ワイルド・スピード/X(クロス)ファイア   作:タチガワルイ

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途切れた毎日チャレンジ二日目!!
かなり話が込み入ってきましたね、ここからいよいよ頭文字D編です!!
実を言うと、頭文字Dって、漫画を中学時代に親父に借りて読んでたのが最後なんですよね。なのでかなりあやふやだったりします。すみません。

登場人物
ワイルド・スピード
・ドミニク=トレット(ヴィン=ディーゼル)
・ジゼル=ヤシャール(ガル=ガドット)
・ショーン=ボズウェル(ルーカス=ブラック)

バックトゥーザフューチャー
・エメット=ブラウン(クリストファー=ロイド)

頭文字D
・武内樹(cv.岩田光央)
・藤原拓海(cv.三木眞一郎)
・高橋涼介(cv.子安武人)


チャプター12.

レースを終え、帰ってきたときには日付が変わっていた。

暗がりのガレージへと帰宅するやいなや、ジゼルは『シャワーを浴びる』と言ってあてがわれた部屋へ早々に引っ込み、ショーンは『明日の準備がある』と言って事務所へと向かった。

残ったドミニクが向かったのは、廃車となったデロリアンが鎮座する作業場だった。

 

「爺さん、ここにいたか...っと」

 

「おぉ、帰ってきたかドミニク=トレット。あぁ、そこは踏まないでくれたまえ。計算の途中だ」

 

ドミニクが足をどけたところには白いチョークで何かの計算式が描かれていた。

いや、ドミニクの足元だけではない。辺り一面、床にはびっしりと数式が敷き詰められ、その真ん中でエメットはデロリアンのエンジンを解体していた。

 

「俺たちが出てから....これをやってたのか?」

 

「そうだ。デロリアンが現状どの程度『使えるのか』は確認しておかねばならんからな。なにより2021年だ、1985年よりも小型化省エネ化が進んでいる。現に、私が10年かけて作った拳大のパーツも、今では指先に乗るほどだ。つまり....車を載せ変えるにしても、幾らか手順を省略出来るかもしれん」

 

むしろちょうどいい機会だったかもしれんな。そう笑って見せるエメットに、ドミニクはつられて笑みを浮かべる。

彼が『タイムマシン』という発明を為しえた理由が、少し分かった気がした。

ドミニクは、親指で外を指して誘った。

 

「爺さん、ちょっと休憩しないか?」

 

 

「ビールだ。飲めるか?」

 

ガレージ前の段差に腰かけたエメットに、ドミニクは帰りの道すがら買ってきた『アサヒ・スーパードライ』と書かれた缶を差し出した。

 

「コロナほどじゃないが、飲みやすくていい」

 

「.....頂こう」

 

エメットはそう言って缶を受け取ると、尋ねた。

 

「車は手に入ったのかね?」

 

「......いいや。良いのはあったが、全部返しちまった」

 

ドミニクは首を振った。今日手に入れた車は結局全てショーンに預けることにした。

捕った車全て返してしまっては賭けとしての意味がない。ゆえに『収穫なし』と言うわけだが....ドミニクは言葉を続けた。

 

「一人、筋のいいヤツを見つけて、ソイツの車を作った連中を当たることにした。アイツの案内で明日、群馬へ行く......ついてきてくれないか」

 

エメットは、少し躊躇したような間を開けた。

 

「.....そこに、デロリアンはあるのかね?」

 

エメットも、その問いの答えは知ってるはずだ。

ドミニクは敢えて強く明言した。

 

「恐らく、無い」

 

エメットは目に見えて落ち込んだ。

たしかに、車を探すならデロリアンが都合がいい。同じサイズの、同じ規格の車なのだから。

だがドミニクにはそれだけじゃない"拘り"を感じた。

 

「......爺さん、デロリアンじゃなくても速い車はたくさんある。....なぜデロリアンに拘る?」

 

エメットは缶を握ったまま、上を見上げた。東京の夜空は、星が見えなくて、埃っぽい。

 

「私は未来が見たかった」

 

エメットは続けて溢す。

 

「自分の、世界の未来が見たかったのだ。きっと私は認められていると信じたかった。だから作った。タイムマシンをな」

 

黙って聞きながらドミニクは缶のプルタブを開ける。

そこで不意にエメットはドミニクの方を見た。

 

「君は好きな車はあるかね?」

 

「ダッジだ」

 

ドミニクは即答した。一杯勢いよく煽る。

 

「アイツは獅子だ。あらゆるものを踏み倒す。そして....不滅の命を持つ。メンテを怠らなければ、100年経っても走る。そしてなにより速い。その強さに....惚れている」

 

「私にとって、それがデロリアンだった」

 

二杯目を飲もうとしたドミニクの手が止まる。

エメットは夜空を見上げたまま続けた。

 

「非力で遅く、故障も多い。分かっておるよ。当時でも88マイルを簡単に出せる車はいくらでもあった。だが──そうではない、そこではないのだ。君がダッジの『強さ』に惚れたように、私はデロリアンの『未来』に惚れた。....まぁ早い話が、カッコ良かったのだ、デロリアンは」

 

「....デザインの話か」

 

「あぁそうだ。そして『DMC-12デロリアン』という"車"の在り方の話でもある」

 

「在り方?」

 

そうだ。エメットは地面に視線を落とした。

握った缶は結露で濡れている。

 

「デロリアンの経緯は知ってるかね?」

 

「いや、あまり。.....興味がなくてな」

 

飲みながらドミニクが答えると、エメットはだろうな、と小さく笑った。

 

「"デロリアン"の名前は、DMCの社長、ジョン=デロリアンが由来だ。彼曰く、デロリアンは『夢の車』であったらしい。理想の車を、自分の手で創る。.....それを彼はやってのけた」

 

まるでお伽噺に出てくる『最強の英雄』を語るように、上機嫌にエメットは諳じたが、ドミニクは冷ややかなものだった。

彼はデロリアン、という車はさほど知らない。だが、『ジョン=デロリアン』という人物の顛末については、ある程度知っていた。

 

「蓋を開ければ非力で非効率でノロい代物だ。....挙げ句ヤツは麻薬でパクられ、会社ごと地位を失った。夢は...叶わなかった」

 

「その通りだ。だから私はそこに"未来"を感じたのだ」

 

「未来?」

 

「夢は、終わってはおらんのだよ。"失敗"は"無意味"を意味せんのだ。だから私は、タイムマシンを創るのに、デロリアン以上に相応しい車は無いと悟った」

 

「.........」

 

ドミニクは黙って再びビールを煽った。もう少しで空になる。

エメットは尚も語る。しかしそれは先程までの上機嫌ではなく懐かしむような。寂しげな声音だった。

 

「あの車はまさに『夢』に相応しい。無塗装ステンレスのボディ、大きなガルウィングドアに、平たく薄く、大きなボンネット。デザインだけでも、デロリアンの野心が見て取れる。アレが時空を越えたなら....まさに『夢の車』、その体現ではないかね」

 

だが、と。

エメットはその夢を逆接で繋げた。

 

「私の夢は、1985年で止まってしまった。あのとき、タイムマシンを作ったとき。思えば.....あの瞬間で『夢』は終わったのだ。デロリアンはもう、随分と無茶をやらせた。初代は機関車に轢かせて壊しもした。しかし私はまた作った。また創ってしまったのだ.....だからな、ドミニク」

 

初めて彼は、ドミニクの目を見た。

寂しげに瞳は揺れていた。

 

「私は、今はもうこれで良いのではないか、とも思っているのだ。デロリアンから卒業すべきではないか、とな。......群馬、だったか?」

 

「......あぁ。ここは日本で、行くのは地元の走り屋グループだ。デロリアンで峠を攻めるヤツはいないだろう。俺が狙うのは....速い車だ」

 

「異論はない。だが.....そうだな。ひとつ注文していいかな」

 

「なんだ?」

 

ドミニクは最後の一杯を煽る。空の缶を隣に置く。

 

「デロリアンと似てる車も、探してくれないか」

 

ドミニクは小さく吹き出した。

なるほど、エメットはそう言う人間らしい。面白い。

 

「さぁな、あれば掛け合ってやる」

 

「それで構わんよ。.....さて、夜も遅い」

 

エメットはそこで初めて存在に気づいたかのように缶のプルタブを開ける。缶の結露は半ば乾いていた。

 

「明日は早いのか?」

 

「朝イチだ」

 

「急がねばならんな」

 

エメットは一気に煽った。

ほう、とドミニクは感嘆する。イケるクチだったか。

 

「飲めるのか」

 

「いや。あまり得意では───」

 

言いきることすら出来なかった。

ビールを置いて立ち上がるや否や。

エメットは直立不動のまま、真後ろにぶっ倒れた。

急展開にドミニクはしばし硬直し、盛大なため息をついた。

 

「弱いならそう言え」

 

 

───群馬県、秋名山。

 

夜のパーキングエリアは、静かだが騒がしい。

それもそのはず、そこには十数人の男女がたむろしていた。

色とりどりの日本車が駐車場に停まっている。

今夜の主役達──峠を駆け降りるスポーツカー達だ。

しかしそこへ、三台の車がやってきた。

突然の珍客に、男女らは騒ぎをやめてそちらへ視線を注いだ。

一台は先頭を切るAE85 カローラ・レビン。

その後ろからついてくるのは、黒々しい大きな車、クライスラーダッジ・チャレンジャーSRT8 2010年式。ショーンが苦労してドミニクのガレージから取り寄せた車だった。

そして最後尾には、黒いボディに白いラインが特徴的なスポーツカー、フォードマスタング67年式。

ショーンの父から受け継いだ、今の彼の愛車だ。

怪訝そうな群衆の真ん中で、三台が停車する。

最初に一台に気づいた男が、「ハチゴー...イツキ?」と口にする。

そのハチゴーから降りたのは、イツキだった。

 

「よぉ、久しぶりだな!───拓海!」

 

「.....やっぱりイツキか」

 

群衆の中から姿を表したのは、ひょろりと大人しい印象のある男だった。

イツキの親友であり、現在は世界ラリーでラーリストドライバーとして活躍するプロになった男だ。

 

「帰ってきたって聞いて飛んできたぜー。また豆腐運ぶのかよォ?」

 

「いや、親父がやるって。俺も明日には....帰るし。.....それで」

 

拓海は、つい、と視線をイツキからずらす。

視線の先には、ダッジから降りたドミニクと、エメット。フォードから降りてきたショーンとジゼルに注がれていた。

 

「.....今度は何の厄介事?」

 

「えっ?いや、やだなァー拓海!"厄介事"なんてそんな....」

 

「あの人達、プロじゃないけどカタギって訳でもないよね」

 

「......東京で知り合ったんだよ。お前...いや、"プロジェクトD"に興味があるってさ」

 

「東京......?」

 

拓海の目がスッ、と細くなった。

イツキの"悪癖"を拓海は何度か苦言を呈していた。

 

「イツキ.....ストリートレースはやるなって、言わなかった?」

 

「うっ.....」

 

ゴゴゴ、と無言の圧力にイツキが怯む。拓海はプロだ。だからこその苦言であるのも理解していた。

だがもうプロジェクトDはない。峠は年々道路交通法の縛りで走りづらくなっている。今回の集会だって半分は拓海が帰ってきたから集まったようなもので、実際レースするのかどうかも分からない。

だからイツキは、街にそれを求めたのだ。

イツキは何か言い返そうとしたが、拓海が正しいのも理解している。何も言えない。特に今回は、拓海にとっては間違いなく『厄介事』なのだから、尚更に。

 

「アンタが、イツキの『仲間』か?」

 

 

背後の声に、イツキは振り返る。見かねたドミニクがそこに立っていた。

拓海が一歩踏み出した。

 

「....イツキが何を言ったか知らないけど、ここは賭場じゃない。ただの愛好会だ」

 

「あぁ、分かってる。俺も賭けをやりに来た訳じゃない」

 

ドミニクのその言葉に、拓海とイツキは怪訝そうな顔をした。

ドミニクは両手を広げて言った。

 

「俺は"売り込み"に来たんだ。レースをして──俺が負けたら、この車をやる」

 

親指で指したのは、彼のダッジチャレンジャー。

 

「コイツのエンジンは6100ccL型ヘミのV8。馬力は800を越えるモンスターマシンだ。それ以外にもあちこち手を加えてあるが....改造費は10万ドル(約11,40万円超)を越えている。中古に流すのは勿論、パーツをバラ売りするだけでかなりの金額になるだろう。つまりこいつは車の形をした貯金箱だ」

 

拓海は胡散臭そうにドミニクを睨みながら、慎重に切り出した。

 

「....あなたが勝った場合は?こちらは何を支払わされるんだ」

 

「車を頂く。俺の注文に近いものを」

 

話にならない。拓海は切り上げた。

 

「ディーラーに頼めばいい。日本の車屋はどこも親切だ。日本語を話せるなら、だけど」

 

「いいや、既にディーラーに探して貰ったがついぞ見つからなかった。俺がほしいのは走行距離ばかり稼いだ中古車じゃない。『本物』って呼ばれるヤツらにカスタム、チューンナップされた──"速い車"だ」

 

「アメリカにいくらでもある」

 

「今はアテがない」

 

平行線だな。と拓海は嘆息する。

コイツは絡むだけ面倒なチンピラだ。しかしドミニクは続けた。

 

「ドリフト、という言葉は日本で生まれた。より速く、より豪快に峠を攻める。その魂はアメリカのレース場にも、ストリートにも、そして俺にも届いた。"車が要る"という理由がなくても、俺はいつかここへ来ただろう。ドリフトを生んだ、この山にな」

 

「......なんのために?」

 

答えは分かっていた。でも敢えて拓海は聞いた。

それは"ドライバー"としての衝動か、或いは親近感か。なにかは分からないが、その続きを聞きたいと、彼は思ってしまった。

 

「決まってるさ。更なる"速さ"のためだ」

 

辺りは静まり返った。誰もなにも言わず、噛み締めている。

拓海は惜しいと思った。惜しいが、だがしかし、勝負はできない。

賭けレースは出来ない、するわけにはいかなかった。

 

「....それならやっぱり「面白い、気に入った」

 

拓海がなんとか絞り出そうとしたとき、気楽な声が遮った。

は、と後ろを振り返ると、白い車─FC3S RX-7─のボンネットに腰かけた男が、ヒニルに笑っていた。

 

「涼介さん......でも」

 

その男、高橋涼介はボンネットから離れてドミニクの方へと歩いていく。

 

「元"プロジェクトD"の高橋涼介だ。主にチューナーをやってる」

 

「.....ドミニク=トレットだ」

 

形だけの握手。しかし涼介の表情は崩れない。

 

「残念だが、ここは拓海も言った通り賭場じゃない。だから"賭けレース"ってヤツは出来ない。俺たちが競うのは結果じゃない、速さだけだ」

 

「なるほど.....だが俺も退くに退けない。『車をくれ』と言って、くれるのならレースなんてものはせずに済む。レースは手段だ、目的じゃない」

 

「それも難しいな。ここにあるのはレースに使うが、普通に毎日の足でもある。日本は狭いからな。何台もおける車庫を作れるスペースはないんだ」

 

だから。と涼介は続けた。

 

「エキシビションマッチ、ということでカタをつけないか?お前が負ければその車は『プロジェクトD』のもの、お前が勝てば、俺はお前に協力する」

 

「涼介さん!?それって.....」

 

割って入ろうとした拓海に、涼介は涼しい流し目で制止した。

涼介はたった今この瞬間に、責任を拓海から自分にすり替えたのだ。

ドミニクもそれは察した。

 

「....いいだろう、そういう"余興"だというんだな?」

 

「ああそうだ」

 

「乗ろう」

握手が弾かれる。レースの始まりだ。

 

「涼介さん.....」

 

戸惑う拓海に、涼介は肩を叩いた。

 

「ヤツの車は800馬力超えのマッスルカーだ。この峠で使うには速すぎるし、デカすぎる。心配するな、勝ち目はある」

 

「.....え、まさか涼介さん、自分で?」

 

当然だというように涼介は頷いた。責任を自分にふっ被せたのは拓海のキャリアを守るためだ。秋名で最速は間違いなく拓海だが、彼を出すわけにはいかなかった。

 

「俺のRX-7もダウンヒル向けにセッティングしてある。得意ではないが、いけるはずだ」

 

「....,涼介さん、それはあまりにも楽観的すぎる。公道最速理論を謳った涼介さんらしくない」

 

RX-7に乗り込もうとした涼介が止まる。

 

「.......どの辺がだ?」

 

「アイツの実力は未知数です。相手の分析もせずに、車の特性だけで勝ち負けを決められるはずもない。それに、分かるでしょう?彼のオーラは。涼介さんじゃ勝てない」

 

涼介はしばし迷ったのち、静かにRX-7のドアを閉め直し、拓海に向き直った。

 

「ならどうする?」

 

拓海の答えは決まっていた。やるからには勝つしかない。

『秋名のハチロク』、その名が示す最速を証明するために。

 

「──俺が走ります」




読んでくださりありがとうございます!感想、投票評価頂けますと、作者のモチベーションが11000回転キッチリ回ってアドレナリンどっぱどっぱします。


ちなみにというなの但し書きなのですが、
BTTFのドクがタイムマシンのベース車両にデロリアンを選んだ理由については、あそこまで深く言ってません。
理由についてのべたのは『どうせ作るならかっこいい車がいいだろう。それに、ステンレスのボディは粒子の分散を....』と、言う台詞のみです。時計のタイマーが遮っちゃったので粒子の分散を防ぐのか、促進するのか、或いはまた別のことを言おうとしたのかは永遠の謎です。
なので未来がどうのとか、在り方がなんだと言う話は僕の解釈です....。
それともうひとつ、イツキが賭けレースに入り浸ってる、という話ですがこれも僕の解釈です。
頭文字Dのパラレル的続編である『FMゴースト』では妻を娶って子供もいるそうで、ハチゴーをその時点まで所有してるかどうかも不明ですが、今回のクロスオーバーのためにハチゴーを所有しており、且つ走り屋もやめていない、という感じになりました。拓海は海外でラーリストをやってる。と言う話は『FMゴースト』からの借用です。怪我はまだしてないようですね。
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