ワイルド・スピード/X(クロス)ファイア   作:タチガワルイ

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間に合ったあ!!!毎日チャレンジ一週間!!
今日は連載一週間記念と言うことで山場になります!具体的にはデロリアン初、タイムトラベルです!!
これまではね、修理だったり逃走だったりで中々飛ぶ機会がなかったのでね、今回ついにやっとこさ、デロリアンが仕事をしてくれました!やったべ!!!
ところで書いてて思ったんですけど、ホブスさんって、DSSの部隊長、くらいの地位ですよね。でも劇中彼より偉い人出てこないんですよね。局長とかいるとおもうんだけどな....。


登場人物
ワイルドスピード
・ドミニク=トレット(ヴィン=ディーゼル)
・ルーク=ホブス(ドウェイン=ジョンソン)
・ジゼル=ヤシャール(ガル=ガドット)

バックトゥーザフューチャー
・エメット=ブラウン(クリストファー=ロイド)

トランスポーター
・フランク=マーティン/デッカード=ショウ
(ジェイソン=ステイサム)

ミッション・インポッシブル:ローグネイション
・アラン=ハンリー(アレック=ボールドウィン)

登場車両
・DMC-12 デロリアン(タイムマシン仕様)
・ダッジチャージャーSTR8 2012年式




チャプター7.

「...よし、と。これで大丈夫なはずだ」

 

デロリアンによじ登って配線を弄っていたエメットは、腕を組んで得意気に微笑んだ。

 

「何が問題だったんだ」

 

ドミニクは助手席の足元に食料品を積み込みながら尋ねた。

夜も更け、台風一過とばかりに突き抜けた緋色の空が、綺麗な朝焼けを演出している。これからの長旅にはいい日和だ。

 

「流れ弾がサーキットの配線を一部引き裂いていたようだ。時空転移装置は起動したのに、サーキットが裂け目を作らなかったと言うことは、1.21ジゴワットの電流を裂け目を作る装置に流す際のリレー回路に何らかの不具合が出たと考えられる。であれば疑うべきは装置と、原子炉、そして転移装置をつなぐラインのどこか....見てみれば予想通り!装置と原子炉を繋ぐ配線がちぎれていた、と言うわけだ!」

 

専門用語をまくし立てるもんだからイマイチ頭に入ってこないが、来ないなりにドミニクは問い返した。

 

「それは....つまり、1.21ジゴワットとか言う電流が装置に流れておらず、タイムトラベルするための....扉が開かなかった、と言う話か?というか.....ジゴワットってなんだ?」

 

「あぁ失礼、ギガワットのことだ。昔の癖でね、つい口をついて出る」

 

まともに会話できることが嬉しいのか、エメットは上機嫌で車から滑り降りる。

 

「時空転移装置の仕組みはおいおい説明するが、これからは銃撃戦のないところでタイムトラベルを敢行したいところだな。あぁそれでだドミニク=トレット」

 

助手席にエメットが、運転席にはドミニクが収まる。

二人して、ガルウィングの扉を閉じる。

 

「なんだ?」

 

「先日話した通りだが、このタイムマシンは、時間は移動できても場所は移動できん、つまり、2015年の東京へ行くには、デロリアンをそこまで持っていく必要があるわけだ」

 

「そう聞いたな」

 

「そして修理したのだから承知だろうが、今のこのデロリアンは空を飛ばない」

 

「昔は飛べたのか?」

 

「あぁ、昔はな。それこそ私の知る歴史では、2015年の時点で車は皆空を飛んでいた」

 

「夢のある話だ」

 

そう返しながら、ドバイの一件を思い出して「俺も車で空を飛んだな...」と考えるが、アレとはまた違うのだろう。

 

「まぁつまるところだ、このデロリアンを空輸か海運せねばならない。こう言ってはアレだが、予約や料金などハードルは図り知れんぞ?」

 

「その点に関しちゃ問題ない」

 

デロリアンにキーを差し込み、エンジンを掛ける。

ドミニクは余裕の笑みだ。

彼には最強の武器がついている。

 

「足はダチに頼んだ」

 

 

 

慌ただしく行き交うスーツ姿の人々の合間を縫って、頭ひとつ大きな巨漢がのっしのっしと廊下の真ん中を進んでいく。

紺色の防弾ベストの背中には大きく『D.S.S』と黄文字で掛かれていた。

ホブスは、努めて控えめに、上質な木の扉を叩く。

何故なら、扉のネームプレートには『局長室』と彫られていたからだ。

 

「お呼びですか」

 

『入りたまえ』

 

扉越しのくぐもった、渋い声に頷いて、「失礼します」と部屋を潜る。

 

一番奥の大きく広い執務机には、見慣れた中年太りのおっさん...ではなく、見慣れぬ中年太りのおっさんが座っていた。

見慣れた方は部屋の隅で直立不動だ。

 

「初めましてだな、ホブス捜査官。私はCIA長官のアラン=ハンリーだ」

 

「....初めまして、ルーク...「あぁ、知ってるからいい」

 

アランはホブスの返答をぶったぎって、小さな応接用の椅子を顎でしゃくった。

 

「まぁ掛けたまえ、長い話になるかもしれんからな」

 

「いえ、このままで結構です。あの椅子は小さすぎる」

 

「ならソファでも構わんぞ」

 

「脆すぎます」

 

「.....そうか」

 

ホブスの泰然とした口答えに、アランは顔をしかめて「わかった、いい」とばかりに手を振る。

横でDSS局長は滝のような汗を流しながら、口パクで『言われた通りにしろっ』と命ずるが、ホブスは一瞥くれただけで無視を決め込んだ。

 

「さて、君をこの部屋に呼んだ理由についてだが、君に心当たりは無いかね?」

 

今日はなんの日か知ってるかね?とでも聞くような調子の軽さで本題に入るのが、アランのやり口だった。

世間話のようであるが、その視線は冷たく、厳しい。

まさに"射竦める"と言うのに相応しいが。

 

そんなことでこの筋肉ダルマが揺るぐはずもない。

 

「さっぱり分かりません。私は職務にも使命にも忠実なので」

 

アラン長官は舌打ちしかねないほど顔を歪める。

 

「"忠実"、か....君の実績を見たよ。確かに君の検挙率は群を抜いている。しかし数年前...そうだな2013年のリオかな?それ以降、君は犯罪者の肩を持つようになったね」

 

「おっしゃる意味が分かりません。確かに"情報屋"を雇ったこともありますが...全ては国外に逃げたネズミを捕まえるためです」

 

「なるほど。.....なら、これもその職務のためと言えるのかね?」

 

アラン長官はタブレットを無造作に操作すると、デスクの上を滑らせる。

そこには、ホブスが手配した大型輸送機と、その輸送機が空港で離陸準備に入っていることを知らせるデータが表示されていた。

ホブスは一瞥して、視線を元に戻す。その表情に変化はない。

注意深くその表情を観察しながら、アラン長官は口を開いた。

 

「それでは聞かせてもらおうか、この輸送機で東京に行って何をする?」

 

「犯罪者の追跡です」

 

「どんな犯罪者だ」

 

「凶悪な、犯罪者です」

 

「なんの罪を犯した?」

 

「殺人とか強盗とかの、凶悪な犯罪です」

 

「はぐらかすなっ!」

 

どん、とアラン長官は机に拳を叩きつけた。

隣でDSS局長がビクリと縮み上がる。

 

「君の最優先命令は、エメット=ブラウン博士及び彼の乗車の確保、そしてドミニク=トレット一味の確保のはずだ!命令受諾から既に300時間、二週間経っているが、君は一度ドミニクの家で取り逃して成果を上げていない!君は2週間どこで何をやっていたのだ!?」

 

ホブスは分かりやすく嘆息した。

 

「長官...確かに最優先事項はエメット博士及びトレットの確保です、しかし...籠から逃げ出すネズミはトレットだけではありません、毎日毎日何十何百と言うネズミがネコから逃げ出しているわけです。それらを全て追うのが私の仕事、そのはずです。その中には関係あるものもあれば、関係ないものもある」

 

ホブスの長口上に、アランは仏頂面で応える。

 

「これは例えばの話ですが、私は今、小便がしたくてたまりません。今すぐトイレへ駆け込んで、膀胱の中身を解き放たないと、あなたの目の前で社会的生命を終わらせることになる」

 

「そうなのかね?」

 

「例えの話です。しかし、私が今小便をしないと死ぬことと、今長官が私を聴取することについては、何ら関係がないことです。それと同じで、トレットをなんとかしないと世界が滅ぶことと、今も檻から脱走する可愛い野良猫を檻に連れ帰らないとアメリカがヤバいことには、なんの関係もないんです。

私は職務に忠実です。やるべきことをこなしてる」

 

ホブスの言い分に、長官は呆れ返った。

呆れ返ったが、返す言葉も見当たらない。

ひとつ分かることは、彼からはなにも引き出せないと言うことだけだ。

 

「....分かった。では最後に一つだけ」

 

「なんでしょう?」

 

「この機体にはだれが乗るんだ?君ではないだろう?」

 

「部下です」

 

「....なんだって?」

 

「信頼できる、部下です」

 

ホブスはチャーミングなウィンクを添えて、そう繰り返した。

 

 

『──と、言うわけでCIA長官にお前らの動向がバレた!機長はせっついておくから急げ!』

 

「くたばれ」

 

電話越し笑うホブスの悪すぎるニュースに、もはやジョークでもなんでもないただの本音がドミニクの口から吐かれる。

 

『ハハハ!トレット、いい切り返しだ!吉報を待つぞ!』

 

「おい待てホブス」

 

話の流れで電話を切ろうとしたホブスを呼び止める。

ホブスが「こちらの動きを監視に悟られる恐れがある」と言って、最後まで伏せていた情報を教えてもらっていない。

 

「肝心なことを聞いていない。輸送機はどこで待機してるんだ。空港の場所を知らないぞ」

 

『あぁ、なんだそんなことか。いやお前はよく知ってる場所だ』

 

ホブスは気軽にもそう切り返してきた。

 

『有名すぎて電波で固有名詞をのせなくても分かる位だな。覚えてるか?あの最後のカーチェイス。俺たちは死力を尽くして駆けずり回った』

 

「それがどういう....」

 

『最後は飛行機の格納庫で、オーウェンのヤツをぶっとばしてやったんだ...忘れたのか?』

 

"オーウェン"?その名前でドミニクの記憶がフラッシュバックする。

オーウェン=ショウ。2013年の夏、飛行場で炎上する飛行機───

 

「....あそこか」

 

『あぁそうだ、覚えていたようで何よりだ。じゃあまた何かあれば連絡してくれ』

 

「あぁ。恩に着る」

 

『なぁに、ちょっとした""謝礼"さ』

 

通話を切る。目的地も決まったし...あの場所なら出来ることもある。

 

「謝礼?なにかやったのかね」

 

通話を聞いていたらしいエメットが助手席で尋ねてきた。

 

「デッカードが寄越した人工衛星の話をしてやっただけだ。そしたらアイツが輸送機を」

 

「なるほど、借りと貸しと言うわけだ」

 

「ちょっと飛ばすぞ」

 

ドミニクはアクセルを踏み込む。エンジンの快音を轟かせ、デロリアンは空港への道を走っていった。

 

裏門の非常ゲートからデロリアン直接乗り入れると、ドミニクは妙なことを言った。

 

「これから日本に行くわけだが....何をするにも、メンツがいる」

 

「それについては昨日話したただろう、2021年の人間及び、2015年で君がつるんでいる仲間はダメだ」

 

「あぁ、そう言ったな、だから俺も頭を悩ませていたわけだが....一人、そのどちらの条件にも当てはまらない取って置きのヤツがいる」

 

「誰だ?それは」

 

エメットは首をかしげるが、そこでドミニクはおもむろに、デロリアンのヘッドライトを点灯。

時空転移装置のスイッチを起動し、日付を入力した。

 

『2013.JUL(7月).06.20.17』

 

そしてスイッチを切った。

 

「一体っ、なんの日付だねこれは」

 

眉を潜めて、両手を広げてドミニクに問うが、ドミニクはデロリアンを軽く走らせ、目的の輸送機のいる滑走路、その一番端にやってくる。

デロリアンから輸送機までおよそ2km。その間で全てのケリをつける。

 

「その年、俺のファミリーの一人が死んだ」

 

クラッチを離したままアクセルを踏みつけ、回転数を上げていく。

獣の唸りがデロリアンを震わせる。

 

「時速200km/hオーバーで走る輸送機を落とすために車で並走していたところを、オーウェン=ショウの手下ともみ合って落ちたんだ」

 

回転数がじりじりと上がっていく。これはレース前のドミニクのルーティンでもあった。

 

「彼女の死体を俺達は確認していない。だが、だからこそ思う」

 

ドミニクはエメットを見つめる。

覚悟の決まった瞳だった。

 

「死体がなかったのは、"こう言うこと"だったんじゃないか、とな」

 

クラッチを、繋げる。

デロリアンは後輪の猛烈な加速で前輪が浮き上がる──ロケットスタート──を決めて急発進する。

速度は一気に140km/h近くになった。

 

「いかん、いかんぞドミニク=トレット!如何なる理由があっても、死者を甦らせてはならん!」

 

「甦るんじゃない、消えてたものを救うだけだ!!アンタ走らないかもしれないが、この世界じゃ死んでたヤツが生き返ることなどザラにある!」

 

「それは死んでいなかっただけだ!!死んだと言う結果を覆すのとは違う!なにより──そんなことをすれば時空連続体にどんな影響が出るか!」

 

「もう出てるだろう!!」

 

さらにデロリアンは加速する。140km/h。

 

「こう言いたくはないが、アンタは失敗した!時空も、科学も俺は知らん、だがもう取り返しのつかないところまで来てるんなら、いまさら影響など考えたところでどうしようもない、違うか!?」

 

「....!」

 

142km/h、時空転移可能速度に到達した。

しかしドミニクはスイッチを入れようとしない。

 

「88マイルを過ぎたぞ!」

 

「まだだ、まだ足りない」

 

148、152。デロリアンは轟音をたなびかせて尚も猛進する。

 

「ドミニク=トレット、考え直せ!我々は時空を『元に戻す』ことが使命なのだ!決してさらに方向をねじ曲げることではない!」

 

「じゃあこう考えろ!失踪した人間が、ひょっこり帰ってくるとな!」

 

164、170、180km/hを越える。デロリアンが横に揺れ始め、車の振動が車体を激しく撹拌し始める。しかしそのなかでも二人の衝突は止まらない。

 

「何度も言っているだろう!それは、死んでいなかっただけだ!死んだと言う事実は覆らん!それを覆すのは、深刻なタイムパラドックスを引き起こす!」

 

200....220km/h。デロリアンが出せる最高速度に達する。

 

「エメット!俺はファミリーを救いたい!アンタも、自分のファミリーを救いたいと言ってたな!その一点だけで協力したはずだ!俺のファミリーは死んだ!」

 

スイッチに力を込める。

一瞬だけ、ドミニクはエメットを見た。

エメットの表情は、焦り、葛藤に蝕まれていた。

しかしこれだけは譲れないと、ドミニクは最後に怒鳴った。

 

「───俺は、可能性がある方に賭ける」

 

スイッチを、いれる。

223km/h。過去最高速度で時空の裂け目へ突入したデロリアンは、一瞬だけ、激しい閃光に包まれ。

衝撃波を伴う爆発と共に、2021年の世界から消えた。

 

 

 

──2013年.7月.06日.20時.17分。

 

 

 

一度、二度、三度の小爆発と同時に、デロリアンはトップスピードで裂け目から放り出された。

あれだけ明るかった昼下がりの滑走路は真っ暗な夜空に変わっていた。

 

「飛んだか!?」

 

「あぁ!成功だ!時空転移は無事に完了、計器は正常に作動している!」

 

真っ暗な空港にも、光源はある。中でも目の前の『大きな影』は、一番目立つ。

それは巨大輸送機だった。既に半分離陸しており、その両翼の下で、二台づつ、計四代の車が揉み合っている。

 

ドミニクは、時空転移装置のスイッチの文字盤に手を伸ばす。すると、皺の寄った手に遮られた。

 

「何をする、爺さん!?」

 

「君は運転に集中したまえ、設定は私がやる!」

 

思わず、ドミニクはエメットの方を見た。

暗がりだが、計着類の灯りがぼんやりと彼の輪郭を浮かび上がらせる。

エメットは諦めたように笑いかけた。

 

「──私の敗けだ。元はと言えば、私自身が死の定めにあったのだ。マーティも、そしてジョージもな。それを何度も覆してきておいて、時空連続体なんぞ今更すぎた」

 

マーティは、母親が恋に落ちたことで消えかけた。

マーティの父は、世界線によっては死んでいてすらいた。

そして自分も、マーティがいなければ手紙を出した一週間後にビュフォードに殺されていた。

 

「誰を救うかはこの際問わん、救出できたら合図を出したまえ」

 

ドミニクは笑った。純粋な笑みが溢れた。

それはどこかに救いを感じたからだろうか。

 

「いいだろう、任せた」

 

アクセルを、踏む。

デロリアンは輸送機の左翼側、翼から釣り下がって宙吊りになっている二台の車の方に寄っていった。

あとから聞いた話では『彼女』はハンと共に、あのシルバーの車─ダッジ・チャージャーSTR8 12年式─に乗っていたらしい。

 

フロントガラス越しに、彼らの格闘を見る。

位置を悟られないように、ヘッドライトを消した。

ハンの腕にしがみつく『彼女』の真後ろへ。

ドミニクは初めてその一部始終を──彼女の『死に様』を見た。

 

ハンの背後に、男の影がぬらりと現れる。

彼女は、ハンの手から逃れると、落ちた。落ちながら腰から拳銃を取り出し、男を撃つ。

自分はものの数瞬後には滑走路に叩きつけられ、擦り下ろされる。それが分かっていても、受け身のひとつもとらないで。

ハンが彼女に惚れた理由がよく分かった。

そして、彼女がどれほどハンを愛していたかも。

彼女は、運命を受け入れた。最後の最後まであがき、その結果を受け止める覚悟を決めた。

しかしだからこそ、その運命は、最大の奇跡となってネジ曲がる。

 

彼女は叩きつけられた。

しかしそれは滑走路ではない。

金属の板の上だ。

ガギィィイ!!と、耳障りな破砕音が板の下から響く。

彼女は訳が分からずに辺りを見渡そうとしたとき。

その声が聞こえた。

 

「────ジゼル!!」

 

彼女は、ジゼルはデロリアンのボンネットの上で受け止められていた。

ガルウィングの扉から顔を出しているのは意外すぎる人物だ。

 

「ドム?.....ドム!?なんでっ、輸送機は!?」

 

「説明はあとだ!早く来い!今すぐこっちに乗れ!!」

 

頭と理解が追い付かない。

先程までの冷静さから打って変わって、こめかみを押さえながらわたわたと手を振る。

 

「いや、でもっ、なんでドムがここにいるの!?オーウェンはどうなったの!?」

 

「全部説明する!だがサスペンションが潰れた!早く乗らないと失速する!!」

 

「ドミニク=トレット!現在91マイル(146km/h)だ!早くのせたまえ!」

 

見れば助手席に見知らぬ老人も乗っているではないか。

 

「来い!ジゼル!!」

 

迷って、考えて、悩んで....ジゼルは思考をすぐに無にした。

状況が把握できない場合は、とにもかくにも動くのだ。

ジゼルは軽く頭を振ると、デロリアンのルーフ(窓枠)をつかんで、素早く脚からデロリアンに飛び込む。

タイミングよく、ドミニクはジゼルを抱き抱え、ガルウィングの扉を閉めた。

速度計は89マイル(143km/h)。もう限界だった。

 

「エメット!出せ!!」

 

「スイッチ、オン!!」

 

時空転移装置のスイッチが入る。Y字の発光棒がまばゆく輝き、明滅する。

デロリアンは火花を散らしながら、再び時空を飛び越え、全てを置き去りにする衝撃波と、炎の轍と共に消えた。

 

 

 

──2021年.10月21日14時16分

 

 

 

ドミニクは叫んでいた。

ジゼルも、エメットも叫んでいた。

 

時速140km/h超で直進する、前輪を失ったデロリアンは、まさにレールを失ったジェットコースターだった。

辛うじて生きている前輪のシャフトをハンドルで無理やりねじ曲げながらドミニクは軌道修正する。

火花を散らしながらアスファルトを滑り、眼前に聳えるのは輸送機のタラップと言う名のジャンプ台。

ブレーキなど論外で、後輪が生きてるのをいいことに、彼は叫びながら情け容赦なくアクセルを踏み抜く。

デロリアンが、つんのめるようにタラップを滑る。

車体が乗り上げ、さながらスキーのジャンプ台のように勢いがついたまま、解き放たれる。

デロリアンが、輸送機の中で宙を舞う。

三人が感じたのはわずかな刹那の浮遊感。

何もかもがゆっくりと流れるような一瞬は、本当に一瞬で終わった。

 

デロリアンが輸送機の床に墜落する。

部品を、破片を撒き散らしながら、壁へ派手に激突する。

同時に、三人の意識はブツリ、と途絶えた。

 




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