ということで湾岸線でミッドナイト(早朝)したり、環七通りを穴だらけにしたりとまぁ贅沢にやりたい放題やりました!!
これにて、舞台は2015年──運命の『tokyo drift』時空へ飛びます!、ワイルドにスピードするぜ!!!
登場人物
ワイルドスピード
・ドミニク=トレット(ヴィン=ディーゼル)
・ジゼル=ヤシャール(ガル=ガドット)
・ショーン=ボズウェル(ルーカス=ブラック)
・レイコ(北川景子)
・Zのドライバー(チャンプ=ナイテンゲール)
バックトゥーザフューチャー
・エメット=ブラウン
車輌
トヨタ・AE86-"D"スプリンタートレノ(タイムマシン仕様)
通称『ハチロクD』
NISSAN・フェアレディZ S30
通称『悪魔のZ』
トヨタ・クラウンコンフォート(タクシー)
マツダ・CX-5
ホンダ・エアウェイブ
日野・レンジャー(4tトラック)
フォード・マスタング67年式
その他
エティオントラック
首都高、湾岸線。
千葉県市川市から神奈川県横浜市までの総延長62.1kmに及ぶ、直線が長く、カーブの緩やかながらトンネル、橋などアップダウンのあるこの区間は通称"首都高最速エリア"とも呼ばれる、日本のアウトバーンだ。
ただし法廷速度は80km/hであり。
当然ながら最速を争うような場所ではない。
にも関わらず、ここでは『最速』の称号を求めて、幾人もの走り屋がこの道で警察とダンスを踊る。
そしてここにも、そんな踊り子が二台、朝の湾岸を駆け抜ける。
───ただし負ければ死が待つバトルロワイヤルだが。
「これ以上速度はでないのか!?」
「作ったやつが何を聞いてる、これでフルアクセルだっ」
エメットの泣き言をドミニクが吐き捨てる。
メーターは299~301の間を往復している。
時速300km/h。
速度上限から220km/hオーバーする超高速、道行く車はほとんど静止する障害物と変わらない。
路傍の石ころを蹴る音が嫌に大きく響き、景色はもはや水平に走る線だ。
さらには車も節々怪しい音が響く有り様。ラムチャイルドを組めなかったのが災いしている。この速度はそう長くは保てない。しかしそれでも300km/hだ。普通の乗用車ではまず足元に及ばず、市販されるスポーツカーでも純正ではこの領域に手が届かない。
車のあらゆるパーツをチューニングし、高い部品を組み込んでその限界の、さらに上を突き抜けたカスタムでようやく指先が引っ掛かる。
億を越えるハイパーカー、国際的なスポーツカーが看板に掲げる程の、
そんなまさに『異次元』とも呼べる"速さ"。
それが300km/hという超高速領域だ。
だが、だが足りないのだ。
ハチロクDを追うその"悪魔"は、まるで逃げるウサギを狩る狼のように、みるみる距離を近づける。
紺に塗装された、古いモデルの車だ。
フェアレディZ、S30。
"初代Z"と持て囃されるこのモデルはしかし、湾岸線においては全く異なる異名で呼ばれていた。
「....気味が悪い」
苦しげにドミニクがそうこぼした。もう真後ろに張り付く、その車に対してこめかみから汗が出る。
「具合が悪いの?....こんなの、ゼロヨンみたいなものじゃない」
ジゼルがドミニクの珍しい弱音に、片眉を上げてそう発破をかけるが、ドミニクの視線は前を向いていなかった。
バックミラー、その向こうでZのヘッドライトが朝日に輝く。
ドミニクにはそれが、死神の眼光に見えた。
「....身を捩るような、鎌首をもたげるようなあの走りはなんだ。気味が悪い。....こんなプレッシャーは初めてだ」
ドミニクは感じていた。
あのZを見たもの皆が一度はそう感じたことを、ドミニクは背中にひしひしと感じていた。
「....アイツだけは潰す。アイツは...」
ドミニクがベタ踏みのアクセルをさらに踏み抜きながら唸る。
「───悪魔だ」
悪魔のZ。
そのフェアレディZを湾岸線で見たものは、皆口を揃えて、そう呼ぶのだ。
最速の悪魔が並ぶ。
峠最速と、首都高最速。
もはやこれはドラッグレースではない、チキンレースでもない。
俺か貴様、どちらか車がクラッシュするまでアクセルを踏み続けろ。
Zは話さない。だがそんな呪いにも似た重圧をドミニクは右から感じた。
誰よりも速く、誰よりも遠くへ。
フルスピードがドミニクの信条であり、信念であり、人生であった。
それが揺らぐほどのこの重圧はなんだ?
ハチロクDにこれ以上の速度は出せない。
だがZは、あの悪魔はその"先"を。闇より恐ろしい300km/hの更に前を悠々と進むのだ。
Zの鼻先が出る。追い越される。
ついて来い、来れないのか?ならば死ね。
Zは囁く。ドミニクがこれ以上は無理だと、更に速度を寄越せと粘れば粘るほど。
焦れば焦るほど悪魔はひたひたと、ハチロクより前に上がっていく。
長いノーズが通過し、ついに運転席が並ぶ。
誰が乗ってる。誰の車だ。
一瞬目を逸らすだけで数百m過ぎ去るこの速度領域で、しかし抗えない誘惑にドミニクはチラリと右を見た。
見えない。
朝日の逆光になってドライバーが分からない。
しかしその冷徹な眼光だけは闇のなかでこちらを射刺してくる。
目があった。
そう悟った瞬間、フェアレディZが急激に幅寄せを仕掛けてきた。
80km/hくらいならば、多少ぶつけても反対側にハンドルを切れば体勢を建て直せる。
だがこの速度ではダメだ。今の修正梶以上の角度にハンドルを切れば、車は前輪につんのめる。そうなれば制御は利かない、鉄の塊とくんずほぐれつしながら路面に擦り下ろされる。
それを分かっているのか、このZは?
逃げるようにドミニクはハンドルを切る。
Zが詰め寄り、ハチロクDが逃げる。
屈辱だった。ここで立ち向かえないのが腹立たしくてしょうがない。
少しでも油断すればハンドルがブレる。そうなれば路面は巨大なスライサーに変わる。
この車だけは潰せない。
かつてないほどの極限の緊張と重圧。
そのプレッシャーを感じ取ったのか、エメットもジゼルも、固唾を呑んでドミニクを見守っている。
俺はこのZには勝てない。だが接触させれば無理心中コースだ。ではアクセルを緩めるか?
論外だ。こいつはここでなんとしても潰す。潰さなきゃならない、潰すべきなんだ。
真っ赤に思考が染まる。どこでこいつをひっくり返すか、それだけに視野が狭まっていく。
致命的だと理性のドミニクが告げた。
黙れ、と言い返す。
悪循環だ。ドミニクは思考の地獄へ足を踏み入れかけていた。
焦り、惑い、迷い、壊れる。
300km/hという魔の速度域。
ついにZが追い越す。ハチロクの前に出る。
真ん前に、悪魔のテールランプが躍り出る。
ドミニクの息が一瞬、詰まる。
どうしようもない未来が見えてしまう。
この先の未来が分かる。
その結果この車がどうなるかも。
ドミニクの視野が極限まで狭まったその瞬間だった。
救いの手は、あるいは空気を読まないものである。
『この先、400m先。左折。国道357号線』
カーナビの無機質な声が社内を震わせる。
ドミニクはその瞬間、魔法から解けた。
視界が一気に広がり、自分の居場所を思い出す。
メーターは301km/hを示す。
目の前にはZが。
だが、ドミニクの呼吸は恐ろしく静まっていた。
まるで全てがスローモーションに見える。
400m。
その距離はなんだ?
俺にとって、その距離は、その時間は、重圧からは正反対の時だったはずだ。
そう、あの10秒足らずに──"自由"を感じて、走り抜けたのではないのか。
ドミニクの口角が緩み、自然と上がる。
ジゼルは目を見開く。
目の前のフェアレディZ──"悪魔のZ"が、ついにブレーキランプを点けた。
ケツで鼻っ柱を潰そうと言うのか。やるだろうと思ったさ。
だが、もうお前の魔法は効かない。
「
僅かに右にぶれつつ、アクセルと入れ換えに急ブレーキング、左へハンドルをめいいっぱいに切りながら、サイドを一瞬引き、ギアをNへ繋げる。
一瞬の交錯だった。
Zのテールランプ手前数センチを、ハチロクのフロントサーキットが撫でる。
300km/hからの、反転ドリフト。
フェアレディZが仕掛けた絶死の攻撃を、ドミニクは紙一重でかわしきる。
フェアレディZに対して右へ並ぶ。
前を向いて、置いていかれる悪魔のZと、
後ろ向きで、悪魔を追い越すハチロクD。
Zとハチロク、その運転手の視線が再び交差する。
ドミニクはZの運転手を見た。
Zの運転手は、ドミニクを見た。
どこにでもいそうな、優しい円らな瞳に、赤茶けた短髪。
そんな優男の口が動く。
"またあおう"。
ドミニクにはその意味が分からなかった。
時が動く。
Zはまるで電車に置き去りにされる子供のように、あっという間にはるか後方へと消えていく。
ががががが!!!と後輪がタイヤを蹴りつける爆音に時間が戻る。
『残り10m、左折、国道375号線』
ハチロクが再びスピンターンし、車体を正面に戻す。その一瞬の間に三台車を追い抜いたが、気にはすまい。
言われた車線へ、ゆっくり減速しながらドミニクは腹の底から吐き出すように深い息をついた。
「.....ドミニク=トレット、落ち着いたかね?」
エメットのそんな問いにも、しばらく口を利かずに額の汗をぬぐう。
ややあって、重苦しく口を開いた。
「.....あぁ、あんなヤツは初めてだ。かきたくもない汗をかいた」
「ハンカチいる?」
ジゼルが差し出したハンカチ受け取る。
ドミニクは額を拭いながら、ジゼルに尋ねた。
「俺は焦っていたか?」
「えぇ、とても。まるで初めてレースをするチンピラみたい」
「そうか....俺もまだまだだな」
苦笑する。修行が足りない。
だがまだ油断するには早い。
『600m先、左折。国道318号線』
青い看板で『環七通り』の字が見える。
ここを更に左折し、『堀江団地』の交差点を右折、そうすれば見えてくる。
疲れからか、珍しく安全運転しようと内心決めたドミニクだが、しかし事態はそんなに単純ではなかった。
橋下の交差点に差し掛かったときに。
漆黒のボディに、見慣れない緑色の縦のラインが入ったヘッドライトのトラックが二台、正面にいた。
ドミニクは本能で悟った。
ヤツらが"エティオン"だ。
トラックが動く。見ると赤信号だ。
信号無視には大事故で返礼するのが東京の交通事情だ。
エティオンの右脇腹に向かって4tトラックが突っ込んでくる。
だが、トラックの運転席から何かが伸びる。瞬間、2tトラックが内側から破裂した。
「グレネードランチャー!」
ジゼルが叫ぶ。
ドミニクは急ハンドルで信号無視で左折する。
右からやってきた黒いタクシーにはテールランプとハザードで最低限の礼をそこそこに、フルアクセルで公道を突っ走る。
トラック二台は獲物の逃走に色めきだって後を追い始める。
「対抗火器は積んでるか!」
「積んでないわよそんなの、この車にそんな余裕はないでしょっ」
と言いながらジゼルは拳銃をこんこんと弾く。
トラックから二丁、グレネードランチャーがつきだし、構えられる。
発射。
ドミニクが右の車線へ逃げると当時に、獲物を食い損なったグレネードが炸裂する。先ほどのタクシー(トヨタ・クラウンコンフォート)が真上に火柱をあげながら炸裂。
ついで、その前を走っていた白い4人乗りの普通車(ホンダ・エアウェイブ)が爆発する。その横をハチロクDが駆け抜ける。
「連中見境がないのかね!?気は確かか!?」
「少なくも分別はなさそうだ。エメット、時空転移の用意をしろ!」
「任せたまえ、寮まで持ちこたえたまえよ」
「当然だ!」
言うや否や今度は左の車線へ逃げる。
同時に路面でグレネードが炸裂、アスファルトがめくれあがり、赤いファミリーカー(マツダ・CX-5)へ降り注ぐ。バランスを崩し、横転するその車を、エティオンは構わずトラックで撥ね飛ばす。
「正気じゃない」と呻くエメットに返ってきたのはまともじゃないグレネードの雨。
「つかまれっ」
怒鳴りながらドミニクがハチロクDを右へと滑らせる。
慣性ドリフトで交差点へ侵入し、そのわずか後ろをグレネードの爆発が追う。
トラック、タクシー、乗用車から歩行者まで。辺り構わずに炎の雨が降り注ぐ。
路面をガタガタにする悪魔の雨からしかし、ハチロクDは逃げ切り、路地へと入っていく。もう寮まで目と鼻の先だ。
そんなときだった。再びドミニクのケータイが震える。
ジゼルが名前も確認せずにワンコールで出た。
「ショーン!」
答えたのはレイコだった。
『あ、繋がった!ジゼル?今どこ?』
「寮の前!もう飛ぶわ!」
寮と聞いて、ショーンの声が割り込む。
『寮?てことは───ああ、いた!』
その言葉と同時に、目の前の角から、黒いマッスルカーが現れる。
フォードマスタング67年式。ショーンの車だ。
『こいつらは俺が片付ける!アンタらは心置きなく飛んでくれ!』
ショーンのそんな叫びとは裏腹に、マスタングの背後からはあのエティオントラックが現れる。
このままでは挟撃だ。
「スイッチを入れろっ」
ドミニクが低い声で怒鳴りながら左へハンドルを切り、寮の入り口を捉える。
だがその隙を見逃さずに、ドミニクを追ってきたトラックが加速する。横腹を突くつもりか。
『させるかぁぁぁぁあ!!』
電話から叫び声がすると同時に、マスタングがハチロクの後ろを通り抜ける。
通常の速度ではない、あれは───恐らくニトロだ。
ハチロクDのタイムサーキットに光が灯る。
最上段には『SEP(9月):01:2015:am:1:30』とデジタルが瞬く。
EVの特性である初速からの最大トルクにより、一瞬で140km/hを叩き出しながら寮へ突入する。
『──頼むぜ、ハンを救ってくれ』
そんな一言が電話から響くのと。
ハチロクDが目映く発光しながら時空の彼方へ、炎の轍を残しながら走り去るのと。
その後ろで、マスタングがトラックの運転席へ突き刺さるのは、全く同じ瞬間であった。
ド派手にやりました、東京カーチェイス!!
10話以降、レースしたり峠攻めたり湾岸走ったりとやりたい放題やった2021東京編もこれにて〆、次回からはいよいよ2015東京編、スカイミッション/東京ドリフト時空となります!
かつてのBTTFが夢見た『未来』である2015年がもう7年前。
我々は、あの世界の何を叶え、何を逃したのでしょうな。