ライブラリというらしい)と、プレイヤーメイドの新聞屋クランにその声は行く。というか行かせている。師匠の世論誘導力を甘く見てはいけないのだ。
DMに連絡をしてきた彼らの多くには「しばらくラビッツに滞在したいから今は直接会って話すことは出来ません。ラビッツに来たら質問には答えさせていただきますが、配信以上のことは無かったため考察クランの結論をお待ちください。宜しければ私にも考察結果を共有していただけると、リツイートなどでご協力できることもあるかもしれないので、またご連絡いただけると幸いです」といった内容で返している……とまぁそんなことはいいか。今は走ることの方が重要だからね。
「じゃあ早速ゲート開いてダブリュア。誰より早く合流する」
「いきなりじゃなサンラクサン……まぁええけぇ少しはまたれぇな」
ダブリュアが少し呆れたような顔をするが、今の私には関係ない。初見でも最速を狙い、再走の必要なんてぶち壊す。
さていこうか、ダブリュアがゲートを開け、まずは千紫万紅の樹海窟を最速でぶち抜く。途中で女王バチとカブトムシの喧嘩に巻き込まれそうになったけど無視して進む。あの蜜ぶつけたらカブトムシがどっかいったりしないのかな。
それはそうとしてボス戦に突入。まだ早い時間なので並んでいるプレイヤーは少なく、ここで飯テロをしても変わらないとしてすぐに挑めた。ボスの名はクラウンスパイダー。大木の上部に巣を張るボスだが、戻るタイミングでスキルを後頭部にぶつけてクラウンスパイダーを倒し切った時のダブリュアの微妙な顔が忘れられなかったな。
さぁこの後はフォスフォシエ、配信開始まで残りは、5時間。
2月、短い、この話はもっと短い