鏡面のシャングリラ~クソゲーストリーマー、神ゲーに挑まんとす~ 作:岩木伊吹
翌日、教科書とかいうゲーム攻略書兼取り扱い説明書を読み解いていると学校が終わった。隠し要素が無いゲームであるため刺激は無いが、大抵のクソゲーは本人が隠し要素だと思っていることが表に出てきてクソになっているのでやはりこれもクソゲーなのかもしれない。
教科書をしまい、荷物をまとめて帰宅する。予約しているゲームを取りに行くまでの道のりだけはAGIが倍になっていると思う。
ワクワクとした気持ちを押さえつけて、ロックロールの扉を開く。軽快でPOPな音楽、確か乙女ゲームのゲーム内BGMだったか、以前雑談していたときに二時間ぶっ続けで聞かされた記憶がある。私はクソゲーにも良いBGMが結構あるって話をしただけなのに……。
「岩巻さん、シャンフロ取りに来たよ」
「本当にシャンフロ買いに来たの楽羽ちゃん!?大丈夫?熱でもある??雷にでも撃たれた???」
「扱い酷くないですか岩巻さん」
顔を合わせるなり頭の心配をしてきた無礼なポニーテールは岩巻真奈さん。このゲームショップ「ロックロール」の店長であり、乙女ゲームが好きすぎてゲームショップを開いた変人だ。旦那さんとの恋愛も乙女ゲーム並みの波乱万丈劇であったという話も聞くが、今は割愛する。
「実はフェアクソがイカれすぎててその口直しをしようと思いまして」
「あーそういや昨日最終回やってたもんね。後でまとめかアーカイブ観ようかと思ってたけど……楽羽ちゃんがシャンフロに手を出す位だったんだ?」
「多分もっかいフェアクソの顔見たら3分間じゃ足りないことになると思いますよ」
そう雑談する間にもあの顔を思い返してしまい、思わず右手に力がこもる。奴の顔を記憶の片隅からすら消し去る為に、対極のゲームをするということはクソゲーをするという自分の趣味よりも優先される。つまり甘い薬を自分から買うようなものだ。
「あはは……じゃあクリア後に自動セーブがかかって報酬の3分間を繰り返すことが出来ないってのも本当だったんだね」
「なにそれしらない」
あの悪魔、報酬すら一回しか渡さないらしい。絶対に許さないリストに改めて名前を刻みながら、諭吉様を一枚取り出す。
「もうフェアクソの話はやめましょう。岩巻さん、これで」
「はいはい、じゃあお釣りとシャンフロね。わかってると思うけど……」
「はい、ゲームの前はトイレを済ませてしっかり栄養補給、二時間ごとに休憩も忘れずに、ですね」
「わかってるならよし!毎度ありー」
パッケージを受け取り、ロックロールを後にする。足が軽い帰り道に誰かに会うことも無く、私は自宅へと辿り着いた。
フェアクソのこと忘れたいとか言ってる癖に五秒後に名前刻んでるしやっぱ好きなんですね……
岩巻真奈
配信はアーカイブを1.5倍速で観る派。
乙女ゲームを主食とする偏食家であり、ゲームショップ「ロックロール」の店主。楽羽とは近所のゲーム屋であることや、マイナーな乙女ゲーの仕入れがあることなどから話すようになった。楽羽にとっては近所の姉みたいな存在。
あなたのシャンフロはどこまで?
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