鏡面のシャングリラ~クソゲーストリーマー、神ゲーに挑まんとす~ 作:岩木伊吹
一年で変わった手癖が修正しきれないのでコメントでご指摘ください。
「……ふぅ」
VRヘッドセットを取り外し、一度伸びをする。カーテンの隙間からは朝日が覗き、これから寝るなどとんでもないと言わんばかりに瞳孔を刺そうとしてくるが、足先でカーテンの端を掴んで光を遮る。
携帯端末に纏めてある予定帳曰く、明日からの一週間は、あるコラボによって丸々埋まっている。
『ファンタジウス建国立志伝Ⅴ発売記念、ファン建Ⅳリアルタイム配信者コラボ』
架空歴史ウォー・シミュレーションソフト、ファンタジウス建国立志伝。そのナンバリングタイトルとなる新作が発売されるとのことで、販売元が広告の為に組み上げた販促コラボである。私も含め8名の配信者が集められ建国の腕を競いあうことになるこのコラボで、現実時間に対応したイレギュラーな設定で遊ぶことになる。
この中では無名とまで言えるだろう私、しかもクソゲー配信者を自称している
今日は前日打ち合わせが昼過ぎからあり、バーチャルリアリティーの会議室、通称VRサロンで実施される。身体スキャンが一般的に行われるようになっている現在、現実の体に近い動きが出来るVRシステムは少なくない(それでも残る違和感すら無くすのがシャンフロである)。
ベッドから起きて洗面所に向かい、口をゆすぎ、冷蔵庫へと向かう。お、スイカがあるじゃん。
「おねーちゃんそれママのじゃないのー?」
「カブトにスイカをあげるって半世紀前の伝承*1だから大丈夫だよ」
「じゃああたしも食べる」
「自分で取りな」
「はーい」
半分に割られたスイカを冷蔵庫から取り出し、雑に切り分けて自分の皿に取る。皿を取り出した妹にも分け与えて、残りはラップをして冷蔵庫に戻す。リビングの席に座って一口かじる。うん、水分が染み渡るね。
「今日は偉い人と会議あるから昼は適当に済ませてね」
「おー、偉い人ってことは案件?おねーちゃんの所に来るんだ」
「私もびっくりしてる。自由にしていいってことだから好きにさせてもらうけどさ」
「へー。あたしもバイトだから家誰もいないのかな」
「いや、VRでやるみたい」
「じゃあ鍵は閉めとくね」
「よろしく」
妹、陽務
前までは私の私服がどうとか言って喧嘩もしていたが、最近は何故か送られてくる部屋着を着ているだけで何も言わずに満足した顔で去っていくことが多い。まさか送り主を知ってるのか駄妹よ。実際送り主師匠なんだけど怖いぞ駄妹よ。
腹に最低限の物を入れて、部屋に戻る。VRヘッドセットを装着して、指定のアプリでログイン。少し早いが、まぁ許容の範囲だし遅れるよりかは良いだろう。
後頭部に感じる枕の感触が薄れていくのを感じながら、電子の海へと意識を移していく。
さて、配信の下準備の時間だ。