鏡面のシャングリラ~クソゲーストリーマー、神ゲーに挑まんとす~ 作:岩木伊吹
「みんな~!みってる~?」
『エイプリルフール終わったぞ』『わこつ』『わこつです』『もう草』『これクソゲーじゃないよ?』『わこつ』『変な物食べた?』『草』『わこつ』『変な物は昨日食べた(クリアした)だろ!』『草』『変な物(フェアクソ)』
「おーおー遅延あるから全く読めないけどあらんかぎりの罵倒されてるのだけは伝わってきたよ」
少しだけ時間が過ぎ、今私がいるのは白い部屋。VRゲームの初期設定をする場所は「転生部屋」と称されるこの白い部屋か、0と1で囲まれた「マトリクス部屋」の二択が大半を占める。それ以外の場合は神ゲーかクソゲーの両極端なゲームが多い気がする。
「というわけで昨日の有言実行!クソゲーをやらずにシャンフロを少しだけ触ってみようと思います!」
『風邪引いた?』『草』『乗っ取りで通報しました』『草』『草』『存在しない寝言を言うな』『草』『偽物かな?』
「偽物じゃないぞー。本物のサンラクさんだぞー」
放送中に流れているであろうコメントは今の私の元には届いていない。……が、大体の予想を建てることは出来る。そもそも通常の配信でも2秒から40秒程度の遅延はあるのだ。
「実際ちゃんと神ゲーって言われてるゲームを配信でやるの初めてなのでどんな反応なのかは正直怖いところはありますねー。いや、神様が出てくるクソゲーはやったけどあれは別枠だとしてね?」
しかし過去にやったことがない、という点だけはどうしようもない。気にせずに話を続けるしかないだろう。師匠も「堂々としてたら意外となんとかなるもんだよ」って言ってたし度胸だけでそれっぽくしてみることにする。常にロケハン出来るわけじゃないからね。
「にしても見事な白部屋ですねー。実は配信前に顔だけ弄ってたんですけどここまで真っ白だととっとと先に行きたくなってきます」
『顔弄ってたんか』『たしかに』『顔作れて偉い』『先いこうぜ』『ステフリどうすん?』『顔良くて助かる』『顔良くて助からない』『草』『それはそう』
私はゲームのキャラはリアルの姿に近い姿にする派だ。
ゲームとリアルを離して考えたい人もいるだろうし、その気持ちもわからないでもないが、「誰が見てもこの人の配信だとわかる」ことは長く実況を続けていくにあたって最も重要なことだと先輩に教わった。VRではない2D画面のゲーム配信で、多くの配信者がワイプや立ち絵を表示するのもそれが目的で、ある種のキャラ付けのようなものなのだと思う。
最悪イメージカラーさえ統一しておけばそれっぽく見えるので拘りすぎも良くないんだけどね。
「ステフリをどうするかはまだ考えてる所なんだけど、後発組で最低限の攻略情報があることを考えると極端に振ってユニーク狙いにいく方が良いような気がするんですよね。器用貧乏は避けたいので」
「まぁここで話しててもキリが無いですし、とっとと始めちゃいましょうか!」
そう言ってから、一度閉じていた初期設定画面を開く。
「うおっ……職業多いですね。もしかしてこれ全部に派生あるんですか?考察班も大変だろうなこれ」
並ぶ職業に目が泳ぐ。戦士、剣士、闘士、騎士、傭兵に盗賊……しかもそれぞれに武器種の限定まである。
「武器が限定されるとなると、私のスタイルならこれかな。『傭兵(片手剣使い)』」
大抵のゲームでは二刀流よりもDPSが落ちるが、アイテムをより早く使えたり、アクションの面で有利に働くことで差別化が図られている片手剣装備。そして何より私が
「そして出身は決めてたよ。『彷徨う者』」
防御が下がるが、幸運が上がる補正を持つ出身。そして何より「初期位置が初心者用エリアのランダムな場所になる」という特徴がある。実況者でこれを選ばない奴はいないだろう。
「これを選んだらランダムリスポーンになるとは聞いてたんだよね~あ、せっかくだから防具売ってオワタ式にしようか!」
『草』『OSHでももう少しまともだっただろ』『自分からクソゲーにするな』『クソゲーしかできんのか』『回避特化はこのゲームキツいぞ』『草』『草』『これそーゆーゲームじゃねぇから!』『自分から縛りを入れるな』『神ゲーをやるって言いましたよね?』『OSHってなんですか?』『神をクソにする程度の能力』
「まぁ本当の神ゲーなら少々本道から離れても神ゲーとして成り立ってくれるでしょう!」
神ゲーに対する謎の信頼を元に防具を所持金に変える。ステータスを見る限り本当の意味でのオワタ式には出来そうにないが……まぁダメならやめるだけだしね。
「あとは軽く顔を隠せるようなものがあれば良いんだけど……フルフェイスは『
そうして出来上がったアバターを眺めると……なんだろう、傭兵というより限界を迎えた女盗賊って感じだな……。
「出来ない装備じゃないし、他にもやってる先駆者はいるでしょう!恥じらいは捨てた!」
「それでステ振りだけど……どれに片寄らせるかって考えたら、どう考えても
初期のスキルポイントの半分くらいをLUCに叩き込み、残りをVIT以外に割り振った。
最後にプレイヤーネームを入れる。
一切の迷い無く、これまで数多のゲームを、クソゲーをクリアしてきた私の第二の名前……「サンラク」を打ち込む。そしてカメラに顔を改めて向けてこう告げる。
「改めまして皆さま、初めましての方は初めまして、そうでない方はおはようございます!VRゲーム配信者のサンラクと申します。普段はこのような良ゲーをすることはありませんが、ちょっと先日嫌な事件がありましたので少しばかりシャンフロにお邪魔させて頂きます。常連のみんなは……たまには神ゲーやって目を肥やそうぜ!ってことで宜しく!では始めて行きましょう、サンラクのシャングリラ・フロンティア、スタートです!」
最終決定。確認場面を叩き、未来を見据えて言い放つ。
「見せてもらいましょうか!神ゲーの真髄というものを!」
虎獣の祭面:ケット・シーを模したデフォルメ猫のお面。防御力0のファッションアクセサリーとプレイヤーの間で話題。実は店売りよりも初期装備として買った方が割安だが、購入するのは一部の好事家に留まっている。オリジナル装備。
存在しないアクセサリーと存在しないゲームは勝手に設定を盛っても良いってばっちゃが言ってた。ハシビロコウフェイスは流石に無理だったよ……
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