「そういえば、この前実験で送った隕石群はどうなった、宇宙様?」
『またエルフとやらに迎撃されたぞ』
「でしょうねでしょうねー。あいつら本当に元気なこって」
女は苦笑しながらパックの先端にあるチューブから液体をすする。紅茶と言われるものらしいが、あれを飲むと頭が冴えるらしい。いや、コーヒーだったか?まあ、どうでもいいことだが。
『おまえが現状を理解しているのは別にいいのだが。エルフとやらは一体どういう存在なんだ?おまえが何度か見せてくれた映画やアニメーションに出てくる存在に似ているが』
「私も知らない知らない。地球にいた頃に世界滅亡計画立てて実行したら、ほぼ100%と言ってもいい確率であいつらが妨害しに来るんだよ。だから、私らの敵であるってことくらいしか……」
『なら尚更知っておかねばならんだろう。敵を知り、己を知れば百戦危うからずと聞いたぞ』
「宇宙様、勝手にアーカイブ見た?」
否定はせんよ。なかなか地球の文かは興味深いのだ。
「何気に進化してるぅ……あ、っていうことはもしかして私のプロファイルも見ちゃってたり?」
『それはまだ見てないが。良ければ、おまえはどういうやつだったのか聞かせてくれ』
「んーんー。そう言われても、簡単簡単な話だよ。「今の人類に絶望した!世界を滅亡させる!」っていうのが目的の組織に技術者で在籍してたけど最終的に組織壊滅。捕まって晒し者にされた後に裁判の結果、古い宇宙船に閉じ込められて島流し。そして宇宙様に出会って今に至る」
『……自分思った。おまえがいた組織はアホなのではないか?なんだその子供が考えるような目的は』
「否定はできないのが悩ましいところ。実際バカばっかりの組織だったし。その癖何度か世界滅亡の危機までは割とどうにかなっちゃうし、なんでうまいところまで行ってるんだろうねぇ?」
聞かれてもその頃を見ていない自分にはどうしようにもないんだが。
「それもそうだね。それじゃあ……そろそろ次の計画行きますか」
『いいだろう。定期便の隕石群とやらはどうするのだ?』
「なるべく継続で。バリ堅隕石で核貯蔵庫吹っ飛ばした時にエルフの姿が人類に見られちゃったみたいだしね。それでメディアに政治に引っ張りだことエルフ共は大変みたいだし」
『……ふむ。人類側がエルフを束縛しているだけでなく、こちらが定期的に送り込んでいるガラクタ隕石の対処でエルフ共は疲弊している、と?』
「そゆことそゆこと!頭冴えてるね、宇宙様。今のところの人類側の反応も変化なし?」
『表面、というか自分が感知できる街の様子を見る限りでは一種の自然現象として認識されており、テレビに出ているエルフも予知でそういった自然災害が起きると話していた』
「なるほどねー……って、予知ぃ?あいつらそんな方法でこっちの動き察知してたんだ」
『知らなかったのか』
「予想はしてたけどまさかそんな原始的な方法使ってるわけないない。って当時話してた記憶。マジかー……あいつら私の生きてる世界とは別の世界に生きてるのかよ。正直認めたくはなかったけど魔法使いかそういうのなのかな、あのエルフ共め」
『そうとは限らんよ。ああいうのは意外とトリックがある』
「そうなのそうなの?」
『そうともそうとも』
実際エルフの周りを観察していると自分の同種のエネルギー……とはいっても非常に微弱な物が流れているのを感じた。魔法という理解できないプロセスで生まれた奇跡などではない、自分がはるか昔に通り過ぎた古い技術の産物である。予知というエネルギーの使い方はその産物であり――
『――故に。すでに攻略方法はある』
「ほほう?じゃあ、今回の隕石制作を任せてもいい?」
『任せてくれたまえ』
そろそろ自分も動く時だ。すでに何度か面白い景色をおまえには見せてもらった。
『この隕石は確実に地球に命中する』
自分も少しだけ本気を見せてやるとしよう。大人げない?知ったことか。とうの昔に成長も進化も止まった生物――いや、概念と化した自分の力をたまには披露するのもいい。
アーカイブ:-|NYH@RQ|:名称が破損しているため解読不能
計画第三段階。新たに宇宙様が作りだした隕石はホーミングスターという名前に決まった。宇宙様が決めた名前……うーむ、そのまま過ぎないかなーって思うんだけど黙っておく。
名前通り追尾型の隕石である。これまでの計画では作り出した隕石を地球に向けて放つ際は宇宙様が初動のベクトルを加えた後はそのまま何もせずに放置していたが、今回は最初から最後まで宇宙様が地球に向けて隕石を送り込むことにしたそうだ。
宇宙様の力はエルフたちが予知できる範囲を超えている、と宇宙様は推測していた。これまでは初動以外は自然現象に任せるような形だったから予知で妨害されただけで、最初から最後までエルフの予知できない宇宙様の力で制御すればうまく行く、という話だった。
だが、それにあたって作り出した隕石ははっきり言って平凡である。大きさ、一般家庭が住む一軒家レベル。硬さ、私が搭乗している宇宙船の装甲より少し柔らかいレベル。形状、ゴツゴツして微妙に球状な普通型。正直言って何のひねりもない隕石でがっかりした。
だが、宇宙様曰くそれでいいそうだ。「よくある隕石」で「よくある経路で落ちてきて」、「いつも通り魔法で壊せる」と思い込ませるには普通の隕石である必要がある。
『疲弊した時ほど油断する。そこを突くのが悪の手法なのだろう?おまえ好みの映画やジャパニメーションではな』
……うんうん、その通りだ。流石に正面から言うことはできないけれど、私にとって宇宙様はただの道具に近いような形だった。おだてれば調子に乗るスポンサーみたいな感じ。
だけど今は違う。私にとって頼もしい仲間、助手、相棒――欠かせない存在になりつつある。ああそうだ、これだ、こうだよ、こうなのさ。こうして誰かと一緒に悪だくみをするのが楽しくて地球にいた頃は組織に在籍してたんだっけなぁ。皆もう亡くなったけれど、今頃どうしてるかな。宇宙様を皆に見せてあげたい……いや、やっぱりやめとこ。宇宙様取られそうな気がする。
さあ、そろそろもう寝よっと。明日の計画本番を確実に成功させるぞー!!
アーカイブ:-|NYH@RQ|:追加記録
失敗しましたー。
……いや、本当になんで失敗したよ。大気圏突入後回転したりジグザグに動いたり渦巻き描いたりとめちゃくちゃな軌道を描いて迎撃に出てきたエルフたちをさんざん振り回し、後一歩で大都市のど真ん中に落ちる――と思った瞬間突然街が消えてそこに現れたのは大海原。
宇宙様でも想定外だったのか制御を失ったそのまま海へ隕石は突っ込んだ。二人して、
「『何事ォ!?』」
って叫ぶ貴重な機会があったけどそれはぶっちゃけどうでもいい。
街が消えるどころか大陸全体が観測していた範囲から消えるという異常事態が起きたことに困惑したが、すぐに何が起きたのかを把握した。把握せざるを得なかった。
大陸全体が移動していたのだ。一瞬でほぼ地球の真裏側にワープしていた。
……エルフだ。絶対、エルフの仕業だ!こんなどう見てもあり得ないような現象を引き起こすやつなんて絶対エルフしかいない!私たちの努力を無に帰すような秘密兵器を隠していたとは!!
宇宙様に協力してもらいすぐに大陸の様子を確認すると確かにエルフたちが今回の事態について説明しているようだ。それによればかつて大きな地震が起きて以来エルフたちはある対策を練っていたらしい。そういえば昔の組織がそんな計画をやってた記録があったような。
そこで、エルフたちは極秘に大陸を――えっ、切り離した?居住区&自然がある表層部だけを切り離して大型の船として扱えるように改造……かい、ぞう。なにそれ。なにそれ。
もはやそれ改造通り越して私みたいなマッドサイエンティストのやることじゃんっ!
そして、大陸ごとエルフたちの転移術で無理やりワープさせて現在に至る……が、このワープに多大な力を使ったエルフが多く、現在隕石が降り注げば人類はどうしようにもない、と。
ほ、ほほほう。まあいい、チャンスだ。今のうちに隕石を大量に落としてやるぞ!!
――これまでの開発&牽制で周辺の隕石がほぼ皆無?
……寝るっ!寝てやる!!ふて寝してやるーー!!
アーカイブ:-|NYH@RQ|:最終記録
昔の組織ぶっ潰す。関係者全員ぶっ殺す。もう潰れてた。もう死んでた。ちくしょう。
一見関係ない話に見えるが、私たちが行ったこのホーミングスター計画が失敗したのは昔の組織が計画した大地震による世界滅亡計画が失敗したことが原因にある。
大地震を引き起こして地盤沈下を引き起こし、大陸を丸ごと沈没させる……という如何にもド派手な計画だったのだが最終的に失敗したどころか、当時の人類が緩んだ地盤を利用して大陸を分離できるように改造したらしい。推測でしかないが、そうとしか考えられないのがなんとも……
また大地震やそれに類する危機が迫ったら大陸を分離させて移動する非常用の対策だったらしいけど、問題はその運用方法や技術、歴史等全部忘れ去られて今の人類に引き継がれてなかったそうな。
なので本来なら私たちが落とした隕石は普通に命中するはずだっただけど、エルフ共がそういう技術について把握してたっぽい。足りないエネルギーはエルフの命を燃やしてでも無理やり補充して動かすだけでなく転移術まで使って大陸を瞬時に移動させた、と。
……転移術使えたのか、あいつら。通りでどこのアジトを移しても侵入してくるわけだ。
どちらにせよ昔の組織がやった計画が失敗して、その残骸を人類に利用されて、だけど人類が忘れてた物をエルフが使って世界を救った、ということになる。
私からすればただただ腹立つ結末だけど、人類からしてみれば感動的な結末なんだろうなー!
……だけど滅ぼしてやった今となっては無意味だけどね!ざまあみろ!!
それはともかく今回の計画を行った私は最初の計画を行った私の次にぶん殴りたい。この計画で中途半端に人類追い詰めちゃったせいで人類がキレちゃったじゃんかぁ……
・Ms.スターダスト
地球から遠く離れた場所に浮かぶ宇宙船在住、独身女性未経験。
ふて寝目的でコールドスリープ装置使おうとしたら、宇宙様に止められた。
これからどうも危機が訪れるらしく寝てる時間はないとか。ガッデム。
・宇宙様
正体不明。Ms.スターダストのことを気に入っている。
人類とエルフって結構馬鹿なんだなーと思ってる概念的な存在。
なんで隕石だけを転移させにこなかったんだろう?やっても無駄ではあるが。
・人類
「ワープしたせいで魚の漁場は激変したんだが。訴訟」
「そんなこと言ってる場合か、エルフたちがもう防衛できないらしいぞ」
「らしいなぁ……しゃあない。俺らがやるしかないかもな、行くぞ」
人類は今日も平和です。だから滅んでしまえとか言われてる。
大陸大移動&秘められた謎が判明したけどあんまり驚いてないらしい。
・エルフ
「やめろ!古代遺跡のエネルギー源となればおまえたちは死ぬぞ!」
「邪魔をするな!これは名誉ある死だ。オカマエルフとか言われずに死ねるんだ!」
「……あー。その、なんか、うん。すまなかった。おまえたちの冥福を祈る」
見た目女なのに性別男と発覚したら色々と言われてた
男エルフたちがひっそりとこの世を去ったらしい。
・昔の組織
「おーい、次の世界滅亡計画どうする?」
「なんかこう、何やっても失敗しそう。人類ってたくましいし」
「……だったら、人類じゃなくて大陸を滅亡させる?」
「「それだ」」
当時からどこかネジが抜けた馬鹿ばかり。
ちなみに実際に大陸を切り離した実行犯。
大海原まで大陸を移動させて沈めるつもりで、大地震は移動時の副産物。
その際に作業員としてエルフを作ったら反乱起こされて計画失敗した。
やることなすこと全て世界滅亡という目的の障害となった
どうしようにもない実績までは流石に後世までは伝わってない模様。
伝わってたらMs.スターダストは一度組織滅ぼして別の組織立ち上げてる。