既に文字数が維持できずにガタが来はじめてます。
今回はアクションパート2、というわけで前話と結合してもよかったかもしれない。
登場人物
ワイルドスピード
・ドミニク=トレット(ヴィン=ディーゼル)
バックトゥーザフューチャー
・エメット=ブラウン(クリストファー=ロイド)
登場車輌
DMC-12デロリアン(タイムマシン仕様)
その他パトカー
「爺さん!助手席に乗れ!」
家から飛び出したドミニクは弾幕の真ん中を駆け抜ける。
見ると、エメットは既に運転席に収まっていて、キーを差し込もうとしていた。
デロリアンにたどり着き、窓を叩く。
「爺さん、エメット!ドアを開けろ!俺が運転する!」
エメットはこちらに気づくと、ガルウィングの扉を跳ねあげる。
「大丈夫なのかね!しかしどうして!?」
「ホブスの頼みだ、アンタよりは"こういうの"は慣れてる!」
運転席が空くや否やそこへ体を滑り込ませて扉を閉める。直後、ガレージの壁に穴が空き、デロリアンのボディで火花が散る。
いよいよもって余裕がない。
キー捻る。
デロリアンが太く咆哮した。
目の前に特殊部隊員が躍り出て、こちらに銃口を向けた。
「.....どうするのかね?」
エメットの問いは、呟きのようなものだったが、ドミニクは不敵に笑うだけ。
「──ぶっちぎる」
シフトを1に──ではなく、Rにおしこんだ。
デロリアンは急後退。
木造ガレージの壁をぶち抜いた。木片と土埃を撒き散らし、その場で180°ターンすると、全速力で走り出す。
慌てて防護服の面々がパトカー、装甲車に乗って追ってくる。
「アンタ、この時代から出るって言ったな!?」
ハンドルを捌きながらドミニクは助手席の科学者に怒鳴った。
「あぁ!だが、タイムサーキットの動作確認だけは独りでやるつもりだったので、このデロリアンが"翔べる"かどうかはまだわからんのだ!」
「....指示通り直したぞ!」
「理論と実験は違うのだ、ドミニク=トレット....っ、来るぞ!?」
「分かってる!」
徐々に追い付きつつある護送車、装甲車、パトカーの車列をバックミラーで確認しつつ、前を見据える。
「エメット、こいつはタイムマシンなんだよな....ここから時空転移すれば、逃げられるんじゃないか?」
ドミニクの一言に、エメットは大きく頷いた。
「そうだ!その手があったな!今から私の行く予定だった時代へ行けば、そこに追手はいない!早速設定しよう!」
「頼む!」
背後のパトカーから身を乗り出した人間が銃口を向けるのをみて、ハンドルを切る。デロリアンのすぐ横で弾幕が走った。
エメットは、車体中央の黒いレバーを捻り、時空転移装置を起動する。ダッシュボードにデジタル数字が浮かび上がる。
一番上段の数字が、『2036.SEP(9月).15』に表示が切り替わる。
「設定完了だ!ドミニク=トレット、88マイルまで飛ばしたまえ!!」
既にメーターは130km/hを越えており、パトカーらとの距離も一定だ。
一気にアクセルを踏み込み、エンジンを追い込んでいく。
131、135、138、139....140に到達。
ドミニクのうしろ、車の後部に据え付けられた、Y字の光ファイバーから、目映い光が漏れだす。
行ける、とエメットは確信した。
ドミニクは、未知の領域へ踏み込む。
───運命の142km/h。
Y字の光ファイバー──時空転移装置が目映く輝き.....そして、光を失った。
「........?飛んだのか?」
メーターは145km/hにまで加速している。
ドミニクは怪訝そうに尋ねたが、エメットは頭に手をやって戦慄していた。
「....なんてことだっ、作動しとらん!」
「どういうことだ!?」
「言葉通りだ!サーキットの異常か時空転移装置か...いや、或いは1.21ジゴワットの電流が発生していないのか?いずれにせよ、時空の裂け目は発生していない!飛べないのだ!!」
ドミニクがその言葉を理解する前に、ボディを叩く弾丸が現実を教えてくれた。
依然としてパトカーも護送車や装甲車も健在なのだ。全くもって最悪の事態だった。
ドミニクは素早く思考を切り替える。なぜ飛べないのか、からどうやって現状から抜け出すか。
やがてあるものを見つけて、ドミニクは静かに言った。
「爺さん、捕まってろ。....あの森へ行く」
ここは自然の残る農耕地だ。草原とハイウェイの他にも、林、森もある。
デロリアンはうっそうと繁った森の中へと一直線に突っ込んでいった。
木々の間隔は狭く、ランダムだ。もしも車体から少しでも狭いところへ飛び込んだり、木の一本を見落とせば、140km/h台でかっ飛ばすデロリアンは即座にクラッシュしてしまう。
エメットは頭の回転が速い。そうした危険性についてすぐに思い至った。
「ばっ、最悪デロリアンが大破するぞ!」
唾を飛ばして激昂するが、ドミニクは至って冷静に切り返した。
「そうはならん、俺を信じろ。....俺はこれが得意なんだ」
一切ブレーキを踏むことなく、猛スピードのデロリアンが森へ飛び込む。
後を追って車列が突っ込むが、まず入り口で護送車の一台が樹と正面衝突、爆発炎上し、派手なファンファーレを飾る。
その脇を小回りの効くパトカーが通り抜け、護送車と装甲車は森の手前でブレーキを余儀なくされた。
デロリアンは小刻みにブレーキを刻みながら、滑るように木々の間をすり抜ける。車体と木々の隙間はわずか数センチ。まさに針に糸を通すような荒業だ。
エメットは生きた心地がしなかった。声すら出せずに固まっている。
ドミニクはバックミラーを確認し、執念深いパトカー二台をみやった。
果敢にも加速し、こちらに追いすがる。
しかしドミニクには、その勇敢さは勇み足にしか映らない。
わざと右に曲がり隙を誘う。
僅かな減速を見逃さず、アクセルを踏み込んで体当たりを目論むパトカーに、しかしドミニクはほくそ笑む。
間合いに入った瞬間、デロリアンは即座に左へ転身、まるで馬が後ろ足で蹴るように、デロリアンの後ろ角でパトカーの横っ面を殴り付ける。
殴られたパトカーは弾き返され、樹の幹へ突き刺さる。
直後、突き刺さったパトカーに進路を塞がれたもう一台もまた、爆発炎上の憂き目にあった。
結末を見届けたドミニクは、悠々と木々をすり抜けていく。
遠退いていく火柱を見送って、ようやくエメットは弱々しく口を開いた。
「.....君はまともじゃないな」
「よく言われる」