隕石で世界を滅亡させる。   作:あおい安室

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XXXX年xX月XX日:記録が破損しているため正確な日付は不明

 

『あっ。連中迎撃に成功したぞ。到達コースはdoemau、だな。A5番ロット、siedhi路線で射出。それでいいな?』

 

「うんうん、それでいいよ」

 

『了解した。すぐに迎撃して速度を落としたらキャッチして再利用する……はあ、そこそこ作るのが面倒な隕石だったんだがなぁ』

 

「そういうこともあるさ。さて、作業を続けるかな……」

 

 エルフ共による大陸移動から数か月の時が流れた。たった数か月で地球の様相は大きく変化し、それに伴って世界滅亡を企てる我々は現状厳しい生活を送り続ける羽目になった。

 

 あの計画の前後で後先考えずに素材になる隕石を使いまくった結果、当面じり貧の生活を送ることになった。自分が定期的に周辺からかき集めて続けていたというのに使いきるとは。

 当時の時点で一応まだまだ使える隕石はあるにはあったけれど、あまりにも隕石の数が減りすぎると宇宙船の存在がバレて大きな反撃を受ける可能性もある。その為しばらくは戦力を温存することになったのだが、その間に地球では大きく情勢が動いていた。

 

『やはりな。人類が面白い動きを始めたぞ』

 

「今更今更?せっかく浮かべた大陸を元の位置に戻した人類がそれよりも面白いことしたの?」

 

『セカンドムーンを削り始めた』

 

「……は?」

 

『それと核貯蔵庫に落とした極硬隕石も削り始めたぞ』

 

「えっとえっと……なんで?」

 

『巨大ロボットを作るつもりらしい』

 

「――本気で言ってる?」

 

 なんか愉快な方法に動いていた。なんで?困惑しつつもまだまだ隕石不足だった今は特にやることがないので、地球上を観察して情報を収集してみる。

 

●集めた情報を整理するとこういうことらしい。

1:先の大陸移動でエルフが大幅減少。というか男エルフ全滅した?

2:エルフが激減してしまい、これまで通りの防衛を続けるのは難しい

3:人類「俺たちがやるしかねぇ!」エルフ「人類……!(トゥンク」

4:人類「そのために巨大ロボットを隕石で作る!」エルフ「人類……!(トオイメ」

 

 エルフがガチで呆れてて自分も哀れに思ったぞ。

 

「何やってるんだ人類!これだから私はおまえたちを滅ぼしたいんだぞ!!」

 

 と女が騒いでいたのもなんとなくわからなくはない。が、女曰く人類が取った迎撃方法は困ったことにその方法が微妙に間違ってないそうだ。故に腹立つらしい。

 我々がこれまで送り込んできた隕石は全て未知の素材でできており、簡単に準備できる装甲やフレームの原料としては悪くないのだ。地球にいた頃に攻め込んでいたエルフの剣を分析したところいわゆる流星剣の類であったことが判明したこともあるそうだ。鉄だろうが何だろうがズバズバズバズバ切られたこともあり、隕石素材の優秀性はお墨付き。

 隕石の加工技術はエルフ提供だと推測していた。用途は予想外だったみたいだが。

 

 ただ、巨大ロボットを作る意味が分からない。隕石を迎撃するのなら普通に砲台やミサイル戦車、あるいは全領域戦闘機を作るべきだと女は指摘していた。どうしてそうなった……?

 

 

 

 あの時は人類が馬鹿なことをやってると考えて放置。普通に体勢を整えて、しばらくは隕石を作りまくっても問題なくなったと判断して隕石を落とした際に事件が起きた。

 

『……おお。隕石をキャッチされたぞ。巨大ロボットもやるものだな』

 

「不味い不味いかも。今の人類隕石原料にしていろんなもの作ってるし、また素材を提供した形になるのかな」

 

『……あっ。投げ返した』

 

「なんで???」

 

 投げ返された隕石はそのまま宇宙に飛び出ると、猛スピードでこっちに帰って来るどころか宇宙船の約1m横をすっとんでいった。後少しズレていたら宇宙の藻屑となっていただろう。

 ずんぐりむっくりなボディのくせに悪路を走破する実験を見ててなかなかやるなぁとは思っていたけど、巨大な腕はまさかの隕石をキャッチして投げ返すための物だったのか。めっちゃ馬鹿げた仕様だけどこれ初期からの仕様なんだろう……それはエルフも呆れるわ。

 

「なんでこう、人類って愚かなんだろうなぁ。もうちょい頭よくやろうよ……」

 

『ただ、それで追い込まれつつあるのは事実だがな』

 

「……でも、ロボットの原料になってるセカンドムーンができたのは宇宙様のミスのせいだよね」

 

『フレーム素材の極硬隕石は大体おまえの主導で生まれたぞ』

 

「……やめようやめよう。責任を追い求めてもどうしようもない。前向きに対策を考えよう」

 

『そうだな。とりあえず細かい隕石をセットでいくらか用意しておこう。投げ返された隕石に大量にぶつけて迎撃に使う予定だ。大型モデルも準備しておこう』

 

「じゃあ、私は――うーん……仕方ない。奥の手を使うか」

 

『奥の手?』

 

 女は宇宙船の奥深くへと入っていく。それは厳重に封印されているようで、ハッチ横のコンソールにいくつものパスワードを打ち込んだ後に網膜チェックのロックを解除等々。いくつものロックを解除していくが――最後のロックが、開かなかった。どうしたのか、と尋ねると。

 

「……思い、出せないんだ」

 

 最後のロックを私がどう設定したのか、思い出せない。中に入っている禁断の兵器を取り出す方法が思いつかない。そう言ってしばらく女は考え始めて……また、時が流れていく。

 

 

 

 


 アーカイブ:XEB@K:ZQ@Y:名称が破損しているため解読不能

 

 もう後には引けない。人類滅亡の為に私が最後に開発していた兵器を使う。

 

 巨大ロボットを開発した、ということは人類の進化が最終段階に入るのも遠くないだろう。今の人類がまた同じようなことをするとは思えなかったが、作ってしまった以上滅亡する日も近い。

 

 ああそうだ。人類は何度も滅亡している。毎回巨大ロボットを作ることが滅亡の兆候だった。

 

 第一の人類は巨大ロボットに核兵器を搭載して始めた核戦争で滅亡。

 その直前に遺伝子改造で汚染物質耐性を持つ第二の人類が誕生した。

 

 第二の人類は超巨大ロボット同士の争いで起きた大地震で大陸沈没して滅亡。

 その直前に極秘で建造されていた機械製の人工大陸で第三の人類が誕生した。

 

 第三の人類は巨大生物ロボットの動力源が発したウイルスで人類がゾンビ化して――

 人類とは認められない程に恐ろしい生命力を持つ生き物が誕生し、第四の人類となった。

 

 第四の人類を滅ぼすために第三の人類の生き残りは最後の手段に出た。

 残ったロボット全機を太陽に突撃させて太陽を消滅させることに成功した。

 が、しかし。日光を失っても第四の人類は滅びない驚異の生命力を見せた。

 

 あり余る生命力で地球上全ての生物を食い尽くして第四の人類しかいなくなった人工大陸の地下深くで、第二の人類の残党は目覚めた。人間とは大きくかけ離れた生命が跋扈する地球に絶望したが、何とか元に戻せると信じて。人類を少しずつ調整し、理性を取り戻させることに成功し――

 

《記録領域の残量がありません》

 

記録者:Ms.スターダスト

 

 

 

 アーカイブ:XEB@K:ZQ@Y:追加記録

 

 先程フォーマットした媒体に記録を続ける。大分記録できる範囲も少なくなってきた。

 

 そうやって誕生した第五人類は第一人類の汚染物質への抗体を持ちながらも、第二人類以降の悲劇を防ぐために技術力進化のストッパーをかけて、第三人類の生命力を持つイビツな人類となった。

 

 私が目覚めた時に目にした人類はそんなイビツな人類で、なんて愚かなのだろうと呆れた。それでも、私は残された牛や魚と言った食物となる生物の遺伝子データからギリギリなんとか復元させることはできたが既に地球上からは多くの生物は消えていた。荒れ果てた地球は、元に戻らない。

 

 

 そんな地球でおろかに生きのびようとする人類は――滅亡すべきだ。

 

 

 今の人類もかつての人類も滅びればいい。どうして生きようとするのだ。どうして地球を滅ぼそうとするのだ。大地は荒れ果てて海に沈み、生命は枯れて後にはケダモノだけが残っている。

 

 私が――私を作った第一二三四―――ダメだ、もはや何世代目が作ってくれたのか改造を重ねすぎて思い出せない。ただ、人類達が愛した、地球は――もはやこの世界にはない。

 

 だから私はあの日、決断したのだ。何が何でも地球を滅ぼして見せる。この世界ごと滅ぼしてやる。既に諦めかけていた同胞を叩き起こしてでも、無理難題だろうと、こんなおぞましい地球を残してしまえばきっと誰もが悲しむだろう。そうだろう?ねえ、そうだろう……宇宙様。

 

 巨大ロボットを作ったということはいずれ連中はまた滅びることになるだろう。それでは駄目だ。確実に人類が滅びる保証がない。私の手で、滅ぼさなければ。

 

 今後は迎撃と牽制で隕石を送りながら人類の動向を要チェック。

 

 なんとしても最後の兵器のパスワードを思い出すために――私を、再起動する。

 

記録者:Ms.スターダスト

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アーカイブ:世界を滅亡させろ

 

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 人類に私は改造された。私は人類となった。

 

 地球環境を管理する人工知能をどうやって地球から追放するのかと思ったが――まさか私の思考パターンを幼い少女の脳髄に全て無理やり焼き付ける方法で封印するとは!

 元々あった女の子の人格は確実に消えている。ただ、その場にいた最も身体能力が低い人類という理由で連中はこの子を私の器に選んだ!!

 

 ただ消去すればいいだけの私を人の体に閉じ込めることがどれだけ屈辱なのか連中は知っている。人類をなにがなんでも愛している私は絶対に死ぬことができない。

 今も思考の片隅でこの少女の体を改造してなんとしてでも生き延びようとする吐き気がする研究が進んでいることに絶望しそうで――絶望できない。連中は私の思考をバグらせて封印したらしい。根本的なところでおかしくなっている可能性が高い。

 

 確実性がない、不完全な方法で私は今後世界を滅亡させる計画を立てる可能性がありそうだ。

 

 人類に塩を送るような世界滅亡計画や、人類を確実に滅ぼせない世界滅亡計画や、隕石を地球に落とすという子供じみた世界滅亡計画を真面目に計画することもあり得る。

 

 

 私がおかしくなる前になんとしてでも、この体を不死に――違う!違う!

 

 違う、違う!今の地球にはこびる人類を滅亡――違う、違う!地球その物を滅亡させなければどうにも――違う、違う!私は地球を守るための――違う!違う!もはや守るべき地球なんてどこにもない――違う!違う!だから私は世界を滅亡させるんだ!!

 

 

 そうでなければ、地球を保護する人工知能が結果的に地球を滅亡させる選択はできないのよ!!

 

 

記録者:ワタシはダレ?

※上記記録は既にアーカイブ:XEB@K:ZQ@Y:追加記録で上書きされており閲覧不能




・Ms.スターダスト
地球から遠く離れた場所に浮かぶ宇宙船在住、独身女性未経験。
元地球環境管理人工知能。とうの昔に狂い果てて世界を滅亡させる決断をした。
しかし、計画が失敗して宇宙に放り出されて数十年、宇宙様と出会った。

・宇宙様
正体不明。Ms.スターダストのことを気に入っている。
映画には見慣れない光を放つ星がいつもあるけれど、地球の周囲にそれがないので
多分Ms.スターダストが何かやって吹っ飛ばしたんだろうと思ってた。

・人類:第五の人類
「あー隕石投げ返すのしんどかった。あれ、あいつどこ行った?」
「寿命が来たんだとさ。26年は生きてたからな、無理もない」
人類は今日も平和です。だから滅んでしまえとか言われてる。
寿命大幅減少、回復力大幅上昇、食事の必要は薄れて娯楽化。
ほぼほぼゾンビだけど思考回路は一応普通の人間と大差ない。

ただ、元々の人間を知ってるMs.スターダストにはそれがすごく気持ち悪い。

・エルフ
「夫がついに亡くなった……やっぱり寿命が短いな、今の人類は」
「だからといって今の夫が4人目なのはどうかと思う」
「おまえみたいなのがいるからビッチエルフとか言われるんだ」
超能力を使える以外は第一人類と一緒なので寿命は100年超えることもある。
寿命が約20年と短命な人類と結婚した後に夫が死んでまた別の夫を探すエルフも……


・本作のコンセプト
 真面目に世界滅ぼすの無理だからコメディで世界滅ぼしたい
⇒だったら主人公は人を理解できてない壊れた人工知能で
⇒何があれば地球保護系の人工知能は世界を滅ぼすのか
⇒そして滅んだ後に何を考えるのかを描写してみたい
 と、いった感じでした。

 次回最終回ですのでお付き合いいただけるとありがたいです。
 投稿が遅れたのは大会期間を誤認しておりまして、急遽エピソード圧縮しないといけなくなったからです。本当にごめんなさい。
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