ワイルド・スピード/X(クロス)ファイア   作:タチガワルイ

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毎日チャレンジ2日目です。さっそく評価8に投票されてたことに驚きが隠せません。ありがとうございます、これで私も生きていける。
というわけで今回から少し人が増えます。
登場人物からお察しですが、現在の話は『ワイルドスピード/ジェットブレイク』時空となっております。が、ジェットブレイクとは全く展開の異なるパラレルとなってます。
.....注意書ばっかやな。

登場人物
・ドミニク=トレット(ヴィン=ディーゼル)──ワイルドスピード
・エメット=ブラウン(クリストファー=ロイド)
──バックトゥーザフューチャー

New
・レティ=オルティス(ミシェル=ロドリゲス)
──ワイルドスピード
・ブライアン/リトルB(わからなかった)
──ワイルドスピード/ジェットブレイク

登場車輌
・70年式ダッジチャージャー『タントラム』
・DMC-12デロリアン(タイムマシン仕様)


チャプター2.

 

「で?なんだあの車は。UFOサークルのネオンカーか?」

 

渓谷沿いの峠を超えた平地のハイウェイで、ダッジチャージャーは自前のフックでデロリアンを牽引していた。

車一台引きずっても小揺るぎもしない安定性と馬力は、まさにマッスルカーの権化とも言える。

 

「ネオンカーではない!あれはだな......うむ」

 

運転席から飛んでくる三白眼に、エメットは即座に否定語を返すものの、言い淀む。

 

「言えないのか」

 

「いや、言える。言えるが....驚かないでくれたまえよ?」

 

「それは聞いてみなきゃ分からねぇな。しょぼいビックリ箱もあるもんだ」

 

軽い調子で返すと、それが効いたらしい。

エメットは軽く咳払いした。

ゆっくりと言い聞かせるように、彼は声を発した。

 

「あれはな──タイムマシンなのだ」

 

........ほう。

 

ドミニクは、瞬きをした。

車は街中に入っていく。速度が落ちた。

 

「....そう言うコンセプトのネオンカーか」

 

「ネオンカーではないのだ!なんてことだ、ああ、やはり信じてはもらえんな!」

 

エメットは天を仰いで喚くが、当然だろうとドミニクは思う。

 

「信じる信じない以前だ。論外だろう。老いはよくないな」

 

その話はやめたまえ。エメットは憮然とそう切り返した。

 

「君も見たはずだ!あのハイウェイで君は一人で走っていた、そうだろう?」

 

「.......あぁ、そうだな」

 

嘘だと決めつけながらも、その事実を突きつけられれば息が詰まる。

そう、確かにあの路では俺は独りだった。しかし、それが突然....

 

「それが突然、私とデロリアンが目の前に現れた!閃光と共にな!これも否定できん事実だ、そうだろう」

 

苦虫を噛み潰しながら、ドミニクは頷くしかなかった。

 

「.....あぁ、そうだ。だがそれとタイムマシンだって話は」

 

「繋がるとも。タイムマシンだから時空を超え、あの場所に『出現』出来たのだ。──まぁもっとも、今や1マイルたりとも出せん荷車となってはいるが」

 

「..........そう言うトリックだとも言い返せるな。なんにせよ、そんな眉唾、俺は信じない」

 

タイムマシンだのなんだのと喚くこの老いぼれは、適当に知り合いの車屋に預けてしまおう。

交差点を曲がり、埃っぽい道路を抜けていく。

車屋はもうすぐだった。

 

「信じるか否かは些細な問題だ。重要なのはそれが事実である、というその一点のみ。それに、君は否応にも信じるしかなくなるだろう」

 

妙に力強い、断言だった。

チラリと隣のエメットを伺う。

彼はテンガロンハットを外してこちらを見据えていた。

 

嫌な予感がした。その予感は当たっていた。

 

「頼みがある。どうか、あのデロリアンを直してはくれないだろうか」

 

簡単に言ってくれる。ドミニクはそう苦笑した。一昔前なら引き受けたかもしれない。

だが今は、守るべき存在がいるのだ。

 

「....俺はあいにく車屋じゃあないんでね」

 

「ああ知ってるとも。だが君以上に車を知るものもそうはいない、そうだろう?」

 

聞きたくないと、ドミニクは手を振った。

ブレーキを踏み、赤信号で停車する。

ダチのディーラーの看板はここからでも遠目に見える。この信号が青になれば、すぐにそこにたどり着く。

 

「俺は五年前、子供を授かって決めたことがある。面倒事、厄介事、そしてただ事からは足を洗うってな」

 

信号待ち時間が妙に長く感じた。それは、尚も食い下がる老人のせいだろうか

 

「ではこうしよう、これはただのレストアだ。君はたまたま拾った車を修理するだけ。パーツや道具と言った諸経費は私が負担しよう」

 

「妙だな、それだけの余裕があるんならなおのこと俺じゃなく、そこのディーラーがお似合いだ。それに車のレストアと言ったか?″タイムマシン″じゃなかったのか?」

 

「信じるのだね?」

 

「戯言に付き合ってやってるんだ」

 

「なら信じたまえ。私が君を信じるようにな」

 

エメットの先ほどからの妙に開放的な態度はなんなのだろうか。

この見透かされているような、それでいて全く見通せないような気味悪さは、″あの女″にどこか似ている。

 

「アンタが俺を信じる?俺とアンタはであって1時間と経っちゃいない。それで何を信じてるんだ?」

 

「それは──」

 

エメットが口を開いたとき、ドミニクのポケットからくぐもった音楽が流れてきた。

この着信音に設定している人はただ独り。レティだ。

しかし今は非常にややこしい人物を乗せ、さらにややこしい車を牽いている。

エメットを一瞥して、顔をしかめながらスマホを取り出す。

信号が青になり、ダッジは緩やかに走り出した。

 

「もしもし、俺だ。どうしたレティ」

 

『あぁ、ドム。いつ頃帰ってこれそう?』

 

「もうすぐだ。途中で車を拾って、オーナーに修理を頼まれてた」

 

『車を拾った?故障?』

 

「ブレーキオイル漏れだ。だが色々....盛ったデコレーションカーでな。ややこしいからジョージのガレージに預けて帰るよ」

 

そう、初めからそうすればよかったのだ。そう思っていたのだが、レティの反応は些か予想とことなる、怪訝なものだった。

 

『...引き受けないの?頼まれたのに?』

 

ドミニクは首を振った。それが雪だるま式で大きくなっていったのだ。

 

「静かに暮らす、そのためには面倒は避けるのが一番だ」

 

『ドム。でもアンタはそんな理由で誰かの頼みを断るようなことしたことないでしょ。″面倒″をみる、そうやってファミリーを広げたのがドミニク=トレットのはず』

 

「.......だが」

 

『引き受けて』

 

レティは簡潔に言い切った。

しかし、すこし調子を上げた声で、まるでおもちゃを待つ子供のように続けた。

 

『車を拾ったのも何かの縁よ、...それに盛ったデコレーションカー?っていうのも気になるし、そのオーナーとも話してみたいわね。なにより久々に別の車を触れるんだ。リトルBにも言い勉強になるよ、いつまでもトラクターのクラッチ修理じゃ退屈、でしょ?』

 

思わず、ドミニクから笑みが溢れた。

この快活さに惚れたんだなとしみじみ思い出す。

肩を竦めて返事を返した。

 

「....ああそうだな、だが覚悟しとけよ、俺が言うのもなんだが、マジでぶっとんでるぜ」

 

『へぇ、なにが?』

 

「全部がだ。....20分で着く。ガレージの準備をしておけ」

 

『りょーかい』

 

通話を切る。その手は軽やかで、どこか清々しさすら宿っていた。

 

「話は着いたかね?」

 

エメットが尋ねる。まるで答えがわかりきっていたかよような余裕さだ。

あぁ、とドミニクは答えて、シフトレバーを3に叩き込んだ。

アクセルを踏むと、黒のダッジがグン、と加速する。

 

「気が変わった。──引き受けてやるよ」

 

あっという間に80km/hに。ディーラーの看板横を勢いよく駆け抜けたダッジチャージャーは、一直線に町の外れ──仮住まいの農場へと砂ぼこりを巻き上げながら猛進した。

 

 

夕刻、ドミニクの農場に到着すると、オーバーオールを着た黒髪の女と、その脇で女にしがみつく男の子が出迎えてくれた。

 

「ただいま、レティ。ただいまリトルB。パパが帰ったぞ」

 

「おかえり、ドム」「おかえりパパ...」

 

家族とのハグを交わすドミニク。レティも抱きしめ返すが、視線はすぐにドミニクの背後、ダッジの助手席から降りたテンガロンハットの老人に向けられた。

カウボーイを思わせる風貌のその人物に、レティもやはり眉を潜めた。

 

「....あの人が例の?どう見たってカウボーイかぶれなんだけど」

 

「あぁ、なのにSFデコレーションカーのドライバーだ」

 

「まさか、イルミネーションした馬車を拾ったんじゃないよね?」

 

「俺も最初はそれを疑った」

 

ハグから離れ、傍らのリトルBを抱き上げる。

リトルBは怖いのか、それとも困惑しているのか、「あのひとだれ?」とすら聞くことなく固まっている。

人見知りが激しい年頃だ。

 

「やぁはじめまして、私はエメット=ブラウン、科学者です」

 

「どうも...私はレティ。ドミニクの妻です」

 

「どうもよろしく。お美しい方だ」

 

おずおず差し出されたレティの手をがっしり握って力強く振るエメットに、既にレティの頬がひきつっていた。

 

「口説くなら帰ってもらうぞ」

 

エメットの社交辞令にドミニクがジョークで反撃すると、エメットはそれは申し訳ない、というように肩を竦めてレティから手を離した。

 

「早速だけど、車を見せて」

 

「あぁ!もちろんだとも」

 

レティを先導し、ダッジの後ろに回り込んだレティの表情は、そのデロリアンの有り様を見るや否や、みるみるうちに無へと返っていく。

それを見たドミニクは、リトルBを抱き上げたまま、半ば満足そうに口角を上げた。

 

「な?だから言ったろ。全部ぶっ飛んでる」

 

 

ガレージの中に搬入したデロリアンを、ドミニクがジャッキで上げていく。傍らでリトルBは作業台から工具を持ち上げては順番通りに戻す遊びをやっている。

その様子を眺めながら、エメットは溢した。

 

「かわいいお子さんだ」

 

「でしょ?ブライアンよ。我が子同然」

 

レティもまた微笑ましげにそう返す。

その横顔は心底幸せそうだったが、エメットには引っ掛かる点があった。

 

「我が子″同然″?産んだのではないのか?」

 

あぁ...とレティが言い淀む。聞いてはならない事だったか。エメットはそう察して「いや、いい」と言おうとしたが、その前にレティは口を開いた。

 

「引き取った、かな。....私たちの大切な人の子なんだ。可愛いっていうのは本当だけど....私達はあの子に、そしてその母親に責任がある」

 

「責任...」

 

その一言に、なにがあるのかエメットは察してしまった。

彼の上がった眉が、緩やかに落ちた。

 

「責任、か。私にも耳の痛い話だ」

 

「アンタにも心当たりが?」

 

「あぁ。こう見えて私にも家族がいてね。妻は美しく、子供たちは可愛い。彼女たちを守る責任が、私にもある。しかしそれが果たせているかは....」

 

「....どんな家族なの」

 

「見たいかね?実は写真があるのだよ」

 

ポケットから財布を取り出そうとしたとき、ガレージからドミニクが出てきた。

 

「おーい、レティ!来てくれ」

 

「あ...」

 

会話の途中だと言うのもあり、レティが迷う素振りを見せるが、エメットは朗らかに言った。

 

「行きたまえ、私も電話の用を思い出した」

 

手に持っていたのは、珍しい折り畳み式スマホ。

毒気を抜かれたように苦笑すると、一言「悪いわね」と言って、レティはドミニクの元へ歩いていく。

それを見送って、スマホを開いたエメットは、素早くダイヤルを押して耳に当てた。

 

「もしもし?君に″依頼″があるのだが....」

 

 

 

「どんな感じ?直りそう?」

 

「絶望的だな」

 

レティの問いに、ドミニクは嘆息混じりに答えた。

 

「漏れてたのはブレーキオイルだけじゃない、エンジンオイルだ。下から覗いただけだが、シャーシの劣化もひどい。あちこち歪んで....ヒビが入ってる」

 

手にしたペンライトを作業台に置き、変わりにスマホ画面を呼び出す。

そこにはひび割れを示す写真が数枚収められていた。

レティもこれには顔をしかめた。

 

「あぁ、ひどい」

 

「あぁ。相当な寒暖差の中を何度も往復しなきゃこうはならない。おまけにだ、エンジンオイルが抜けているからには、オイルを足して、パッキンかパイプを確認しなきゃならないが....」

 

車の後部に移動し、軽くフレームをノックする。

後部には配線やらコンデンサーやら、よくわからない蓋やら挙げ句巨体な排気口とおぼしき設備が取り付けられてぎゅうぎゅうに詰め込まれていた。

 

「デロリアンのエンジンは、この真下だ。こいつはR(リアエンジン)R(リアドライブ)車だからな。つまりエンジンをどうこうするにはこの飾り全てとっぱらわなきゃならん。エメット爺さんの意向もそうだが....」

 

「人手が足らない?」

 

「道具もな」

 

「....呼ぶ?」

 

何を、とはレティは言わなかったが、軽く振って見せたスマホを見るまでもなく、ドミニクも同じ結論に達していた。

 

「テズらに手伝ってもらおう」




読んでいただきありがとうございます、
次回は明日の10時頃、更新を目指します。
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