鏡面のシャングリラ~クソゲーストリーマー、神ゲーに挑まんとす~   作:岩木伊吹

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ゲームが始まるので初投稿です


デフォルメとリアリティーの境界線

『遥かな太古、神代と呼ばれる時代があった。』

どこにでもある、プロローグ。

『偉大なる神人達は後世に命を紡ぎ、その姿を消した。』

1人なら飛ばしていただろう。

『時は流れ、神人の遺志継ぐ我々は彼らが願ったように地に広がり、そして大いなる命の流れを紡いでいく……』

二人なら……どうだろう、ちょっとわからない。

『今を生きる我々は、歴史と遺跡の中に息づく過去の遺産から神人達の軌跡を辿る。』

兎も角、彼らがいるからこれを観ている。

『貴方は開拓者。東よりの風と共に現れ、幾度となく膝をつき、されど進み続け……そして風と共に消えるかもしれない者。』

休憩のつもりで、流れる文字を観る。

『貴方の生きる意味は?』

少しだけ、心がこわばった。

『一振りの剣に己が身命を託す?』

それは、わたしがやったこと。

『魔道の深淵を覗いて魔道の高みを目指す?』

それは、アタシがやったこと。

『あるいは戦いの道を選ばないことも出来る。』

それは、ボクが許さないこと。

『その全てがここにある。その全ては貴方の中にある。』

これまでの道は、肯定された。

『さぁ、一歩踏み出して。』

心が躍る。

『未知を、未来を、そして可能性を切り拓いて。』

躰が弾む。

『それがこの地に生まれ落ちし、神代よりの子らに課せられた使命なのだから』

命じられた通りのストーリーなんて、大好物(大嫌い)だから。

 

 

Welcome to Shangri-la Frontier

 

 

 プロローグが終わり、世界に潜った意識に0と1で彩られた身体の感覚が到来する。

 別天津の隕鉄鏡(カメラ)を確認し、ゆっくりと自分の周囲を周回させながら、一度遠くまで見渡させ、最終的に自分の正面を映すように固定する。もちろん、カメラに合わせて首と目を動かしてゆっくりと辺りを認識しているような表情を見せることも忘れない。

 

「うお、リアルな森ですね!これが『彷徨う者』の初期スポーンってわけですね。さて、事前情報だと、ここから自力で街に到着するか、モンスターに倒される事で「夢オチ」という形で街中でリスポーンできるとのことですが……せっかくなら倒れるまでレベル上げでもしてみましょうか!」

 

『すご』『描写ガチじゃん』『すげぇ』『風を感じる』『すげぇ』『やば』『なんでここの米欄シャンフロ完全初見の人間こんなにいるの?』『すご』『きれい』

 

「どうやらお客様も来たようですし……ねっ!」

 

 木の上から感じた音を辿り、片手剣を振るう。カメラの視界に入るか入らないかくらいの場所から飛び降り、襲いかかってきたのは、ファンタジーというジャンルにおいてドラゴンに匹敵するメジャーモンスター。

 

 緑の肌で自然と同化し、素朴な斧を両手で持ち突っ込んでくるそのモンスターの名前は。

 

「ゴブリン!」

 

「ガギャッ!」

 

 私の剣とゴブリンの斧がぶつかり合い、鈍い音が響く。

 

 体はスムーズに動く。下手したら思考入力の関係でリアル以上に動きやすいかもしれない。確かゲーム内の動きがリアルに影響を出さないよう毎回ログアウト時に現実の肉体と意識との同期システムがあったけど、むしろ逆の意味で必要になっているのかもしれない。

 

「ダメージ感覚を知るために一方的に殴られるのもアリですが、今は無茶せず素直に攻撃しましょうか」

 

 半身に構え、腕の可動域を最大まで広げる。ほどよく脱力し、不意の事態に備える。

 

「ギャグギャギャ!」

 

一つ。

 

 斧を片手に持ち変えて振るってきたゴブリンの攻撃を、一歩踏み出して剣を振るい弾く。

 

二つ。

 

 大振りになった攻撃に隙をさらしたゴブリンの肩を切り裂く。痛みで斧を手放しかけたゴブリンの手を切りつけ、背後に回る。

 

三つ。

 

 一瞬息を吐き、明瞭になった剣先をゴブリンの首に突き立てると、泡のようなポリゴンと化してゴブリンは消えた。

 

 

 

「よしっ!戦闘終了ですね。最初にしてはまぁまぁ動けてたんじゃないでしょうか!」

 

『動け過ぎ定期』『すご』『すげぇ』『目が優しいのなんで?』『リラックスしてんなぁ』『すご』『スムーズな動きで草生える』『ゴブリンさんかわいそう』

 

「さて、ドロップアイテムは……っと」

 

 リアリティーのある世界だが、死体が残ったりしないのが良い塩梅なんだろう。クソゲーって大体その辺り吹っ切れてるからか0か100しかないから……

 リアリティーを極めすぎていたあの島(・・・)の記憶を叩き出しながら、その場に残った見覚えのある手斧を手に取る。

 

【ゴブリンの手斧】

形状:斧 片手剣

サブ装備可能

木の棒に石を蔦紐で巻きつけただけの簡易な石斧。切れ味が悪く、打撃と斬撃の両方の属性を持つ。

 

「まぁボロだよねぇ……」

 

 対峙していたときから察してはいたが、初期装備並みの攻撃力で耐久はそれ以下の代物だ。初期装備の傭兵の片刃にさえ「長く使うことは想定していない」と書かれているのに、それ以下が予想されるとは一体……。

 

「とはいえ、まさかゴブリンだけで神ゲーって言われてるはずもないですし、他のエネミーもいるんじゃないでしょうかね!さて、しばらくはレベル上げついでにドロップ確認もしましょうか!」

 

 私は道なき森の中を、レベルアップを目標に一歩踏み出すのだった。




自分で動かせるカメラに対してならいつでも最高の顔を見せられる系女子。なお自撮りをすることは無い模様。


別天津(ことあまつ)隕鉄鏡(いんてつきょう)
生配信対応により新しく追加され、全プレイヤーに配布されたアクセサリー。
通常スクショや録画ができない場所でも生配信ができる。
思考操作とフルオートの二パターンの配信方法がある。
販売不可。原作にも登場する。

傭兵の片刃
効果:特になし、初期装備ということもあり、比較的耐久力が高く設定されている。
説明:信ずるものは金と己の武のみ。勝利を求め彷徨える傭兵が好んで用いる無骨な剣。無骨故に粗雑であり、長く使うことを想定していない。
解説:所謂初期装備であり、傭兵(片手剣使い)がゲーム開始時から所有している片手剣。盗賊職の初期装備である「盗賊のダガー」と比較して1.6倍の耐久力を誇る。強化する前に破壊されることの多い双刃と異なり、この剣を最終強化まで使用するプレイヤーも多い。原作には登場しない。

あとステータス振り忘れていたので前話を修正してます。内容は原典サンラクと同じなので読まなくても良いです。

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