ワイルド・スピード/X(クロス)ファイア   作:タチガワルイ

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遅くなりました!!毎日チャレンジ4日目!!

今回は登場人物も車の数も水増ししていよいよ『ワイスピ』っぽくなって参りました!!
楽しんでいただければ幸いです

登場人物
ワイルド・スピード

ドミニク=トレット(ヴィン=ディーゼル)
・レティ=オルティス(ミシェル=ロドリゲス)
・ブライアン=トレット/リトルB(わからなかった)
・テズ=パーカー(リュダクリス)
・ローマン=ピアーズ(タイリース=ギブソン)
・ラムジー(ナタリー=エマニュエル)
ルーク=ホブス(ドウェイン=ジョンソン)


バックトゥーザフューチャー
・エメット=ブラウン(クリストファー=ロイド)

トランスポーター
・フランク=マーティン/デッカード=ショウ
(ジェイソン=ステイサム)


登場車輌
・DMC-12デロリアン(タイムマシン仕様)
・アウディA8 『6.0クワトロ』
・ホンダ・アキュラNSX
・カスタムピータービルト(レッカー車)
※恐らくワイスピ/スーパーコンボオリジナル


その他パトカー、装甲車


チャプター4.

ドライバーがゆっくりと、しかし一切の隙を見せずに立ち上がる。

中肉中背の引き締まった身体にフィットする糊の効いたスーツ、綺麗に剃られた頭髪と髭に、ギラついた細い双眸。

形だけは両手を上げた彼は、開口一番に毒づいた。

 

「....くそ、テメェらだって知ってりゃ来なかったぞ」

 

彼らは銃を下ろした。

それは決して相手が両手を上げたからではなく、よく知った、見知った顔だったからだ。

 

呆然とするレティとローマンのとなりで、ドミニクは、その男の名を呼んだ。

 

「.....デッカードか?」

 

「あぁ、だが今は『フランク=マーティン』だ。この仕事をやるときはそれで通してる。お前らもそれで通せ」

 

「は?"フランク"?だったらもっとフレンドリーな顔しろよ。無愛想が服着て歩いてんぞ」

 

ローマンの茶々にデッカードは一瞥して「黙ってろ、その広いデコ凹ますぞ」とだけ恫喝した。

すぐさまドミニクとレティの間から飛び出してきたのはテンガロンハットの老人、エメットだった。

 

「君がフランクか!君を待っていたんだ!私だ、私が依頼主だ!」

 

「アンタが呼んだのか?」

 

「そう言っただろう!彼は私の客だ、銃を下げたまえ!」

 

ドミニク達は言われた通りに引き金から手を離して安全装置をかける。

フランクの方へ歩いていくエメットを見送り、ドミニクは諦めたように背中を向ける。

 

「行くぞ」

 

「良いの?」

 

「良いだろう。アイツの客だ。ディナーの準備をしておこう」

 

家に戻っていく三人とは反対に歩み寄ってくるエメットに、デッカード....改め、フランクは短く問うた。

 

「アンタが依頼人?」

 

「そうだ。私は──」

 

ぴっ、とフランクの指ぬきグローブがピースサインを作る。

 

「ルール2。依頼人の名前は聞かない」

 

はじめは目を剥いてポカンとしたエメットだが、あぁ、なるほどと納得する。名乗るなと言うわけか。

 

「あぁ、そうか。んん...わかった、良いだろう」

 

「品は?」

 

「これだ」

 

渡されたのは白い洋封筒だった。

 

「....手紙か?」

 

「そうだ」

 

「こう言っちゃなんだが....俺は郵便屋じゃないぞ?」

 

「承知しているとも。だがこれは可及的速やかに、かつ本人へ直接届けてもらわねばならん。ポストに出したら何週間経つか分かったものではないからな」

 

「わかった。で、場所は?」

 

「住所はこのメモに書いてある」

 

手渡してきたのは二つ折の小さな紙。フランクは素早く開いて視線だけで内容を読む。

 

「そのメモの住所に、マーティ=マクフライと言う男が住んでるはずだ。その人物に直接、手渡してほしい」

 

「直接?」

 

エメットの注文に、フランクは聞き返した。手紙なのなら、ポストに投函でも良いのではないのか?

 

「そうだ。彼の家には妻と子供がいるが、彼女らではなく、マーティ=マクフライ本人に、直接、手渡すのだ。そうでなければこの手紙は意味がない」

 

「わかった、良いだろう。本人に直接手渡す」

 

「そうしてくれたまえ。そして当然だが中身は...」

 

「見ないさ。俺のルール3に抵触する」

 

「よろしい。では、これは報酬だ」

 

分厚い茶封筒を、エメットは懐から取り出してフランクの胸に預けた。

 

「100万ドルだ。電話で交渉した金額きっちり、満額入っている」

 

この行動に、フランクは眉を潜めた。

 

「....報酬全額を、前払いで雇い先に送る。この意味、アンタ解ってるのか?」

 

「無論だとも。『持ち逃げされても文句はない』、だな?文句がないとは言わないが、私は成功報酬を後払いできる確証がない。まぁ...これは信頼の証だと思ってくれたまえ」

 

それを聞いて、フランクは茶封筒を丸々、エメットに突き返した。

 

「信頼ってのは、積み重ねるもんだ。押し付けるもんじゃねぇ。俺は俺の信頼のために仕事をする。そして、前金と報酬の二段払いは、その証明だ。こいつは俺の口座番号だ」

 

フランクは数字を書き込んで手帳を破ると、茶封筒にねじこんだ。

 

「振り込んどけ。確認したら届けに行ってやる。そして仕事を終えたら連絡する。そしたら残りを払え。それが俺のやり方だ」

 

「それは困る!私はその頃にはこの時代にいないかもしれんのだぞ!」

 

「だったら死ぬ気で生きるこったな。それが雇い主の責任だ」

 

走り去っていくアウディの背中を、エメットは悲しげな、しかし苦しみともとれるような険しい顔で見送った。

 

 

 

 

デロリアンの修復作業はぶっ通しで数週間に及んだ。

 

テズが『手術』と呼んだのはまさにその通りであり、ドナーカーまで取り寄せてシャーシから交換、エンジンも原子炉は完全にブラックボックスであり手を出せず、パーツのいくつかはエメットの指示のもと引いた図面で業者に新造してもらったものすらあり、費用はローマンをして「デッカードのアウディ二台は買える」と言わしめたほど。

 

しかし、ドミニク達はやり遂げた。

夜明け直前の午前5時。ガレージの中で並ぶファミリーの面々は、満足そうにその『作品』を見つめていた。

 

「これは....想像以上だよ、ドミニク=トレット」

 

「そう言ってもらえて何よりだ」

 

新車同様にピカピカになったタイムマシン・デロリアンのボンネットに触れながら震えるエメットに、腕組みで応じるドミニクもどこか誇らしげだ。

 

「レース屋の意地ってやつで、あちこちチューンナップもしてやったぜ」

 

「エンジンをまるごと変えられりゃ文句はなかったがな。デロリアンのエンジンは....スポーツっつーには、あまりにもショボいから」

 

テズの自慢に乗っかるローマンは頬のオイル汚れを手で拭う。手についたオイルが頬の上を伸びただけだが。

 

「代わりにタイヤを支えるサスペンションはレース用のにして?シャーシとかフレームは一部新品で溶接、ホイールは細くて軽いやつに変えて、ブレーキドラムも新品で.....あとなんだっけ?」

 

「インパネの速度メーター、タコメーターも取り替えて、制御コンピューターも専用の最新型をプログラムしたでしょ?」

 

「そうそう、それやったの私」

 

ラムジーとレティが口々に出す内容は、レストアというよりも改良と呼ぶにふさわしいものだった。

ドミニクはデロリアンのキーを、エメットに手渡す。

 

「...これでコイツは、晴れて『10秒車(10scons car)』の仲間入りだ」

 

「ドラッグレースをする気はないが、その速さはありがたい!君に頼んでよかった」

 

鍵を受け取り、そう返す。

 

「で?コイツは"タイムマシン"ってやつなんだろ、コイツは....光の速さとか、越えたりすんのじゃねぇのか?ビャー!ってよ」

 

ローマンはうずうずしながらそう尋ねた。はやくタイムトラベルの瞬間が見たくてたまらない。そのためによくわからない機械まで指示通りに直したり、作ったり、設置し直したりしたのだから。

 

「いや、このデロリアンは88マイル(約142km/h)で時空転移できるぞ」

 

「たったの?オイオイそれじゃあ俺たちレースの度にタイムトラベルしてんじゃねぇか!なぁ?」

 

「お前の車に時空転移装置着いてねぇだろ」

 

「うるせぇテズ、あとでつけてもらうんだよ。そうすりゃゼロヨン最速だ」

 

「レギュレーション違反で失格だな」

 

そのままテズとローマンがやいのやいのと漫才を始めたので、ドミニクはスルーすることにした。

 

「....もう行くのか」

 

「あぁ、世話になったなドミニク=トレット。また会うかもしれんし、もう会わんかもしれんが....我々は友人だ」

 

「いいや。....アンタはもう俺の"ファミリー"だ」

 

その一言に、エメットは柔らかい笑みで応じた。

 

「.....ではな、ドミニク=トレット」

 

右手を差し出す。ドミニクも「あぁ」と応じて、その手を握ろうと伸ばした。

その時だった。

黒々しい装甲車の車列が、ドミニクの視界の端に映った。

エンジン音は静かで、姿が見えるまで全く存在を悟らせなかったその車の軍団は頭に青赤のパトランプをつけた護送車だったり、装甲車だったりパトカーだったりとバリエーションは豊富だったが、その側面には一様に『D.S.S─Diplomatic Security Service─』とペイントされていた。

 

「誰だよ一体。完成披露パーティの報道陣か?」

「祝い金たんまり積んでるといいがな」

 

テズとローマンはそう茶化しながらも既に銃を抜いて臨戦態勢、レティもショットガンをドミニクに手渡そうとしたが、ドミニクは制した。

DSS。──外交保安局。

来るとすれば客の正体はたった一人だ。

 

「....銃を下ろせ、ホブスだ」

 

 

 

 

「よぉトレット、いい農場だな。ここならさぞ作物が育つだろう。なんたって、ダッジを転がすだけで耕せるからな」

 

「アンタこそ暇そうでなによりだ。畑を耕す手伝いに来たってんなら喜んで駆り出すぜ」

 

「.....相変わらずの減らず口で安心したよ」

 

「俺もだ、転がしたときの怪我はなおったか?」

 

「あぁ、もう跡もない」

 

ガッシリと握手を交わす二人の間に溝のようなものは感じられない。修羅場をいくつも越えたのだ、もはや彼らは『戦友』と呼べる間柄だった。

 

「早速だがトレット、協力してくれないか」

 

人当たりの良い笑顔で、ホブスはそう切り出した。

ドミニクは露骨に嫌な顔で応じた。

 

「また世界を救うのか?ロビン・フッドごっこはもう懲りた、そう言ったろう」

 

「あぁ言われたな。だから俺も努力した。が....どうにもならなくてね。やはりアンタの力がないと、解決できん」

 

「.....もう戦場の真ん中に駆り出されたり、車で兵器と殴り合う気はないぞ」

 

「安心してくれ、そんな不可能任務をやらせようと思って来た訳じゃない」

 

声は世間話のような軽さなのに、何故かそこでピン、と糸を張ったような緊張を感じた。

なにかおかしい。ドミニクは首をゆっくりかしげた。

 

「.....ならなんで俺の力がいる?俺が言うのもなんだが....俺たちは危険運転が十八番だぞ」

 

「あぁそうだな。だがそれも不要だ。なんなら用はこの場で済む」

 

そう言って、ホブスはドミニクから視線を外した。ドミニク背後、その奥に鎮座する一台の車と、一人の老人。

視線を戻し、ホブスは挨拶したときと全く変わらない、人当たりの良い笑顔で言い放った。

 

「単刀直入に言おう。デロリアンと、エメット=ブラウン博士、彼らをこっちに引き渡してほしい」

 

ドミニクの上がっていた口角が、すっと下がる。

彼は慎重に口を開いた。

 

「.....分からないな。なぜそれを俺に聞く?」

 

「トレット、お前があの車を修理したんだろう?アレは謂わば国の管理物ってやつでな、ブラウン博士は国家プロジェクトの重大な責任者だ。そんな大物が片田舎に世捨て人をやって、お前に頼った。奇縁だが、まぁそういう『大人の事情』ってやつが絡んでるから、こうして俺が出張って連れ戻しに来たって訳だ。だから、今から目の前で大捕物をやるが....黙って見ててくれ」

 

まるでセールスマンのような語り口調で、手振りを交えながら語るホブスの姿は滑稽とすら思える。

コイツは自分の要求を通すときこんな回りくどい言い回しはやらない。

「捕まえる」から始まり「手伝え」「協力しろ」、そこに一々言い訳じみた説明は交えない。

それに、その件を聞く限り、本質的に俺とは一切関係がない。答えになってないのだ。

それは彼も分かっているはず。なんならこのまま突っ込んでデロリアンを取り囲み、エメットを連れ去ってもいいはずだ。

なのになぜわざわざ車列を待機させて、一人で家主に交渉するような回りくどい真似をしているのか。

一体全体全てがおかしい。ホブスの言いたいことは恐らく....全く別の、なにかだ。

ニコニコしながらこちらを見てくる気味の悪い筋肉ダルマをじっくり睨み付けてから、ドミニクは声を落として、一言尋ねた。

 

「........本音はなんだ?」

 

その一言を、ホブスはどう受け取ったのかはわからない。しかし、ニッコリ笑顔が一瞬で無の表情になった瞬間、その瞳が、『セールスマン』から『捜査官』のそれに変わる。

ホブスの声は、かつて聞いたどの声よりも悲壮感に満ちた、低い唸り声だった。

 

「──脅されている。博士と車を連れて逃げろ」

 

瞬間、唐突にホブスは銃を真上に発砲した。

それが合図だった。

ドミニクは後ろに振り返って叫んだ。

 

「逃げろ!!」

 

テズとローマン、レティが走り出す。

ホブスはホブスで、背後の車列に怒鳴った。

 

「突入!!!」

 

突如降り注ぐ弾丸の嵐。

ドミニク達は身を屈めて家に飛び込む。

 

「レティ!リトルBを起こせ!」

 

「何があったの!?」

 

「話はあとだ、起こしたら俺の車で逃げろ!」

 

ドミニクはレティへダッジのキーを押し付ける。

受け取ったレティはジャケットを羽織ながら「アンタは!?」と聞き返す。

 

「俺は車がある」

 

「.....まさかデロリアンに乗るの!?」

 

「ホブスの目当てはデロリアンだ、集合場所は"1327"、テズとローマン、ラムジーにも伝えとけ!」

 

「わかった!....気を付けてよ」

 

「お前もな。愛してる」

 

ドミニクとレティは互いに見つめ合い、短いキスを交わす。そこからは、それぞれ反対方向へ走り出す。

レティは息子のブライアンの寝室に飛び込んだ。

見ると、銃声で起きたのかベッドの角で幼子が震えている。

 

「ブライアン!服を着なさい、逃げるわよ!」

 

「ママ、何があったの?」

 

涙で潤んだ息子の瞳に、レティの息が詰まる。

『静かな生活』をドミニクは望んで、エメットの件からも手を引こうとしていた。それを引き留めたのは私だ。

私が悪い、私のせいなんだ、ブライアン。

そう言いいたかったが、それはきっと、ただの自己満足だ。

だから努めて冷静に、取り繕った。

 

「....ママにもわからない。けどパパがあとで説明してくれるって」

 

信じて。ブライアンを抱き締めて祈るように呟くと、ブライアンは怯えながらも、微かに頷いた。

 

「....ありがとう、じゃあ行くわよ」

 

 

 

 

「レッカー車でどうやって逃げろってんだよ!?」

 

一方ローマンは喚いていた。

 

「レッカー車だけじゃねぇぞ、こんなこともあろうかと....」

 

テズは手早くレッカー車に繋いでいた車を切り離す。

テズの愛車、ホンダ・アキュラNSXが四輪を地面に付ける。

シルバーの流線型をしたボディが特徴的で、ヘッドライトは鋭く、細い。

そして当然のように、速いのだ。

 

「ラムジー、乗れよ。こいつでぶっちぎりだ」

 

「俺は乗せてくんねぇのか!?」

 

「お前はそっち(レッカー車)があるだろ」

 

「結局レッカー車じゃねぇか!しかもこれ分かってんのか?ピータービルトだぞ!100km/hも出ねーっつーの!」

 

喚く間も時間は止まらない。テズとローマンの間で跳弾が炸裂する。

思わず頭を庇って、横を見れば向こうから車と兵隊がぞろぞろやってくる。

 

「ちょ、やばっ.....」

 

「お先に行くぜ」

 

テンパっているローマンを置いて、テズとラムジーはさっさとアキュラに乗ってしまう。

 

「ラムジー!?」

 

「ごめんね、ローマン。でもそれ(レッカー車)は流石に死にそう」

 

「だったら俺も乗せろよぉ!!」

 

ローマンからすればもっともだが、弾丸は待っちゃくれない。

走り出すアキュラに置いていかれまいと、ローマンはよろけながら車高が低めのレッカー車──カスタムピータービルトに飛び込む。

エンジンを入れ、アクセルを蹴り付けて発進。

アキュラに続くが、装甲車パトカーの連中も追ってくる。

備え付けてた無線機をつかみとると、ローマンはバックミラーを覗きながら叫ぶ。

 

「なぁ、テズ!?俺達なんかやったか!?なんで追っかけられてんの!?」

 

「知るかよ!逃げてるからじゃねぇのか!?」

 

「追ってるのあっちじゃねぇか!!」

 

叫んだ瞬間、覗いていたバックミラーが粉々に砕ける。

マジでどうなってんだ、と毒づくと、無線にレティの声が聞こえた。

 

『全員聞いて!追手を巻いて、"1327"に集合!』

 

「1327?....ドムの更地か!?」

 

『再建中だバカ、更地って言うのやめろ!』

 

テズのツッコミは尤もだった。

ロスの1327番地、数年前デッカード・ショウ改めフランクに吹っ飛ばされたドミニクの実家である。

基礎ごと抉れる更地と貸していたが、現在はドミニクが家を建て直している真っ最中であるのだ。

ここからはざっと100kmほどある。

幸い、彼らはこういった事態には慣れていた。

 

「了解だ、コイツら巻き次第集合だな!」

 

『じゃあ、ドムの更地で会いましょう!』

 

「レティ、嫌味か!?」

ローマンは失言を踏まれて叫ぶが、無線は既に閉じていた。

カスタムピータービルトはレッカー車なだけあって、牽引力はつよい。しかし一方で最高速度や加速はそこいらの乗用車より少し速い程度だ。

つまるところ、遅い。

遅いから、追い付かれる。

 

「テズ!助けて!!左右をカメラマンに挟まれた!!視線寄越したら死ぬ!!」

 

右に装甲車、左にパトカー、それも両方が銃を構えてこちらの視線を欲してる。

アクセルはベタ踏みだが、これ以上速度は出そうにない。

もはやテズの車は遥か前だ。

 

ええい、いつも俺はこうだ!!

ヤケクソなまま、横に付けるパトカーへ、乱暴に体当たりする。

ドライバーは驚いたようだが、それくらいでは車はひっくり返らない。

どうやってこいつらを振り回すか....振り回す(・・・・)

 

「俺は....ダークナイトなんだぜ」

 

不敵な笑みを浮かべて、ローマンはダッシュボードのレバーに触れる。

レバーには赤字でこう表示されていた。

 

『レッカークレーン』

 

レバーを下に下げる。

ピータービルトに取り付けられていたクレーンのフックが、音を立ててチェーンごと伸ばされていく。

地面に接触した鋼のフックが地面を抉りながら跳ねる。

ローマンは車体を左右に振る。左右のパトカーと装甲車ははヤケになったと判断したのか、急速にサンドイッチせんと近づいてきた。

 

「それを....待ってたんだよ!!」

 

ローマンはタイミングを見計らって、アクセルではなく、ブレーキを踏み抜いた。

 

急に具が消えたサンドイッチは、ローマンの目の前で合体する。

さらに、急に減速した影響で、伸びたフックが地面を跳ねて、ローマンのレッカー車を追い抜く。

ローマンはそれを横目に、ハンドルを切って後輪を押し出し、横滑りさせる。

鋼のフックは中空から───パトカーの屋根を突き破り、食いついた。

 

「一本....釣りだぁぁあ!!」

 

力任せだった。

ハンドルをさらに切って、アクセルを吹かす。

180°その場で旋回したカスタムピータービルトに引っ張られ....パトカーが横に跳ねる。

そのまま装甲車の横っ腹に激突し、装甲車を横へなぎ倒す。パトカーが巨大な鉄球となった瞬間だ。

しかしそこでは止まらない。180°を越え、360°、一周回ったピータービルトはクレーンの鎖を最大まで伸ばしきった。

遠心力、速度、そして質量が掛け合わされた鋼の張り手が真横になぎ払う。

一番はじめの犠牲者となったパトカーは、塊に激突させれてピンボールのように飛び、真ん中を走る装甲車のタイヤにボンネットから突入、その影響で装甲車は真上へ、派手に跳ね上がる。

挙げ句、そのとなりで走っていた装甲車もまた、ローマンの放つ鋼の車型鉄球に運転席を抉りとられ、土煙を出しながら横転した。

フレームがついに破断し、パトカーだった塊は、どこか空中へ投げ飛ばされた。

 

ことの顛末を確認し、追手が全て無力化したのをみて、満足げにクレーンを巻き上げる。

ローマンは叫んだ。

 

「ざまぁみやがれ!これがローマン・ピアーズよ!!」

 

バックミラー越しにローマンの無双を見届けたテズは一言、こぼしたという。

 

「アイツのああいうとこ羨ましい」




読んでいただきありがとうございます。
好評価、感想いただけると作者嬉しくて小躍りします
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