さてさて2015年編、ようやく章タイトル回収のところまできましたね、今回は仕込みです。なんか聞き覚えのあるキャラも出てきます。
ここからは、『ワイルドスピード/東京ドリフト』及び『ワイルドスピード/スカイミッション』と時系列を共有し、そして一部『バックトゥーザフューチャーpart2.』のネタが入る時間になってきます。物語も進捗7割りを越えました!俺は!最初から!クライマックスだぜぇぇぇええ!!!
え?それは電車の人だろ?特撮混ぜんなって?そいつぁヘビーなツッコミだな。
登場人物
ワイルドスピード
・ドミニク=トレット(ヴィン=ディーゼル)
・ジゼル=ヤシャール(ガル=ガドット)
・ブリクストン=ロイ(イドリス=エルバ)※写真
バックトゥーザフューチャー
・エメット=ブラウン(クリストファー=ロイド)
車輌
トヨタ・AE86-"D"スプリンタートレノ(タイムマシン仕様)
通称:ハチロクD
──2015年 9月1日AM 01時30分。
夜のベイカインド寮前の駐車場で、三度の爆発。
爆心地から異形のハチロクが飛び出すと、すぐさま後輪を滑らせて、横付けに停まった。
両サイドのガルウィングドアが跳ね上がり、ゆっくりと人が降りてくる。
心なしか、どこか呆然と、呆気にとられた様子で、ハチロクDの通った道を見返してドミニクは口を開いた。
「......飛んだのか」
一瞬にして早朝が夜中になっているのだ、飛んでないはずはなく愚問でしかないのだが、やはり声に出さずにはいられなかった。
初めて飛んだときは思い出のなかを走るようであまり違和感を感じなかったのと、ジゼルを助けることに頭が一杯で他に気が回っていなかったのもある。
"過去の世界"というものを肌で感じたのはこれが初めてだったのだ。
エメットはその点慣れたもので、一々過去に来たと言って感傷には浸らない。ただ先程の攻防があった寮前入り口の方をぼんやりと眺めたまま、心を2021年に置いてきてしまっている。
「ショーンは......無事なのだろうか。トラックへ体当たりしたが....」
確かめる術がないと知りながらも、そう呟かずにはいられない。現在点は2015年、ショーンがトラックへ体当たりするのは今から六年後だ。
共に降りたジゼルは遠い目をして「信じるしかないわね」と返す。
「....さ、仕事をしましょう」
「あ、あぁ。そうだな。来たまえ」
ジゼルの一言に我に返ったエメットは二人を呼んで歩き始めた。
「何をする?」
ドミニクが問いかける。ここからはエメットの領分だ。
「まずはマーティの行動を洗わねばならん。マーティは9月12日に消息を絶った。もしも私の調査が正しければ──12日にマーティは拐われる。そして、マーティを拐った連中と、私の家族を捕らえている連中は同じ組織だ」
「確証はあるのか?」
「あぁ。先程のカーチェイスで確証を得たよ」
ベイカインド寮のエントランスに入るエメットに、ただついていくドミニクとジゼル。
彼が何をする気なのかは二人ともよく知らされてはいなかった。ハチロクDを作る傍らでエメットは独自に調査をしていたのは知っていたが、その詳細については『相応しいときに話す』と言って明かされていなかったのだ。
寮の階段を上る三人の会話は続く。
「12日の夜、寮の前を変わったバンが通るのを見たという目撃談があったのだ」
「変わったバン?」
「真っ黒に塗装され、ヘッドライトは緑色をした縦ライン。みたことの無い車種だったとな」
その特徴にドミニクとジゼルの目の色が変わる。
真っ黒のボディに、緑色のヘッドライト。
つい先程、そんな車に追いかけ回されたばかりではないか。
ドミニクは先を行くエメットを見上げた。
「エティオン、なのか」
「その通りだ。これで線と線が繋がったわけだな。マーティを拐ったのはエティオンだ。であれば、私から家族を取り上げたのもエティオン。奴らと同じ車を連中は保有していた」
「......敵がようやく明白になったわけだ。アメリカを脅して俺のファミリーを狙ったのも....」
「恐らくはな。....やはり、巨大な組織だ」
「それで?これから何をするの?」
三階の踊り場を折り返したところでジゼルが尋ねた。言っても現在深夜一時だ。
何をするのにも遅すぎるのではないか?
「今晩、マーティは会社に泊まっていることが分かっている。勤怠記録を調べたのでこれは確定だ。なので今夜マーティは部屋にいない。その間に、部屋に忍び込み盗聴機や盗撮機の類いを探す」
「なぜ言いきれるの?」
「エティオンは用意周到だ。彼らは12日にマーティを拐うとき、彼がカメラから消え、完全に一人になる瞬間を精確に把握していたはずなのだ。でなければバンの目撃以外に証拠を無く人を消す等という芸当は出来まい。つまりだな、私の予想が正しければ部屋に盗撮機、盗撮カメラの類いは必ずあるはずなのだ。彼の生活習慣を完全に掌握しておかねばならんからな」
「それで、探してどうするんだ。片付けるのか?」
「いいや、逆だ」
四階でようやく階段を上りきったのか、廊下に出るエメット。彼は懐から自撮り棒のような、折り畳み式の棒と、何か小さく折り畳まれたシートを三枚取り出して振り返った。
「我々もその映像を見られるように改造する。無論、エティオンには気づかれんようにな」
※
マーティの部屋は、中年の独身寮のイメージに違わず、あまり片付けのされていない雑多なものだった。
電気はつけること無く、頭から布を被ったオバケが三体、部屋の中へと侵入する。
「いやはや、ありがとうジゼル。私は最悪ドアノブを壊すことしか出来んのでな。実に助かる」
先頭の布オバケ──エメットは部屋の中へとずんずん進み晴れやかに言うが、対するジゼルは苦虫を100匹噛み千切っていた。
「....私は今何をやってるのかしら。目的の分からない任務なんて一杯あったけど、ここまで空しい思いをした鍵開けは初めてよ」
「しー!静かにしたまえ。君らの姿は現在私の開発した特殊迷彩マントで見えなくなっているが、音声は拾うのだ」
頭から被っていたのはエメットがハチロクD制作の傍ら開発していた、光学迷彩マントだった。しかし一方向からの光を素通りするだけの代物で、光源は無い方が望ましいという半端な代物なのだが、暗視ゴーグルと併用すれば、盗撮カメラ程度の目は欺ける。
マントの中で、エメットは先程の棒を突き出した。
それに合わせて、ジゼルとドミニクはそれぞれ道具を取り出す。ジゼルは精密ドライバー、ドミニクは小さな指サイズの黒いシール。部屋に入る前に渡された、通信を傍受し、任意の場所へ送るマイクロチップが入った特殊なシールらしい。
「それでは始めよう」
そういうや否や、エメットが棒を屋根や壁に向かって振り回し始めると、エメットのインカムに『ぴっ、ぴっ、ぴっ、ぴっ....』と短調な電子音が鳴り始める。
やってる行為は空き巣のそれで、やってる目的は冴えない中年の生活覗き見に便乗するためだ。
ジゼルとドミニクはどうにも乗り気になれないながらも、エメットの指示通りに動き始めた。
※
作業を終えたハチロクDが向かったのは都内のとある高級ホテルだった。
エメットが事前に『ハチロクDを隠し持つのに最適なホテル』をピックアップして、予約状況の情報も仕入れていたため、飛び込みでも難なく部屋を確保することが出来た。
「マーティと接触すれば早いだろう、なぜここまで遠回りをする?」
ドミニクがハチロクDに持ち込んだケーブルやらPCパーツなどを部屋に持ち運び、エメットに鞄ごと手渡す。
「それでは未来が変わる。未来が変われば現在のエティオンの動きは全く異なるものになるだろう。具体的には我々に対処するようにな」
鞄を受け取り、テーブルの脇で中身を空け、中からケーブルやら何やらの電子部品を引っ掻き出しながら、テーブルに置いていたpcと接続し始めた。
「そうなればお手上げだ、マーティの誘拐を早めるかもしれんし、中止するかもしれんし、或いはまた別のファクターが干渉を受けてエティオンが思わぬ成長を遂げるかもしれん。今まで口酸っぱく言ってきたが、過去を変えるとはそれほど重い行為なのだ。特にこのような、予定に全てを預けている場合はな」
「"運命の日"までは監視だけか」
「その通りだ。そこから逆算的にエティオンの動きをあぶり出す。ハンの救出については今さら反対する気はないが、同じようにマーティの件は手出し無用で頼むぞ」
「了解だ。住み分けでいこう」
部屋のドアが再び開く。見ると、ジゼルがカートをひいて入ってくる。
カートの中にはトランクケースが2つ。
彼女はそれを軽そうに片手にひとつづつ取り出すと、ベッドに放り投げた。
中に入っていたのは色とりどりの服だった。
タンクトップからズボンにスカートといった普通のものから防弾ベストやら、果てはワインレッドのドレスからレースのドギツいジュエリーまで。
男二人が呆気にとられる中平然とそれらを広げてはクローゼットへしまっていく女。
「.....その服はなんだね?」
どこへ視線を向けていいやら分からないまま、エメットは目を剥いて恐る恐る尋ねてみる。
ジゼルはどこか醒めた目でエメットを見返した。
「女は服が命よ。どこに行くにも、どこに潜るにも、誰に合うにもね。....勝負服、持ってきて悪い?」
「いや」
エメットは言い淀んだ。これからマーティを救いエティオンを出し抜くという重要なミッションが控えているのだぞ、とは言いづらい圧を感じた。
ジゼルの言い分は正しいが...誰に見せるつもりでトランク一杯に持ってきたのかは、ある意味明白だ。
いじらしいと取るべきか、辛抱ならんのかと言うべきか。
迷って迷い....エメットは寛大に笑ってみせた。
「とても良いと思うぞ、あぁ。存分に着飾ってくれたまえ」
※
────2015年 9学6日 PM19時00分
ハンの命日まであと三日、マーティの運命の日までは6日と迫った日。
ドミニクとジゼル、エメットの三人はルームサービスで取り寄せた料理に舌鼓を打っていた。
「情報は集まったか?」
ドミニクが口を開くと、サーモンの寿司を乱暴に口に放り込む。
アメリカのスシとはやはり違う。こう、臭みはないのに魚らしさがあるのだ。あとで醤油も試してみよう。
「マーティの生活サイクルはおおよそつかめた。会社へ行き、泊まり、仕事をし、週二で帰って寝る。やはり歴史は変わるものだ、営業だと思っておったらエンジニアとして働いとるようだ。私の影響かな」
そう言いながら口にするのはカツカレーだ。
西部時代のお粗末な干し魚と比べればあらゆるものがご馳走だ。何より水が最高に美味い。
「ハンも相変わらずよ。ガレージでマーチを食べて、ショーンをつれ回し、ドリフトを鍛えて......ヤクザとつるんで、楽しそう。」
ジゼルが食べているのはステーキだ。控えめな量ではあるが、一番脂が乗っている。
「たのしそう」、と言うのと同時にステーキに突き刺さったフォークが妙に勢いづいてて怖いのだが気のせいだろうか。
「エティオンに目立った動きはない。盗聴機やカメラが取り替えられた様子もない。だが....周囲を嗅ぎ回ってる人間が何人かいた。何か知ってるかもしれん」
ドミニクの一言に反応したのはエメットだ。
カレーを飲み込み、口を開く。
「写真はあるのかね?」
「あるぞ。これだ」
スマホを取り出して、写真を呼び出すとテーブルに置く。いずれもパーカーやTシャツなど、日本に溶け込む服装だが雰囲気はたしかにカタギのそれではない。
その中で一人、エメットは目を見開いてカレーのついたスプーンでスマホを指した。
「っ、この男は知っておる」
「黒人?」
「あぁ。ブリクストン、と名乗っておった。私を追いかけ回していた追跡班のリーダーだ」
「確かか?」
「あぁ。.....この男は強い、元MI6で、エティオンのエージェントだ。今の我々では火力面でも、状況面でも勝てん」
「それはどうかな。殺れるかもしれない」
「焦るな、オリジナルは今から五年後に死ぬ。それが決定しておる以上、今の最上策は気取られんことだ」
「.....そう上手く行くかしら」
ジゼルはステーキをほほ張りながら怪訝そうに眉を潜めるが、ドミニクは首を振る。
「エメットを追える、という事実は重い。ヤツは俺と同格かそれ以上と見るべきだな」
「.......」
それを聞いてエメットは視線をさ迷わせながら、カレーを再び口にいれるしかなかった。
「それで、プランは?ブリクストンとやらは脅威だけど、私たちにも仕事がある。でしょ?まずはハンよ」
「ハンの行動次第だ。一晩中ガレージを空ける時はあるか?」
ドミニクの唐突な問いに、ジゼルが動く。
スマホを素早く操作して、表示させたのはハンの行動記録を記したカレンダーだ。
「ハンは今、ショーンとかレイコとかと連れ立って屋上サッカーに行ってるわ。最近はそのあと決まって峠へショーンにドラテクを叩き込みに行ってる」
「朝帰りか」
「昼帰りね。ショーンは出席日数とか足りるのかしら?」
「さぁ....どうせハンのガレージを継ぐんだ、高校など関係ないだろう」
「それもそうね....で、それがどうかしたの?」
ジゼルはスマホを引っ込めながら尋ねる。
ドミニクはイカの寿司に醤油をつけて、口に放り込む。
たっぷり味わって....決断した。
「ハンの車に細工する。今から決行だ」
以上!仕込み回でした!!
日にちは不明ですが、ドミニク達が飯食ってるとき、ショーンとハンらは屋上サッカー場へ遊びに行ってます。
有名な『人生は簡単だ、アクセルを踏んだら後悔するな』のシーンですね。ハンがあの言葉をキメ顔で言った瞬間と、ジゼルがステーキにフォークをぶっ刺した瞬間が同じだったら面白いなって思ってました。
え?あのシーンのあとハンってRX-7に乗ってギャル相手にドーナツターン決めてたろって?あぁ、そうですね。
でもあれは翌日の出来事なので、同じ夜だろうと直後っぽいカットだろうと、誰がどう見ても同じ日の夜に見えて誰がどう言おうと、あれは翌日の夜の出来事なので、ハンのガレージにはRX-7、置いてますよ。置いてるんですよ、いいね?