隕石で世界を滅亡させる。   作:あおい安室

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世界滅亡杯「テーマは世界が終わったその後の話です」
「最終回まで世界滅亡しません」
世界滅亡杯「それ杯参加作品として大丈夫なんですか???」
わからぬ……わからぬが元々準備してたのがこれやったんや……
杯開催期間中に完結して世界滅亡させないと色々と不味いんで頑張ります。


アーカイブ:G)q@EEYPG

 最も有名な世界滅亡、といえば。君はどんな光景を想像するだろうか?

 

 核戦争で人類が全滅?突然の大地震で大陸沈没?謎のウイルスで全人類ゾンビ化?太陽が消滅して人類が生きていけない環境になる?超高性能な人工知能が人類を滅ぼす選択をした?はたまた遠い宇宙からの侵略者がやってきた?まあ、色々な光景が浮かぶとは思うよ、うん。

 

 

 そんな君に私は提案したい。もっともポピュラーな世界滅亡方法、それは――

 

 


XXXX年XX月Xx日:記録が破損しているため正確な日付は不明

 

 

「隕石が地球に激突、これだ!!」

 

『そんなわけないだろ』

 

 高らかに宣言した言葉を即座に否定した。つれないことを言わないでくれ、というが流石にそんな方法で世界が滅ぶ訳がないだろう。

 

「そんなわけがあるのさ。ほらほら、この前見せた映画を覚えてるかい?地球に向かっている小惑星を破壊するために立ち上がった穴掘りのプロの映画!あの映画は地球では大人気だったし、それ以降も似たような作品がチラホラと出回ってるんだよ」

 

『日付確認したら数十年以上前の映画なんだけど。そもそもそれは小惑星であって隕石ではない』

 

「細かいことは気にしない気にしない。それに似たような方法で世界滅亡を目論んだ総帥が出てくるジャパニメーションもあるって聞いたことはないのかい?」

 

『知らん。大体自分は地球についてあんまり詳しいことは知らないんだが。おまえが教えてくれることだけが全てなのだが』

 

「おっとおっと。これは失敬しました」

 

 ケラケラと笑いながら女は宙に浮いてくるくる回っている。身に纏った白衣がぐるぐると巻き付いて後で「ほどいてくれー!」と泣き叫ぶことになることは想像ついたが黙っておく。

 

「それでそれでー、ご注文の品は出来ましたか『宇宙様』?」

 

『出来はしたが。本当にやっていいのか?』

 

 女は宇宙船の窓から星を見上げる。そこに浮かんでいたのは自分からしてみれば少し小さいくらいに思える岩石の塊。女曰く「これくらいのサイズなら月と同じくらい」らしい。はるか昔からこの宇宙を漂っている自分にとってはその月というのがどんなものかは想像もつかないが。

 

「ウサギがお餅ついてるって噂の地球の周囲を回ってる衛星だよー。あ、衛星はわかる?」

 

『おまえと会話する際に知識も吸収している故に、少しはわかる。ある程度の大きさの星の周囲を回っている星のことだな。しかしそんな物が周囲を回っているとは、地球とやらは奇妙な星だな』

 

「この私が生まれた星だからネー。奇妙で当然当然。ささっ、宇宙様!あの巨大隕石を地球に向かってポーイと投げちゃってちょうだい!」

 

『……わかった。しばし待て』

 

 女からこっぴどく教えられた地球の座標を意識する。そこへ意識を集中すれば女の言う通り青い星の姿が見えた。地球までの道のりをイメージし、それをなぞるように自分は作り上げた巨大隕石を押す。ゆっくりと隕石が動き始める。その様子に女は歓喜していたが、すぐに静かになる。

 

 宇宙船の窓を覗くと白衣が絡まって身動きが取れなくなっていた。

 

 そんな馬鹿な女が白衣をどうにかほどいて窓を覗いた頃には巨大隕石は宇宙の闇へと消えていた。いずれあの星は地球とやらに激突するだろう。それが、女の望み。

 

「おおーっ……こちらの計測器で調べられる範囲からあっさり隕石が消えてる。すごいねすごいね、隕石様。そんな速度で隕石を発射できるなんて」

 

『褒められても自分にとってはアレが普通のことだから何が凄いのかわからん』

 

「またまたぁ。えーっと、このスピードだと地球到達は……ワーオ、3分後だ。うし、カップ麺でも食べよう!宇宙様も食べるーっ?」

 

『自分には味覚という物はない』

 

「食べれないと?うむうむ、どうしたものか。宇宙にカップ麺投げ捨てたら味がわかるかな?」

 

『宇宙を怪我した時点で自分は気様を処分するつもりだ』

 

「それは怖い怖い。大人しくしておきますよーっと」

 

 女は宇宙船内の見えない場所へと入っていった。一応意識を集中させれば動きを追うことができるがそれで一度衣服を脱ぎ捨てた場面を見てこっぴどく叱られたことがある。自分からしてみればあのようなゴミを身に纏う理由がわからない。全て脱いでありのままの姿でいればいいのに。

 

 


 アーカイブ:G)q@EEYPG:名称が破損しているため解読不能

 

 ようやく計画を実行段階に移すことができた。

 ここで改めて私の目的を再確認しておくことにする。そろそろ日記アーカイブにも寿命が来ているようで、過去に私が記した記録が閲覧できなくなっていることが確認された。

 今のところ映画や音楽と言った娯楽アーカイブの記録媒体はまだ持つようだが個人研究用に使っている記録媒体は少しずつガタが来ていることは悩ましい問題である。不要になった記録媒体の転用もそろそろ検討した方が……むう、話題がそれている。本題に戻らねばならない。

 

 私の目的はズバリ、世界滅亡である。

 そもそも世界滅亡とは何かについて改めて定義しておく。例えば今の私は宇宙船で孤独に一人で生活しており地球との通信も途絶しているという割と絶望的な状況であるのだが、これはつまり今の私が生きている場所、つまり世界は宇宙船のみで完結している状況というわけだ。

 

 極端な話、この宇宙船が消滅すれば私にとっての世界は滅亡するということになる。

 

 ここから私が考える世界滅亡とは『自分が生きている場所』が消滅することと定義した。

 そのためこの計画の最終目的は『人類にとって世界を滅亡させること』⇒『人類が生きている場所を消滅させること』⇒『地球を滅亡させること』というわけだ。

 隕石落下で物理的に生活できる大陸を消滅させる、環境を悪化させて人類の生存に適さない状況にする、最終手段にはなるが地球そのものを破壊する……色々な方法があるけれど、どういう方法でも地球が滅亡すればそれでいい。少しずつ考えていこう。

 残念ながら今の私には地球へ干渉する手段は何もないが、宇宙船の外には正体不明の生命体、通称『宇宙様』が私の傍にいる。

 宇宙様は私を珍しい知的生命体と認識しているようで、隕石を自由自在に操る力を私の目的のために使ってくれると約束してくれた。色々と謎が多いが利用できるものは何でも利用してやる。

 

 覚悟しろよ人類。私がお前たちの星を、世界を滅ぼしてやる!!

 

記録者:Ms.スターダスト

 

 

 

 アーカイブ:G)q@EEYPG:追加記録

 

 計画第一段階の巨大隕石は失敗した模様。

 こちらから地球を認識することはできないため『宇宙様』の話を頼りにするしかないが、どうやら巨大隕石は地球に激突することなく終わったらしく、詳細を知るためその光景を意識接続とやらで見せてもらった、が……

 

 ……すごくきもちわるい。どうやら私の体にはすごく負担がかかるようだ。

 

 接続中データを基に神経強度を高める実験を行うことにするが、それは後にして今は隕石の結果を記したい。元々巨大隕石はテストであったため直撃して地球を粉々に破壊することは想定しておらず、地球へ落下させて大なり小なり環境変化を起こせればいい程度に考えていた。

 

 が、そもそも地表へ到達することなく終わったのは想定外だった。

 

 巨大隕石は地球目前で月に激突。そのまま月がたどっていた軌道に乗って地球の新たな衛星と化した。嘘だろオイ、何の冗談だこれは。無理を承知で宇宙様に頼んで地球の大都市の様子を覗かせてもらったがマジだった。あまりもの光景に食べたカップ麺吐きたくなったけど我慢した。

 人類の連中当初は地球滅亡の危機か!?とか言って騒いでたけど月が身代わりに守ってくれたとか言って大喜びしてるし。のんきな連中め……

 しかも私が送り込んだ隕石がちょうど月の代わりを果たすようになったからセカンド・ムーンとかいって喜びながら拝んでやがる。元々あった月は巨大隕石の激突で粉々になってその破片のいくつかは地球に降り注いでいるが普通の隕石程度のサイズだ、私が考える世界滅亡には何の影響もないだろう。■■■■■■■■!■■■■■■■■■■■■■■■■!!※表現規制で罵声を削除

 

 ……うわ。落下した月の破片を回収して売りさばいてる奴までいるぞ。

 

 商売魂たくましい連中め、こんな人類は早く滅んでしまえばいいという思いが改めて強くなった。次こそはもっとうまくやって見せる……!!早速次の隕石制作に取り掛からねば!

 

記録者:Ms.スターダスト

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アーカイブ:G)q@EEYPG:最終記録

 

 懐かしいなぁ、まだ記録に残ってた。今思えばこれが本当の世界滅亡第一歩だったんだよね。

 あの頃の私を褒めたいとは思わないし、もしもタイムマシンであの頃に戻れたら誤った判断だから止めろ、って言ってたと思う。でも……私にタイムマシンを研究する時間はない。

 

 世界が滅亡した今にいる私が滅亡する前のあの頃に戻る方法は、ない。

 

 改めて宣言しよう。世界は確実に滅亡した。おめでとう、私。流石、私。

 

 

 

 ……本当に、これでよかったのかな?

 

 問いかける言葉に応えてくれる人は誰もいない。

 

 ああそうだ、世界は滅亡したのだから。残された私の世界もまもなく滅びる。

 

 アーカイブの記録領域の余剰分にこうして想いを綴ることしか、できることはない。

 

 

 ……できることはない。だからこそ、すごく後悔してる。最初に巨大隕石を選ばなかったら、あるいは計画をちゃんと洗練してたらもっと早く世界滅亡させられたのになぁ!!

 

 ほんっとう、あの時の私の馬鹿ぁっ!!

 

記録者:Ms.スターダスト

 




・Ms.スターダスト
地球から遠く離れた場所に浮かぶ宇宙船在住、独身女性未経験。
技術力は人類屈指だけど宇宙船に積み込んでる機材があんまり良くないので、
そこまで力を発揮できないポンコツ技術者。全ては宇宙様に任せるしかない。

・宇宙様
正体不明。Ms.スターダストのことを気に入っている。
作った巨大隕石がセカンドムーンとして拝まれてることが少しうれしい。
でも人類のことが好きとかそういうことはないので普通に滅ぼします。

・人類
「奇跡だ、奇跡が起こったぞー!!」
「馬鹿野郎そんなことより星屑拾いだ!」
「どっかに飛んでった月の破片の後を追跡しようぜ!」
人類は今日も平和です。だから滅んでしまえとか言われてる。
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