隕石で世界を滅亡させる。   作:あおい安室

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XXXX年XX月xX日:記録が破損しているため正確な日付は不明

 

「そろそろ隕石第二弾を開発しようと思う」

 

 巨大隕石を送り込んでから数日後、計画が失敗したことに喚き散らし――半分は意識共有に伴って脳が受けたダメージの回復と思われる――ようやく気が済んだのか、次の計画を始めるようだ。

 

『むう。身体改造とやらはいいのかね?』

 

「思考回路のプロセスを宇宙様に近い形に変更してみたけれど、神経系は今の手持ちの機材じゃこれ以上はいじれないから諦め諦め。これで意識共有は楽になると思うし及第点だよ」

 

『了解した。それでは、次の計画はどうするのだね。まだまだ周囲には自分が操ることができる隕石が大量にあるから、素材については心配いらん。前回同様に巨大隕石を作成して送り込むこともできるがどうする?』

 

「二番煎じはノーセンキュー。今はこちらの手札の種類が少ないからね、もう少し扱える隕石の種類を増やしてから隕石の再生産は検討するよ」

 

『……了解した』

 

「おやおや宇宙様、もしやもしやの残念で?」

 

『否定はせんよ。巨大隕石を作るのは結構楽な仕事だったからな。後、セカンドムーンとやらをまた弾き飛ばしてサードムーンを作りたかった』

 

「うん、やめようね。資源の無駄遣いはダメダメ」

 

 ひっそりと準備していた巨大隕石(未完成)の建造作業を中止する。せっかく作ったというのに何の意味もなかったというのか……そのうち再利用を検討しよう。

 

「さてさて。今回のコンセプトはズバリ、地球衝突です」

 

『それだけか?……しょぼくないか?』

 

「前回軌道計算ミスってせっかくの隕石を月にぶつけたのはどこのどいつでしたっけー?」

 

 記憶にございません。

 

「とにかくとにかく。今回の目的は隕石を地球にぶつけることのみを目的に据えて今後作る隕石に必要なデータ収集が目的。一応被害が大きそうなところには落とすつもりだけどそれはまた後で指示するよ」

 

『わかった。それで、何を考慮して隕石を作ればいい?』

 

「1に硬さ、2に硬さ、3に硬さの隕石!大きさと形は……うん、これくらいがいいかな。宇宙様、いける?」

 

 宇宙船内に配置されているデバイスの入力装置を女は叩いていく。指示された隕石の形状はほぼほぼ球体だった前回と違って長い円状の柱のような形だった。

 

『む、球状ではないのか?』

 

「形の方も実験実験。本来なら通常素材の方で作ってやってみたいんだけどあまりにも頻繁に送るとこっちが気付かれるからね。慎重に行くよ」

 

『気づかれたら不味いのか?』

 

「まあねー、だって私は孤立無援の人類の敵だもん。味方も地球にはだーれも残ってない」

 

 

 全人類の総意で追放されたマッドサイエンティストだしね。

 

 

 だから私は人類を全滅させる。世界を滅亡させる。おまえたちの選択が正しかったことをその身で持って知るがいい。私はいるぞ。ここにいるぞ。ここから世界を滅ぼしてみせるぞ。

 

 

 マッドサイエンティスト、Ms.スターダストの驚異を味わえ、人類。

 

 


 アーカイブ:F[E>F@YT\:名称が破損しているため解読不能

 

 計画第二段階、計画名は……ふむ、パイルバンカーなんてどうだろう。杭打機だ、今回完成させた隕石のコンセプトには合致していると思うしこれでいこう。

 結論から言うと完成させた隕石は想定した太さを維持することができず当初のプランとして考えるとやや失敗に終わった。硬さを重視するあまり脆い部位が生じており、長さは予定通りにできたが太さは予定よりも下回った。隕石に含まれる物質は未だに謎が多いのが痛い。

 解析を進めてはいるが宇宙様はその辺をフィーリングでやっているようで……もう少し成分分析を進めて素材となる隕石を仕分けして、そのうち正式モデルを宇宙様に制作していただこう。

 

 試作品失敗作含めて隕石は数十本完成した。これら全てを地球めがけて発射中。頑張れ宇宙様。

 

 目標は宇宙様にはまだ詳しい話をしていないが――核貯蔵庫である。現在の人類の技術レベルから判断するに宇宙での迎撃手段で脅威となる物はあまりない。精々核ミサイルくらいだ。

 大気が存在しない宇宙空間で核爆発を起こしても被害範囲は意外と狭く、まともに隕石を迎撃できるかどうかで言えば微妙なところだろう。それでも念には念を押して人類から私は牙を奪っておくべきだと考えたのだ。追い詰められた人類は何をするかわからない。

 

 それは私が身を持って知っている。

 

 幸か不幸か現在地球上に稼働状態で存在する原子力発電所がほとんどないことや全世界を見ても核貯蔵庫が減少傾向にある為準備した隕石で全て破壊することはできる。

 ただの巨大な杭を打ち込むだけでどれだけの影響が出るかはわからないが……少なくとも人類に甚大的なダメージを与えることには成功するだろう。健闘を祈る、我が愛しの隕石よ!

記録者:Ms.スターダスト

 

 

 

 アーカイブ:F[E>F@YT\:追加記録

 

 計画第二段階の巨大隕石は結果的に失敗した模様。知 っ て た。

 宇宙様曰くほとんどの落下地点で大爆発が起きたと驚いた様子で語っていたため私は成功したものだと思っていたのだが、その直後に宇宙様から衝撃の発言があった。

 

「周辺に人がいない場所に落としても意味があるのか?」

 

 いや、それは当然でしょ。核貯蔵庫はいつの時代でも危険な代物だから周囲に人類が居住区を構えることは極めてまれなんだけど。地球にいた頃も奪取するために工作員とかを送り込むと人の流れが不自然になりすぎて、あっさりバレるからやめたくらいには周囲に人がいないし。

 

「ふむ。確か核貯蔵庫に保管されている爆弾は環境を汚染する作用があるのだったか?」

 

 その通り。核がまき散らす汚染物質が与える危険性は時代の流れによる人類の進化と医療技術の発達で低下しつつあるが、恐れるものであることには変わりない。風に乗って汚染物質がまき散らされることからかつての地球では死の灰と呼ばれていたことがあると聞いた覚えがある。

 

「その灰は全て宇宙に捨てられたが。猛烈な風で巻き上げられてほぼ上方に吹き飛ばされている」

 

 ……だろうねぇ。連中ならそういうことすると思ったよ。

 

 

 それから意識接続で全ての爆発状況を確認した結果、あまりもの情報量に頭がまた痛くなったけれど宇宙様が言っていたことは事実だった。爆発で起きた塵のおよそ95.8533543221(数字の羅列)%、とにかくほとんどが突如起きた竜巻で巻き上げられて宇宙に向かって放棄されていた。

 塵一つの行先までトレースするのは非常につらかったがそこまで地球の様子が見えている宇宙様はやはり人類が理解できる範囲を超えている生命体なのかもしれない。

 

 ……とりあえず、この現象を引き起こした存在は『エルフ』と呼ばれる存在である。

 

 なんだその尖った耳は。なんだその透き通った金髪は。なんだそのたわわに実った胸は!あああああ、ほんっとうにムカつくムカつく!あの頃とぜんっぜん変わってないぞあいつら!!

 

 そんな物語に出てくるようなエルフ共が全世界の爆心地付近に出現、様々な色の宝石が先端についた杖を振るって『魔法』を使ったのだろう。それで巨大竜巻を起こして汚染物質を以下略。

 あいつら私地球で世界滅亡企ててた時もどこからともなく表れて何度も計画を妨害してきやがったし、本当に何なんだ。人類は全ての神秘を解き明かしたと言われているが、世界中にあの様な物語の中にしか存在しないような生命体が隠れ潜んでいるのは科学者として非常に不本意である。

 

 私が地球から追放されて長い年月が過ぎていることと前回の巨大隕石を妨害する様子がなかったことから「エルフは絶滅したのかも」とか楽観視してたけどやっぱり生き延びていたか……

 

 おのれ人類、おのれエルフども!次こそは人類を滅ぼしてみせるぞ!!

 

記録者:Ms.スターダスト

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アーカイブ:F[E>F@YT\:最終記録

 

 当時の私は失敗であると判断したが、実はこの計画はエルフに致命的なダメージを与えていた。

 

 エルフはいずれ訪れる地球の危機に備えて人類に知られることなく影で準備されていた人類の秘密兵器的な存在で、実際核爆発による被害を一人のエルフが予知したとされる。

 

 そう、エルフは魔法が使えるのではない。いわゆるエスパー、超能力の使い手だったのだ。

 超能力を司る器官が耳と胸にあるため耳は尖り胸が肥大化したことで創作上のエルフに似た容姿を持つ生命体で、髪は超能力を広範囲に広げるためのファイバー素材で杖も超能力制御装置と思いっきり科学の産物。人造人間と言っても過言ではない実態を知った時は笑ったものだ。

 

 そんなエルフだが、核爆発の被害を抑えるために全エルフが世界中に出動したらしいが、その結果ほとんどの個体が被爆して生殖能力に障害が出ている。恐らく独自の生態系を築いた結果既存生態系と交わらず、汚染物質への抗体が身につかなかったと思われる。

 

 結果的にこの計画はエルフ滅亡への第一歩だったということだ。

 

 付け加えると。当時の人類が汚染物質にある程度抗体を持つだけでなく除染技術も高く、爆発を放置しても人類は滅びることは全くないどころか普通の事故として処理していただろう。エルフは無駄死にしたのだ。

 

 もしも。あそこでエルフが隠れ潜み続けることを選択していれば後に私の計画の大きな障害として立ちふさがり、少なくとも今世界が滅びることはなかっただろう。あくまで、もしもの話だが。

 

 

 ……エルフ。かつて私の同類が作り出した超能力を操る人工生命体。哀れな存在だ。

 

 

 

 でも……一番哀れなのは男エルフなのではないかとふと思う。私が目にしたエルフは皆胸がデカイ美少女ばかりだから男性はいないのかと思っていたけれど、実はその中に男も混じっていたようで。生殖能力障害の記録に上半身女下半身男みたいなエルフがチラホラいるんだよなぁ。

 

 超能力を使う器官を発達させたらそうなったんだろうけど、そこまでするくらいなら男性型個体を作るのやめようよ……作った科学者はマッドサイエンティスト通り越して変態だ、絶対。

 

記録者:Ms.スターダスト




・Ms.スターダスト
地球から遠く離れた場所に浮かぶ宇宙船在住、独身女性未経験。
精々敵になるのは各国の軍隊だけだろうと思って世界滅亡計画実行したら、
何度も何度もどこからともなく現れたエルフ共に計画をぶっ潰された経験アリ。

・宇宙様
正体不明。Ms.スターダストのことを気に入っている。
エルフの肉体に興味を持ったらMs.スターダストにめちゃくちゃ怒られた。
胸の肉の多さでエルフを恨むとはなかなか奇妙な存在だと改めて実感。

・人類
「また隕石が降って来たら大爆発、どうなってんの?」
「核爆弾?とかいう旧時代の兵器貯蔵庫に落ちたらしいぞ」
「そんなことよりも爆発した場所にいたらしいエルフを探そうぜ!」
人類は今日も平和です。だから滅んでしまえとか言われてる。
前の世代が核戦争経験しているため、汚染物質への抗体あり。

・エルフ
「再び時が来た。悪しき炎から人類を守る為に力を使う時だ!」
「しかし、私たちはあの悪しき炎がもたらす呪いに対抗することは!」
「……覚悟の上だ。それでも我々がやらねば人類は滅ぶしかない。行くぞ」
そういう感じのこと言ってるけど世間知らずなだけでファンタジーな生き物ではない。


余談だが汚染物質でほとんどのエルフの生殖機能に障害が出たが、
正確にはエルフ同士の生殖に問題があるだけで人類×エルフは可能。
人類との混血でいわゆるハーフエルフにすり替わる形でエルフは絶滅、
超能力が失われたハーフエルフとなるも、エルフたちの血は未来へと続いた。

なお、そんなハーフエルフもMs.スターダストが滅ぼした。
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